インボイスの消費税はどう計算するの?個人事業主向けに計算方法とシミュレーションを解説

インボイス登録後の消費税はどうやって計算すれば良いのか?納税額をシミュレーション

赤いファイルを抱え、虫眼鏡を手に持つスーツ姿の人物。インボイス登録後の消費税について確認するイメージ

インボイス制度に登録した個人事業主にとって気になるのは「実際、消費税をいくら納めることになるのか」という点でしょう。

インボイスの消費税は、2割特例・3割特例・原則課税・簡易課税など、適用される計算方法によって納税額が変わります。

本記事では、消費税を計算するときに知っておきたい計算方法と計算式を、具体的な金額を使ったシミュレーションとともにご紹介します。

「インボイスの消費税をどう計算するのか知りたい」「自分の納税額を簡単にシミュレーションしたい」「2割特例が終わるって本当?」という方は、ひとつのツールとしてぜひ本記事をご覧ください。

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そもそもインボイス制度とは?個人事業主が知っておきたいポイント

本記事を読まれている方の多くはインボイス制度に登録した個人事業主の方だと思われますが、ここで改めて、消費税の計算方法について理解するためにも、インボイス制度の概要をおさらいしておきましょう。

インボイス制度とは、売手が買手に正確な適用税率や消費税額を伝えるとともに、買手が仕入税額控除を受けるための制度です。

インボイスとは日本語で「適格請求書」のことです。このインボイスを発行する場合、これまでの区分記載請求書に求められていた記載事項の上に、さらに以下の記載事項が必須になりました。

・インボイス制度の登録番号
・消費税額等
・税抜価額または税込価額を税率ごとに区分した合計額および適用税率

ここでポイントなのは、インボイス制度の登録は任意であること、そしてインボイス制度に登録するためには、売上が1000万円を超えていない事業者も消費税の課税事業者に登録しなければならないことの2点です。

つまりインボイス制度に登録すると、これまで売上が低くて消費税が免税だった事業者も、消費税の申告・納税が原則必要になるのです。

消費税を「わざわざ」支払わなければならなくなるデメリットは非常に大きいので、「ではインボイス制度に入らなくても良いのでは」と思われる方もいるでしょう。

しかし、インボイス制度に登録しないことによるデメリットもあるのです。それは、今まで取引のあった取引先から取引を打ち切られてしまうかもしれないリスクです。


これまでは、区分請求書があれば仕入税額控除ができました。インボイス制度では、原則として適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件です
(ただし、インボイス発行事業者以外からの仕入についても経過措置があり、一定割合を仕入税額として控除できます)。

消費税10%分の仕入税額控除ができないとなると、取引金額が大きい事業者ほど、痛手となります。そのため、そうした大規模事業者と取引している下請けの事業者などは、インボイス登録していないだけで取引を断られてしまうリスクが出てくるのです。

こうした「インボイスに登録しないことによるデメリット」を鑑みて、インボイス制度に消極的に登録した事業者も多いでしょう。

インボイスの消費税はいくら納める?計算方法は?シミュレーションも

電卓を手に持ち、グラフや表が印刷された資料を確認するスーツ姿の人物。消費税の納税額を計算するイメージ

さて、インボイス制度に登録した事業者は、消費税を計算し、納税しなければなりません。しかし、インボイス制度に登録することで初めて消費税の課税事業者になった方の多くは、その計算方法がわからないことでしょう。そこで、消費税の計算方法を以下のパターンに分けてご紹介します。

2026年分の申告まで使える2割特例

インボイス登録をきっかけに課税事業者となり、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の個人事業主や法人は、2割特例方式が利用できます。事前の届出は要りません。確定申告書に特例を受ける旨を記載するだけで適用できます。

2割特例とはその名の通り、「消費税の納税額を全体の2割のみで良い」とする一時的な経過措置です。正確には、課税売上にかかる消費税額の80%を仕入税額控除とみなし、結果として売上税額の20%を納付税額とする制度です。

例えば、税込110円(消費税率10%)の商品を売った場合、本来の消費税額は10円ですが、その10円の2割で良いので、納税額は2円のみです。

計算式にすると、以下のようになります。
10円(売上にかかる消費税額)×20%=2円

取引ごとに仕入がある場合も、2割特例を使えば、それぞれの取引について販売額の消費税額から仕入税額控除を計算する必要はありません。(税率8%と10%の売上が混在する場合は、税率ごとに売上税額を計算し、その合計額をもとに2割特例の納付税額を算出します。 )

この2割特例は、2026年9月30日で終了します。

しかし正確には、原則として2026年9月30日までの日の属する課税期間に適用されます。個人事業主の課税期間は通常1月1日から12月31日までなので、一定の要件を満たす場合、2026年分の消費税申告までは2割特例を利用できます。
(課税期間を短縮している事業者などは、適用期間の判定が異なる場合があります)

2027年分・2028年分に適用される3割特例

2027年分と2028年分(令和9年分・令和10年分 )の消費税については、2割特例に代わって「3割特例」が利用できます。

3割特例は、消費税の納付額を3割にできる経過措置です。例えば、税込110円(消費税10%)の商品を販売した場合、本来の消費税額は10円ですが、3割特例を適用すると3割の3円が納税額となります。

計算式は、以下の通りです。
10円(売上にかかる消費税額)×30%=3円

2割特例と違い、3割特例の対象者は個人事業者だけです。ただし、「インボイス登録で課税事業者になった」「基準期間の課税売上高が1,000万円以下」といった基本的な条件は変わりません。仕入ごとに仕入税額控除を求める必要がなく、計算が楽な点も、2割特例と同じです。

3割特例は、業種によっては簡易課税の方が納税額を抑えられる場合があります。3割特例の詳しい説明や、簡易課税との比較については、以下の記事もご覧ください。

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原則課税

インボイス制度に登録した上で、2割特例/3割特例や簡易課税を適用しない場合、消費税の計算方法は「原則課税」になります。

原則課税では、売上にかかる消費税額から、仕入や経費にかかった控除対象の消費税額を差し引いて納付税額を計算します。

計算式にすると、以下のようになります。
売上にかかる消費税額-仕入にかかった消費税額=納税する消費税額

例えば、税込220円(消費税率10%)の商品を販売したときの消費税は、20円です。もし、この商品の仕入額として税込110円(消費税率10%)の商品を購入していたら、その商品の消費税10円を販売した商品の消費税20円から控除できます。これが「仕入税額控除」の仕組みです。この場合、最終的な消費税の納税額は10円となります。

原則課税は、2割特例のように簡単な計算にはなりません。それぞれの売上について、一つひとつ仕入税額控除の計算をした上で算出した消費税額を、最後に一気に足し合わせる必要があります。

簡易課税

簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、原則として適用を受ける課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者が選択できます。「簡易」と記されている通り、原則課税よりも簡単な消費税の計算方法になります。計算式にすると、以下の通りです。

納めるべき消費税額=受け取った消費税額-(受け取った消費税額×業種ごとのみなし仕入率)

みなし仕入率は、業種によって異なります。

事業区分 みなし仕入率
第1種事業(卸売業) 90%
第2種事業(小売業等)小売業、農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) 80%
第3種事業(製造業等)農林漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、建設業、製造業など 70%
第4種事業(その他)飲食店業など 60%
第5種事業(飲食店業を除くサービス業等)運輸・通信業、金融・保険業、サービス業 50%
第6種事業(不動産業) 40%

引用:国税庁公式サイト

例えば、飲食店業に該当しないサービス業のみなし仕入率は50%です。このサービス業のケースで、消費税額を計算してみましょう。売上が税込110円(消費税率10%)だとすれば、納めるべき消費税額は、以下のようになります。

受け取った消費税額(10円)-(受け取った消費税額(10円)×業種ごとのみなし仕入率(0.5))= 5円

売上にかかる消費税率がすべて10%の場合、1月から12月の売上をすべて合計した上でこの計算式で計算すれば消費税額が算出できるので、便利です。

なお令和8年度税制改正では、簡易課税への円滑な移行措置も定められました。2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間は、その課税期間の申告期限までに届出書を提出すれば簡易課税を適用できます。

4つの計算方法を同じ条件で比較すると?

ここまで紹介した消費税の計算方法について、「実際にいくら納税することになるのか」を同じ条件で比較してみましょう。

ここでは、売上にかかる消費税額が50万円の場合を例にします。

計算方法 納税額
2割特例 50万円×20% 10万円
3割特例 50万円×30% 15万円
簡易課税 50万円-(50万円×みなし仕入率) 第1種:5万円
第2種:10万円
第3種:15万円
第4種:20万円
第5種:25万円
第6種:30万円
原則課税 50万円-実際の仕入にかかった消費税額 仕入額によって異なる

※簡易計算の比較です。実際の申告では、税率区分/端数処理/地方消費税などにより金額が異なる場合があります。
※2割特例と3割特例は適用される年分が異なり、同じ課税期間で選択できる制度ではありません。

2割特例の場合、売上にかかる消費税額50万円の2割なので、納税額は10万円です。同様に、3割特例の場合は3割の15万円となります。

簡易課税の場合、例えば業種がみなし仕入率が50%の第5種に該当するなら、納税額は50万円-(50万円×50%)=25万円です。

原則課税の場合は、実際に仕入などで支払った消費税額を50万円から差し引いて納税額を算出します。適格請求書の保存要件などによって控除の可否が変わるため、注意が必要です。

インボイスの消費税計算はいつまでに、どうやって納税するの?

個人事業主の消費税・地方消費税の申告・納付期限は、原則として課税期間の翌年3月31日です。振替納税を利用するの振替日は年によって異なるため、国税庁が公表する最新の納期限・振替日を確認してください。

納税に先立ち、事業者は自身で消費税額を正確に計算し、その額を期限内に納付する必要があります。このため、まずは確定申告書を作成し、計算された消費税を期限までに納めましょう。

納税方法については、以下のような方法があります。

・振替納税
・現金納付
・クレジットカードでの納付
・ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)
・インターネットバンキング
・スマホアプリ納付(30万円以下の納税のみ)
・コンビニ納付(QRコード)(30万円以下の納税のみ)

期限を過ぎてしまった場合には、ペナルティが課され、より多くの金額を支払わなければならなくなるのでご注意ください。

消費税の納税については早めの対応を

白い用紙を両手で持って確認するスーツ姿の人物。消費税の申告や納税に向けて書類を確認するイメージ

以上、インボイスの消費税をどうやって計算するかなどについてご紹介しました。

悩んでいる方は早めに専門家に助けを求めるのも重要です。

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(編集:創業手帳編集部)