債権回収の話をしよう!田中弁護士の白熱回収教室(1)

創業手帳

第1回:早期の督促対応が債権回収の可能性を高める

「来週には支払うからさ~」と取引先の社長。

「〇〇ちゃんと俺の仲じゃない!」という調子のよい言葉につい気をゆるしてしまい、入金が先に延び延びに。。。気付いたら、本来の支払日から3ヵ月も経ってしまい。。。というような経験はないだろうか。

起業直後の創業期のスタートアップベンチャーにとって、取引先から入金が滞るという事態は、自分たちの事業の継続ができなくなる恐れすらある非常事態だ。

取引先が「支払ってくれない」場合、どう対処すべきか?

実は、取引先の「支払ってくれない」状況の「ヤバさ」の段階(ステージ)に応じて、それぞれ適切な対応のアクションがあるのだ。

これから連載で、ビジネス法務・債権回収に詳しい 田中尚幸 弁護士 の監修のもと、債権回収の基本的な流れに沿って、それぞれのステージで有効な具体的なアクションを紹介していきたい。
債権回収の話をしよう!田中弁護士の白熱回収教室(1)

入金期限になっても取引先からの入金がなかった!さあどうする?

大きく分けて債権回収の方法には、「①取引先と連絡を採り、任意での支払いを求める方法」と「②裁判所の手続を経て強制的に売掛金などの債権を回収する方法」がある。

「②裁判所を通じて行う方法」は、費用も時間もかかるため、まずは、「①任意での支払いを求める」という方法を採るのが一般的である。

これらの債権回収の流れは、以下の通りだ。

債権回収の基本的な流れ

(1)話し合い・電話・メール・請求書の再送等による督促
(2)内容証明郵便による督促状の送付
(3)裁判所を通じた保全手続
(4)訴訟提起等の裁判手続
(5)判決等に基づく強制執行

今回はまず、(1)話し合い、電話・請求書の再送等による督促のポイントについて説明する。

早期の入金確認と連絡

当然の話ではあるが、入金日をしっかりと把握しておき、入金予定日に入金がない場合には、直ちに取引先に連絡を取るのが大事だ。

入金日に支払をしなかったにも関わらず相手方から催促がない場合、「もうしばらくは支払いを待ってもらえるんじゃないかな?」といった期待を持ちがちである。支払日の翌日に催促してきた支払先と、支払日から2週間経って初めて催促してきた支払先、どちらに支払うつもりになるかは、明らかだろう。

メールではなく電話か又は直接会って督促するべきだ。

その際の取引先の対応により、少なくとも取引先の言い分を把握することができる。「事務手続のミスで支払が遅れてしまった」、「資金繰りが厳しいから支払いを待って欲しい」、「取引でトラブル等があったために支払を渋っている」等々といった具合だ。

支払いを待って欲しいと言われたら

取引先から、支払いを待って欲しいと言われたとしても、まずは、契約どおり早急な支払いを求めることになる。

取引先との関係、今後の取引の継続等、個別の事情を踏まえて、「即時の支払をしなければ自社だけでなく取引先も不利益を被る」ということを伝えられるのが望ましい。

しかし、支払に遅れるには多様な理由があるであろうし、支払原資がなく、支払いたくても支払えないという状況も有り得る。

そこで、やむを得ず支払を一定期間猶予する場合は、取引先に対して新たな支払期限を区切ることが重要である。

通常であれば、他社からの入金があれば滞っている支払もできるようになるはずなので、取引先の入金予定を聞いておく。信用状態があやしい取引先であれば、直近の入金予定がわかる請求書等の閲覧を求めてもよいであろう。

また、取引先に「いつまでに入金します」といった内容の書類やメール等の送付を求めることにより、心理的にその期日までに支払わなければいけないという状態を生じさせるといった方法も有効だ。

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近日中に支払が受けられなさそうなら早期に次の対応を

取引先から具体的な支払予定日を聞き出せなかったり、支払がかなり先になりそうだというのであれば、早い時期に「内容証明郵便による督促状の送付」といった次の段階に進むべきだ。

何もせずに待っていたとしても、回収の可能性が高まることはないからだ。

なお、取引先に連絡を取って支払いを求めるのは、当然、連絡を取れば取引先が支払ってくれる可能性がある「ちゃんと話せる」場合である。最初から連絡を取っても支払いが見込まれない場合には、ただちに「内容証明郵便による督促状の送付」や、「裁判所を通じた督促状の送付」を行うことを検討すべきだ。このあたりは、次回以降で触れていくとしよう。

> 債権回収の話をしよう!田中弁護士の白熱回収教室(2) | 第2回:「チョイヤバ」な債権回収は内容証明郵便で!内容証明郵便の基本を理解する

(監修:田中尚幸 弁護士)
(創業手帳編集部)

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