【2026年12月施行】公益通報者保護法改正で中小企業が対応すべきこと
300人以下の中小企業も改正内容の確認と体制見直しが必要

今回の公益通報者保護法改正では、企業の体制整備が強化されるほか、フリーランスが対象に加わるなど、企業に求められる対応が広がります。
従業員301人以上の企業だけでなく、300人以下の中小企業にも関係する改正が含まれているため、企業規模に関わらず、自社の制度や社内規程を確認しておくことが重要です。
そこで今回は、公益通報者保護法の概要について解説すると共に、要件や改正内容、企業が準備すべき内容について解説していきます。
自社にどのような影響があるのか知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
公益通報者保護法とは?制度の概要をチェック
公益通報者保護法とは、勤務先の不正や法令違反の内部告発に対し、企業が解雇や降格といった不利益な取り扱いから守るための法律です。
企業不祥事が発生した際、内部の従業員が早期に問題を発見し、会社に知らせることで、被害の拡大を防げる可能性があります。
一方で、通報を理由に人事上の不利益を受ける可能性があると、問題を把握していても通報をためらってしまいます。
こうした状況を防ぎ、安心して通報できる環境を整えることを目的とした法律です。
公益通報における4つの要件
内部告発をして保護を受けるには、条件を満たしている必要があります。
その内容は以下の通りです。
-
- 通報者が「公益通報者」に該当すること
- 通報の目的が正当であること
- 「通報対象事実」に該当すること
- 通報先ごとの保護要件を満たしていること
通報をする目的が、不正の利益を得るものであったり、他人に損害を加えるといったケースでは、保護の要件に当てはまりません。
また、通報対象事実とは、横領や詐欺といった刑法違反、食品への異物混入といった食品衛生法違反などの対象法律に違反する犯罪行為や刑罰、科料につながる事実が生じている場合や生じようとしていることが必要です。
公益通報の3つの通報先と保護要件
公益通報の通報先は「事業者内部」「権限を有する行政機関等」「その他の外部通報先」の3つに分けられます。
事業内部への通報は1号通報、行政機関等への通報は2号通報、報道機関や消費者団体などへの通報は3号通報と呼ばれています。
ただし、どの通報先でも同じ条件で保護されるわけではありません。
1号通報においては、不正があると思料すること、2号通報においては通報対象事実が生じたと信じるに足りる相当の理由が求められます。
3号通報では、2号通報の要件に加えて内部通報によって不利益な取り扱いを受ける恐れや生命や身体への危害や財産に多額の損害を受ける恐れがあると判断できる理由があることが要件です。
公益通報と内部通報制度の違い
内部通報とは、従業員が組織内の窓口や上長に問題や不正に関する報告をすることで、組織内で受け止めて是正につなげる仕組みです。
社内ルール体制となり、企業が独自に設置する窓口となります。
一方、公益通報は内部通報制度のうち、公益通報者保護法が定める条件を満たす通報をした労働者が企業から不当な取り扱いを受けないよう保護することをいいます。
通報先も企業内部だけではなく、報道機関といった外部が含まれます。
【2026年12月施行】公益通報者保護法の4つの改正点

今回の改正によって、いくつかの変更点があります。
フリーランスまで公益通報者の範囲を拡大
今回の改正では、事業者と業務委託関係にある一定のフリーランスが保護対象に追加されます。
また、業務委託関係が終了してから1年以内のフリーランスも対象です。
これにより、企業が業務を委託しているフリーランスから法令違反について通報を受けたケースでも、法律上の対応が必要となる可能性があります。
従来の「従業員向けの内部通報制度」という考え方だけでは不十分になるため、通報窓口の案内や社内規程、対応フローについても見直しておく必要があります。
通報を妨げる行為・通報者探索の禁止
事業者が正当な理由なく、労働者などに対して公益通報をしないよう求めたり、通報をした場合に不利益な取扱いをすると告げたりするなど、公益通報を妨げる行為が禁止されます。
また、正当な理由なく、通報者の特定を目的に、通報者だと明らかにするよう要求するなどの「通報者探索」も禁止されます。
企業としては、通報を受けた後に関係者が不用意に通報者を探したり、情報を社内で広げたりしないよう、情報管理のルールの明確化が重要です。
不利益な取り扱いの罰則・救済の強化
公益通報を理由とする解雇や懲戒などについても、抑止・救済が強化される内容です。
通報を理由として解雇や懲戒を行った場合、個人だけでなく法人についても刑事罰の対象となる可能性があります。
また、通報後1年以内に行われた解雇や懲戒については、公益通報を理由とするものであると推定する仕組みが設けられます。
そのため、企業が通報者に対して人事処分などを行う場合には、公益通報を理由としたものではないことを説明できるよう、判断過程や根拠の適切な記録も重要です。
公益通報対応体制の周知
改正法では、公益通報に対応するための社内体制について、従業員などに周知することが義務として明確化されました。
具体的には、通報窓口の連絡先や利用方法、通報を理由とした不利益な取扱いを防ぐ仕組み、通報者を特定しようとする行為を防ぐ対策などを知らせる必要があります。
また、周知する対象は従業員や役員だけではありません。業務委託先のフリーランスや、契約終了から1年以内のフリーランスなども含まれます。
公益通報者保護法改正による影響は従業員数で異なる
改正への対応では、企業の「常時使用する労働者数」によって、内部公益通報対応体制の整備義務などが異なります。
ただし、300人以下の企業であっても公益通報者保護法そのものが対象外になるわけではありません。
企業規模にかかわらず、通報妨害や通報者探索などの禁止事項には注意が必要です。
従業員300人超の企業は体制整備と従事者指定が義務
常時使用する労働者が301人以上の事業者には、内部公益通報に適切に対応するための体制整備などが義務付けられています。
公益通報対応業務従事者を指定し、通報受付、調査、是正措置などを適切に行える仕組みを整備する必要があります。
さらに、従事者指定義務に違反した際の行政措置や罰則も設けられるため、担当者を形式的に決めるだけではなく、実際に役割を果たせる体制になっているか確認することが重要です。
従業員300人以下の中小企業は努力義務
常時使用する労働者が300人以下の事業者について、体制の整備などは努力義務とされています。
そのため、301人以上の企業とまったく同じ対応が法律上義務付けられているわけではありません。
しかし、窓口や相談体制を整えておくことは、社内の問題を早期に発見し、重大な不祥事や外部への通報につながるリスクを抑える上でも有効です。
企業規模が小さい場合でも、担当者を明確にする、通報方法を周知する、通報者の秘密を守るといった基本的な仕組みから整備すると良いでしょう。
通報妨害・通報者探索などの禁止は企業規模を問わない
300人以下の中小企業であっても、保護法の対象から外れるわけではありません。
体制の整備については努力義務ですが、通報を妨げるような行為や通報者の特定を目的とした行為など、改正法で禁止される行為については注意が必要です。
特に、経営者や上司が「会社に通報するな」「外部には絶対に言うな」などと圧力をかけるのは、改正法の趣旨に反する恐れがあります。
中小企業でも、経営者を含めて制度の内容を周知し、通報者を守る意識を社内に浸透させることが重要です。
2026年12月の施行までに企業が準備すべきこと

改正法の施行に備え、企業は内部通報制度、担当者、社内規程、調査・是正の手順などの早めの確認が必要です。
特に301人以上の企業は法定義務への対応を優先し、300人以下の企業も自社の規模やリスクに応じて制度整備を進めることが望まれます。
ここからは、改正法の施行までに企業が準備をすべきことを解説していきます。
内部通報窓口の設置・運用体制を見直す
まず確認したいのが、内部通報窓口が実際に利用しやすい状態になっているかどうかです。
窓口の担当者、受付方法、受付時間、匿名通報への対応、社外窓口の利用可否などを確認し、従業員が「どこに相談すればよいのかわからない」という状態にならないようにします。
また、経営陣や通報対象者から独立して調査できる体制になっているかも重要です。
通報内容によっては、社外の弁護士などを活用する方法も検討できます。
制度を設置するだけでなく、実際に通報があった場合に迅速かつ適切に対応できるかを確認してください。
公益通報対応業務従事者を指定し役割を確認する
公益通報を受け付けたり、調査や是正措置に関わったりする担当者について、誰がどの業務を担当するのかを明確にします。
特に通報者を特定できる情報を取り扱う人には、守秘義務があることを十分に理解してもらう必要があります。
担当者を指定した後も、担当者が不在の場合の代替担当や、経営陣が通報対象となった場合の対応方法などを決めておくと安心です。
改正法では従事者指定義務への対応が強化されるため、指定状況や担当者の役割を文書で確認できるようにしておいてください。
公益通報者保護に関する社内規程を改定する
社内規程には、通報窓口、通報方法、調査の進め方、是正措置、通報者への不利益な取扱いの禁止、情報管理などを明確に定めておくことが重要です。
今回の改正ではフリーランスも保護対象に加わるため、従来の規程が「従業員からの通報」だけを想定していないか確認する必要があります。
また、通報者を特定するための行為を禁止することや、通報を理由とした不利益な取扱いを防止する仕組みについても、規程や運用ルールに反映させると良いでしょう。
通報受付から調査・是正までのフローを整備する
通報を受け付けた後、誰が内容を確認し、どのように調査を行い、問題が確認された場合に誰が是正措置を決定するのか、具体的な流れをあらかじめ決めておきます。
特に、通報対象者が経営者や管理職などの場合、通常の指揮命令系統では適切に調査できない可能性があります。
そのようなケースを想定して、別の担当者や社外窓口に引き継ぐルールを設けておくことも重要です。
また、調査結果や是正措置について、通報者へどのように通知するかも事前に決めておくと、対応のばらつきを防げます。
通報者への不利益な取扱いと情報漏えいを防止する
公益通報を行ったことを理由として、解雇、降格、減給、配置転換、懲戒などの不利益な取扱いが行われないよう、社内ルールを整備します。
同時に、通報者を特定できる情報が必要以上に共有されないようにすることも重要です。
通報内容を知る必要のない従業員にまで情報を共有すると、通報者の特定につながる可能性があります。
アクセス権限を限定する、記録の保管場所を分けるなど、情報漏えいを防ぐ具体的な仕組みを検討してください。
従業員・役員・退職者・フリーランスへ制度を周知する
制度を整備しても、利用できる人が制度の存在や利用方法を知らなければ十分な効果は期待できません。
内部通報窓口の連絡先、匿名での相談が可能か、どのような内容を相談できるのかなどを、従業員や役員などにわかりやすく周知することが重要です。
改正後は一定のフリーランスも公益通報者の保護対象となるため、業務委託先やフリーランスに対しても、必要に応じて通報窓口や制度について案内できるよう準備しておくのがポイントです。
公益通報者保護法の2026年改正についてよくある質問
2026年改正では、企業規模によって体制整備義務が異なる一方、通報者保護の強化などは幅広い事業者に関係します。
最後に、公益通報者保護法に関するよくある疑問を紹介していきます。不明な点を解消するために役立ててください。
従業員300人以下でも内部通報窓口の設置が必要ですか?
300人以下の事業者は、内部公益通報対応体制の整備などは努力義務とされています。
そのため、301人以上の企業と同じ形での窓口設置が一律に義務付けられているわけではありません。
ただし、法の対象外ではなく、通報妨害や通報者探索などの禁止事項には対応する必要があります。
リスク管理の観点からも、規模に応じた通報窓口の整備を検討することが重要です。
改正後はどのような罰則がありますか?
改正後は、301人以上の事業者が公益通報対応業務従事者の指定義務に違反した場合について、行政上の措置や罰則が設けられます。
また、公益通報を理由として解雇や懲戒を行った場合にも、刑事罰の対象となる可能性があります。
企業は、担当者の指定や通報者保護のルールを明確にし、適切な運用を行うことが重要です。
フリーランスからの通報にも対応する必要がありますか?
2026年12月1日の改正法施行後は、事業者と業務委託関係にある一定のフリーランスや、業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスが公益通報者の保護対象に加わります。
そのため、企業は従業員だけでなく、対象となるフリーランスからの通報についても適切に対応できるよう、通報窓口や対応ルールを確認しておく必要があります。
まとめ・2026年12月施行に向けて内部通報制度と社内規程を早めに見直そう
2026年12月1日の公益通報者保護法改正では、事業者の体制整備、フリーランスの保護、通報妨害・通報者探索の禁止、不利益な取扱いに対する抑止・救済などが強化されます。
301人以上の企業は法定義務への対応が必要ですが、300人以下の中小企業も無関係ではありません。
施行直前になって慌てないよう、内部通報窓口、担当者、社内規程、調査・是正フロー、情報管理、制度周知の状況を早めに確認し、自社の規模や実情に合った体制を整えておくことが重要です。
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(編集:創業手帳編集部)
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