プラスワンインターナショナル 新開 強|オリジナルTシャツでプライスレスな「一体感」を届けたい

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年06月に行われた取材時点のものです。

アメリカのストリートファッションを扱うセレクトショップから一転し、オリジナルTシャツ制作事業を開始

コロナ禍をきっかけで、人と人との接触回数が減り、関係性や一体感が希薄化した現代において、企業やチームのオリジナルTシャツという切り口で、プライスレスな一体感を提供しているのが、プラスワンインターナショナルの新開さんです。

そこで今回は、新開さんがセレクトショップの運営から、オリジナルTシャツの制作事業に乗り出したきっかけや、組織運営をする上で大事にしていることについて、創業手帳の大久保が聞きました。

新開 強(しんがい つよし)
株式会社プラスワンインターナショナル 代表取締役
1998年のアメリカ留学から地元の香川県高松市に戻ったタイミングで、アメリカのストリートファッションを主に扱うセレクトショップを開業。その後、2003年にTシャツなどのオリジナル商品を制作するサービスを開始。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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通販主体の会社が「リアル店舗」を持つ意味

大久保:プラスワンインターナショナルさんの最近の動向から伺えますか?

新開:業態は変わらないですが、現在は直営店以外にフランチャイズ店舗も増え、全国で23店舗を展開しています。また、これまでの店舗形態とは異なるコンセプトショップという位置付けのリアル店舗を渋谷にオープンしました。

大久保:通販とリアルの使い分けはどのように意識されているのでしょうか?

新開:通販主体の会社がリアル店舗を持つメリットとしては、相乗効果が見込まれるということです。

元々ネットだけで始めましたが、逆にリアルの必要性が明確になりました。

また、お客さまのアクセスの仕方に関しても、旧来の店舗で直接相談したい方もまだまだいます。

もちろん、ネットはちゃんと整備しておかなければいけませんが、リアル店舗も一つの選択肢という位置付けで大事にしています。

大久保:ショールーム的に、直接商品や素材を見たいという方も多いでしょうね。

新開:企業やチームで作るというお客様が多いため、しっかりと現物を見たいという要望が多いです。

大久保:ノベルティグッズやオリジナルTシャツという価値を、改めて教えてください。

新開:使われ方としては、これまでと変わっていないのですが、価値がどこにあるのかは私の中でも考えていました。

例えば、オリジナルTシャツは、作ることに対しての価値ではなく、それ以上にみんなで同じTシャツを着ることで、一体感が出るという感情を手助けするものだと思っています。

さらにオンリーワンのものを作る、プライスレスなギフトを作る、といった感情を掘り起こしていきたいと思っています。

大久保:私も「創業手帳」Tシャツを作りましたが、これだけで良いプロモーションになるので、とても良いです。

DXが進む現代だからこそ「リアルで会う」価値が高まっている

大久保:最近、強化している領域について教えていただけますか?

新開:まずはリアル店舗の集客に力を入れています。

コロナ禍は広告をかけても、集客が難しい状況でした。そのため、本質的な営業ができるかどうかが問われる時代になったと思っています。

今、下支えしていただいているお客様の関係性を太くする点にも力を入れています。

大久保:「ものを作る」という究極の不定形業務だと思いますが、お客様やニーズが四方八方に散らばることを取りまとめる工夫はどうしていますか?

新開:おっしゃる通り、ECだけでは完結しないからこそ、店舗をもって対面でヒアリングできる場を作っています。

DXは不可逆だと思います。

絶対に進歩するし、倫理的に使っていくかを整理していきますが、それがあるからこそリアルの場の価値が上がっていくと思っています。

打ち合わせもZoomで良いところを、わざわざリアルで会うということは、会う価値があるということなのです。効率的になっていけばリアルの母数は減っていきますが、1回の価値は上がっていく、というものだと思っています。

コロナ禍をきっかけに「経営の合理化」に成功

大久保:コロナ禍になったことでイベントの開催が厳しくなり、プラスワンインターナショナルさんの事業にも影響はありましたか?

新開:もろに影響を受けて、3年前は厳しい状態でした。

我々が提供しているオリジナルTシャツ制作サービスは、イベントやサークル、学生など、人が集まるところの備品として使われるものだったので、2020年は一番ひどくて、前年度の60%くらいに売上が落ちました。

そこから徹底的に経営の合理化に着手しました。

当時は本当にきつい時期でしたが、今となってはあって良かったなと社内でも話しています。

コロナのような強制ストップがかかるようなものがないと、組織文化や経営のあり方、積み上げてきた無駄なものなど、変わらないものがたくさんありました。

大久保:本社が四国にあって、東京でも活動されていると、リモートが普及したということもありそうですね。

新開:コロナ前は、月曜日から金曜日まで東京で仕事をして、土日に四国へ帰る生活をしていたのですが、強制的にリモートで仕事をせざるを得ませんでした。

最初はやりにくいと思っていましたが、慣れるとそれはそれで機能することがわかりました。

8つの部門を3つに減らして「シンプルな組織へ」

大久保:組織も大きくなって、変化したことはありますか?

新開:正直、コロナ前まで収拾がつかなくなっていました。

部署が乱立して、役職者が必要以上に多い状態になってしまっていました。しかし、コロナ禍をきっかけに、シンプルな体制にできました。

8つあった部門も3つに減らして、我々のような規模の会社は、役割分担もある意味曖昧だったりするので、上手く連携して仕事するようになり、一体感が生まれてきました。

大久保:コロナによって、本質が見えて、質が上がったことはとても良いですね。

新開:必要だと思っていても、なかなか切り込めない領域でしたが、やらざるを得ない状況でやっと着手することができました。

大久保:リモートのマネジメントの難しさもあると思いますが、その点いかがでしょうか?

新開:否応なく対応しました。

コロナ真っ最中でも全く会わないということはできなかったため、顔を出す機会も作りつつ、少しずつ統制を作ってきました。

地方発の企業として成功した秘訣

大久保:貴社は、元々高松から始められて、地方発の成功企業の一つだと思いますが、何か感じることなどはありますか?

新開:私が元々グラフィックデザインができたので、地元の企業や飲食店に対して、オリジナルのTシャツが作れます、という営業をしたことからスタートし、事業を行う中でさらに、ものづくりに関する知識と経験を得ました。

その後、ネットでも販売するためにWebサイトを作って、広告を流したところ、東京の会社から見積もり依頼が入りました。

徐々に見積もり依頼をいただく回数が増え、アクセルを踏むタイミングなんだと思いました。

また、やってみないとわからない、という思いも強かったです。

大久保:人材会社が手が余ってるから、アイロンでオリジナルTシャツを作る事業に手を出したら、とてつもなく大変だったから、2度とやりたくないと言っていたことを思い出しました。

新開メーカー、工場、販売会社の三位一体でやっていて、餅は餅屋でやっています。

当社も、利益のためにある程度業務を広げてやっているものの、あくまでもお客様との接点になる会社だと思っていますので、全部を1箇所でやろうとするのは厳しいと思います。

大久保:どこで製造されているのでしょうか?

新開:日本中で作っていますが、西日本が多いです。

そのため、高松は創業の地であるということもあり、現在も非営業部門と倉庫兼工場があります。

企業のフェーズごとに異なる重視すべきポイントとは

大久保:起業当初と拡大期で、どのようなことを大切にしてきましたか?

新開:最初の頃は、借金もありましたし、商売として成り立たせることしか考えていませんでした。

売上が増えたら広告を回して、また拡大させていく、それがやりがいでしたし、楽しかったです。

拡大期である今は、売上より利益を重視しています。

大久保:売上より利益という流れに変わって、量より質に移行したということですね。

今振り返ってみて、やっておけばよかったと思うことはありますか?

新開もっと会社が小さい時に、お客様一人ひとりの課題や要望をもっと真摯に聞いておけば良かったと思っています。

それらの情報からニーズを掴み取り、商品やサービス開発に活かせる仕組みを初期の頃に作っておけばよかったです。

大久保:今まで何枚くらいTシャツ作りましたか?

新開2,000〜3,000万枚ほどは販売してきました。

大久保:オリジナルTシャツは、通常のアパレルでものを買うのとは違い、ドキドキ感がありますよね。

新開:それこそ、私の原体験にあります。

無地のTシャツにグラフィックデザインを施して、お店に置いていました。

売れる売れないということはさておき、自分が作ったものが商品として形になることにワクワクしていました。

デジタルが注目されている今でも、リアルへのニーズを持つ消費者は多い

大久保:今、注目していることは何ですか?

新開:AI領域ですね。

例えば、口頭でデザインイメージを伝えれば、AIが勝手にデザインしてくれるようなサービスも、今後、ニーズが高まる可能性があるかもしれません。

ただし、我々はデジタル企業ではありません。逆に、対面の価値が際立っていくと思います。

仕事でデジタルを使うことはもちろんありますが、正直少し億劫に感じる部分もあります。

近くにお店があれば、私ならいくと思いますし、デジタルが注目されている今でも、一般消費者に目を向けると、そういったニーズもまだまだあると思っています。

実は高松店が、本社兼店舗としてオープンし、初めてのワークショップを開催しましたが、100名くらいお客様にきていただきました。

多くは、お子さんと一緒に来ていただいたのですが、子供と一緒だから楽しいし、出来上がったものはオンリーワンで、大変満足いただけました。オリジナルならではの価値です。

大久保:子供の顔写真が入ったTシャツとかだと、ブランドものより価値があり、代替されにくい事業ですよね。

新開:サービスとしては前からあるものですが、ITを利用して、多くの人に利用していただけるようにしているだけです。

オリジナルTシャツは時代にあったモノづくり

大久保:この仕事の最大のやりがいは何ですか?

新開:オリジナルのものを作るって、本質的に絶対楽しいと思うんです。

それがギフトであれば、あの人に合うかな?と考えている時間に価値があります。

なかなか感じにくい部分ではありますが、そこを提供していくことが、私のやりがいです。

大久保:世の中は、無駄を削減していきましょうという流れがありますが、オリジナル商品となると、無駄は少ないように思えますが、その点いかがでしょうか?

新開1枚から作れますし、必要な枚数しか作らないので、無駄は少ないです。

ブランドの思想を込めた商品だったとしても、やはり売れ残りは出てしまいます。特にアパレルはSKU(※1)が多いです。

ある意味で、オリジナルTシャツは、時代に合ったサステナブルなモノづくりだと思っています。

大久保:オリジナルTシャツは、大量生産・大量消費の対局にあるものですね。

※1:SKU・・・​​Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略で、受発注・在庫管理を行うときの、最小の管理単位

スケールすることが全てではなく、今やるべきことを粛々とやることも必要

大久保:今後の展望をお聞かせください。

新開:渋谷の店舗は、コロナ禍の直前、2019年12月にオープンしました。

ネットだけではなく、お店の前をたまたま通った方にも来店していただきたいという思いがあります。

そこで、コンセプトショップと位置付けて体験型のサービスを提供する店舗として、都内の他6店舗は閉めて、渋谷店に集約させました。

渋谷以外にも、直営店が3店舗、20店舗ほどフランチャイズ店があります。
フランチャイズ店は、今は増やすという動きを積極的にやっていません。

思想を知って共感していただける方がいれば、というスタンスです。

大久保:起業家へのメッセージをお願いします。

新開:起業するとなると、必ず夢を見ますよね。ですが、必ず失敗する時もあります。

これは私の失敗談でもありますが、あえてスケールせずに進めていく時期があっても良かったなと思っています。

急いで組織を拡大させようとせずに、何のためにやっているのかをしっかりと考え、そこに合う人をじっくり探すことや、思想をお客様にも伝えていくことこそ、今後のために繋がります。

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(取材協力: 株式会社プラスワンインターナショナル 代表取締役 新開 強
(編集: 創業手帳編集部)



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