ビートレーディング 佐々木英世|9.1万社超と取引。ファクタリングの先駆者が次に目指すものとは
銀行・古物商での経験から見えた、中小企業の資金繰りという課題

資金調達の手法として注目されている「ファクタリング」。入金待ちの請求書を現金化するファクタリングは、融資と比べて「資金を得るスピードが早い」「信用情報への影響がない」といったメリットがあり、近年日本でも注目が高まっています。
今ではさまざまな企業がファクタリング市場へ参入していますが、いち早く2012年からファクタリングに取り組んできたのが、株式会社ビートレーディングです。代表取締役を務める佐々木英世さんは、古物商や銀行業務などさまざまな仕事を経たのち、あるきっかけでファクタリング事業を始めました。
順調に実績を積み上げ、日本のファクタリング市場をリードする同社ですが、いわゆる人海戦術的な営業活動には頼らず事業を拡大してきたといいます。今回は、佐々木さんに起業までの道のりや経営のこだわり、今後の展望などについて伺いました。
OA機器会社や教育関連会社での営業・マーケティングを経験後、古物商や銀行業務にも携わる。2012年に同社を起業、売掛債権を早期現金化する「ファクタリング」サービスの国内パイオニアとして業界を牽引している。
この記事の目次
周囲に反対されても「ファクタリングは必ず広まる」と信じて起業

佐々木:実はずっと営業をしていたんです。新卒でOA機器の販売会社に入り、最初は飛び込み営業をしていました。実績ができてからは法人営業の部署に異動して、全国1位の営業成績をおさめたこともあります。
その後は教育関連の会社に転職して、営業やマーケティングをしていました。ただこの会社は少子化などの影響もあって、事業があまりうまくいっていなかったんです。そこで次の会社を探していたところ、縁あってIPOを目指している会社に役員として入りました。
そこでは古物商の勉強をさせてもらっていたのですが、私が入った数ヶ月後に突然銀行にM&Aされました。その後は古物商の仕事をしながら、銀行員として融資などの業務も行うようになり、金融の仕事も覚えていきました。
佐々木:その後、M&Aした銀行自体が解体することになってしまったんです。当時私は300社近くの子会社の代表もしていましたので、関係各所と交渉して子会社のうちの1社を私が買い取る形で経営することになりました。
会社を引き継ぐと言っても、事業は自分で新たに立ち上げなければなりませんでした。古物商と金融をしていたので質店がいいかなと考え、企業向けの質店を始めました。
融資の仕事をしていた時、中小企業の方々がなかなか融資を受けられないという現実に直面していたんです。ですから、困っている中小企業に何とか資金を提供するようなビジネスをしたいと思っていました。
佐々木:企業向け質店はすごくニーズはあったものの、ビジネスとしては難しかったですね。売り上げもなかなか上がらず、大変でした。質店ですからお客様から資産を預かってお金を貸すわけですが、中小企業には担保になるようなものが多くないんです。会社にあるものと言えばPCやOA機器ですが、それらを担保にしてもまとまった金額を貸すことはできません。
質屋はBtoCで成り立つものでBtoBでは成り立たないということを、経営しながら学びました。
佐々木:お客様からの提案がきっかけでした。ある時、「売掛金で質出しさせていただけませんか」というお客様がいらっしゃったんです。弁護士の先生に相談したところ、「債権を質屋で扱うことは法律上できないけれど、売掛金の買い取りならできる」というお話だったので、新たに売掛金を買い取る会社を作りました。
売掛金を買うという会社は、当時まだ珍しかったんです。回収できないというリスクもありますし、弁護士の先生からもやめたほうがいいと言われました。それでも、当時は銀行が企業になかなかお金を貸さない時期でしたし、私としては今後売掛金を買うという仕組みはこれから絶対広まるだろうと考えました。自分の信念を貫いたからこそ、今があると言えますね。
佐々木:実は起業するずっと前から、絶対に起業しようと強く思っていたんです。会社員だった時代にいろいろ苦労しましたので、「自分が社長だったらこうするのにな」とか「経営者だったらこういう判断をするのに、なぜしないんだろう」という思いがありました。
自分が会社を作ったら、そういう部分をクリアにしたいと考えていました。若い時はまだ具体的な事業のアイデアはありませんでしたが、とにかく自分で会社を作って経営したい、という思いはずっと持っていましたね。
「ファクタリング」のイメージを変えることが、先駆者としての使命

佐々木:いわゆる営業活動は全くしていないんです。私はかつて営業をしていましたが、飛び込み営業はなんて非効率なやり方だろうと思っていました。ですから、起業してからはそういう営業手法は使わず、Webを使った集客をメインにしました。これは現在でも同じです。
「ファクタリング」という単語は起業当時も今も、まだまだ認知度が高くありません。ですから広告を出す際にも「ファクタリング」という単語はあまり使わず、「請求書(売掛金)を買います」という表現にしています。
広告を出したところ、すごく反響がありました。お客様からの問い合わせがとにかく多くて、ニーズの高さを実感しましたね。ただ当時は起業したばかりでまだ社内の人数が少なく、対応しきれないという状態でした。当時はExcelで契約書を作るとか、そういう体制でしたので。
佐々木:私たちの事業は、売掛金を持っていらっしゃる会社は全てお客様になります。ですから業態・業種は本当に幅広いですね。フリーランスのお客様もたくさんいらっしゃいます。
佐々木:「ファクタリング」というビジネスのイメージを変えたいという思いはずっと持っています。この事業は、最初イメージがあまり良くありませんでした。やはりお金を貸すというイメージが強いので。
かつてはグレーなビジネスと言われたこともありましたが、それは自分たちでホワイトに変えていかなければならないと思いながら今までやってきました。これは先駆者である自分の使命だと感じています。
世の中に認めてもらうためには社員が安心して働ける環境づくりも大切だと考え、改善に取り組んできました。もちろん人の入れ替わりはありますが、最近は社員の定着率も高まってきています。今では、社員のみんなも「自分たちがファクタリングのパイオニアなんだ」という意識を持って、仕事をしてくれています。
AIは活用するが、それだけではファクタリング事業はうまくいかない

佐々木:やはり長年培ってきた実績は、大きな強みだと思っています。起業した2012年から実績を積み上げてきて、今では累計取引社数は9.1万社以上、累計買取債権額も1,840億円以上となっています。日本でここまでの実績を持つところは他にないのではないでしょうか。
あとはマーケティングですね。弊社は創業当時からデジタルマーケティングにしっかり予算を充てて、注力してきました。そこは他社さんが真似しづらいところだと思います。
佐々木:最近は大手さんを始め、多くの会社がファクタリング事業に参入しています。競合が増えることは、市場の活性化という意味ではプラスだと捉えています。一方でいろいろな会社さんが増えることで、課題も出てきているように感じるんです。
例えばAIに全てを丸投げするようなところも出てきていますが、AIには得意なところもあれば苦手なところもあります。私たちもAIを活用していますが、全てをAIに任せるようなことはしません。例えば審査においても、少額案件ならある程度AIに任せてもいいと思います。でも大きな金額になると、やはり人による対応が不可欠です。実際にお客様とコミュニケーションしないと、わからないことも多いですから。
安易にAIだけに頼ってしまうと、結局は回収が難しくなってしまうことも考えられます。ファクタリング市場が伸びてきているからこそ、今後は規制やルール作りが必要ではないかと思っています。
中小企業や個人事業主の資金繰りに寄り添うため、もっと認知度を上げたい

佐々木:中小企業や個人事業主に寄り添い、スピード感を持って資金繰りをサポートすること。これを私たちはとても重視しています。そういう中でやはり必要なのは、認知度をもっと上げていくことだと思っています。
まずは売掛金の買取額を今の2倍にすることが目標です。月間100億円という規模になれば、「ファクタリングならビートレーディング」と言っていただけるのではないかと考えています。
あとは、マーケティングも引き続き重視していきます。具体的にはYouTubeやSNSなどを使った施策も進めているところです。
佐々木:今はお電話1本で、きちんとした請求書があれば買い取りできます。業績が赤字であっても資金を調達できますので、起業直後の方にもご利用いただけます。
ポイントとしては、きちんと入金があるという実績を用意しておくことですね。請求書に対して入金されているという取引履歴があれば、それだけ審査もスムーズになります。早く審査がおりれば、それだけ早く手元に入金されますから。
スピーディーに資金を調達できる点は、ファクタリングの大きなメリットです。資金の入るタイミングが早ければ早いほど、会社として次のアクションができますから、ぜひアクティブにファクタリングを活用していただければと思います。
佐々木:起業には資本ももちろん必要ですが、自分が絶対やりたいことを、諦めないことがすごく大切だと思います。自分で決めたことは絶対に諦めないで最後まで貫き通せば、見えてくるものもあるはずです。
もし経営に失敗して会社を手放しても、結局どこかの会社に入って働き続けなければならない。それなら自分の作った会社にしがみついてでも、自分の信念を持ち続けて、諦めずにやりきる方がいいと思うんですよ。
私の場合、若い時からいろいろな会社を経験して、知識は確かに増えました。でも、知識を得ることと経営は全く別だと思っています。私自身起業してみて、知識はやりながらどんどん覚えていけますが、経営にはむしろ突き進む行動力や覚悟が必要だなと感じました。
経営をしていると、誰でも必ず厳しい局面に直面すると思います。「なんだかうまくいかないな」ということがきっと出てきます。うまくいかないことがあっても、諦める前に従来と違う方法を探してみてほしいですね。
(編集:創業手帳編集部)
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