公務員ができる副業があるって本当?解禁された事例や仕事選びの注意点を解説
公務員でもルールを守れば副業ができる時代になってきている
多くの一般企業では副業が解禁され、その流れは公務員にも及んでいます。ルールを守れば公務員の副業が認められるケースが増えてきました。
しかし、公務員が無断で副業をスタートすれば、減給や停職といった処分を受けるかもしれません。
どのような副業であれば認められるのかを知り、ルールを遵守して副業を始めてください。
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この記事の目次
公務員の副業が禁止なのはなぜ?
多くの企業が副業を解禁しているものの、原則として公務員の副業は禁止されています。
そもそも、なぜ公務員の副業が禁止されているのでしょうか。
国家公務員法と地方公務員法では、それぞれ公務員の3大原則が定められています。
これは、以下の3つの原則です。
-
- 信用失墜行為の禁止
- 職務専念の義務
- 守秘義務
上記3つの原則から、公務員としての信用や職務専念、さらに守秘義務の観点から自由な副業は禁止されていると解釈できます。
国家公務員が副業禁止の理由
国家公務員は、国家公務員法第96条第1項で「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」と定められています。
つまり、国家公務員は国と国民のために働いて職務をまっとうしければならないので、副業などほかの仕事で報酬を得ることは慎まなければいけません。
さらに、服務規律として、私企業からの隔離(国家公務員第103条)とほかの事業または事務の関与制限(国家公務員法104条)が定められています。
営利企業の役員などになる場合は人事院からの承認が必要であり、営利企業以外での副業を行う時には内閣総理大臣および所轄庁の長からの承認が必要です。
しかし、実際に承認を得るのは困難であり、基本的には副業ができないといえます。
地方公務員が副業禁止の理由
地方公務員も同様で、地方公務員法で三原則が定められているほか、地方公務員法第38条でも営利企業などの従事制限が定められています。
地方公務員も市民のために奉仕する役割があるため、基本的には副業が禁止されています。
地方公務員は公務の能率の確保、職務の公正の確保、職員の品位の保持などのため、国家公務員と同じように副業は許可制です。
ただし、自治体によっては副業の許可基準を明確にすることで、社会貢献のための兼業を促進しているケースもあります。
以下では、公務員の副業が認められたケースを紹介します。
公務員の副業が認められた事例
公務員は原則として副業ができません。しかし、一部の地方自治体では副業が認められ始めています。
公務員の副業許可基準について、具体的に判断した事例は複数あります。
公務員の副業には、
①公務の遂行に支障が生じないこと
②職務の公正を確保できること
③職務の品位を損ねないこと
が必要です。
つまり、①の基準であれば、週休日や年次有給休暇を使っている、②は兼業先が非営利団体である、③は報酬が社会通念上相当であると認められる必要があります。
以下では、どのような事例が認められたのかを紹介しています。
山形県新庄市|商業活性化支援
公務員の副業が認められた事例として、山形県新庄市で主任級の職員が補助金に頼らない商店街活性化に取り組んだことが挙げられます。
この事例では、公務員が地元NPO法人「アンプ」の理事長として商店街活性化活動に従事しました。
具体的には、商店街全体を100円ショップに見立てる「100円商店街」イベントを企画、開催しました。
活動時間は年に50回程度で、週休日や年次有給休暇を使って活動し、報酬は月に3万円程度です。
この活動は許可基準を満たしているだけでなく、地域活性化や商業活性化のアドバイザーであり、地元住民とコミュニケーションを取ることで得られた知識や経験が公務にフィードバックできると評価されています。
佐賀県佐賀市|障がい者支援
佐賀県佐賀市の副業が認められた事例は、主事級の職員が共生社会の実現を目指して、任意団体「○○(まるまる)な障がい者の会」の代表として活動したことです。
活動は週休日や年次有給休暇を使い、週2~3回程度です。
ラジオ番組の制作と発信のほか、障がい者交流事業(いきいきサロン)を実施しました。
市民活動の中で当事者の想いに寄り添って、それぞれの視点に立って考えることを学び、その姿勢が公務に役立つと評価されました。
報酬は月間2万円程度であり、公益性が高い副業として認められた事例です。
A県B市|無料学習塾の講師
公務員の副業が教育分野に及ぶ事例もあります。この事例では、主査級技師職員が中学生の無料学習塾の学習支援員補助として活動しています。
主に数学の講師を務め、中学生の学力向上や学習習慣の確立を目指しました。活動は月三回程度で土曜日、報酬は日額6千円程度でした。
中学生の指導を通じて、人に説明を行う技術の向上や部下への指導方法の改善につながるとして、公務にフィードバックされた事例です。
公務員でもできる副業8選
公務員の副業はどのようなものであれば認められるのか判断が困難です。ここでは、公務員でも認められている副業を8つ紹介します。
家業の手伝い
実家で農業や飲食店を営んでいる場合には、家業の手伝いとして公務員が副業できることがあります。ただし、家業の手伝いは上司や職場の許可が必要です。
許可が出たとしても、公務員の副業における三大原則は遵守しなければいけません。
家業が忙しくて本業に集中できなくなると、職務専念の義務を果たしていないと判断され禁止される可能性があります。
小規模農業
小規模の農業は、公務員が許可なくスタートできます。
ただし、時給目的の小規模な農業に限られ、作物を人に売ったりお店に卸したりした場合は営利目的として副業と判断されます。
経営耕地面積によって規模を判断させることもあるので、事前に確認してください。
NPO活動
NPO活動は、許可を得ていれば公務員でも可能です。NPO法人は特定非営利活動法人であり、営利目的ではありません。そのため、許可さえあれば公務員も取り組めます。
特に、公益性が高い事業や地域に貢献する活動は認められやすくなります。
不動産投資
公務員の副業として、不動産投資も条件付きで認められています。
不動産投資は様々で、区分マンション投資やマンション、アパートの一棟投資、また戸建てや駐車場投資などがあります。
それぞれの投資には条件がつけられていて、例えば賃貸収入が年間500万円未満であることや管理業務を外部に委託することなどの条件を満たせば、副業の許可を得ることは不要です。
ただし、条件を超える利益や規模になりそうな時には上司に相談しましょう。不動産投資を始める前にどういった条件が提示されているのか確認しておいてください。
株式投資
株式やFXといった投資は、公務員の副業であっても認められています。株式投資にはNISAやiDeCoといった国が推奨する税制優遇制度もあります。
株式投資は資産形成のための行為であり、公務員の副業であっても許可を得る必要はありません。
ただし、公務員として働く業務の中で一般企業の機密を知ってしまう可能性はあります。
その情報を知った上で、その会社の株式を売買すればインサイダー取引となってしまうので注意してください。
執筆活動
執筆や講演といった活動も、公務員の仕事に支障なければ許可される可能性が高い副業です。営利目的でなければ執筆や講演の謝礼も受け取れます。
ただし、執筆したものを販売した時の印税は報酬であるため、原則として受け取れません。
また、執筆内容が信用失墜行為の禁止や守秘義務に当てはまることがあれば活動が禁止されます。
アンケートモニター
アンケートモニターは、送られてくるアンケートに回答すると謝礼としてポイントを受け取れるシステムです。
稼げる額は大きくありませんが、昼休みや通勤時間といったスキマ時間にお金を稼げます。
同じように条件をクリアしてポイントを貯める仕組みにはポイ活もあります。アンケートモニターとポイ活は節約の一環であり、副業には該当しません。
同じようにスキマ時間を使った副業にはせどりやアフィリエイトもありますが、こちらは営利目的であり、原則公務員には認められていません。
不用品の販売・フリマ
不用品の販売やフリーマーケットの出店は、営利目的ではなく副業にはなりません。ただし、転売になってしまえば営利目的なので認められなくなります。
フリマアプリで仕入れたものを販売すれば営利目的の転売です。あくまで不要になったものの販売だけが認められています。
公務員が避けたほうがいい副業は?
公務員ができる副業がある一方で、避けたほうが良いものも多くあります。どのような副業を避けるべきかをまとめました。
YouTuber・インフルエンサー
YouTuberやインフルエンサーは、比較的新しい副業です。YouTubeやSNSで何かを発信して収益化したり、企業からの案件を受けたりして報酬を受け取ります。
趣味で行う分は問題なくても、収益を得ると営利目的の副業になってしまうので避けてください。
アフィリエイト
アフィリエイトは、SNSやブログで商品を紹介してクリックや商品が購入されると報酬が発生する、成果報酬型ビジネスです。
アフィリエイトも営利目的であり、公務員の副業としては禁止されています。趣味のブログ執筆やSNSの投稿であれば問題ありません。
イラストレーター
イラストレーターは、イラストをSNSや専用サイトで販売したり、イラストを受注して報酬を受け取ります。
イラストレーターも趣味の範囲なら自由ですが、報酬が発生すれば営利目的の副業となってしまいます。
データ入力
データ入力はドキュメントソフトを使用して、指示されたデータを入力する仕事です。
収入を目的としている、つまり営利目的であり公益性もないため、公務員の副業としては禁止されています。
公務員の副業がバレてしまう原因は?
公務員の副業は禁止されているため、バレないように隠れて始めようと考える人もいるかもしれません。
しかし、副業がバレてペナルティを受けるケースはよく起こります。公務員の副業がバレてしまう原因を紹介します。
住民税や確定申告がきっかけになる
公務員に限らず、副業が明るみに出る原因となりやすいのが住民税や確定申告です。副業の年間収入が20万円を超えると確定申告が必要になります。
副業の確定申告を行うと、公務員としての所得に副業の収入がプラスされることになり住民税が増加します。
住民税の管理は通常経理担当者が行っていて、本業の所得の住民税よりも副業分住民税が増えていることがわかり、副業がバレてしまうのです。
住民や同僚に見つかってしまう
副業しているところを住民や同僚に見つかってバレるケースもよく起こります。店舗型のビジネスや人と接する仕事の場合、見つかってしまうリスクは避けられません。
近年は、SNS投稿からバレることもよくあります。どれだけ注意を払っていても、誰が見ているかわからないのでリスクは付きまといます。
第三者に話してしまう
意外にも副業のことを第三者に話してしまうことで、副業がバレるケースはよく起こります。
心から信用している相手であっても、何かのはずみで口が滑る可能性があります。
他人の口を完璧にふさぐことはできないので、第三者に副業を明かさないよう注意してください。
公務員の副業がバレるとどうなるの?
禁止されている副業を公務員が行った場合、懲戒処分の対象になります。
国家公務員であれば、懲戒処分は免職(職を失う)と停職(1日以上1年以下の期間、職務に就けない)、減給(1年以下の期間給料が減額となる)、戒告(文章や口頭で注意を行う処分)のいずれかです。
軽いものであれば厳重注意で済むこともありますが、評価や出世に影響するかもしれません。実際に副業がバレて懲戒処分となった事例も多いので注意してください。
公務員が副業する時の注意点は?
公務員の副業はルールを守って行わなければいけません。公務員が副業する時の注意点を紹介します。
公益性のある副業を選ぶ
副業を検討する時にまず考えて欲しいのが、公益性の有無です。
サポートを必要としている人々や高齢者、教育に関わるものは公益性があると評価されやすい傾向です。
また、活動自体も公益的な行動かどうかが問われます。
例えば、何かをレンタルして使用料を受け取るといったビジネスの場合、使用料を受け取ることが営利目的と判断されます。
しかし、イベントの企画や交流の場の設定であれば公益性がある活動です。自分が考えている副業にどこまで公益性があるかを考えてみてください。
上司に相談する
副業の判断が難しい時には、必ず上司に相談してください。自分で営利目的でないと判断しても、ほかの人間が営利目的と判断すれば副業禁止の規定に抵触します。
副業を始める時には、規則を確認するとともに始める前に上司に相談しておいてください。
許可を得てから始める
小規模な農業など一部を除いて、公務員の副業は許可を得る必要があります。国家公務員であれば人事院、地方公務員なら任命権者から許可をもらいます。
地方公務員の場合は、地方独自の許可基準が設けられていることもあるので、事前に調べておいてください。
まとめ ルールを守って公務員も副業を始めよう
公務員は、原則として副業が禁止されています。しかし、内容や性質から公務員でもできる副業もあるほか、地方によって副業解禁の事例も増えてきました。
公務員で副業を始めたいと思っている方は、隠れてバレないように始めるのではなく、ルールを守って公務員でもできる副業を始めましょう。
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(編集:創業手帳編集部)