IPOにかかる費用を徹底解説│上場までのコスト・内訳・成功へのポイント

IPOを実現するには多額の費用が必要!


IPO(新規公開株式)は、未上場企業が新たに上場し、投資家に株式を取得させることを指します。
IPOは企業の成長を加速させる大きなチャンスである一方、実現までには多額の費用と長期的な準備が必要です。
上場審査に対応するための内部管理体制の整備や、監査法人・証券会社への報酬、さらには人材採用やシステム投資など、様々なコストが発生します。

本記事では、IPOにかかる具体的な費用の内訳や相場感、コストを抑えるためのポイントについてわかりやすく解説します。
これから上場を目指す企業にとって、現実的な準備を進めるための参考にしてください。

創業手帳の公式LINEでは、補助金・助成金、AI活用、店舗運営に役立つ最新情報をお届けしています。制度内容は変更されることもあるため、最新情報をチェックしたい方はぜひご登録ください。

IPOにかかる費用の総額目安|準備〜上場後までいくら必要?


IPOの準備から上場するまでにかかる費用の目安は、総額で数千万円~1億円超となります。
例えば、IPOでは通常2期分の監査が行われた財務諸表が必要なため、最低でも2年間は監査法人と監査契約を結ぶ必要があります。
企業の規模や業種などで異なりますが、年間で数百万円~数千万円程度の監査報酬を支払いが必要です。

準備だけでも年間数千万円は必要になってくるのに対して、上場後も年間数千万円規模の維持費がかかってきます。
IPOにかかる費用の総額は、数年にかけてかなりの金額が必要になることを把握することが大切です。

IPOにかかる費用の内訳・目安


IPOにかかる費用は、内訳ごとに異なります。IPOにかかる費用の内訳と目安を表にまとめてみました。

タイミング 項目 費用
IPOの準備段階 主幹事証券会社への報酬 500万円~2,000万円程度
監査法人への費用 ショートレビュー:150万円~400万円程度
準金商法監査:1,000万円~数千万円程度
内部統制の関連費用 500万円~1,000万円程度
申請書類の印刷費 200万円~600万円程度
弁護士への報酬 500万円~2,000万円程度
IPOコンサル会社への報酬 500万円~1,500万円程度
IPO実施時 上場審査料・新規上場料 【上場審査料】
グロース市場:200万円
スタンダード市場:300万円
プライム市場:400万円
【新規上場料】
グロース市場:100万円
スタンダード市場:800万円
プライム市場:1,500万円
株式の公募・売出費用 【公募】
公募株式数×公募価格×0.0009
【売り出し】
売出株式数×売出価格×0.0001
登録免許税 資本組入額×7/1,000
証券会社の引受手数料 公募総額の5~9%程度
IPO完了後(上場後) 年間の上場維持費 グロース市場:48万円~408万円
スタンダード市場:72万円~432万円
プライム市場:96万円~456万円
法定開示書類や適時開示書類の作成費用 年間数百万円~数千万円程度
新株発行・上場にかかる費用 【上場株式の発行・処分】
1株あたりの発行価格×発行または処分する株式数×1/10,000
監査費用 500万円~1,500万円程度
株式事務の委託費用 400万円~2,000万円程度
弁護士費用(リーガルチェック) 300万円~500万円程度

IPOの準備段階で発生する費用の内訳


まずはIPOの準備段階で発生する費用の内訳を紹介します。準備段階でもかなりのコストが発生することを覚えておきましょう。

主幹事証券会社への報酬

株式上場を行う場合、まずは複数の証券会社が発行する株式を引き受け、販売してもらう必要があります。
証券会社の中でも特に株式を多く引き受ける証券会社を、主幹事証券会社と言います。
この主幹事証券会社はIPOのスケジュール管理や公開価格を決定するなど、株式上場を目指す上で欠かせない存在です。

主幹事証券会社は投資家に向けた説明会の開催や市場調査なども実施することから、IPOのアドバイザーとして活躍してくれるため、そのための報酬として年間500万円~2,000万円程度を支払うことになります。

監査法人への費用

IPOの準備段階では、監査法人によるショートレビューと準金商法監査が行われます。
ショートレビューは、財務やガバナンスに関するアドバイスを監査法人から受ける監査方法です。
一方、準金商法監査は上場直前2期の財務諸表などに行う監査で、上場企業とほぼ同じ水準で監査が行われます。
ショートレビューは150万円~400万円程度になりますが、準金商法監査は1,000万円~数千万円程度が目安となります。

内部統制の関連費用

IPOの審査項目には内部統制の整備なども含まれており、審査に通過するためにも内部統制を整備することが重要です。
内部統制を専門家に依頼した場合、年間500万円~1,000万円程度が必要となります。

なお、上場すると内部統制報告書の提出が求められます。準備段階では提出する必要はありませんが、上場後は監査証明が免除されていても内部統制報告書の提出は必要です。

申請書類の印刷費

上場申請に必要な書類を印刷する場合、専門の証券印刷会社へ依頼するのが基本となります。
印刷会社に依頼するのは、上場企業は各ステークホルダーに向けて各種資料を開示する必要があり、その資料作成をサポートするのが証券印刷会社だからです。
例えば、上場申請書類(Ⅰの部、Ⅱの部など)の印刷費用は200万円~400万円、有価証券届出書や目論見書などの印刷費用は300~600万円程度のコストが発生します。

弁護士への報酬

上場に向けた法務関連の業務は、専門的かつ作業量も多くなるため、企業法務を専門に扱う弁護士事務所へ依頼するのが一般的です。
弁護士との顧問契約料は、年間で約500万円~2,000万円が目安となりますが、実際に支払う費用は弁護士との契約内容や稼働時間によって異なるため、事前に確認することが大切です。

IPOコンサル会社への報酬

社内の人員だけでIPOを実施できれば良いですが、やるべき作業が多いだけでなく、専門性も高いことから外部に依頼することも視野に入れておく必要があります。
IPOコンサル会社に依頼すれば、申請書類や各種説明資料の作成支援、スケジュールの策定・マネジメント、さらに上場後の経営・ファイナンスに関するアドバイスを受ける場合もあります。
IPOコンサル会社への報酬は、各企業や依頼する内容によっても異なりますが、目安は500万円~1,500万円程度です。

IPO実施時に発生する費用の内訳


IPOを実施する際にも、様々な費用が発生します。それぞれの内訳を詳しく解説します。

上場審査料・新規上場料

IPOを申請する際に上場審査料、審査に通過すると新規上場料の支払いが発生します。
上場審査料と新規上場料は上場する市場によって異なるため、あらかじめ確認することが大切です。

【各市場の上場審査料・新規上場料】

上場審査料 新規上場料
グロース市場 200万円 100万円
スタンダード市場 300万円 800万円
プライム市場 400万円 1,500万円

なお、この金額には消費税額・地方消費税額は含まれていないため注意が必要です。

株式の公募・売出費用

株式の公募や売出しを行う際にも、証券取引所に手数料の支払いが必要です。手数料は発行株数によって異なり、公募と売出しでそれぞれ計算方法も異なります。

【公募の計算式】
公募株式数×公募価格×0.0009

【売出の計算式】
売出株式数×売出価格×0.0001

なお、グロース市場に上場する場合、公募・売出費用の上限は1,900万円までに設定されています。

登録免許税

登録免許税は、企業や不動産の登記・登録で発生する税金です。IPOを実施する際には登録免許税を納める必要があります。

登録免許税を求めるには、資本組入額×7/1,000の計算式を用います。
資本組入とは、企業に損失が出てしまった際の備えとして、資本準備金の一部を資本金に組み入れる仕組みです。

また、新たに株式を発行して資本金を増加させる場合にも登録免許税が発生し、増加分に対して税金が課されます。
納める金額は「15万円」または「増加した資本金額×0.7%」のいずれか高いほうです。

証券会社の引受手数料

IPOで株式を公募する場合、証券会社に株式を購入(引受)してもらうことになります。この引受を行ってもらった報酬として、引受手数料を支払います。
引受手数料は、公募総額の約5~9%が目安です。
資金調達規模がプライムやスタンダードよりも低い傾向にあるグロース市場でも、数千万円規模の引受手数料が発生する可能性があるため、注意が必要です。

IPO完了後(上場後)に発生する費用の内訳


IPOは上場がゴールではなく、上場後も継続的にコストが発生し、むしろ、上場企業としての信頼性を維持するために、一定水準の体制や情報開示を維持し続けることが必要です。
そして、その分の費用負担は長期的に続きます。
ここでは、IPO完了後に発生する主な費用の内訳について解説します。

年間の上場維持費

上場企業は、証券取引所に対して上場維持のための費用を毎年支払う必要があります。
これは「上場料」や「上場維持料」と呼ばれ、企業の時価総額や市場区分によって金額が異なります。
一般的には数十万円~数百万円規模となることが多く、上場企業である限り継続的に発生する固定費の1つです。

上場時価総額 グロース市場 スタンダード市場 プライム市場
50億円以下 48万円 72万円 96万円
50億円超え250億円以下 120万円 144万円 168万円
250億円超え500億円以下 192万円 216万円 240万円
500億円超え2,500億円以下 264万円 288万円 312万円
2,500億円超え5,000億円以下 336万円 360万円 384万円
5,000億円以上 408万円 432万円 456万円

法定開示書類や適時開示書類の作成費用

上場企業には、有価証券報告書や四半期報告書、決算短信などの法定開示書類の作成・提出が義務付けられています。
また、重要な経営情報については適時開示も求められ、これらの資料作成には専門的な知識と工数が必要です。
社内の人件費に加えて、外部のコンサルティング会社や印刷会社への委託費用が発生する場合もあります。
そのため、費用は年間で数百万円~数千万円程度は見込んでおくことが大切です。

新株発行・上場にかかる費用

上場後も資金調達のために新株発行(公募増資や第三者割当増資など)を行うケースがあります。その際には各種手続きにともなう費用が発生します。
例えば、上場株式を発行または処分するケースでは、1株あたりの発行価格に発行または処分する株式数と1万分の1を乗じた金額の支払いが必要です。

上場株式などを発行・処分する場合 1株あたり発行価格×発行または処分する株式数×1/10,000
新株予約権の対象になる株式が上場株で、新たに新株予約権を発行する場合 (新株予約権の発行価格×新株予約権総数+新株予約権行使にともなう払込金額×新株予約権対象株式数)×1/10,000
上場株式などの売出を実施する場合 売出株式数×売出価格×1/10,000
新株を上場する場合 1株あたりの発行価格×発行または処分する株式数×8/10,000

追加上場や市場変更などを行う場合にも、別途コストが必要になる点に注意が必要です。

監査費用

上場企業は、監査法人による会計監査を継続的に受ける義務があります。
監査費用は企業規模や取引きの複雑さによって変動しますが、年間で500万円~1,500万円程度が一般的です。
内部統制の整備状況や海外子会社の有無などによっても費用は増減するため、長期的なコストとして見込んでおく必要があります。

株式事務の委託費用

株主名簿の管理や配当金の支払い、株主総会の運営サポートなどの株式事務は、信託銀行や専門機関に委託するのが一般的です。
これにより、正確かつ効率的な株主対応が可能になりますが、委託費用として年間400万円~2,000万円程度のコストが発生します。株主数が増えるほど費用が増加する傾向もあります。

弁護士費用(リーガルチェック)

上場企業は、開示内容の適法性や契約書のチェック、コンプライアンス対応などにおいて、弁護士の関与が不可欠です。
特に適時開示や重要な意思決定に関する法的リスクを回避するため、継続的にリーガルチェックを依頼するケースが多くなります。
顧問契約を結ぶ場合には月額費用が発生し、案件ごとに追加費用がかかることもあります。年間300万円~500万円程度は発生すると考えておいてください。

IPO費用は市場区分で変わる?グロース・スタンダード・プライムのコスト差

項目 グロース市場 スタンダード市場 プライム市場
上場審査料(東証) 200万円 300万円 400万円
新規上場料(東証) 100万円 800万円 1,500万円
年間上場料(目安) 48万円~+TDnet利用料 72万円~+TDnet利用料 96万円~+TDnet利用料
上場時の直接費用の傾向 比較的抑えやすい 中程度 高くなりやすい
上場後の維持コストの傾向 比較的軽い やや重い 重くなりやすい
実務負担の傾向 比較的軽め 一定の整備が必要 高度な体制整備が必要になりやすい

※補足
・年間上場料は、上場時価総額に応じて変動します。
・別途、TDnet利用料(年12万円)がかかります。
・実際のIPO費用は、東証への支払いだけでなく、監査法人・主幹事証券会社、弁護士、IPOコンサルなどの報酬によって大きく変動します。

東京証券取引所のIPOでは、どの市場を目指すかによって上場時に必要となる費用や、上場後にかかる維持コストが変わります。
一般的に、グロース市場は比較的コストを抑えやすく、スタンダード市場・プライム市場になるほど上場時の費用や継続的な負担が大きくなりやすい傾向があります。
特に、東証に支払う上場審査料や新規上場料は市場区分ごとに差があるため、あらかじめ把握しておくことが大切です。

さらに実務上は、求められるガバナンス水準や開示体制、内部管理体制のレベルも市場によって異なるため、外部専門家への依頼費用や社内整備コストにも差が出やすくなります。
まずは、各市場の違いを一覧で確認しておいてください。

IPO費用を抑えるためにできること


IPOには、監査法人・主幹事証券会社・弁護士・IPOコンサル会社への報酬、内部統制や開示体制の整備費用など、多くのコストがかかります。
ただし、「費用を抑える=必要な準備を削る」ではありません。
無理にコストカットをすると、上場審査での指摘が増えたり、準備のやり直しが発生し、結果的に余計な費用や時間がかかることもあります。

IPO費用を抑えるポイントは、必要な支出を見極めつつ、外部専門家への依頼範囲や準備の進め方を最適化することです。
ここでは、実務上特に効果の大きいポイントを紹介します。

早めに準備を始めて、やり直しコストを防ぐ

IPO費用を抑える上で重要なのは、上場準備を早めに始めることです。
IPO準備は、短期間で一気に進めようとすると、内部統制の整備不足や決算・開示体制の不備が見つかりやすくなり、追加のコンサル費用や監査対応費用が膨らみやすくなります。

特に、監査法人のショートレビューや主幹事証券会社の指摘事項は、対応までに時間がかかるものも少なくありません。
余裕を持って準備を進めれば、後からの修正や再整備を減らし、結果的にコストを抑えやすくなります。

IPOコンサルや外部専門家に「全部丸投げ」しない

IPOコンサル会社や外部専門家は、IPO準備を進める上で心強い存在ですが、依頼範囲を広げすぎると費用が大きく膨らみます。
例えば、内部統制文書の作成や開示資料のたたき台作成など、すべてを外部に任せると便利な反面、継続的な委託費用が発生しやすくなります。

自社で対応できる部分は内製化し、専門家には「レビュー」「不足部分の補完」「難易度の高い論点対応」など、必要な領域に絞って依頼するのが基本です。
特にIPOコンサルは、作業代行型かアドバイス型かで費用感も変わりやすいため、契約前に支援範囲を明確にしておいてください。

自社に合った市場区分・上場スケジュールを選ぶ

IPO費用は、どの市場を目指すかによっても大きく変わります。
グロース市場は、スタンダード市場やプライム市場に比べて、上場審査料や新規上場料、年間上場料を比較的抑えやすいのが特徴です。

また、無理に短期間での上場を目指すと、監査法人や主幹事証券会社への対応が増え、社内の整備も外注に頼りやすくなるため、総コストが上がりやすくなります。
自社の成長段階や資金調達の目的に合った市場区分を選び、現実的なスケジュールで準備を進めることが、結果的に費用の最適化につながります。

IPOを成功させるためのポイント


IPOを成功させるためには、早めに準備を開始してスケジュール管理を徹底することが大切です。
上記でも解説したように、早めに準備を開始することによってコスト面でも有利になります。
さらに、内部管理体制などを早期に整備することで、運用実績も積み重なるため上場審査で有利に働く場合があります。
逆に審査直前になって慌てて内部管理体制などを整備したとしても、運用実績がないことで不十分だと判断されてしまう可能性も否定できません。

また、スケジュール管理の徹底も重要といえます。IPOに向けた準備では必要な作業が多く、定期的に進捗を確認しないとスケジュールに遅れが生じるケースも少なくありません。
期限内に完了させられるように、スケジュール管理も徹底して行うようにしてください。

まとめ・IPO費用がいくら必要か把握し、計画的に準備を進めよう

IPOは企業がさらに成長していく上で重要な選択肢の1つであり、資金調達や信頼関係の構築などメリットも多いです。
しかし、いざIPOを実施しようとすると準備段階から上場後も多額の費用が必要になってきます。
企業の成長戦略としてIPOを目指す際には、長期的な計画に基づき、まずはIPO費用がどれくらい必要になるか把握した上で、徹底したスケジュール管理のもと準備を進めていくことが大切です。

創業手帳(冊子版)では、IPOを含め企業の成長戦略に役立つ情報や最新トレンドなどを詳しく紹介しています。経営・ビジネスにぜひお役立てください。

(編集:創業手帳編集部)