個人事業主の就労証明書はどう作成する?必要な場面と発行方法を解説

保育園申請から住宅ローン審査まで、就労実態を裏付ける書類の整え方

保育園や学童の申請、住宅ローン審査など、個人事業主にも就労証明を求められる場面は数多く存在します。会社員と違って勤務先が発行してくれないため、自分で作成しつつ、補足資料で信頼性を担保しなければなりません。

本記事では、提出が求められる代表的な場面や自作する際の書き方、信頼性を高める補足資料などを解説します。

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就労証明書とは

就労証明書とは、現在働いている事実を第三者に示す書類です。保育園や学童の入所選考、金融機関の与信審査、行政の各種申請など、安定して就労していることを客観的に証明する場面で活用されます。

働く事実を証明する書類

就労証明書は、氏名・就労開始日・雇用形態・勤務時間・業務内容といった項目を記載する書類です。こども家庭庁が公表する標準的な様式では、これらに加えて休憩時間、就労場所、雇用契約の期間なども記入欄に含まれています。

このように、就労証明書は「働いている=収入を得ている」という事実を可視化する書類として、大切な役割を果たしています。行政手続きやローンの審査の場など、さまざまな場面において広く利用されているのが特徴です。

個人事業主にも提出を求められる場面がある

雇用関係がなくても、就労証明書の提出を求められる場面は決して少なくありません。代表的なシーンは、以下のとおりです。

🏫
保育園・学童保育への入所・継続申請
✈️
外国人労働者の就労ビザ申請・在留期間更新
🏠
賃貸物件の入居審査
💼
転職時の採用審査
📋
行政からの各種手当・補助・認定申請
🏦
ローン・クレジット・住宅ローンの審査
📜
一部の資格・免許・制度の申請

個人事業主の場合、第三者の証明者が存在しません。定められたフォーマットや自作した証明書に、契約書や入金記録などを添えて裏付ける必要があります。

個人事業主の就労証明書は誰が作成する?

個人事業主の就労証明書は、原則として本人が事業主として作成します。会社員のように勤務先へ依頼するのではなく、自分で証明を行います。

ただし、書式は提出先によって決まっているケースが多く、自治体や金融機関の指示に従って記入していく流れになります。

基本は本人が事業主として記入する

証明者欄には屋号と氏名を記入し、雇用形態欄では「自営業主」を選択します。自営業主とは、個人事業主・経営者・代表者など自ら事業を営んでいる人を指す区分です。

家族の事業を無給で手伝っている場合は「家族従業者」、税務署に専従者として申告したうえで家族の事業に専ら従事している場合は「自営業専従者」を選ぶのが一般的です。

会社員のように勤務先へ発行依頼する書類ではない

業務委託先(取引先)に、証明を依頼する必要は基本的にありません。業務委託は雇用契約とは法的性質が異なり、取引先は「使用者」の立場にないためです。

取引先に証明を求めると、関係性に誤解が生じる可能性もあるため、避けたほうが無難でしょう。代わりに、業務委託契約書や請求書の控え、入金記録などを補足資料として提出できる場合があります。ただし、必要書類は提出先によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

自治体の様式や就労状況申告書を確認する

自治体によっては「自営業者用就労状況申告書」をはじめ、独自の様式を用意している場合があります。提出先のホームページで最新の様式と記入例を必ず確認しておきましょう。

就労証明書の提出が求められる場面

個人事業主が就労証明書を求められた場合、場面ごとに重視される情報や添付すべき補足資料が異なります。シーンに応じた準備を心がけましょう。

保育園・学童の申請

認可保育園や学童クラブの利用申請では、就労状況を点数化して選考に反映する自治体が多くあります。個人事業主の場合は、業務内容・月間の就労日数・就労時間・就労場所を具体的に記入するのが基本です。

点数制選考では、就労日数や就労時間、就労場所、業務内容などを客観的に確認できることが重要です。確定申告書の控えや業務委託契約書、請求書、入金記録などを添付すると、稼働実態を説明しやすくなります。

住宅ローン・賃貸契約の締結

金融機関や不動産会社は、就労継続性と収入安定性の両方を確認します。個人事業主の場合、確定申告書控え・青色申告決算書・所得証明書を組み合わせて提出するのが一般的です。

住宅ローンでは、個人事業主の所得の継続性を確認するため、一般的に確定申告書や青色申告決算書、納税証明書などの提出を求められます。フラット35では、取扱金融機関によって直近2年分の確定申告書や納税証明書を求める例があります。

民間金融機関では2〜3年分の所得実績を確認されることもあるため、開業から年数が浅い場合は、契約書や入金記録で稼働の継続性を補強しましょう。

転職活動や業務実績の証明

フリーランスから会社員への転職活動でも、職歴を裏付ける資料として就労証明書を活用できます。開業届・確定申告書・納税証明書・業務委託契約書などを組み合わせると、稼働実績の客観性が高まります。

採用企業によっては独自の様式を求められる場合もあるため、提出形式を事前に確認しておくと安心です。

就労証明書の書き方と記入欄ごとのポイント

こども家庭庁が公表する標準的な様式を参考に、個人事業主が記入する際のポイントを紹介します。

様式そのものは会社員と共通ですが、自営業主ならではの記入箇所や注意点がいくつかあるため、ケース別に整理しておきましょう。

基本の書き方

雇用形態欄では「自営業主」を選択します。自営業主には雇用契約自体が存在しませんが、雇用期間欄は「無期」にチェックを入れるのが一般的です。

就労時間欄は、提出先の様式や記入例に従い、通常の稼働時間や就労見込み、直近の就労実績を区別して記入します。個人事業主は雇用契約に基づく勤務時間がないため、自治体が用意する自営業者用の就労状況申告書や補足欄の指定を確認しましょう。

就労証明書のサンプル

こども家庭庁の標準的な様式では、休憩時間を含める欄や主な就労時間帯を記入する欄があります。証明日と証明者氏名は本人が記入し、屋号がある場合は事業所名欄に記載しましょう。

自宅で働いている場合

自宅兼事務所で稼働している場合は、就労場所欄に自宅住所を記入します。固定の事務所がない純粋な在宅ワークの場合も、標準的な様式では「就労場所が存在しない場合は、自宅等就労時に本人が主として存在している場所を記載する」と案内されているため、自宅住所を記入すれば問題ありません。

在宅ワークだからといって、証明力が下がるということは原則としてありません。業務内容欄に具体的な作業内容(例:Webデザイン、ライティング業務など)を明記すれば、稼働実態は十分に伝わります。

就労先が複数ある場合

複数の取引先と契約している場合は、主たる就労先を中心に記載し、他の契約は備考欄や補足資料で補完しましょう。標準的な様式の指示でも、就労場所が複数ある場合は「主たる就労先の住所を記載する」と明記されています。

複数の取引先がある場合は、主な取引先との契約書を中心に、必要に応じて他の契約書や請求書、入金記録を補足資料として添付しましょう。提出資料が多くなる場合は、案件名・契約期間・業務内容・入金状況を一覧表にまとめると、稼働状況を説明しやすくなります。

就労証明書のサンプル

就労証明書の補足資料6つ

就労証明書は単独で提出するよりも、複数の補足資料と組み合わせると信頼性が高まります。よく使われる補足資料は以下の6種類です。

① 確定申告書の控え
年間収入・所得の証明
📁 入手先:自身で保管

② 開業届の控え
事業開始の事実証明
📁 入手先:自身で保管

③ 業務委託契約書
現在の就労実態の証明
📁 入手先:取引先と締結

④ 請求書・通帳入金記録
報酬発生・受領の裏付け
📁 入手先:自身で発行・保管

⑤ 所得証明書・納税証明書
第三者発行の収入証明
📁 入手先:市区町村・税務署

⑥ 営業許可証・店舗資料など
業種特有の事業実態の証明
📁 入手先:自身で保管

確定申告書の控え

信頼性の高い収入証明が、確定申告書の控えです。年間所得・事業収入・業種区分が記載されており、第三者が客観的に判断できる材料となります。

注意点として、令和7年(2025年)1月から、税務署窓口や郵送で提出した申告書等の控えには、収受日付印が押なつされない運用になっています。

紙で提出する場合は提出した申告書等の写しを保管し、必要に応じて申告書等情報取得サービスや保有個人情報の開示請求などで提出事実を確認する方法があります。e-Taxで提出する場合は、メッセージボックスに届く受信通知を保存しておきましょう。

開業届の控え

正式に事業者であることを示す基本書類が、個人事業の開業・廃業等届出書(通称:開業届)です。開業届を提出していない場合、自治体によっては事業実態を確認する資料が不足していると判断されたり、別の就労区分として扱われたりする可能性があり、保育の必要性が低く評価されるリスクがあります。

開業届は、原則として事業を開始した年分の所得税の確定申告期限までに提出します。未提出の場合でも、提出が必要と判断される場合は速やかに手続きしましょう。あわせて、青色申告を利用したい場合は、青色申告承認申請書の提出期限も確認しておくことが大切です。

業務委託契約書

業務委託契約書は、現在進行中の就労実態を示す重要書類です。契約期間・業務内容・報酬額・契約先名称が明記されているため、開業初年度で確定申告書がない時期でも就労の事実を証明できます。

複数の契約先を抱えている場合は、すべての契約書を揃えると稼働の安定性が伝わりやすくなります。電子契約の場合は、PDFファイルとともに締結日が分かる送信記録も保管しておきましょう。

請求書・通帳入金記録

請求書と通帳の入金記録は、必ずセットで保管してください。請求金額と入金額が一致している事実を時系列で示せれば、契約が実際に履行されていることの強力な裏付けになります。

電子請求書を使っている場合は、発行PDFと送付メールの両方を保管しておきましょう。適格請求書発行事業者として登録している場合は、インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応した請求書に登録番号が記載されるため、事業者性を補強する一材料となる場合があります。

所得証明書・納税証明書

所得証明書・課税証明書は主に市区町村が発行し、納税証明書は国税については税務署、住民税などについては自治体が発行する公的書類です。

第三者機関が発行するため信頼性が高く、保育園・住宅ローン・児童手当などの申請で頻繁に求められます。納税証明書は発行元が分かれるため、提出先がどの証明書を求めているか事前に確認しましょう。

所得証明書は「所得額」を、納税証明書は「納税額や未納の有無」を証明する書類です。紛らわしいため、提出先がどちらを求めているかを必ず確認してから取得しましょう。

営業許可書・店舗資料・ホームページなど

飲食業や美容業など許認可が必要な業種では、営業許可書の写しが補足資料として有効に機能します。店舗の写真や事業用ホームページのURL、SNSアカウントなどの実態を証明できる資料も、稼働実態の補強材料として認められる場合があります。

ただし、補足資料として有効と判断されるかは提出先によって異なるため、事前に問い合わせて確認するのが安心です。

開業1年目で就労証明書を求められたときの対応

開業1年目はまだ確定申告書がないため、開業届・業務委託契約書・請求書・通帳入金記録の4点セットで現状を補強するのが基本的な戦略です。

開業届と契約書で事業開始を示す

開業届の控えで事業者として登録した事実を、業務委託契約書で具体的な稼働の枠組みを示しましょう。両者を揃えるだけで、「事業として認められる体裁」は整います。

開業届とあわせて「青色申告承認申請書」の提出も検討しましょう。期限内に申請し、複式簿記による記帳や電子申告などの要件を満たせば、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。

契約書・入金記録で実績を補強する

契約書は契約期間と業務内容を、請求書は実績を、通帳入金記録は報酬受領を裏付けます。「3月契約/4月初回請求/5月入金」のように時系列で整理して提示するのが効果的です。

複数案件を並行して進めている場合は、案件ごとに契約書〜入金までの流れを一覧表にまとめておくと、稼働の幅と継続性を示せます。

開業準備中の場合は領収書や事業計画も整理する

まだ受注に至っていない開業準備期間でも、事業実態を証明する方法はあります。設備購入の領収書や事業計画書、専門家との打ち合わせ記録、開設したホームページなどを整理しておきましょう。

「これから本格稼働する蓋然性」を示せれば、就労見込みとして評価する自治体もあります。ただし保育園申請では「就労中」と「就労予定」で点数が変わる場合が多いため、事前に窓口で確認しておきましょう。

よくある質問

最後に、個人事業主の就労証明書に関するよくある質問を紹介します。

開業届を出していない場合はどうすればよいですか?

開業届を出していない場合は、事業の実態や提出先の求める書類を確認したうえで、必要に応じて速やかに提出しましょう。

現在の国税庁の案内では、開業届の提出期限は事業を開始した年分の所得税の確定申告期限までとされています。提出と並行して、業務委託契約書や請求書、入金記録などで現在の稼働実態を補足するとよいでしょう。

在宅ワークでも就労証明書は作成できますか?

在宅ワークの場合でも、作成できます。就労場所欄に自宅住所を記入し、業務内容と勤務時間を具体的に記載してください。

業務委託先に証明してもらう必要はありますか?

業務委託先に証明を依頼する必要があるかは、提出先の運用によって異なります。一般的には、業務委託契約書や請求書、入金記録などが就労実態を示す補足資料として認められる場合があります。

まとめ

個人事業主の就労証明は、本人が事業主として作成する書類に確定申告書の控えなどの補足資料を組み合わせて、就労実態を示すのが基本です。

ただし、必要書類や記入方法は、保育園申請・住宅ローン審査・賃貸契約・行政手続きなど提出先によって異なります。開業1年目で確定申告書がない場合は、契約書や入金記録を時系列で整理し、事業開始後の稼働実態を説明できるようにしておきましょう。

(編集:創業手帳編集部)