法人化で経費にできるもの|できないものや設立費用の扱いも解説
法人化すると経費にしやすくなるものは増えるが、ルールを守ることが前提

個人事業主が法人化した場合、事業にかかった支出は経費として扱えます。経費にできる範囲が増えるため、より高い節税効果が期待できる点が魅力です。
しかし、ルールを守ることが前提です。ルールを知らずにかかった支出すべてを経費として計上すれば、ペナルティを受ける可能性もあります。
大きな損失につながるので、仕組みを理解することが重要です。
そこで今回は、法人化によって経費にできるものを具体的に紹介していきます。法人成りを検討している個人事業主や経費の範囲を知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
また「経費削減のポイント」と「節税につなげる」ポイントをさらに詳しく解説した無料の「経費チェックリスト」もあわせてご活用ください。
この記事の目次
法人化することで経費にできる主な項目一覧

個人事業主が法人化すると、以下のような費用を経費として計上できます。
| 経費にできるもの | 概要 |
| 自分や家族に支払う給料 | 役員報酬や専従者給与(定期同額給与など) |
| 社宅の家賃補助 | 従業員が住むために借り上げた社宅の家賃補助(会社が大部分を負担) |
| 旅費交通費 | 新幹線や電車などの交通費や出張時の日当 |
| 福利厚生費 | 忘年会や社員旅行、健康診断など |
| 車両関連費 | 社用車の購入や自動車税など |
| 生命保険料 | 役員や従業員を被保険者とする生命保険の保険料 |
| 退職金 | 役員や従業員が退職する際に支払う退職金 |
| 交際費 | 取引先との会食をする際の費用や贈答品の購入など |
個人事業主では認められにくかった項目も経費計上でき、大幅な節税が可能になる点が特徴です。下記では、それぞれについてより詳しく解説していきます。
自分や家族に支払う給料(役員報酬・専従者給与)
個人事業主であれば、事業で得た収益は個人の所得です。
しかし、法人化をすると事業主は会社から役員報酬を受け取るため、会社の収益と個人の所得は区別することになります。
役員報酬に関しては、原則経費計上はできないようになっていますが、定期同額給与や業績連動給与として支払う場合は、経費計上が可能です。
定期同額給与の場合、定款もしくは株主総会での決議で金額を決定し、事業年度中は毎月同額の報酬を支給する必要があります。
そのため、不相当に高額だと否認されるリスクがあるので注意してください。
また、家族が役員や従業員として従事している場合は、生計が一緒ではなく別であっても給与の経費計上が可能です。
社宅の家賃補助(社宅制度)
会社によっては従業員が住む社宅を用意するケースもあります。多くの場合では、社宅の家賃は会社が何割かを負担して従業員が残りを負担する仕組みです。
住む場所を確保でき、家賃の負担が減るので従業員としても大きなメリットがあります。
そのような社宅も一定割合を経費として計上できます。ただし、社宅用の物件を個人名で契約すると社宅とは認められません。
法人化する場合には契約する名義を会社名義にしなければいけないため、契約時には注意が必要です。また、原則として駐車場代や光熱費は対象外です。
経営者の出張時の日当(旅費交通費)
個人事業主が出張をした場合でも、交通費や宿泊にかかった費用は経費計上できますが、事業主に日当を支払うことは認められていません。
しかし、法人化すれば経営者に対しても日当を支払うことができ、加えて経費として計上することも可能です。
また、日当は非課税となるので源泉徴収の対象にもならず、所得税にも加算されない特徴があります。
日当を経費にしたい場合、出張旅費規程を作成しなければいけません。日当の額や交通費、宿泊費などの取り扱いをあらかじめ定める必要があります。
妥当だと認められる金額を定めて作成してください。
福利厚生費(忘年会・社員旅行・健康診断など)
労働環境の改善やモチベーションアップにつながるための費用が福利厚生費です。新年会や忘年会、社員旅行や健康診断のための費用が対象になります。
忘年会の場合、すべての従業員に参加資格があり、相当数と認められる人数が参加していることに加え、領収書や会の案内を行ったチラシなどを保存していることが条件です。
社員旅行に関しても、全従業員が対象で社会通念上妥当な金額と期間であれば、福利厚生費として認められます。
参加するのが役員のみの旅行や一定の従業員にしか案内をしていない旅行などは、対象外となるので注意してください。
車両関連費(社用車・ガソリン代・保険料)
仕事で使用するための車両の使用、維持・管理をするための費用が車両関連費です。ガソリン代や車検の費用、自動車税、保険料などが経費に計上できます。
ただし、法人が所有する車は業務利用が前提です。
法人の経費として処理する場合、個人使用は認められないため、個人使用が含まれる場合はその分を按分して経費負担を調整しなければいけません。
仕事のみで車両を活用する場合に有効だといえます。
また、社用車の購入費に関しては、減価償却として数年で費用化していきます。普通車であれば6年、軽自動車であれば4年が基本です。
個人からの名義変更が必要な点や事業実態の証明が必要な点に注意してください。
生命保険料(法人契約による節税)
法人化すると、自分の生命保険でもルールに従えば全額または一部を損金として計上できます。
条件は、法人が契約者と受取人になることです。メリットとしては、解約返戻金を事業の運転資金として活用できる点です。
個人事業主の場合、保険料の受取人が親族になることが多く、その場合は保険料を経費にすることができません。
そのため、万が一のことを考えて会社にお金を残したいと考えているなら、法人成りをすることで計上できる経費を増やすことが可能です。
ただし、保険金や解約返戻金を受け取った際には法人税の課税対象となるので注意が必要です。
退職金(役員退職金による所得分散)
個人事業主には退職の概念がないので、廃業しても退職金を受け取ることがありません。しかし、法人化をすれば役員や従業員が退職する際に退職金を支払うことができます。
退職金は原則損金計上が可能で、大きな節税効果が期待できます。
そのため、退職金を計画的に支給すれば、所得税や住民税を節税できるほか、法人税も減らすことが可能です。
ただし、適正な額である必要があり、不相当に金額が高いと税務署から否認されるリスクがあります。妥当な金額を設定して支払うよう注意してください。
また、経営セーフティ共済を活用すれば、掛け金を全額損金にしながら退職金を積み立てることが可能です。活用を検討してみてください。
交際費(法人なら年間800万円まで損金算入可能)
交際費とは、取引先といった事業に関連のある相手に対しての接待や贈答などを行うために支出する費用です。
資本金1億円以下の中小企業であれば、800万円までを損金算入できます。
ただし、帳簿書類に飲食費であることを明らかにする必要があり、以下のような項目を記載しなければいけません。
-
- 会食があった年月日
- 参加した人たちの氏名や関係性
- 会食をした店名や飲食の金額
- 飲食費であることを明らかにする資料 など
節税効果が大きいので接待が多い会社であれば大きなメリットを受け取れます。
会食をした際には忘れずに領収書をもらい、上記項目を記載できるよう準備をしておくことがポイントです。
法人化で経費の範囲が広がる理由

個人事業主が法人化することで、なぜ経費の範囲が広がるのか疑問に感じている人もいるでしょう。
その理由としては、個人と法人では法律上、まったくの別人格として扱われる点が挙げられます。
個人事業主の場合、事業の財布と個人の財布に法的な区別がなく、事業の利益はそのまま事業主の所得になります。
「自分に給与を支払う」といった概念がないため、生活費は経費にすることはできません。
一方、会社は独立した人格を持っており、社長は会社に雇われている従業員のひとりです。
そのため、会社が従業員となる社長に対して提供する給与や福利厚生は経費として認められるようになっています。
社長も従業員のひとりという位置づけをうまく利用することで、個人事業主ではなかった支出を経費化すれば、会社の利益を圧縮でき節税につながる仕組みです。
法人化しても経費にできないもの

個人事業主が法人化すれば経費の範囲が広がります。しかし、経費にできない支出も存在します。
ペナルティを受けないためにも間違って計上することのないよう、あらかじめ経費にできないものを把握しておくことが大切です。
事業との関連性がない私的な費用
事業とは関連のないプライベートでの支出は経費として計上できません。
例えば、日常生活で使用する日用品や食費、趣味で使う道具の購入や仕事と関係のない人との食事代などです。
売上に結びつかない費用は経費にできない点を覚えておいてください。事業目的が混在する場合は、按分することで経費計上できるものもあります。
その場合は、領収書の保管や仕事で使う範囲を記録することを忘れないようにしてください。
未使用の消耗品・余剰在庫(棚卸資産の扱い)
仕事で使うためと考えて購入した事務用品は消耗品費として経費計上できます。しかし、計上できるのは実際に使った分のみです。
「使うだろう」と考えて購入した文具でも、使用せずに残っている場合は経費として認められません。
そのため、消耗品を用意する際には使う分のみ購入することが大切です。
また、余剰在庫に関しては収益につながらないので売上を上げるまでは資産として分類されます。
大量仕入れは単価コストを削減できるメリットがありますが、余った場合は資金元本を回収できないだけではなく、経費にも計上できないので「売れる・売れない」を見極めることが重要です。
法人税・法人住民税・罰金(損金不算入の公租公課)
法人税や法人住民税は、会社に課せられた納付義務です。支出があるので経費になると考える人もいますが、損金算入はできないので経費にはなりません。
しかし、法人事業税に関しては租税公課として経費計上が可能です。また、罰金に関しては個人に課せられるペナルティとなるため、経費計上できません。
役員借入金・役員貸付金の処理ミス
役員借入金は、会社のために立替えたお金となり、役員が個人の持ち出しで会社の支払いを代行した場合などに発生します。
会社から役員に対して借入金を返済しても、借りたものを返しただけとなるため経費とはなりません。
一方、役員貸付金は会社のお金を役員が個人利用した場合に発生します。役員に預ける資産の扱いとなるため、借入金と同様に経費にはなりません。
法人化の手続き費用(創立費・開業費)の正しい計上方法

ここからは、個人事業主が法人化する際にかかる費用の正しい計上方法について解説していきます。
「創立費」と「開業費」の違い・使い分け
創立費は、会社設立のために支出した費用を指し、開業費は設立してから事業をスタートするまでの準備期間に支出した費用を指します。
創立費と開業費それぞれにかかる費用は以下の通りです。
・創立費
定款認証手数料、設立登記にかかる印紙代、設立前の従業員に対する給与、設立前の事務所賃借料など
・開業費
事務所契約時に発生する仲介手数料、名刺や会社案内のパンフレットなどの作成費用、広告宣伝費、市場調査費、従業員の採用にかかる費用、研修費、事業に必要な備品費など
上記費用が発生したら、領収書や契約書といった証憑書類は必ず補完し、支出の内容についても明確に記録しておいてください。
勘定科目は「繰延資産」で計上
創立費や開業費を会計処理する場合の勘定科目は「繰延資産」です。繰延資産は、任意の期間に経費として計上できる科目です。
そのため、経費が発生した設立事業年度に必ず計上する必要がないという特徴を持ちます。
例えば、「3年目に利益が多く出たため節税したい」となれば、その年に創立費や開業費を繰延資産として計上できます。
利益が多く出た事業年度まで繰越すことが可能となり、節税につながる点が大きな魅力です。
実費以外にいくらかかる?法人設立の費用目安
法人化では、実費としての登録免許税や定款認証費用などに加え、専門家へ依頼する場合の報酬も発生します。
株式会社の場合、設立費用はおおよそ20万〜30万円程度が目安で、内訳は登録免許税(最低15万円)、定款認証費用(約5万円)などです。
一方、合同会社であれば定款認証が不要なため、10万円前後に抑えられるケースもあります。
さらに、司法書士や行政書士に手続きを依頼する場合は、別途5万〜10万円程度の報酬が加わることが一般的です。
これらは経費として計上できるケースもあるため、事前に整理しておくことが大切です。
【判断基準】経費が増えるメリットと社会保険料のデメリット

法人化は、役員報酬や社宅などで経費の幅が広がる反面、社会保険への加入義務が最大のコスト増となります。
- メリット:所得分散や住宅・車両の経費化による高い節税効果。
- デメリット:社会保険料の折半負担、赤字でもかかる法人住民税(年約7万円)。
節税額がこれらの維持コストを上回るかが判断の鍵です。
利益いくらで法人化すべき?「法人成り」の目安
検討の目安は、事業利益500万円超です。
- 所得800万円超:所得税より法人税のほうが安くなり、税金面で有利になります。
- 売上1,000万円超:消費税の免税期間を最大2年延長できるメリットがあります。
- 家族給与の活用:親族へ給与を分散し、世帯全体の税率を下げたい時。
利益が安定して500万円を超えるなら、法人化を検討すべきタイミングといえます。
まとめ・法人化で経費を正しく活用し、戦略的な節税を
個人事業主が法人化すれば経費計上できる範囲が広がり、より高い節税効果が期待できます。
役員報酬や社宅制度、出張時の日当など、これまでは難しかった経費戦略も可能です。しかし、あくまでも事業に関係のある費用である点が重要です。
ルールを無視すれば大きな損失を被る危険性があるので注意してください。紹介した内容を参考に、戦略的に節税を進めてください。
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(編集:創業手帳編集部)
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