エール 美宝れいこ|女性活躍推進への挑戦!パラレルキャリアという働き方

創業手帳woman
※このインタビュー内容は2023年03月に行われた取材時点のものです。

企業とスキルを繋いでいく!女性の社会における活躍とは


日本最大級のオンラインプラットフォーム「エールプロジェクト」は、国内のみならず海外からも多彩なキャリアを持つ女性が所属しています。

働き方が多様する時代、美宝さんが想い描いたのは働く女性を応援するためのコミュニティづくりでした。

試行錯誤を繰り返し、4度目の挑戦で自身の想い描いた理想のコミュニティを実現。起業に至るまでの経緯や「エールプロジェクト」にかける想いについて、創業手帳代表の大久保がお話を伺いしました。

美宝れいこ(みほ れいこ)
エール株式会社 役職代表取締役・パラレルキャリア推進委員会代表
産能短期大学国際経営ビジネス学部を卒業後、大手旅行代理店に入社。その後、営業として数社を経験し、2000年に広告代理店に転職。女性初の事業部長に就任。複業を経て2016年にパラレルキャリアコンサルタントとして独立。
現在は、女性活躍推進と複業推進を軸にコミュニティ・スクール・プロダクションを運営のほか、企業顧問やセミナーや講演や審査員なども精力的に活動する。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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パラレルキャリアという働き方を広めるために

大久保:起業するまでの経緯を教えていただけますか。

美宝:短大を卒業後、大手旅行会社に勤務しました。しかし、自分のやりたいことや強みを見つけられず短期間での転職を繰り返していました。

23歳のときに転職した企業では16年間働きましたが、33歳のときに突然母が他界したことをきっかけに、働き方について改めて深く考えるようになりました。それまで、仕事=ライスワークという考え方で働いてきて、50歳60歳の自分を想像したとき、そこで働いているという未来像が描けなかったのです。

そして、当時ちょっとした起業ブームだったこともあり、何かやってみようという気持ちになりました。

大久保:どのような分野で起業されたのでしょうか。

美宝:好きだったアロマを仕事にするため、スクールに通って資格を取り、マンションの一室を借りてサロンをオープンしました。起業の第一歩は好きだったことを仕事に、副業からのスタートです。会社の仕事が終わってからアロマの仕事をして、それをSNSで発信することもしました。

そうして、SNSで発信を続けていくうちに、副業をしてみたいという女性たちから相談を受けるようになっていきました。会社員として働いていても先が見えず、不安を抱えている方ばかりでしたね。

副業の始め方や、会社に知られずにやるにはどうすればよいのかなど、いろいろな相談を受けているうちに副業に関してのニーズが多いことを知りました。そして、副業ではなく「複業」というパラレルキャリアの考え方を広めていくことにシフトチェンジしていったのです。

現在は、エール株式会社でパラレルキャリア推進委員会®という女性の支援団体を運営しています。パラレルキャリアを始めたいという女性たちに向けたコミュニティと、複業をスタートしたいという方のためのスクール、そして活躍を創る場としてプロダクションというお仕事マッチングの一体型のオンラインプラットフォームです。

女性の社会進出が抱える課題とは

大久保:女性の支援団体ということですが、女性の社会進出についてどのように考えていますか。

美宝:女性の社会進出についてよく謳われていますが、社会進出自体はできていると私は考えています。

ところが、活躍ということにおいての社会進出は、まったくできていないのではないでしょうか。世界のジェンダーギャップや管理職割合、男女の賃金格差など、日本の女性は圧倒的に活躍できていません。

実際に女性の活躍については、社会の課題のひとつになっていると思います。そこで、女性の活躍推進とそれに対しての複業やパラレルキャリアという生き方が女性にぴったり当てはまるのではと考えました。そして、現在は女性活躍推進と複業推進の2つを軸に取り組んでいます。

大久保:近年では雇用の枠を超えて、業務委託やフリーランスなどの働き方が注目されるようになりましたが、働き方について何か感じることがあれば教えてください。

美宝:「スキルシェア」という活躍の方法が非常に増えてきています。「人財マッチング」と呼ばれるサービス形態ですが、今後も増え続けていくだろうと思っています。特に女性は会社などの組織において、活躍しにくい状況です。

けれども、そういった社会構造や環境の中でも、女性は成長する意欲がとても高いです。それを社会でどうやって活かしていこうかと考えたとき「スキルシェア」や「人財マッチング」がぴったりと当てはまると思います。

企業側と働く側、それぞれが抱える課題とは

大久保:企業側とパラレルキャリアで働く側について、それぞれの課題があれば教えてください。

美宝:企業側でいえば、個人へのアウトソーシングに慣れていない企業様が多いです。アウトソーシングにあまり良いイメージを持っていない企業様もあります。個人に仕事を依頼するのは、仕事のレベル感や途中で連絡が取れなくなるかもしれないという不安があるようです。また、女性の知見を十分に活用できていない企業様が実は結構多いですね。

一方で、働く側の課題としては、やればできそうなのに「自信がない」という理由で一歩踏み出せない女性がとにかく多いです。それをクリアにしていくには、やはり、自分自身の強みやスキルを知ることが大切です。自分の棚卸しによって、今まで当たり前だと思っていた知識・スキル・経験や、埋もれていた長所などを発見して、それが社会に出るとどのような価値提供に変わって、どれくらいの報酬を得ていけるのかという自己分析が必要になります。

ビジョンに共感した人材が集まる、エール株式会社について

大久保:貴社の特徴や強みについて教えてください。

美宝:当社はコミュニティ、スクール、プロダクションの3つの柱があります。コミュニティには国内外から約3,000人以上が所属しており、その中に運営メンバーが89名います。運営メンバーはプロボノで参画してくれています。そのため人財が流動的ではありますが、エールのビジョンやミッションに共感し、バリューを理解して集まっている人たちが多く、各リーダーを中心に、それぞれのメンバーが自主的に動いてくれています

報酬は企業とお仕事をマッチングするプロダクションパートナーやワーカー、団体スポンサーを獲得する営業企画室、併設しているスクール講師やメンターなど、複数得られる仕組みがあり、みんなで分かち合い循環させていくスタイルです。

また、窓口が法人なので責任の所在が明らかという点で、企業様から強い信頼を得ています。リピート率も非常に高いですね。女性に特化して、スキルが高い人財に個人やチームでまとめて依頼できるという点も当社の強みになっていると思います。

大久保:貴社が抱える課題があれば教えてください。

美宝:やはり大変だと思うのは人財の部分です。特に当社はコミュニティとしての要素がほとんどなので、メンバーが自発的にコミュニティや事業を大きくしていこうと取り組んでくれていますが、その半面、長期間、安定してその役割やポジションを担っていただけるかという点が課題になっていると強く感じています。

大久保:組織のメリットやデメリットがあれば教えてください。

美宝:メリットは、アクティブで熱量の高い人財に恵まれることです。自発的にコミュニティに入り、やりたいことに自ら関わるというスタンスなので、普通の会社組織のように合わないことや、やりたくないことを続けるということはありません。

デメリットとしては、やりたくないと思ったらいつでも辞めることができるため、人の流動が予測できないことです。縛りがなく、雇用関係があるわけではないので、メリットとデメリットが表裏一体的なところはありますね。

大久保:柔軟性が高い組織ともいえるかと思いますが、いかがですか。

美宝:そうですね。プロジェクト単位だったり、自分で立ち上げてやってみたいということだったり、メンバーが集まって自分たちで形にしていきます。ビジネスの自由度は高いので、普通の会社の新規事業よりは挑戦もしやすく、モチベーションが上がるのではないでしょうか。

大久保:貴社のような組織形態が上手くいくコツというものがあれば教えてください。

美宝:コツは2つあると思います。1つ目は、ビジョンやミッションに共感してくれて熱狂的になってくれるファンをコア層から増やしていくことです。

2つ目は、誰でも主役になれるチャンスの場を用意することですね。これまでリーダー経験がなかった人でも、やってみたいという強い意志があれば挑戦することができます。

大久保:コミュニティにありがちな人財に関する悩みや困ったことはありましたか?

美宝:コミュニティで一番大切なのは、心理的安全性だと思っています。エールに属している安全性というものを、運営側は絶対に保たなければなりません。メンバーがお互いに心地よく活動し合えない事案が発生したときは、私が責任を持って対処するようにしています。

エールには「学び×つながり×挑戦」というコンセプトがあります。団体としても、エールの活動やビジョンに共感してくれるポジティブな人が残ってもらえるように環境を整えています。

失敗を恐れずに挑戦していく

大久保:女性の起業家の方で慎重になってなかなか踏み出せないでいる方もいますが、どのように思われますか。

美宝:実は、エールができるまでコミュニティづくりを3回失敗しています。試行錯誤して4回目でやっとできあがったのがエールです。私自身、本当に多くのことを失敗から学んできました。

つくったコミュニティが失敗に終わるたびに得るものがすごく多くて、毎回自問自答してやっと形になっていくというプロセスはとても大切だと思っています。

失敗を恐れずにどんどん挑戦してどんどん失敗して、それを積み重ねて形にしていくといいと思います。

大久保:コミュニティが失敗に終わった原因やそこで得たものについて教えていただけますか。

美宝:1回目のコミュニティでは、毎月20名の働く女性を集めて食事をしながらの交流会を1年間開催しました。知り合いもたくさん増えましたが、ゴールがなく、ただ楽しいというだけで終わりました。

コミュニティの完成形からは程遠くはありましたが、常に満席の人気イベントだったので、イベントのやり方や集客の仕方など、イベント設計という点ではすごく学びになりました。

2回目のコミュニティは、コンセプトを変えて男性経営者を交えて起業家を対象とした交流会を開催しました。ところが、2回目のコミュニティでも1回目同様に知り合いは増えましたが、女性活躍推進につながっていくところまでの設計がまだ自分の中になかったため消滅に終わりました。

そして3回目です。これまでの私の活動を見てくださっていたDMMさんからお話をいただき、初めて有料のオンラインサロンを始めました。しかし、自分でコミュニティをつくってはきたものの、集まっていただいた方たちにどうやってプロセスを踏んで変化を与えていけばよいのかが分からなかったのです。

私自身が他のコミュニティに参加したことがなかったため、コミュニティの運営に迷走していたんだと思います。

3回目のコミュニティは情報提供型に切り替えて運営を続けていましたが、何か人に与えられる変化は起こせないのではないかと思い、早々に断念しました。SNSで運営メンバーを募ったこともあり、お互いのことをあまり知らない人同士で運営していたのもよくなかったですね。

3回の失敗の経験を活かし4度目の挑戦

大久保:最終結果の4回目のコミュニティ「エールプロジェクト」では、これまでの経験をどのように活かしていきましたか。

美宝:3回コミュニティを消滅させた経験から、ビジョンだけでなく設計図も非常に大切であることに気づきました。そこで「ビジョン・ミッション・バリュー」をしっかりとつくろうと決めました。運営メンバーもSNSで気軽に募集するのではなく、私の想いや活動に共感してくれる人で固めるため、私のスクールの受講生を自らスカウトしています。

大久保:貴社のような組織形態でコミュニティをつくりたいという方に向けて、何かアドバイスがあれば教えてください。

美宝:コミュニティに属している人たちが、そこに属したことで何かしらのメリットや、自分の成長に繋がることなど明確な仕組みや設計図ができていれば、コミュニティとしての意義があると感じています。

組織の上の人たちだけが目立つとか、儲かるとかではなく、参加しているみんなが主役になり、循環させることが大切です。自分も属したいし誰かにも紹介したいと思ってもらえるようなコミュニティの設計図を描くことが、とても重要だと私は思います。

大久保:貴社では今後どのようなことをしていきたいかなどがあれば教えてください。

美宝:これまで以上に、女性が活躍できる場を増やしていきたいと考えています。ゼロから事業を自分で立ち上げることはすごく大変です。けれども、エールのコミュニティでは、すでに「エール」で積み重ねてきた信頼や実績のリソースがあり、エールメンバーとして仲間と一緒に事業を立ち上げ挑戦していけば、様々な支援を受けながらやっていけるので、すごくやりやすいのではないでしょうか。

コミュニティ、スクール、プロダクションがそれぞれ拡大し、さらに事業リーダーが増えていけばエールもコミュニティとして繁栄し、ますます女性の活躍できる場が増えます。そのためにも、実践的なコンテンツやビジネスチャンスをどんどん増やしていきたいと考えています。

大久保:これから起業や複業を考えている方へのメッセージをお願いします。

美宝人が変わるのに必要なのは、出会う人と属する環境の2つだと思います。今から起業や複業をしたい、または今の状況を変えたいという人たちは、まずは自分が目指す人と環境にフォーカスして活躍できる場を見つけられるといいかなと思います。

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(取材協力: エール株式会社 役職代表取締役・パラレルキャリア推進委員会代表 美宝れいこ
(編集: 創業手帳編集部)



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