定年後に個人事業主として開業したい!失業手当の受給要件や受け取るまでの流れを解説
失業手当は失業した人が対象

定年を迎えたあと、これまでの経験を活かして個人事業主として開業したいと考える人は少なくありません。
その際に気になるのが、「失業手当を受け取りながら開業準備を進められるのか」という点でしょう。
失業手当は、働く意思と能力がありながら職に就けない、いわゆる失業状態の人を支える制度です。
そのため、受け取れるかどうかは開業の進め方やタイミングによって変わってきます。
今回は、定年後に個人事業主を目指す人に向けて、失業手当の受給要件や対象外となるケース、受け取るまでの流れを解説します。
開業を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
定年後に個人事業主になる場合は失業手当を受給できる?

定年後に個人事業主を目指す場合、失業手当は受け取れるのでしょうか。結論からいえば、開業の進め方や状況によって、受給できるかどうかが分かれます。
ここでは、2つのケースに分けて確認します。
開業予定があるだけなら受給できる可能性がある
まだ開業の予定があるだけで、実際には事業を始めていない段階であれば、失業手当を受給できる可能性があります。
失業手当は「求職活動をしていて、いつでも就職できる状態」の人を対象としているためです。
例えば、会社を退職したあとにハローワークで求職の申し込みを行い、就職先を探しながら開業も視野に入れている場合は、失業状態とみなされることがあります。
実際に、行政の資料でも求職活動中に創業の準備や検討を行う人は、支給を受けられる場合があると示されています。
ただし、就職する意思がまったくなく、開業の準備だけに専念している場合は対象外となるので注意してください。
受給を希望するなら、求職活動を行いながら準備を進める姿勢が大切です。
すでに事業を始めている場合は失業状態と認められないことがある
一方、すでに事業を始めている場合は、失業状態と認められず、失業手当を受け取れないことがあります。
開業届を提出し、収入が発生して継続的に事業を行っている状態は、「働いていない」とはいえず、失業状態に当てはまらないと判断されるためです。
特に注意したいのが、会社を退職してすぐに開業してしまうケースです。離職直後に事業を始めると、求職活動の実態がないとみなされ、受給できなくなる可能性があります。
開業の意思が固まっていても、まずは求職活動を行いながら準備を進め、事業の開始時期を慎重に見極めることが重要です。
65歳以上で退職した場合は高年齢求職者給付金の対象

退職時の年齢によって、受け取れる給付の種類は異なります。65歳以上で退職した場合は、失業手当(基本手当)ではなく「高年齢求職者給付金」が対象となります。
ここでは、2つの違いを確認していきましょう。
65歳未満は基本手当、65歳以上は高年齢求職者給付金が基本
雇用保険の失業給付は、退職時の年齢によって受け取る制度が分かれます。
65歳未満で退職した場合は「基本手当」、65歳以上で退職した場合は「高年齢求職者給付金」が基本です。
基本手当は、雇用保険の加入期間に応じて90日〜330日分が支給され、原則として4週間ごとの失業認定を受けながら、複数回に分けて受け取ります。
一方の高年齢求職者給付金は、支給される日数が30日分または50日分と少なめですが、一時金としてまとめて支給される点が特徴です。両者の主な違いは、以下のとおりです。
| 項目 | 基本手当(65歳未満) | 高年齢求職者給付金(65歳以上) |
|---|---|---|
| 支給日数 | 90〜330日分 | 30日分または50日分 |
| 受け取り方 | 4週間ごとに分割 | 一時金として一括 |
| 年金との同時受給 | できない(調整あり) | できる |
高年齢求職者給付金は一時金として支給される
高年齢求職者給付金の大きな特徴は、分割ではなく一時金として一括で支給される点です。失業認定を受けたあと、対象となる日数分の金額がまとめて振り込まれます。
支給される日数は、雇用保険の被保険者期間によって決まります。離職日以前の被保険者期間が1年以上であれば50日分、6か月以上1年未満であれば30日分が支給されます。
受給するには、以下の要件を満たすことが必要です。
-
- 離職日の時点で65歳以上であること
- 離職前1年間に被保険者期間が6か月以上あること
- 働く意思があり求職活動を行っていることなど
なお、失業手当と同様、退職してすぐに開業したりその準備に専念する場合は支給を受けられません。
求職活動を続けながら並行して開業の準備・検討をしている場合は受給できる可能性があります。
個人事業主として開業する場合の失業手当の受給要件

個人事業主としての開業を視野に入れながら失業手当を受け取るには、いくつかの要件を満たす必要があります。
ここでは、押さえておきたい5つの受給要件を順番に確認していきます。
失業状態である
最も基本となるのが、失業状態であることです。
ここでいう失業状態とは、単に職に就いていないことではなく、働く意思と能力がありながら、求職活動をしても就職できない状態を指します。
そのため、就職する意思がまったくない場合や、すでに事業を始めて収入を得ている場合は、失業状態とは認められません。
開業の準備を進めていても、求職活動を行わずに事業の立ち上げだけに専念していると、対象外となる可能性があります。
定年後に個人事業主を目指す場合は、すぐに開業へ踏み切るのではなく、求職活動を行いながら準備を進める期間を設けることがポイントです。
失業状態と認められて初めて、受給の対象になるという点を理解しておきましょう。
雇用保険に加入していた期間が一定期間以上ある
失業手当を受け取るには、一定以上の期間、雇用保険に加入していたことも必要です。
原則として、離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あることが求められます。
ただし、倒産や解雇など会社側の事情で離職した人や、契約更新がされなかった人などについては、要件が緩和されます。
これらに該当する場合は、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば対象です。
定年退職の場合も、長年勤めていれば加入期間の要件は満たしやすいといえます。まずは、自分の雇用保険の加入期間がどれくらいあるのかを確認しておきましょう。
求職活動をしていた実績がある
失業手当は再就職を支援するための制度であるため、求職活動を行っている実績も欠かせません。
実際に就職先を探していることが、失業状態であることの証明にもなります。
具体的には、ハローワークでの求職の申し込みや職業相談、求人への応募などが求職活動として認められます。失業認定を受ける際には、こうした活動の実績の申告が必要です。
開業を考えている場合でも、受給を希望する間は求職活動を継続することが大切です。活動を怠ると、失業手当を受け取れなくなる可能性があります。
就労可能な健康状態である
失業手当は、すぐに働ける状態にある人を対象としています。そのため、病気やけがなどですぐに就職できない場合は、受給の対象外となります。
働く能力があることが、受給の前提となるためです。
ただし、病気やけがで一時的に働けない場合でも、支援が受けられないわけではありません。
一定期間働けない状態が続くときは、失業手当の受給期間を延長できる制度が用意されています。
体調が回復し、働ける状態に戻ってから受給を再開することも可能です。健康上の不安がある場合は、早めにハローワークへ相談しておくと安心でしょう。
受給期間内に廃業している
これは、すでに個人事業主として開業した人が、再び失業手当を受け取りたい場合に関わる要件です。
失業手当には受給できる期間が定められており、その受給期間内に廃業していることが条件となります。
通常、失業手当の受給期間は離職日の翌日から1年間です。
しかし、事業を始めた方については特例があり、事業を行っていた期間(最大3年)を加算して、受給期間を延長できます。
この特例を利用するには、事業開始の翌日から2か月以内の申請が必要です。
一度開業したものの事業がうまくいかず廃業した場合でも、特例を申請しておけば、残っている失業手当を受け取れる可能性があります。
65歳以上で退職する場合は「高年齢求職者給付金」の対象
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の人を対象とした、失業保険(雇用保険の基本手当)に相当する給付金です。
通常の基本手当は65歳未満が対象となるため、65歳以上で退職した人のために設けられた制度といえます。
退職後にハローワークで申請を行い、審査が完了すると給付金を受け取れます。基本手当のように複数回に分けて支給されるのではなく、「一時金」としてまとめて一括で支給される点が大きな特徴です。
受給するには、離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6か月以上あることが必要です。
あわせて、就職する意思と能力がありながら、求職活動を行っても職に就けない失業の状態にあることも求められます。
失業手当の受給対象とならないケース

ここまで受給要件を見てきましたが、反対に、どのような場合に失業手当を受け取れないのでしょうか。要件を満たしていないと、受給の対象から外れてしまいます。
ここでは、対象とならない代表的な3つのケースを整理します。
あらかじめ把握しておくことで、受け取れるはずの手当を逃してしまう事態を防ぎ、開業の計画も立てやすくなります。
事業を本格的に開始している
事業を本格的に開始し、継続的に働いている状態にある場合は、原則として失業状態とは認められず、失業手当の対象外となります。失業手当は再就職を支援する制度であり、就職する意思と能力があることが受給の前提となるためです。
なお、開業届を提出しただけで直ちに失業手当を受給できなくなるわけではありません。開業届を提出していても、事業が本格的に始まっておらず、再就職する意思があり、実際に求職活動を行っている場合は、受給が認められるケースもあります。
一方で、事業の準備や運営に専念し、就職する意思がないと判断される場合は、失業状態とは認められず、受給の対象外となります。受給できるかどうかは事業の実態や求職状況などを踏まえて総合的に判断されるため、不安がある場合は事前にハローワークへ相談しておくと安心です。
病気やけがなどですぐに働けない
病気やけがによってすぐに働けない状態にある場合も、失業手当の対象外です。働ける状態にあることが、受給の前提となっているためです。
このようなときは、受給期間を延長する制度を利用し、回復後に受給を再開する方法があります。早めにハローワークへ相談しておきましょう。
求職活動の実績が不足している
求職活動の実績が足りていない場合も、失業の認定を受けられず、手当を受け取れません。失業認定では、一定の求職活動を行った実績を申告する必要があるためです。
求人への応募や職業相談など、認められる活動を計画的に行い、実績を積んでおくことが大切です。
失業手当を受け取ると年金はどうなる?

定年後の生活設計では、失業手当と年金の関係も気になるところでしょう。
実は、年齢によって、年金と同時に受け取れるかどうかが異なります。ここでは、65歳未満と65歳以上に分けて確認します。
65歳未満は老齢厚生年金との併給調整に注意する
65歳未満で退職し、基本手当を受け取る場合は注意が必要です。
基本手当を受給している間は、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止となり、両方を同時に受け取ることはできません。これを併給調整といいます。
そのため、年金と基本手当のどちらを優先するかを考えなければなりません。一般的には支給額の大きいほうを選ぶことになりますが、人によって状況は異なります。
どちらが有利になるかは、年金額や基本手当の見込み額によって変わります。判断に迷う場合は、年金事務所やハローワークに確認してください。
65歳以上は高年齢求職者給付金との違いを確認する
一方、65歳以上で退職し、高年齢求職者給付金を受け取る場合は扱いが異なります。
高年齢求職者給付金は、老齢年金と調整されることなく、同時に全額を受け取れるのが大きな特徴です。
つまり、年金を満額受け取りながら、給付金も受け取れることになります。65歳未満の基本手当とは異なり、年金が支給停止される心配はありません。
定年の時期によって、受け取れる給付や年金との関係が変わります。退職の時期を選べる場合は、退職する年齢による違いも踏まえて検討してください。
失業手当を受け取るまでの流れ

失業手当は、申請すればすぐに振り込まれるわけではありません。受給までには、いくつかの手続きと期間が必要です。
ここでは、申請から受給までの流れを5つのステップに分けて紹介します。
1.申請に必要な書類を準備する
まずは、申請に必要な書類をそろえます。中心となるのが、退職した会社から受け取る離職票です。
離職票は退職後に郵送されることが多いため、手元に届いたかどうかを確認しておきましょう。
このほかに、本人確認書類やマイナンバーが確認できる書類、本人名義の預金通帳またはキャッシュカード、証明写真などが必要です。
手続きの際に印鑑を求められる場合もあります。
必要な書類は状況によって異なることもあるため、事前に管轄のハローワークで確認しておくと安心です。
書類に不備があると手続きが遅れてしまうため、早めにそろえておくことが大切です。
2.ハローワークに申請する
書類がそろったら、住所地を管轄するハローワークで申請を行います。窓口では求職の申し込みを行い、あわせて離職票などを提出して、受給資格の確認を受けます。
このとき、開業を視野に入れている場合でも、まずは就職を希望する姿勢で求職の申し込みを行いましょう。希望する職種や条件などを申告し、求職者として登録する流れです。
受給資格があると認められると、手続きはここから本格的に進んでいきます。
なお、申請後すぐに手当が支給されるわけではなく、このあとに待期期間が設けられている点を覚えておきましょう。
3.7日間の待期期間を過ごす
申請後は、まず7日間の待期期間があります。
これは、本当に失業状態にあるかどうかを確認するための期間で、すべての受給者に共通して設けられているものです。この7日間は、失業手当が支給されません。
特に注意したいのが、待期期間中に事業を本格的に開始しないことです。
この期間に開業届を提出したり、事業を開始したりした場合でも、それだけで直ちに受給できなくなるわけではありません。しかし、事業に専念していると判断されたり、就職する意思がないと判断されたりすると、失業状態とは認められず、手当を受け取れなくなる可能性があります。
なお、自己都合で退職した場合は、待期期間のあとにさらに給付制限期間が設けられます。この間も手当は支給されないため、いつから受給が始まるのかをあらかじめ把握しておきましょう。
4.雇用保険受給者説明会に参加する
待期期間が終わると、ハローワークが指定する雇用保険受給者の説明会に参加します。
この説明会では、失業手当の受給に関する重要な説明が行われ、今後の手続きの流れを確認できます。
説明会に出席すると、受給資格者証などの書類が交付され、初回の失業認定日が伝えられます。受給資格者証は今後の手続きで必要となるため、大切に保管しておきましょう。
この説明会への参加も、失業認定を受けるための要件の一つとなっています。指定された日時に参加できるよう、スケジュールを調整しておくことが大切です。
5.失業認定を受け受給する
最後に、失業認定を受けて手当を受給します。
受給資格が決まってからおよそ4週間後に初回の失業認定日があり、その後も原則として4週間ごとに認定を受ける流れが続きます。
失業認定を受けるには、その期間に求職活動を行った実績が必要です。
認定日にハローワークで活動状況を申告し、失業状態にあると認められると、手当が指定の口座に振り込まれます。
このように、失業手当は認定を重ねながら継続して受け取る仕組みです。受給を続けるためにも、求職活動を計画的に行いましょう。
まとめ・進め方次第で失業手当や再就職手当を受け取れる可能性あり
定年後に個人事業主として開業する場合でも、進め方次第で失業手当や再就職手当を受け取れる可能性があります。
まずは求職活動を行いながら準備を進め、失業状態と認められることが出発点です。
受け取れる給付は、退職時の年齢によっても変わります。65歳未満は基本手当、65歳以上は高年齢求職者給付金が対象となり、年金との関係も異なる点を押さえておきましょう。
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(編集:創業手帳編集部)
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