小規模事業者もストレスチェックが義務化!対象範囲や事業者が対応すべきことを解説
労働安全衛生法改正によって2028年5月までにストレスチェックが義務化

2025年5月の労働安全衛生法の改正によって、これまで努力義務となっていた従業員50人未満の小規模事業者においても「ストレスチェック」が義務化されました。
施行は公布後3年以内となっており、2028年5月までには取り組む必要があります。しかし、前倒しになる可能性もあるため、早めに準備を整えることが大切です。
そこで当記事では、ストレスチェック制度の概要について解説するとともに、小規模事業者にも義務化された背景、今から備えるべきこと、実施方法などを紹介していきます。
ストレスチェック制度について知りたい人や働きやすい職場づくりを進めたい人は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
「ストレスチェック制度」とは?

ストレスチェックとは、自社で働いている従業員が抱えているストレス状況を把握するための検査です。
ストレスに関するいくつかの質問に答えることで、ストレス値を測ることができます。
労働安全衛生法によって企業は年に1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。
事業者が取り組む意義・目的
従業員のメンタルヘルスケアは、国の指針において以下の3つに分けられます。
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- 一次予防:メンタルヘルス不調の未然防止
- 二次予防:メンタルヘルス不調を早期発見し、適切な対応をとる
- 三次予防:メンタル不調者の職場復帰支援
ストレスチェック制度は、上記取り組みのうち一次予防を強化するための制度です。
質問による回答をもとにして、職場の問題点把握に役立ち、職場改善策の具体的な提案がしやすくなります。
また、従業員のストレスのもととなっている問題が軽減されれば、定着率向上や生産性アップといったメリットも期待できます。
現行の義務化対象企業
2015年に制度が施行されて以降、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年に1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。
対象となるのは、以下の従業員です。
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- 雇用契約を結んでいる従業員(期間の定めなし)
- 期間の定めがある場合でも、契約期間が1年以上、あるいは1年以上引き続き使用されている従業員
- 上記従業員の1週間の労働時間が、通常の労働者の所定労働時間の3/4以上
正社員のみならず、パートやアルバイトが対象となるケースもあります。
さらに、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法によって、今後は50人未満の事業場に対してもストレスチェックの義務が拡大されることが決定しました。
これまでは対象になっていなかった小規模な事業所においても制度の実施が義務付けられたため、「関係ない」と考えずに早めに準備を進める必要があります。
小規模事業者にストレスチェックが義務化される背景

なぜ、小規模事業者にもストレスチェックが義務付けられたのか、その理由を解説していきます。
ストレスを感じる労働者の割合が増えている
小規模事業者に対してストレスチェックが義務化される背景に「ストレスを感じる労働者の割合が増えている」点が挙げられます。
厚生労働省が公表した「令和6年度 過労死等の労災補償状況」によれば、精神障害に関する事案の労災補償請求件数は前年度よりも205件増えて3,780件です。
仕事関連の不安感や悩み、ストレスなどが要因となる精神障害による労災は年々深刻化しています。
こうした背景があることから、「未然防止につながるストレスチェック制度を強化すべき」という必要性が高まったため、制度の義務化が進められたと考えられます。
ストレスチェックの実施率が低い
小規模事業者でもストレスチェックが義務化される背景には、小規模事業場でのストレスチェックの実施率が低い点も挙げられます。
厚生労働省の「ストレスチェック制度の実施状況(令和6年)」を見ると、事業場の規模によって実施状況は大きく異なっていました。
例えば10~29人規模の事業場の実施率は32.2%、30~49人は40.0%です。
50人以上の事業場の割合は84.7%だったのに対し、50人未満は全体で33.5%の実施率に留まっています。
2023年3月27日に公示された「第14次労働災害防止計画」では、労働者数50人未満の小規模事業場でのストレスチェック実施率を、2027年度までに50%以上にするという目標が設定されていました。
しかし、上記で示したように2025年度の段階で30%程度に留まっていることから、努力義務では不十分と判断され、義務化になったと考えられます。
企業の規模を問わず健康経営が重視されている
小規模事業者でも、近年は「健康経営」が重視されています。健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、積極的に改善に取り組むことを指します。
これまで従業員の健康管理はプライバシーに関わる部分ということもあり、従業員が各々で管理するものでした。
しかし、企業が従業員の健康促進に向けた取り組みを行うことで、仕事の生産性やモチベーションアップにつながり、心身共に健康を保つことで長く働いてもらうことが可能です。
昨今は職場の高齢化が進んでいます。2025年4月からは中小企業を含めたすべての企業で、定年退職が60歳から65歳への引き上げが義務付けられました。
高齢な社員も健康かつ快適に働ける環境整備に向けて、健康経営が重視されるようになったのです。
こうした背景も、ストレスチェックの義務化に影響していると考えられるでしょう。
ストレスチェックの義務化に備えて今からすべきこと

これまで努力義務だった企業も、義務化によって実施体制を整える必要があります。
義務化されてから慌てて準備を始めると、担当者の負担が大きくなってしまうため、早めに準備を進めておくことが大切です。
就業規則・社内体制の見直し
ストレスチェックを適切に実施するためには、就業規則や社内ルールの見直しが欠かせません。
実施目的や対象者、実施方法、記録の保存方法、個人情報保護の方針などを明文化しておくことで、従業員も安心してストレスチェックを受けられます。
また、実施担当者や産業医との連携体制、結果の管理方法なども事前に整理しておくことが大切です。
小規模事業者では総務担当者が兼務するケースも多いですが、可能であれば衛生に関する知識を持つ衛生推進者や安全衛生推進者の選任が望ましいとされています。
相談窓口の整備
ストレスチェックは実施するだけでは十分な効果を得られません。高ストレスと判定された従業員が適切な支援を受けられる環境を整えることが重要です。
社内に相談窓口を設置するほか、産業医や外部のEAP(従業員支援プログラム)サービスなどを活用する方法もあります。
特に小規模事業者では専門スタッフを配置することが難しいため、外部機関との連携を検討すると良いでしょう。
相談しやすい環境を整備することで、メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応につながります。
導入費用のシミュレーション
ストレスチェック制度を運用するには一定のコストが発生します。
チェックツールの利用料や産業医への報酬、結果管理システムの導入費用、外部委託費など、企業の運用方法によって必要な予算は異なります。
特に従業員数が少ない企業では、1人あたりのコストが割高になる場合もあります。
そのため、制度開始前から複数のサービスを比較し、自社に適した運用方法を検討することが大切です。
あらかじめ費用を試算しておけば、予算確保や経営計画への反映もスムーズに進められます。
実施計画とスケジュールの策定
ストレスチェックを継続的に運用するためには、年間スケジュールを作成しておくことが重要です。
実施時期や結果の集計、高ストレス者への面接指導の案内、職場環境の改善など、一連の流れを事前に整理しておくことで運用負担を軽減できます。
また、従業員への周知期間やチェックを受ける期間も十分に確保する必要があります。
制度を円滑に定着させるためには、実施することだけでなく、結果を活用して職場改善につなげることまで含めた計画を立てることが大切です。
早い段階から準備を進めることで、義務化後も無理なく継続できる体制を構築できるでしょう。
ストレスチェックの実施方法

実際にストレスチェックを事業場で行う際、どのような流れで進めていけば良いのでしょうか。ここで、ストレスチェックの実施方法と流れを紹介します。
1.社内ルールの策定・実施者の選定などの準備をする
小規模事業者がストレスチェックを行う際には、まずは準備からスタートです。
まずは会社として、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐためにストレスチェックを行う旨の方針を示します。
方針を決めた上で、朝礼やミーティングなどの場を活用して関係労働者の意見を聴く機会を設け、以下の項目を決めていきます。
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- 誰に実施させるのか
- いつ行うのか
- どのような調査票を活用するのか
- 高ストレス者をどのような基準で判断するか
- 面接指導の申出は誰にするのか
- どの医師に依頼するか
- 集団分析はどのように行うのか
- 結果を誰が、どこに保存するのか
これらの項目が決まったら社内規程で明文化し、すべての労働者に通知してください。
2.調査票の配布・記入
社内ルールを策定し、計画をしっかりと立てられたら、ストレスチェックを行います。労働者のストレスを把握するために調査票を配布し、提出してもらいます。
調査票は以下3つの事項を最低限含んでいなければなりません。
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- ストレスの原因に関連する質問項目
- 心身の自覚症状に関連する質問項目
- 労働者に対する周囲のサポートに関連する質問項目
どの調査票にするか迷ったら、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」を活用してみてください。
職業性ストレス簡易調査票は、ストレスによる反応だけでなく、仕事のストレス要因や周りからのサポート、満足度などを同時に測定することが可能です。
57項目用意されており、約10分で回答できるため労働者の負担が少ない点も大きな特徴と言えます。
3.ストレス状況の評価・面接指導の要否判定
労働者に調査票を記入してもらったら、実施者が回収します。なお、調査票の結果については実施者以外の第三者や人事権がある職員は閲覧できません。
また、回収する際に調査票の結果が誰かに見られないように、封筒に入れて提出してもらうなども事前に通知しておくと安心です。
回収した調査票をもとに、実施者が集計・評価を行って高ストレス者を選定します。
ストレスチェックの結果は、実施者もしくはそのサポートをしている実施事務従事者が適切に保存する必要があります。
結果に加え、事業者への結果を提供する際の同意にかかる書面・電磁的記録も事業者は5年間保存しなくてはなりません。
4.本人への通知
実施者は、評価結果から高ストレス者を選び、医師による面接指導が必要かどうかを判断します。
該当する労働者には実施者が直接本人に通知することになります。本人に通知する内容は以下のとおりです。
-
- ストレスチェックの結果
- セルフケアをするためのアドバイス
- 面接指導の申出方法
ストレスチェックの結果は、ストレスの特徴・傾向が客観的に見てもわかるように、数値や図表などで示しましょう。
また、この結果は基本的に事業者に通知されることはありません。結果を手に入れるには本人への通知後、その本人から同意を得る必要があります。
5.本人からの面接指導の申出
ストレスチェックによって高ストレス者に選定された労働者に対して、面接指導の申出の勧奨を実施します。
実施者が本人に結果を直接通知する際に、面接指導の対象者に該当している旨も伝え、申出を勧奨します。
また、結果を通知してから一定期間後に、封書またはメールにて本人にその後の状況を確認しつつ、面接指導を勧奨することも可能です。
面接指導はあくまで本人の選択によりますが、ストレスチェック制度の効果を十分に発揮させるためにも、面接指導の申出がしやすい環境に整えておくことが重要です。
6.医師による面接指導
高ストレス者に選定された労働者側から「面接指導を受けたい」という申出があったら、面接指導を実施する医師を決め、日時・場所を調整します。
基本的には事業場の産業医または産業保健活動に従事する医師が推奨されており、外部の医師に委託する際にも産業医資格を有していることが望ましいです。
面接指導は労働者からの申出からおおむね1カ月以内に実施する必要があります。
医師との調整も必要ですが、基本的に曜日・時間帯などをできるだけ柔軟に設定できるようにし、労働者が面接指導を受けやすくすることが大切です。
面接指導が行われたら、事業者は医師からその結果と就業上の措置に関する意見を聴く必要があります。
また、面接指導の結果も記録を作成し、5年間事業所で保管しておきましょう。
7.就業上の措置を実施
医師の意見を参考にしながら、労働者の実情なども考慮した上で就業上の措置を実施します。
就業上の措置とは、例えば対象の労働者の就業場所を変更したり、作業を転換したり、労働時間を短くしたりするなどです。
措置については労働者からの意見も改めて聴き、その労働者からの了解も得て実施する必要があります。
8.集団分析による職場改善
実施者はストレスチェック結果を集団ごとに集計・分析し、職場や部署単位でストレスの状況を把握します。
集計・分析によって高ストレス者が多い部署などが可視化されるため、業務内容や労働時間、仕事の量・質的負担を確認して、どこにストレスの要因があるか調査します。
この結果を踏まえて、職場環境を改善していくことが大切です。なお、集団ごとの集計・分析結果も、5年間保存してください。
まとめ・小規模事業者こそストレスチェックを活用して働きやすい職場づくりを進めよう
ストレスチェック制度は、これまで常時50人以上の労働者がいる事業場に限られていましたが、今後は小規模事業者でも実施が義務付けられます。
しかし、むしろ小規模な職場は人間関係が仕事などに影響しやすく、相談体制が十分に整っていないケースも多いです。
小規模事業者こそストレスチェック制度を活用し、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防げるようにしましょう。
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(編集:創業手帳編集部)
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