Senjin Holdings Founding Partner 下山 明彦|メディア事業でEXITを経験した元・東大生起業家が次に狙うは「アートとビジネスの融合」
6億円で事業を売却、2社目を起業。目指すは海外進出

東大在学中に起業した仮想通貨メディアを約6億円で上場企業に売却後、東京藝術大学大学院・慶應義塾大学大学院を修了。現在は2社目の株式会社Senjin Holdings Founding Partnerを経営している下山明彦さん。「異才の融合によって、世界を加速させる」をテーマにAIマーケティングなどを展開しています。初年度から1.2億円の利益を創出し、現在の年商は数十億円規模です。
2025年に「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」にも選出された下山さんに、今までの歩みやアートとの向き合い方、今後の展望などについて伺いました。
株式会社Senjin Holdings Founding Partner 代表取締役
1996年生まれ、広島県出身。広島学院中学・高等学校を経て、東京大学を卒業。東京藝術大学大学院修士課程を修了後、現在は慶應義塾大学大学院博士課程に在籍。大学在学中に仮想通貨メディアを立ち上げ、6億円で上場企業へ売却。その後、マーケティング領域にて年商数十億円規模の企業を経営。一方で芸術活動も継続しており、経済産業省大臣室への作品提供やASEAN諸国との国際協働を実現。2025年大阪・関西万博では作品を展示。
この記事の目次
仮想通貨メディアで業界1位に
下山:Senjin Holdingsは「アートとビジネスの融合」を軸に、社会に新しい創造性を解き放つ挑戦を続けています。その取り組みは、AIを活用したマーケティング、事業成果に直結するAI開発、経営のOSとして実装するアート、実行型のインキュベーションの4つに大きく分かれています。
下山:東大ではデザイン思考について論文を書きました。芸大では実際に様々な企業のアイデンティティを軸に作品を制作し、慶應ではそういったアート作品が経営にポジティブな影響を与えるのかというテーマで論文を書いています。一連の流れを通して、自分の経営論が培われていくのと同時に、他の会社に対してのリブランディングや新規事業の立案、組織開発に伴走する根拠を作っている実感があります。
下山:仮想通貨で投資を始め、仮想通貨やブロックチェーンには今後世界を大きく変えるポテンシャルがあると確信しました。ところが、2017年当時は日本で仮想通貨を買っている人はほとんどおらず、きちんとした情報を得ようと思ったら海外メディアに頼るしかなかったんです。日本国内でも情報の整備をしていかないと、日本がどんどん遅れてしまうと思い、自分がやろうと起業しました。
1年以内に業界1位を取ると決めて東大生を30名ほど集め、他の競合メディアのように外部ライターを使わず、仮想通貨に詳しい学生が良質な記事を書くことで「仮想通貨」での検索1位を獲得。業界トップクラスのWEBメディアへと成長させることができました。
下山:大学2年生で起業した時に、4年生になるまでに会社をエグジットすることは決めていました。2017年にCoinOtakuを立ち上げ、2019年にSenjin Holdingsを立ち上げるのと同時期に、当時のインターンであった木田に社長を引き継ぎました。2020年にCoinOtakuを売却する相手として重視したのは、仮想通貨やブロックチェーンを愛している木田にとって納得がいく企業という点です。利益重視の大企業というよりは、ブロックチェーンへの参入に社運をかけているような企業を選びました。
異なる分野の専門家集団。チームは仕事に対する熱量が同質であることを重視
下山:Senjinという名には「先陣を切る」勇気、「先人を敬う」謙虚さ、そして「千尋の谷を登る」覚悟という3つの意味を込めました。そういった理念で立ち上げた会社なので、その理念に沿っている限りはどんな事業も柔軟にやっていこう、という考えが根幹にあります。
下山:仕事をする上で、モチベーションやマインド、熱量や意識が高いことは非常に重要だと考えているので、仲間集めではそういった点を意識しています。何かしらの領域でプロを目指していたけれども叶わず、違う領域で頑張りたいと考えている人がジョインしてくれることも多いです。例えば、今年ソフトバンクホークスの冠試合を弊社で行ったんですが、始球式で投げたのは弊社の執行役員である渡邊です。渡邊は学生時代に野球部に所属し、プロを目指していたピッチャーでした。同期がプロになってホークスに入ったのですが、それを見て「自分は大手に行くんじゃなくて、ベンチャーにチャレンジしよう」と思い、弊社に入ってくれました。そういった物語を大切にしています。
また、学生時代に起業をしたり、様々なコンテストで優勝したりした経験があり、大学生の中ではわりと有名だったので、創業したタイミングでインターンやアルバイトを募集したら200人ぐらい集まるといった状況でした。InstagramやYouTubeなどのSNSも昔から運営していて、そこから連絡をいただくこともあります。そういった方々と実際に会って採用につながるケースも多く、人集めで苦労した経験はあまりないですね。
下山:もちろん事業計画書も作りますし、事業として成功しそうかどうかも重要ですが、重きを置いているのは、その事業の責任者が魂を込めてやりたいと思い、僕も応援したいと思うかどうかです。
人類の歴史に残り得るような何かを成し遂げたい

下山:大学4年生の時に芸大に入りたいという気持ちが芽生えて受験をしたのですが、以前から自分が考えていることや思っていることを表現する際に、ビジネス的な表現と、いわゆるアート的な表現の両方ができる人間になりたいという思いがありました。仕事は単なる金儲けの手段ではないと思っている人ほど、仕事や働いている場所に対するクリエイティビティを求めるのだと思います。
人類の歴史に残り得るような何かを成し遂げたいと思った時に、単純に経済活動として数百億、数千億稼いだとしてもすごいけれど、歴史に残ることはないですよね。そういう観点で見たときに、事業や会社経営自体に哲学が必要であり、それを体現するために僕自身が自分の作家性や哲学、美学を深掘りする必要があると思って芸大に入りました。そうすると、見聞きするものや体験するものがすべて自分の作品や組織、経営のあり方などにアウトプットされるので、仕事とそれ以外の生活が明確に区別されないような働き方になってきます。
それと同様に、自分の中では表現したい領域や世界観に対して、ビジネスとアートも表出の方法が違うだけでわりと近いものであると思っています。
下山:基本的に作品を制作している時は、それがどれぐらいの利益を生むかということは全く考えていなくて、その作品が世界に存在する前後において、鑑賞者や社会、世界に対して新しい分岐を作ることができるかについて考えています。つまり、その作品がこの空間に存在することによって与えられる問いが、面白ければ面白いほどいいですし、見てくれている人における予期しない変化があるかどうかが重要だと思っています。
例えば大阪万博で展示したアート作品は、液晶ディスプレイの上にアクリル球を敷き詰め、投影された映像を屈折させることで複雑な視覚効果を表現したものです。これは「国際機関共同館」内のASEANブースに設置されましたが、前段として日本とASEANの大臣や政治家、王族の人たちが集まるサミットの中で、アートを通じて交流・対話を重ねてきた成果として制作・展示しました。僕はそこに参加する人たちに対して、国境を前提として国益を引っ張り合う議論の場の捉え直しも、あなたたちリーダーだったらできますよね、というような問いかけを込めて作品を作っています。
下山:自分にしか持てない哲学や作家性のようなものを尊重しながら事業を作る感覚を養うことにおいて、アートとかクリエイティブに触れる意義はあると思っています。例えば、人を健康にすることを目的とした会社があったとして、「そもそも健康とは何なのか?」という問いに正解はなく、事業を展開する中で自分なりの健康論を持つ必要があります。そこにたどり着くまでに思考を重ねたり、問い直しをしたり、自分と全然違う価値観に触れて、思考が揺らぐといった積み重ねが必要なのですが、そのひとつのプロセスとしてアートに触れることは有効だと思うんです。哲学や美学を持つことが起業家には重要ですし、そこに共鳴する人の結束も強いのではないでしょうか。
今後の目標は事業規模の拡大と海外進出
下山:異彩の融合というコンセプトで事業をやってきましたが、ハーバードの主席やジュリアード音楽院の主席を取った人など、ジョインしてくれる人のレベルがどんどん上がってきていて。これからはそういう人たちがやりたいことを事業にして、みんなで見たことがない世界を見たいなと思っています。
僕も今年で30になるので、そろそろ日本に対してきちんと良いことを事業としてやっている実感を得られる規模にはしていきたいと思っています。今は数十億の売上高ですが、30代の間に千億は超えたいですね。弊社のインキュベーション支援先としての経済圏として5社ほど子会社がありますが、それらで数千億の規模になるような事業体を作れたらいいなと思っています。
下山:O-1ビザ(※)を取ることができたので、今後は日本とアメリカを往復しながら仕事をする予定です。日本で行っているマーケティングの事業や、ファンドとして抱えている子会社のバリューアップをアメリカでも行いたいと考えています。また、アメリカ企業の日本進出や日本企業の対米マーケティングの支援も検討中です。今後、日本とアメリカを橋渡しするようなファンドや事業を作れたらいいなと思っています。
※O-1ビザ:科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツの分野で卓越した能力を持つ個人に発行される米国非移民就労ビザ
下山:僕が20代のうちにやってよかったこととして、「この人たちがいるなら、世界は捨てたもんじゃない」と思える友達を作ったことや、自分の欲望や需要と向き合い、まだ存在しない供給を自分で作る経験をしたことなどが挙げられます。
我々は起業家である前に人間です。自分がどういう人間でありたいかを考えた時に、僕の場合は、「まだ感じたことないものを感じたい」「数千年後の生き物が畏敬の念を抱くものを残したい」と思いました。だから起業もするし、アートも作るし、修行もするし、研究もしています。皆さんもぜひ、自分が人間としてどうありたいかを今一度考えてみてください。
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