夏前に見直したい!飲食店の食中毒対策│発生原因・具体的な予防方法まとめ

ちょっとした油断でも食中毒のリスクが高まる


気温に加えて湿度も高くなる6月頃は、細菌性の食中毒が高まる時期です。
徐々に気温が高まる3月~5月頃は細菌の活動が活発になりやすい時期であり、6月~8月頃は細菌にとって繁殖しやすい環境になりやすく、食中毒の死亡件数も比較的多くみられます。
気温の高さに加えて、湿度の高い環境も食中毒菌が繁殖しやすいため、ちょっとした油断がリスクを高めてしまうため注意が必要です。

そこで、この記事では本格的な夏を迎える前に見直したい、食中毒対策について解説します。発生原因や具体的な予防方法についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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食中毒の発生状況


食中毒はどのような時期や状況で発生しやすくなるのか、実際のデータから確認していきます。

飲食店での発生状況

厚生労働省が公表している「令和7年 食中毒発生状況」の資料から、「原因施設別食中毒発生状況」の数字を確認すると、総数1,172件のうち658件が飲食店で起こっていることがわかりました。
不明が187、家庭は85、旅館が50という数字からわかるように、飲食店での発生率が高いことが判明しています。

月別の発生状況

月別の発生状況を見ると、発生件数では2月・3月がそれぞれ184件と年間最多となっており、患者数でも2月は8,054人と夏場を大きく上回っています。
食中毒は冬場にも多く発生しており、季節を問わない対策が必要です。
一方、令和7年に食中毒で亡くなった2名はいずれも夏場(6月・8月に各1名)に集中しており、夏場は重篤化リスクが特に高い季節と言えます。
6月~8月の患者数は合計1,782人、中でも8月は1,136人にのぼっており、1件あたりの被害が大きくなる傾向があります。

飲食店としては、件数の多い冬場はもちろん、重篤化しやすい夏場には一層の注意が必要と認識しておくことが重要です。

食中毒の主な発生原因・メカニズム


食中毒は、どのような状況で発生しやくなるかを知ることで意識を高められます。ここでは、主な発生原因に加えてメカニズムについて解説します。

細菌による食中毒(サルモネラ・腸炎ビブリオなど)

夏に多いのが細菌による食中毒です。
細菌性食中毒には、原因菌があります。

  • サルモネラ
  • 腸炎ビブリオ
  • O157などの腸管出血性大腸菌
  • 黄色ブドウ球菌
  • 腸炎ビブリオなど

食材や食事、調理方法によって起こる可能性が高く、主に加熱不足、手洗い不足、不衛生、保存温度の徹底管理不足などが原因で起こりやすいです。

細菌性食中毒となった場合、高熱、腹痛、血便、嘔吐などの症状が起こることが多くなっています。
特にO157などの腸管出血性大腸菌では溶血性尿毒症症候群の併発に加えて、腎機能障害、意識障害などの発症に加えて最悪の場合は死亡する可能性もあります。

ノロウイルス

感染力の高い食中毒菌であり、高い集団感染リスクを持っているのがノロウイルスです。
日本では特に患者数の多い食中毒菌で、高齢者や抵抗力の低い場合は重篤化しやすくなります。
24時間~48時間の潜伏期間があり、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱、倦怠感などの症状が出やすく、急激な嘔吐に見舞われるケースも多いです。

令和7年の食中毒発生総数1,172件のうち、462件がノロウイルスであるという結果もあるため、特に飲食店では意識が必要なウイルスと判断できます。
人間の嘔吐、便などが手指から二次感染したり、飛沫感染で直接感染したりすることもあります。少量のウイルスでも感染しやすいので、集団感染も起こりやすいです。

寄生虫

生魚などにいるアニサキス、豚肉や羊肉などにいるトキソプラズマなどの寄生虫も食中毒の原因になります。
アジやサバ、カツオ、サンマ、イカなどの魚介類に寄生しているアニサキスの幼虫は、生で食べたことが原因で食中毒になりやすいです。

十分な加熱や冷凍をすれば問題ありませんが、不十分だった場合に人間の体に入り込んでしまうと胃壁や腸壁に刺さり食中毒が起こります。
12時間以内に激しい下腹部の痛み、嘔吐、吐き気などが起こり、自宅で薬を飲んでも治まることはありません。
医療機関で内視鏡による処置を受けなければ、痛みがずっと続いてしまいます。

自然毒・化学物質

食中毒は、食品の扱い方を怠ったことで起こるだけではありません。自然毒や化学物質によっても起こる可能性があります。

例えば動物性自然毒の代表的なものとして「ふぐ毒」があります。
自然毒の中でも死亡率の高い食中毒で、早ければ食後20分程度で唇や舌のしびれが起こり、その後頭痛、腹痛、吐き気、言語障害、呼吸困難などが起こります。
ふぐの毒は加熱などで無毒化することがなく、調理する側も免許を取得した人以外が行うことはできません。

カキやホタテガイなどの二枚貝に関しても、貝毒による食中毒を引き起こす可能性があり、四肢末端のしびれや頭痛、吐き気、下痢、嘔吐などが起こる可能性があります。
また、このような自然毒の他に、本来食品に含まれていない化学物質を摂取したことで食中毒が起こる可能性もあります。
実際に、やかんでスポーツドリンクを作ったことで高濃度の銅を飲んでしまい、嘔吐や吐き気が起こった事例がいくつもあります。
知識不足によって健康を脅かしてしまう事例もあるので注意しなければなりません。

飲食店が徹底すべき基本の食中毒対策


食中毒は、飲食店にとって徹底して避けるべきものです。基本的な対策方法を知り、食中毒が起こらないようにしましょう。

手洗い

食中毒を防ぐには、徹底した手洗いが効果的です。
予防の基本となる手洗いは、誰もが日頃からしている行為なので、今更言われなくてもできていると感じるかもしれません。
しかし、手洗いが不十分だとあっという間に食中毒が起こる可能性があるので、再度正しい手洗い方法を知って意識することが大切です。

流水で手を洗ってから洗浄剤を手につけて、手のひら、指の腹、手の甲、指の背、指の間、指の付け根、親指、指先、手首の順に洗っていきます。
十分にすすいだら手をきちんと拭いて乾燥させるのが正しい手洗いの方法です。

手首は意外と洗わない人もいますが、特に飲食店の場合は様々な食材や調理器具を扱うので、ひとつのアクションが終わるごとに手洗いを習慣付けるようにすると忘れにくくなります。

従業員の健康状態・身だしなみの確認

飲食店では、衛生に関する取り決めも必要ですが従業員に関しての健康状態や身だしなみについての決まりを設けると安心です。
従業員が健康に関して何かしらの問題を抱えていた場合、これが食品の安全性に関係する可能性があります。

特に体調の悪い従業員が食品の調理や提供をしたことで食中毒が広がる可能性もあるので、出勤時に確認できる体制や決まりを設けることがポイントです。
出勤時に体温や症状の有無を記載して記録を残したり、腹痛、下痢、嘔吐などの症状があった場合はその場で報告して出勤させなかったりするように徹底します。
具体的な症状や感染症などと診断された場合は、出勤停止期間を設けて復帰の際には医師の診断書を添付するなど、明確な基準を設けるとわかりやすいです。

他にも常に清潔な状態で調理できるようにユニフォームは毎日交換、通勤着との区別、帽子、ヘアキャップの装着、マスクの着用、手袋は作業ごとに交換などを決めると食中毒菌の付着を防げます。

食材の納品時のチェック

食中毒予防のためには、食材が納品された際のチェック作業を設けるのもおすすめです。
材料それぞれの管理方法、保存場所、保存温度を確認して、段ボールなどをそのまま作業場などに持ち込まないように専用の入れ物を用意します。

冷蔵庫内においても、お互いに汚染しないために材料ごとに区画で分けて保存すると他の食材に菌が移る心配がありません。
納品時に食材に適した方法で届いたか、保存温度が間違えていないかも合わせて確認するとより食中毒リスクを軽減できます。

器具の洗浄・使い分け

食中毒リスクを減らすには、器具の洗浄や使い分けも必要です。調理は生野菜、肉や魚介類の順で行い、これらに使ったスポンジなども調理後に消毒して乾燥させます。
まな板や包丁を野菜・果物用、肉・魚用に分けるとより安全に対策できます。
他にも手の表面に付いている黄色ブドウ球菌などを食品に移さないために、素手ではなく手袋などを使うのもおすすめです。

保管場所の温度管理

実は食中毒の多くは、温度管理によるミスでも起こることがわかっています。細菌は10℃~60℃の間で急速に繁殖するため、特に飲食店では徹底した管理が求められます。
冷蔵庫の温度は0℃~5℃を基本として10℃を超えないように設定し、食材は長時間常温で保存しないようにしてください。

定期的に冷蔵庫のメンテナンスやチェックを行い、冷気が漏れていないか、正しい温度で作動しているかの確認も必要です。
これは冷蔵庫に限らず、冷凍庫でも必要なチェックになります。冷蔵庫は凍っていれば安心ではなく、品質の劣化などが起こっていないかも配慮が必要です。
頻繁な食材の出し入れや詰め込みすぎなどにも注意して管理してください。

加熱・冷却の基準

すべての食品等事業者は、HACCP(ハサップ)に沿って衛生管理に取り組むことが決められています。
特に食中毒は、加熱や冷却が不足したことが原因で起こりやすいので、改めて基準を設けたり確認したりすることが必要です。

加熱の場合、中心温度を75℃で1分加熱すればO157対策ができ、90℃で90秒加熱すればノロウイルス対策ができます。
鶏肉の加熱不足によるカンピロバクターによる食中毒も、鶏肉の加熱不足が原因なので加熱温度に関する正しい知識で予防可能です。
冷却においては30分以内に中心温度が20℃近くまで下がること、また60分以内に中心温度が10℃近くまで下がる必要があります。

テイクアウト・デリバリー時の温度管理

食中毒予防を意識するなら、テイクアウトやデリバリー時の温度管理も考えなくてはなりません。
調理してから食べるまでの時間が長く、気温が高い場合は食中毒のリスクも高まるため、いくつかの項目を設けてメニューの選定や提供方法を意識します。
テイクアウトやデリバリーに適したメニューかどうか、加熱商品は中心部まで熱が通っているか、保冷剤やクーラーボックスなどを使っているかなど、衛生管理について再確認してください。

トイレの洗浄・消毒

トイレは、腸管出血性大腸菌O157やノロウイルスなどが感染するリスクがある場所です。
飲食店の場合、トイレの洗浄や消毒についても徹底した対策を講じる必要があります。

従業員から食中毒や感染症などが出た場合は早急に清掃や消毒を実施、掃除の際には汚染度の低い場所から行います。
手指が触れる所から便座、蓋、便器、床の順に掃除し、清掃部分に適した方法や道具、洗浄剤を使うと正しく消毒できて清潔を保つ環境が維持できます。

飲食店に求められるHACCPに沿った衛生管理


飲食店など食品を作る際に、安全に届けるための仕組みとして「HACCP」が取り入れられました。ここでは、飲食店に求められるHACCPに沿った衛生管理について解説します。

衛生管理計画を作成する

衛生管理について正しく理解するために、衛生管理計画の確認を行います。
衛生管理計画の作成に伴って、取り組んでいるメニューに適した衛生管理の注意点が明確にできるのです。

例えば「冷凍のコロッケを○個作る時は油の温度を180℃に設定して○分揚げる」、「△△は提供するまで10℃以下で保存する」などです。
基準通りに調理できない食品についても事前に決めておくことで、より安全な状態で食品を提供できるかが判断できます。

衛生管理状況を記録する

衛生管理状況には、以下の項目が記録できるように作成しましょう。

  • 配達された食品・食材のチェック
  • 冷蔵庫・冷凍庫のチェック
  • 料理のチェック
  • 従事者のチェック
  • 衛生上やクレームに関する内容など

これらの項目を設けることで、食材の正しい提供方法を理解できるだけでなく、正しく管理や提供ができたかも把握できるからです。
複数人が管理やチェックをすることで、お互いにルールを守っている証拠が記録できます。

ルール・マニュアルを整備する

HACCPを効果的に運用していくには、従業員の教育やマニュアルの整備を行い、定期的な衛生教育やスキルアップのために必要です。
飲食店の規模に関係なく、ルールやマニュアルの整備によって、より環境に適した衛生管理ができます。ルールやマニュアルの整備によって環境改善にも役立ちます。

従業員への衛生教育・管理のポイント


HACCPの持つ効果を発揮しつつ、従業員の衛生教育や管理を徹底するためのポイントについて解説します。

新人・アルバイトにもわかる形で教育する

衛生に関することは社員だけが把握するのではなく、新人やアルバイト全員が理解すべき内容です。そのため、誰もがわかる形で教育できる環境の構築が重要になります。
衛生に関する定期的なテストの実施、従業員が日々正しく業務を実効できるように衛生標準作業手順書の整備など、取り入れやすい方法で教育すると衛生管理が身に付きやすいです。

衛生ルールを継続させる仕組みを作る

衛生管理に関するルールを常に継続できる仕組みについても取り入れる必要があります。
わかりやすいマニュアルの作成、衛生管理状況の記録、管理マニュアルについての達成率など誰もがわかりやすく実施できる仕組みによって、自然と継続しやすい衛生ルールが誕生します。
また、評価・表彰といった制度を導入することで従業員の意識向上を図ることもでき、継続に繋がるでしょう。

飲食店で食中毒が発生した場合の対応


もし、飲食店で食中毒が発生した場合は初期対応が重要です。
被害拡大によって大きな問題に発生する可能性が高まるため、即保健所に連絡することを忘れないようにしてください。
保健所に連絡後、食中毒の可能性が疑わる食品を確保し、顧客情報を把握します。保健所の指導に基づいて原因を究明し、再発防止のための内容を策定、実施する流れです。
正しい情報を公開して謝罪することも必要に応じて行います。

飲食店の食中毒対策チェックリスト


飲食店では食中毒を起こさないという意識が求められるだけでなく、起こらないようにするための対策も必要です。
ここでは、飲食店の食中毒対策チェックリストについて解説します。

開店前に確認すること

安全な調理や料理の提供ができるかを開店前に確認します。
従業員の身だしなみや体調に関して確認し、何かしらの症状がある場合は調理業務を行わないようにしてください。
食材が納品されたら、衛生が保たれた環境に入れる前に食材に関してチェックを実施し、冷蔵や冷凍などを分けて保管します。
調理器具に関しても、洗浄や消毒について行われているかをチェックして整えます。

営業中に確認すること

営業中は混雑してくると、衛生管理状況が悪くなる可能性が高まります。
各工程や作業ごとに手袋の交換、手洗いを徹底し、衛生が守られた状態で業務を行うことを意識しなければなりません。
特に生ものと加熱食品が接触しないように保管場所から分けておき、加熱が必要な食品は中心部まで火が通っているかを確認してから提供します。
テイクアウトやデリバリーを受けている場合は、常温での時間が長くなりすぎないように意識する必要があります。

閉店後に確認すること

閉店後は、翌日に食中毒リスクを高めないように確認しながら衛生環境を作っていきます。
調理環境、器具、シンク、床などの洗浄や消毒はもちろん、手洗い場やトイレなども清掃や消毒を実施します。
残った食材については、保存期限や保管方法を確認して処分などを判断しなければなりません。
もったいないという理由での保存で食中毒が起こらないように、正しい判断が求められます。

まとめ・飲食店の食中毒対策は毎日の積み重ねが大切

飲食店での食中毒は信用問題にも発展する事案となるため、起こしてはならないものです。
実際に飲食店は食中毒の発生件数も多いため、従業員全員が徹底できるマニュアルの作成や研修などを実施し、意識を高めることが重要です。
HACCPに沿った衛生管理を取り入れて、食中毒が起こらないように取り組むのが良いでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)