値上げ・価格改定で失敗しないために。赤字になる前に見るべき数字と価格の決め方【前編】

値上げでお客さまを失わないために。小さな会社が値上げ・価格改定前に確認すべきこと

専門家に聞いてみた。値上げ・価格改定で失敗しないために 赤字になる前に見るべき数字と価格の決め方 取材協力:経営コンサルタント 唐澤智哉。前編。

原材料費や人件費の上昇が続くなか、「値上げをしたほうがよいのは分かっているが、踏み切れない」「そもそも、いま値上げすべきタイミングなのかどうか判断できない」——そう感じている創業期・小規模事業者の経営者は少なくありません。

「売上は伸びているのに、なぜか利益が残らない」「値上げでお客さまが離れるのが怖い」といった悩みの裏には、感覚だけで価格を決めてしまい、自社の「本当の利益」を数字で把握できていないという共通の課題があります。

値上げを検討すべきサインの見極め方から、価格改定額の考え方、そして値上げの土台となる「自社の価値」の言語化まで——価格改定に踏み切る前に整理しておくべきことを、経営コンサルタントとして数多くの中小企業の価格改定を支援してきた唐澤経営コンサルティング事務所の唐澤智哉氏に伺いました。

唐澤智哉氏のプロフィール写真
唐澤 智哉(からさわ ともや)

経営コンサルタント。早稲田大学法学部卒業後、金融系シンクタンク、コンサルティングファームで、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。2012年に大手IT企業へ移り、中堅・中小企業向けコンサルティング事業の立ち上げから事業化までを担い、業務改革・ITを起点に、経営コンサルティングへと支援領域を広げる。2022年、会社員として勤務しながら唐澤経営コンサルティング事務所を開業し、2024年に独立。現在は、経営戦略・経営計画、組織・人材育成、業務改革、管理会計、DXを横断し、経営者・幹部・現場との対話を通じて、計画づくりから実行・定着まで支援している。これまでに50社を超える中堅・中小企業へのコンサルティング、300社を超える経営相談に対応。限られた経営資源を踏まえ、各社の現場で実行・継続できる「できること論」を重視している。中小企業診断士、ITストラテジスト。

値上げはいつ検討すべき?まず確認したい「限界利益」

電卓とグラフ資料を使って価格改定前の収支を確認する人の手元

ー原材料費・人件費などの上昇を受け、価格改定を検討すべきなのは、どのような状態になったときでしょうか。創業期・小規模事業者が最初に確認すべき数字を、優先順位とともに教えてください。

唐澤:まず確認したいのは、「商品やサービスが1件売れたとき、いくら残るか」です。売上から、材料費、外注費、送料、決済手数料など、売上に応じて増える費用を差し引いた金額を、会計では「限界利益」といいます。差し引くほうの費用が「変動費」です。1,000円の商品で変動費が600円なら、限界利益は400円。割合でいえば40パーセントで、これを「限界利益率」と呼びます。

たとえ売上が伸びていても、この400円が以前より減っていれば、売上の伸びほど利益は増えません。受注は増えたのに現場は回らなくなり、体力だけが削られる。それにもかかわらず、利益は思うように残らない。まさに貧乏暇なしの状態です。そして、この状態が続くと、そのうち何のために働いているのか分からなくなります。値上げの判断が遅れていちばん失うものは、お金だけではないのです。

ご相談を受けるとき、私が最初に伺うのも「御社の商品は、1つ売れたらいくら残りますか?」です。即答できる経営者の方は、実はそう多くありません。知らないのではなく、見える形にしていないだけです。決算書に載っているのは売上総利益、いわゆる粗利で、一般的な決算書に限界利益はそのまま載っていません。売上から変動費を引いて、自分で計算する必要があります。

ー限界利益が分かったあと、具体的にどのように「危険な状態」を判断すればよいのでしょうか。

唐澤:見る数字は、まず2つで足ります。限界利益と固定費です。固定費は、法人ならご自身の役員報酬も含めて計算します。個人事業の場合、生活費は経費になりませんが、値段を決めるときは別枠で足してください。なお、法人税や所得税、借入元金の返済も、資金繰りの上では確実に出ていきます。ここは「手元に残しておかなければいけない金額」として、損益分岐点売上高とは別に確認します。

その損益分岐点売上高は、「固定費÷限界利益率」で出ます。固定費が月30万円、限界利益率が40パーセントなら、30万円÷0.4で75万円。毎月75万円を売って、ようやく収支トントンということです。

そのうえで、いまの人数と設備で、月に何件、何時間まで仕事をこなせるかを考えてみてください。現在の価格では、限界まで働いても月60万円しか売れないのであれば、仕事量を増やすだけでは赤字を埋められません。打つ手は値上げだけではありません。費用を下げる、仕事の段取りを見直す、時間当たりの限界利益が大きい仕事へ組み替えるといった選択肢もあります。

ーでは、こうした判断をするために、経営者は現状の採算をどのように確認していけばよいのでしょうか。

唐澤:いちばん大事なのは「前と今を比べる」ことです。現在の限界利益率だけを見ても、採算がなぜ悪化したのかは分かりません。決算書や試算表で会社全体の変化を確認したうえで、主力商品3つと主要取引先3社について、案件ごとの売上から、その仕事に直接かかった仕入・外注費・送料などを引き、1件当たりいくら残るかを比べます。家賃などの固定費は、商品別・取引先別に無理に割り振らなくて構いません。これだけでも、どこで採算が悪化しているかが見えてきます。

このとき、あわせて確かめてほしいのが、計算に使っている原価が、現在の実態を映しているかどうかです。価格を見直していても、その基準となる原価が古ければ、改定額は足りません。たとえば、仕入価格が上がる前の数字で見積を作っている、為替が動いた後も輸入品の原価を更新していない、といった状態です。「原価に○パーセント乗せる」と正しく計算しても、出発点の原価が低ければ、必要な価格には届きません。値上げ幅を決める前に、その原価がいつの数字で、現在の仕入価格や費用を反映しているかを確認してください。

ー「売上は伸びているのに利益が残らない」事業者に共通する見落としがあれば教えてください。また、目安となる数値もあれば伺いたいです。

唐澤:見落としは、2つあります。

1つは、売上を増やそうとすると限界利益の薄い仕事が混ざることです。売上は、ただ増やすものではありません。増やす前に、選ぶものです。選ぶ基準は3つあります。1件当たりに残る金額。それをかかった時間で割った金額。そして、その仕事が次につながるかどうかです。

もう1つは、値段に入っていない手間です。ここは内容によって変わります。自分の時間が商品になる仕事では、案件ごとの採算に、経営者ご自身が動いた時間が反映されていないことがあります。会計上の費用とは別に、1件に何時間かかったかも確認してください。自分の時間はタダではありません。

商品を扱う場合も、段取り替え、少量の注文、特急、返品、配送などの手間があります。1個当たりの材料費は合っていても、受注1件当たりで見ると合っていないことがあります。どちらにしても、赤字の案件は、現場に渡る前の見積段階ですでに生まれていることが少なくありません。

目安となる数値については、限界利益率の水準が事業によってまったく違うため、「何パーセントを下回ったら危ない」という共通の線は申し上げられません。よその平均を見ても、自社の値段は決まらないからです。自社の中で線を引いてください。

私が支援現場で使う一つの目安は、1件当たりの限界利益や限界利益率が計画より1割以上下がった状態が、2〜3か月続きそうなときです。あるいは、会社全体の限界利益で固定費を賄えない月が続きそうなとき。赤字になってから動くのではなく、損益分岐点に加え、将来の賃上げや設備更新、法人税・所得税、借入元金の返済に必要な資金まで見込み、「足りない」と分かった段階で動きます。

価格改定額はどう決める?価格転嫁と戦略的な値上げの違い

「PRICE」の文字が書かれた積み木と、右肩上がりの矢印。値上げをイメージした画像

ー「いくら値上げするか」は、どのような考え方で決めるべきでしょうか。原材料費や人件費の上昇分だけでなく、利益や提供価値も踏まえて価格を決める際の、基本的な考え方を教えてください。

唐澤:「いくら上げるか」を考える前に、私は価格改定を大きく2つに分けて考えます。ここを混ぜると、価格を上げる根拠が分かりにくくなるからです。

1つは、価格転嫁です。材料費、人件費、光熱費などの上昇分を価格に反映し、これまでと同じ水準の利益を守る。守りの改定です。これは、値上げによって今まで以上に儲けるという話ではありません。元の利益水準に戻し、これまでどおり事業を続けるための最低限の改定です。

もう1つは、戦略的な価格改定です。提供する価値やサービスの範囲、プラン、対応の速さなどを見直し、これから必要になる利益まで含めて価格を設計し直す。攻めの改定です。取引先との交渉では、価格転嫁は費用上昇を根拠として説明し、戦略的な価格改定は、提供価値やサービス内容の見直しを根拠として説明します。同時に行う場合でも、2つの根拠を混ぜずに伝えることが大切です。

価格転嫁額の計算方法

ー価格転嫁の金額は、具体的にどのように計算すればよいのでしょうか。

唐澤:価格転嫁の額は、販売数量や商品構成が変わらないと仮定したときに、費用が上がる前と同じ水準の営業利益を確保するには、いくら必要かで考えます。

分かりやすいのは、材料費のように、売れた分だけ増える費用が上がった場合です。1,000円の商品で変動費が600円なら、1件当たりの限界利益は400円です。変動費が700円に上がると、費用の増加は100円ですが、限界利益は400円から300円へ、25パーセント減っています。元と同じ400円を残すには、売価を1,100円にします。「費用は100円しか上がっていない」と見るか、「1件当たりの稼ぐ力が25パーセント落ちた」と見るか。ここで判断が変わります。

ただし、1,100円への改定で戻るのは、1件当たりの限界利益の「金額」です。限界利益率は、元の40パーセントではなく約36.4パーセントになります。この違いは、後ほど説明します。

人件費や光熱費など、毎月ほぼ一定でかかる費用が上がった場合は、年間の増加額を年間の販売見込数で割り、1件当たりに直して価格に乗せます。商品が複数ある場合は、売上構成や作業時間、販売数量などの合理的な基準で、費用の増加額を商品ごとに配分します。

戦略的な価格改定額の計算方法

ー戦略的な価格改定の場合は、どのように金額を計算すればよいのでしょうか。

唐澤:戦略的な価格改定は、事業を続けるために必要な利益から逆算します。商品が1つ、あるいは平均単価で考えられる事業なら、1年間の変動費と固定費に必要利益を足し、1年間の販売見込数で割ると、最低限必要な平均単価が出ます。

商品が複数ある場合は、固定費と必要利益を、売上構成や作業時間、販売数量などの合理的な基準で商品ごとに配分してから計算します。各商品に固定費と必要利益をすべて乗せると、二重、三重に計算することになるので注意してください。

ここで区別したいのが、会計上の「利益」と、事業を続けるために手元に必要な「資金」です。個人事業の生活費、法人税・所得税、借入元金の返済、設備投資などは、すべてが会計上の費用になるわけではありませんが、資金繰りの上では必要です。将来の賃上げや採用・育成にかかる費用は、今後増える固定費として計画に入れます。

最低限必要な平均単価を計算した後、税金や借入返済、設備投資などを行っても手元資金が不足しないかを、資金繰りとして別に確認してください。不足するのであれば、その分を見込んで必要利益を設定し直します。

創業期ほど、利益を「ぜいたく」ではなく「次の一手を打つためのお金」と捉えていただきたいです。そのうえで、5パーセント、10パーセント、15パーセントと複数の改定案を作り、売れる数が少し減った場合に、売上と利益がどう変わるかを試算します。費用から計算するのは、事業を続けるための最低価格です。お客様に提示する最終的な価格は、費用だけでなく、提供する価値との合意によって決まります。

一律値上げ以外の選択肢|プラン・取引条件を見直す方法

ー「一律値上げ」ではなく、商品・サービスの内容、プラン、提供範囲を見直す方法が有効なケースがあれば、具体例を交えて伺いたいです。

唐澤:すべての商品や取引先を一律に上げる必要はありません。ただし、ここは事業の形によってやり方が変わります。

会社同士の取引や受託型のサービスで、取引先が数十社までなら、商品や取引先ごとに採算を見ていけます。材料費の影響が大きい商品だけを改定する。特急対応、少量注文、休日対応、追加修正などをオプション料金にする。単価の安さだけでなく、かかっている手間、取引量、支払条件、継続性なども含めて採算を確認し、見直す商品や取引先の優先順位を決めます。

商品点数が多い場合は、すべての商品について精密に採算を計算し、個別に改定するのは現実的でないことがあります。価格表示や販売システムなど、変更に伴う作業も増えるからです。

この場合は、売上構成比の高い主力商品から着手します。すべてを一律に何パーセント上げるのではなく、980円を1,080円にするように、お客様が選びやすい価格の節目で組み直す。サイズや量、セットの組み方を見直すことも、価格改定の一つです。全品を一律に改定する場合は、なぜ改定するのかを販売する場所やウェブサイトで説明してください。理由が分からないまま価格だけが変わると、お客様の不信感につながりやすくなります。

そして、見落とされやすい方法がもう1つあります。最終のお客様向けの価格を動かさず、販売に関わる取り分の条件を見直す方法です。商品がお客様に届くまでに複数の相手を介する場合、納入価格の割合や販売手数料が決められています。店頭価格に対して納入価格が何パーセントになるかを示す割合が、一般に掛け率と呼ばれます。

最終価格を上げれば、お客様の負担が増え、販売数量に影響する可能性があります。一方、相手との協議によって自社の受取割合を1ポイント改善できれば、最終価格を据え置いたまま、自社の受取額を増やせます。最終価格の上昇を理由とするお客様離れを避けながら、利益を改善できる可能性があります。小さな割合の変更でも、取引全体にかかるため、利益に直接効きます。

もちろん、相手にとっては自社の取り分が減る話なので、簡単に変更できるものではありません。取引量、販売促進への協力、返品や在庫の条件なども含めて、双方が納得できる条件を協議する必要があります。また、あらかじめ手数料が固定され、個別交渉が難しい取引もあります。

それでも、「価格改定とは、最終価格を上げることだけだ」と考えていると、取引条件を見直すという選択肢に気づけません。最終価格だけでなく、自社にいくら残る取引条件になっているかも確認してください。

もう1つ、「値上げ」ではなく、「選べる形に組み直す」という方法があります。これまで「一式で3万円」としてきた仕事の中身を見ると、標準の作業に加えて、急ぎの対応や細かい修正まで、すべて含まれていることがあります。

これを一律に3万3,000円へ上げるだけが方法ではありません。標準の作業に絞った基本プラン、よく頼まれる追加対応まで含めた標準プラン、急ぎの対応まで含む上位プランの3つに分ける。注文量や対応の優先度によって選択肢を用意する場合も、考え方は同じです。

私自身も、契約書に「打ち合わせは6回まで。7回目以降は別途お見積り」と記載しています。契約書に明記することで、基本料金に含まれる業務範囲と、追加料金が発生する境界が明確になります。

値上げ幅の決め方|価格転嫁と戦略的価格改定の考え方

ーここまで価格の見直し方を整理したうえで、実際に値上げする場合、改定幅はどのように決めればよいのでしょうか。目安となる考え方があれば教えてください。

唐澤:改定幅に一般解はありません。ただし、価格転嫁と戦略的な価格改定では、考え方が異なります。価格転嫁では、上昇した費用を価格に反映し、1件当たりの限界利益の金額を元に戻します。一方、戦略的な価格改定では、目標とする限界利益率から必要な売価を逆算します。

たとえば、2年前の限界利益率から2ポイント下がっており、当時の水準が適正だったのであれば、2ポイント戻すことが一つの目安になります。ただし、売価に2パーセントを足すという意味ではありません。

先ほどの例で、変動費が700円、目標とする限界利益率が40パーセントなら、必要な売価は「700円÷0.6」で約1,167円です。1,100円は、費用が上がる前と同じ400円を残す価格。約1,167円は、限界利益率を40パーセントに戻す価格です。この2つを分けて考えると、「いくら上げるか」だけでなく、「何を守るための改定なのか」が明確になります。

値上げ前に整理すべき「自社の価値」とは

「VALUE」の文字が並んだ木製コインと、プラス記号のコインを置く手元。自社の価値向上をイメージした画像

自社の価値を言語化する方法|3つの価値で整理する

ー価格改定の前に、小さな会社が整理しておくべき「自社が提供している価値」とは、具体的にどのようなものでしょうか。品質、対応の速さ、専門性、顧客との関係性など、目に見えにくい価値を、経営者自身がどのように言語化すればよいのでしょうか。

唐澤:ここからは、戦略的な価格改定の話になります。価値というと、どうしても「品質」「丁寧な対応」「安心感」といった言葉になりがちです。もちろん、どれも大切です。ただ、抽象的なままでは多くの会社が同じことを言えてしまうため、価格改定の理由として十分に伝わりません。

自社の価値は、「何をしているか」だけでなく、「その結果、お客様の何がどう良くなるか」で考えます。戦略的な価格改定では、作業量だけでなく、お客様の側に起きる変化まで価格に反映させます。

見えにくい価値も、3つに分けると言葉になります。1つ目は、お金の価値。売上が増える、費用が減る、入金が早くなる。2つ目は、時間の価値。納期が短くなる、判断が早くなる、やり直しが減る。3つ目は、負担や不安が減る価値です。ミスやクレーム、手続きの漏れ、急なトラブルを防げる。BtoCであれば、安心して選べる、気持ちよく過ごせる、自信が持てるといった変化も含まれます。

私がおすすめしているのは、「うちに頼まなかったら、お客様は代わりに何をしなければならないか」と考えることです。「対応が早い」ではなく、「これまで3日かかっていた返事が、その日のうちに返る。その3日間、お客様の側で止まっていた次の工程を進められる」。「専門性がある」ではなく、「お客様がご自分で調べたら半日かかることが、聞けば5分で終わる」。主語が、自社からお客様に変わります。価値とは、こちらが行ったことではなく、その結果としてお客様の側に生まれた変化です。

自社の価値を確認する方法|お客さまに直接聞く

ー自社の価値を確認する際、経営者はどのように進めればよいのでしょうか。

唐澤:これは自分だけで考えないほうがよいです。いちばん確実なのは、お客様に直接伺うことです。BtoBであれば、主要なお客様5社から10社に、「依頼の前は何に困っていましたか」「なぜ、うちを選んでいただいたのですか」「続けていただいている理由は何ですか」と聞いてみてください。小売や飲食などのBtoCであれば、常連のお客様への短い聞き取り、アンケート、口コミなどから確認できます。

小さい会社の強みは、お客様の数が少ないことではなく、お客様との距離が近く、直接話を聞きやすいことです。返ってきた言葉は、自分が考えていた強みとずれていることがあります。そのずれが、大切な情報です。まずは要約せずに、お客様が使った言葉のまま残してください。

価格改定で納得を得るために伝えるべき自社の価値

ー費用上昇だけを理由に価格改定を伝えると、お客さまにはどのように受け取られやすいでしょうか。納得を得るために、改定のお知らせには何を示すべきですか。

唐澤:価格転嫁では、材料費や人件費などの上昇自体が、価格改定の正当な根拠になります。ただし、費用上昇だけを伝えると、お客様には「同じものが高くなる」と受け取られやすくなります。改定のお知らせには、費用がどれだけ上がったかだけでなく、改定後もどの品質や対応、供給体制を守るのかを示してください。

価格転嫁なら、「これまでと同じ価値を提供し続けるための条件」として説明する。戦略的な価格改定なら、「提供内容をどう変え、お客様にどのような新しい価値を届けるのか」を説明する。自社の苦しさだけを訴えるのではなく、お客様にとっての意味まで言葉にしておく。その準備が、今回お伝えした「自社の価値」の整理です。

値上げ前に確認すべき数字について説明する経営コンサルタントの唐澤智哉氏


ここまで、値上げを検討すべきサインの見極め方から、改定額の考え方、そして自社の価値の言語化まで、価格改定に踏み切る前に整理しておくべきことを唐澤氏に伺いました。後編では、実際にお客様・取引先へどう伝えるか、そして価格改定後も関係を維持するための工夫について、引き続き唐澤氏に伺います。

関連記事
原価管理とは?目的やメリット、手順や効率化するための方法を徹底解説!
最低賃金改定前に中小企業がやるべきこと|人件費増への備え方を解説