【2026年】廃棄物処理法の改正法案が可決!企業への影響は?

改正廃棄物処理法の内容・企業への影響を把握しよう


2026年4月、政府は廃棄物処理法等の一部を改正する法律案を閣議決定しました。
改正内容は「スクラップヤードの規制強化」と「災害廃棄物の処理推進」の2本柱で構成されています。
その後、2026年6月に廃棄物処理法の改正法案が成立・公布されました。
このうち災害廃棄物関連の内容は、公布から3か月以内に施行される予定で、2026年9月中旬までの施行が見込まれています。
一方、スクラップヤード関連の規制強化は、公布から2年6ヶ月以内(2028年中の施行見込み)に施行される予定です。
この改正によって、有価物として規制の空白にあったスクラップヤードの適正管理が進み、火災・環境汚染リスクの低減が期待されていますが、実務に携わっている場合は大きな影響を感じやすいです。

当記事では、廃棄物処理法の改正内容に加え、企業にどのような影響があるのか、企業が施工前に取り組むべきことについて詳しく解説します。
業務内容で廃棄物処理法が関わってくる企業、特にスクラップヤード事業者や産業廃棄物処理事業者、排出事業者は、ぜひ参考にしてください。

この記事の目次

廃棄物処理法改正内容①スクラップヤードの規制強化


使用済みの家電や自転車などから金属・プラスチックなどの再生資源物を、再資源化するために一時的に集積・保管・分別する場所が「スクラップヤード」です。
2026年の改正に伴い、このスクラップヤードの規制が強化されます。規制強化の背景や強化される内容について解説します。

規制強化の背景

スクラップヤードの規制が強化される背景に、水質汚濁や火災の発生など、不適正なスクラップヤードに起因する環境汚染を防ぐことが挙げられます。
環境省が2025年度に実施した都道府県等に対する実態調査によると、全国4,625事業者のうち、計275件ものトラブルが発生していました。
もともと資源を循環させるための重要な場として活用されていましたが、不適正なスクラップヤードが増えたことで、環境保全上の支障が出ています。

また、不適正なスクラップヤードは環境対策を行っていない分運営コストが抑えられており、買取価格も適正なスクラップヤードより高値に設定することが可能です。
しかも、不適正なスクラップヤードは再生資源物を国内の製造業などではなく、海外へ流出させていることも問題視されています。
こうした理由から、今回の廃棄物処理法の改正によって規制が強化されたと考えられます。

使用済み金属やプラスチック物品の保管・再生に関する許可制の導入

改正案では、新た使用済み金属・プラスチック物品の保管業・再生業に対して都道府県知事による許可制が導入されました。
これまでは使用済み金属・プラスチック物品のうち、有害使用済み機器は廃棄物処理法で規制されていました。
しかし、今回の改正によって有害使用済み機器の保管等の規定が削除され、すべての使用済み金属・プラスチック物品が規制されることになっています。

保管・再生基準の遵守義務

許可を取得した事業者は、以下の保管・再生に関する基準を遵守しなくてはなりません。

保管・再生基準 概要
保管物の高さの制限 周辺への飛散・流出を防ぐことと火災対策の観点から、保管の高さを制限する
飛散・流出の防止措置 人がみだりに入り込まないよう、また保管物の飛散や流出、崩落を防ぐために囲いを設置する
火災の発生・延焼防止措置 仕切りや保管物同士の距離を空ける
掲示措置 保管場所であることや保管している品目、管理者の氏名・連絡先など必要な事項を周知させる
地下浸透の防止措置 油が地下に漏えいしたり、汚水の発生・流出を防いだりするためにコンクリートなどを敷設する
騒音・振動の防止措置 重機の稼働や保管物の積み上げ・積み下ろしでの騒音や振動を抑える(小型車両、小型重機の使用など)
汚水流出の防止措置 油水分離装置や排水溝を設置し、汚水の流出を防ぐ
分別・保管の措置 電池・油類・モーターなど、火災の発生リスクがあるものを分けて保管する

環境汚染の恐れがある物品の輸出制限

環境汚染のリスクが高い物品は、原則国内で保管・再生をするものとし、輸出する場合には事前に環境大臣から確認を取る必要があります。
環境汚染のリスクが高い物品(特定要適正再生使用済み金属・プラスチック物品)には、使用済みの鉛蓄電池や電子スクラップ、基準を満たしていない使用済みプラスチックなどが挙げられます。
もし環境大臣からの確認を取らないまま輸出してしまった場合、罰則の対象となる可能性が高いため注意が必要です。

廃棄物処理法改正内容②災害廃棄物の処理推進


スクラップヤードの規制強化に加え、廃棄物処理法の改正には「災害廃棄物の処理推進」も含まれます。主にどのような改正内容となっているのか解説します。

処理推進の背景

災害廃棄物に関するルールは東日本大震災以降整備されてきました。
2024年に発生した能登半島地震などでの教訓も踏まえ、平時から広域での連携や役割分担などを法律で明確にさせることを目的に、改正内容で処理推進に関する項目が追加・変更されています。

例えば、災害が発生する前に策定すべき「災害廃棄物処理計画」の策定率は、都道府県だと100%ですが、市町村はまだ90%に留まっている状態です。
また、計画の内容に関しても、市町村の仮置場候補地の選定率が計画に反映されている割合は71%、周辺の自治体や民間事業者との災害支援協定締結率も81%に留まっています。
こうした背景もあり、平時から災害廃棄物対応を進めるために処理推進が盛り込まれたと考えられます。

協定の締結・計画に記載事項を追加

都道府県・市町村は、廃棄物処理業者などと非常災害廃棄物の処理に関する協定を締結するよう努める必要があると定めています。
また、市町村が定める一般廃棄物処理計画の中に、新たな項目が追加されました。一般廃棄物処理計画の記載事項には、もともと以下の事項を記載する必要があります。

1.一般廃棄物の発生量・処理量の見込み
2.一般廃棄物の排出抑制に向けた方策に関する事項
3.分別・収集する一般廃棄物の種類と分別の区分
4.一般廃棄物の適正な処理と実施する者に関する基本事項
5.一般廃棄物の処理施設の整備に関する事項

ここに、「非常災害時における④⑤に掲げる事項の施策に関する事項」が追加される形です。

災害廃棄物の処理が再々委託まで可能に

現行の制度では災害廃棄物の処理は再委託まで可能となっていますが、今回の改正によって再々委託まで可能となります。
例えば、ある県で災害が発生し、廃棄物の処理をその県の廃棄物協会(受託者)に委託した場合、現行では災害時のみ処理業者や別の県の廃棄物協会への再委託のみ認められています。
今回の改正によって、別の県の廃棄物協会からさらにその県内の処理業者に再々委託できるようになります。

廃棄物処理施設の設置に要する期間の短縮

災害廃棄物の処理を依頼された受託者は、廃棄物の処分を行うための一般廃棄物処理施設を設置する際、生活環境影響調査の結果が記載された書類の添付を省略できるようになります。
現行制度では、平時に一般廃棄物処理施設を設置する場合、まず生活環境影響調査を実施してから申請し、審査を通過して許可を取得できたらようやく設置することが可能です。
また、災害時に設置する場合でも審査は不要となるものの、生活環境影響調査は必ず実施しなくてはなりませんでした。

今回の改正では、災害時に生活環境の保全上の支障が出る可能性が少ない施設(繊維くずの破砕施設など)を設置する場合は、生活環境影響調査を行わず届出を提出するだけで設置できるようになります。
これにより、素早く災害廃棄物の処理を実行するための施設を増やすことが可能です。

最終処分場の指定

都道府県知事は、一般廃棄物の最終処分場として基準に適合すると認められた施設の設置者を、最終処分場の設置者として指定できます。
最終処分場の設置者に指定された場合、非常災害廃棄物の処分の委託を求められた際には、正当な理由がある場合を除いて、委託を受けなければなりません。

事業者にとってあまりメリットがないように感じられるかもしれませんが、指定を受けた非常災害廃棄物最終処分場は、廃棄物処理施設に対して義務付けられている定期検査が免除されます。
埋め立てが必要な災害廃棄物の最終処分場を平時から確保しておくことで、万が一災害に見舞われた際にも迅速かつスムーズに処理体制を構築できるでしょう。

専門支援機関への委託・JESCO事業への追加

国は、非常災害廃棄物の適正な処理を実施し、調査研究・技術開発を推進するとともに、該当する事務作業を中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)やその他の期間に委託できるようになります。
JESCOは、国などからの委託を受け、中間貯蔵事業(汚染された土壌・廃棄物を最終処分するまでに安全に保管する事業)とPCB廃棄物処理事業を手がける、政府全額出資の持ち株会社です。
例えば、これまで国が行っていた以下の業務を、JESCOが担うことになります。

  • 災害時:市町村・都道府県に対して、非常災害廃棄物の処理に関する提案や専門知識を持つ人材の派遣、適正な処理を迅速かつスムーズに実施するために必要な援助
  • 平時:非常災害廃棄物の適正な処理を迅速かつスムーズに実施するための情報・技術的知識の提供と、調査研究・技術開発の実施

廃棄物処理法の改正に伴う企業への影響


廃棄物処理法の改正に伴い、企業にはどのような影響が出てくるのでしょうか。ここでは、スクラップヤード事業者と排出事業者、それぞれへの影響について解説します。

スクラップヤード事業者への影響

まずスクラップヤード事業者にとって大きな影響を受けることになるのが、許可制の導入です。
これまで条例などが定められていた自治体以外のスクラップヤード業者も、許可を取得する必要があります。
既存のスクラップヤード事業者も、新たに許可を申請・取得しなければならないため、施設の見直し・改善などが必要になる場合もあります。

排出事業者への影響

今回の改正では主にスクラップヤード事業者に直接的な影響はありますが、排出事業者も対応が必要となる場面が出てくる可能性があります。
例えば、取引先のスクラップヤード事業者が許可を取得しているかの確認が必要です。
許可を取得していない事業者に渡してしまった場合、取引先が処罰を受けるリスクがあり、自社の廃棄物を排出できない可能性が考えられます。

施行前に企業がやっておくべきこと


廃棄物処理法の改正が施行されるまでに、各事業者はどのような準備を進めていくべきなのでしょうか。ここで、施行前に企業がやるべきことを紹介します。

スクラップヤード事業者がやるべきこと

スクラップヤード事業者がやるべきことは、以下のとおりです。

施設の保管基準・環境基準を遵守する

まずスクラップヤード事業者は許可を取得するために、施設の保管基準・環境基準を満たしている必要があるため、遵守されているかの確認は必須です。
例えば床面にコンクリートを敷設して土壌や地下への汚染を防げているか、消火設備を設置して火災延焼を防ぐ措置を講じているか、などが挙げられます。
また、設備を整えてから騒音や振動、水質汚濁などの環境測定を実施し、環境基準を満たしているか確認する必要があります。

日々の記録管理を徹底する

スクラップヤード事業者による不適正な取引を防ぐために、取引に関する帳簿の作成・保存が義務付けられるようになりました。
帳簿には、主に受入や搬出の記録に加え、品目や数量の管理も必要となります。まとめて作成するよりも、日々の記録管理を徹底したほうが良いでしょう。

廃棄物処理法以外の法令や各自治体の条例との兼ね合いも確認する

スクラップヤード事業者は、廃棄物処理法だけでなく様々な法令や各自治体の条例も含めて対応が必要となります。
例えば、消防法では金属スクラップを保管する際の火災対策として、危険物の適正管理や火災の予防措置などが求められています。
改正後に対応が必要なものが発覚する可能性もあるため、許可申請などで不備が出ないようにするためにも、あらかじめ自治体などに確認しておくと安心です。

排出事業者がやるべきこと【スクラップヤード規制】

排出事業者がスクラップヤード規則に対してやるべきことは、以下のとおりです。

取引先の許可取得状況の確認する

排出事業者は、これまで使用済み金属やプラスチック物品を取引先のスクラップヤード事業者に売却していましたが、スクラップヤード事業者に許可制が導入されたため、取引先が許可を取得しているか確認する必要が出てきます。
取引先が許可を取得しておらず、処罰対象になってしまうと、自社の廃棄物を売却・処理できなくなってしまうでしょう。
リスクを回避するためにも取引先の許可取得状況を確認し、自社に影響が出ないよう注意してください。

輸出ルートを経由していた場合の影響を確認する

自社が排出した使用済み金属やプラスチック物品が輸出ルートを経由していた場合、スクラップヤード事業者は環境大臣から確認を得る必要があります。
環境大臣からの確認が取れないと、輸出可否の判断や手続きなどで排出事業者にも影響が及ぶ可能性も考えられます。
そのため、事前に輸出ルートを経由しているかスクラップヤード事業者に確認を取っておきましょう。

自治体が設けた条例との二重対応が必要か確認する

千葉県をはじめ、各自治体の中にはすでに独自のスクラップヤードに関する条例を設けている場合もあります。
廃棄物処理法の改正が施行された場合、自治体によっては引き続き条例が存在する場合もあるため、自治体が設けた条例との二重対応が必要か確認してください。

排出事業者がやるべきこと【災害廃棄物の処理促進】

排出事業者が災害廃棄物の処理促進に関してやるべきことは、以下のとおりです。

平時から廃棄物処理の流れを可視化する

災害時には臨機応変な対応を求められることもあり、焦って間違った判断・対応をしてしまう可能性もあります。
このようなリスクを回避するために、平時から廃棄物処理の流れを可視化しておくことが大切です。

例えば、廃棄物処理の流れを図や一覧などで整理し、従業員全体で流れを把握しておきます。
また、災害が発生したらどの廃棄物を、どの委託先に、どのようなルートで出すのかを明確にしつつ、災害発生直後はどこに連絡を取るべきか把握することも大切です。

被災後の一時保管・仮置きについて考えておく

被災地での廃棄物の一時保管や仮置きについて、平時から考えておくことも大切です。
例えば、被災した場合に自社の敷地内のどこを一時保管・仮置きの場にするのか、危険物や有害物を仮置きしなくてはいけない場合、他の廃棄物と混ぜないようにするにはどのような工夫が必要か、などが挙げられます。

災害時の連絡体制と担当者を決めておく

災害時は、自治体からの要請や本社・拠点・処理業者との連携などが発生します。
今回の改正案によって国や自治体の役割は整理されましたが、企業側で連携が取れていなければ情報が錯綜し、対応が遅れてしまう可能性もあります。
そのため、平時から災害時の連絡体制を構築しておくことが大切です。
また、連絡を受けて情報を整理し、調整を図る担当者を決めておくと、災害時でもスムーズに対応できるようになります。

まとめ・改正に向けて管理・運営方針の見直しを図ろう

廃棄物処理法の改正では、これまで不適切な取引や保管を行ってきたスクラップヤード事業者をなくし、適正な事業者を増やすための規制強化と、災害廃棄物の平時での対応を推進するための内容となっています。
2026年7月時点ではまだ施行されていないものの、改正後に慌てて準備するよりも今のうちから丁寧に管理・運営方針の見直しを図ることが大切です。

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(編集:創業手帳編集部)