クリニック開業を成功させたい!開業までのステップと失敗しないためのポイントとは

創業手帳

クリニック開業は多くの工程があるので専門家へ依頼することも検討しよう


クリニック開業には、診療方針やコンセプトの設定から、事業計画、立地、物件の選定と多くの工程があります。
また、開業するためのテナント料や物件取得費、医療機器代も必要です。

事業計画を立てたら、資金調達の手段を検討しましょう。
開業のための時間を捻出できない場合には、開業コンサルタントに依頼してサポートを受けることもひとつの方法です。

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クリニック開業までの流れ


開業と簡単にいっても、開業に必要な工程は多岐にわたります。

今回は、開業までの工程のなかで、要所ごとのポイントを紹介します。これからクリニック開業を考えている人は、まずスケジュールをチェックしてみてください。

STEP1. クリニック開業するかどうかを決める【12〜18カ月前】

クリニックを開業するきっかけは人によって違います。独立や事業承継といった理由も良く聞かれます。
まず、クリニックを開業するにあたって、どうして開業するのか、どのタイミングで開業するのかを考えてみましょう。

開業の動機を考える

開業する時に、まず考えておきたいのが開業の動機です。開業の動機を掘り下げることによって、診療方針や経営基本計画が策定できます。
例えば、どのような患者さんに治療を提供したいのか、どういう診療をしたいのか
を考えます。

開業動機を考えることが重要なのは、開業する工程で様々な意思決定をする際の指針となるからです。
開業地域を選ぶ時、医院の建物や設備を決める時も診療方針が基準となります。

開業してどうなりたいか、診療を提供する自分の姿をイメージしながら考えてみてください。

開業のタイミングはいつがいい?

医師としての人生を歩み始めてから、どのタイミングでクリニック開業するかと悩む人も多いです。
社団法人日本医師会が発表した『開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査』では、新規開業年齢や開業動機を調査しています。

アンケートによると新規開業した場合、開業した年齢は平均で41.3歳でした。
開業動機のトップは「自らの理想の医療を追求するため」で、42.4%を占めています。

ただし、開業するのに適したタイミングは人によって違います。
若いうちに開業するメリットは、資金調達しやすく返済に余裕が持てる点や、体力がある点、新しいシステムに慣れやすいといった点です。

一方で、経験を積んでいたほうが良い理由は、大きな病院で高度な医療技術を習得できる環境が与えられる点や、人脈が豊富で信用が高い点が挙げられます。
自分の医師としての人生を考えた時に、どのタイミングが有益なのかを考えて決断してください。

事業計画を立てる

開業する時期を決めたら、クリニックのコンセプトや特徴、経営理念を定めてください。
それらを実現するための具体的な事業計画を策定していきます。

物件や必要な設備などの初期費用と、人件費などの運営費も詰めておきます。

事業計画では、クリニックの収支構造や資金繰り、キャッシュフローもシミュレーションしておくことが必要です。
事業計画書ができたら、それをもとに資金調達に進みます。
民間銀行からの融資のほか、独立行政法人福祉医療機構や日本政策金融公庫などの利用も検討材料になります。

退職準備も進めておく

開業の準備を進めるとともに、退職準備も忘れないようにしてください。
労働基準法では、退職届けを提出してから退職するまでには最低で2週間とされています。

しかし、引き継ぎなどの後のことを考えるともっと早めに伝える必要があります。
退職した後も良好な関係を継続できるように、遅くても半年前には退職の意思を伝えるのが一般的です。

退職の報告とともに、開業の計画を上司や同僚に伝えると、ほかの開業医の話や開業の参考になるようなエピソードを聞けるかもしれません。

STEP2. 開業地を決める【7〜12カ月前】

どのような患者さんに治療を提供するかを策定して事業計画を立てたら、いよいよ開業地の選定を行います。

後から開業地を変更しようとすれば、事業計画そのものを考え直すことになりかねません。開業地の選定は、集客面でも重要なため、慎重に行ってください。

エリアを選ぶ

診療方針やコンセプトを実現するために、エリア選定は重要な項目。診療方針が、地域に根付いて幅広い内容の診療を提供するものであれば、多くの人が住まうエリアが適しています。

専門的な経験を活用するのであれば、同じ専門科目の医院が少ないエリアが候補となります。
実際にどのような物件があるのかを確認しながら現地調査やデータをもとにエリアを選定してください。

エリア選びのポイントは以下にまとめました。

エリア選びのポイント1.年齢構成

エリアを選ぶ時には、その場所の人口と年齢構成を調べます。
厚生労働省のホームページでは、性・年齢階級別に見た受療率を公表しています。
どの年齢層の人が、どういった理由でどれだけの割合で通院しているかを知ることによって、おおよその患者数の目安となるでしょう。

例えば、高齢者向けのクリニックを開業するために人口が多いエリアを選んだにもかかわらず、子育て世代がほとんどで高齢者が少ないといった可能性もあります。
逆に、小児科のクリニックであれば子育て世帯が多いエリアが適しているはずです。
診療内容や方針、専門によって適した年齢構成のエリアを選んでください。

エリア選びのポイント2.交通機関

開業候補地の人々が使っている移動手段もポイントとなります。

徒歩か自転車や自家用車、バスなのかをチェックしてください。駐車場が必要かどうかも考えるほか、最寄り駅もチェックします。

最寄り駅は複数路線が乗り入れるような駅であれば、遠方の患者さんも来院しやすくなります。
特に専門性が高いクリニックは、広いエリアから患者を集めることが必要です。
そのため、遠くからでもアクセスしやすいか、最寄り駅からどのくらいの時間がかかるかを必ずチェックしてください。

エリア選びのポイント3.人の動き

同じエリア内でも人の動きはまったく違います。
通勤や通学で良く使われる道沿いか、大きな道路から住宅地に入った場所かによって集客しやすい層は異なります。

できるだけ多くの人を集めたいのであれば、駅近くやテナントの物件がおすすめです。
人の動きは地図や写真だけではわからない部分も多いので、実際に出向いて確認するようにしましょう。

エリア選びのポイント4.周囲のクリニック

エリア内に競合になるようなクリニックがないかどうかもエリア選定のポイントです。
すでに人口に対して十分なクリニックがあるのであれば、そのエリアは避るのが無難です。

ただし、クリニックがあったとしても診療科目や方針がまったく違ったり、自分のクリニックと開業時間が異なる場合には差別化できる可能性があります。

戸建てかテナントか

開業する時の形態も、物件を探す時の条件です。

一戸建てがいいのか、ビルのテナントかに大きく分けられます。また、クリニックが集まっている医療モールに入居する選択肢もあります。

クリニックの物件は借りるか自分で建てるかも考えなければなりません。
加えて、承継する人がいない、閉院が決まっているようなクリニックを引き継ぐケースもあります。
開業するエリアに理想的な物件があるとは限りませんが、地元の不動産会社やクリニック開業のコンサルタントといった業者から情報を集めてみてください。

STEP3. 資金調達をどうするか?【7〜12カ月前】

クリニック開業にあたって、資金調達の問題も避けて通れません。
どれだけの資金を用意すればいいのか、どうやって金融機関を選べばいいのか考えてください。

開業資金を検討する

クリニック開業のために必要な資金や敷地面積は、その地域や診療科目によってもまったく違います。

皮膚科や眼科であれば30坪あれば必要面積を満たせる一方で、整形外科でリハビリ室を擁する場合には、より大きくしなければなりません。
その分、テナント料や建築費用も大きくなります。

都会のビルテナントで開業する場合は、内装の工事やテナント料の前金、家具購入費用で2,000万円~3,000万円、医療機器で1,000万円~2,000万円、初期の運転資金として2,000万円程度は必要と考えられます。

総額では、およそ5,000万円〜8,000万円は必要と考えておくのが安全です。
そして上記の初期費用のうち、自己資金を差し引いて残りを融資などで補うのが一般的な開業の資金調達です。
自己資金は総投資額の5〜10%を準備するのが望ましいといわれています。

金融機関を探す

必要な資金がある程度定まったら、融資を受けられる金融機関を探します。

政府系金融機関やメガバンク、地方銀行など、様々な金融機関があります。
融資を受けるためには窓口で担当者に収入の見込みや事業計画を提出して審査を受けなければなりません。
また、新規開業者向けの融資制度やサポートもあるので、不安な場合、まずは窓口で相談してみてください。

開業資金の調達方法について、詳しくはこちらの記事を>>
開業資金を集めるにはどうすればいい?知っておきたい制度や手法をまとめました

医療機器リースも検討する

クリニックの新規開業にかかる費用は決して安くはありません。
ただし、医療機器代はリース契約を結んで、月ごとに支払いをする方法もあります。
医療機関や福祉施設向けに医療機器を貸付している業者もチェックしてみてください。

医療機器をリースする方法であれば、医療機器にかかる初期費用を抑えて費用の分割払いが可能です。
リース契約は、毎月の経費として計上できるため、会計処理も簡単な点がメリットです。

ただし、リースは中途解約が難しいというデメリットもあります。
また、初期費用は安く済んでも、長く使い続ける場合であれば購入したほうが安い場合もあります。

STEP4. 設備や人材の確保、集患・PR施策【1〜6カ月前】

物件や資金が調達できれば、いよいよ内装工事の施工がスタートします。
事業計画で費用も検討したはずですが、想定外の費用が発生する可能性もあります。

実際にクリニックが開業するまでに、予想していなかった費用がかかるのこともあるので、資金計画には余裕を持たせるようにしてください。

内装工事

内装工事は、医院長の診療方針や好みのほか、ターゲットになる患者さんの層を考慮して決定します。

例えば、小児科であればお子様が喜ぶような色調やデザインにしたり、キッズスペースを設けます。
また、トイレや入口へのアプローチは可能な限りバリアフリーにするのが一般的です。
ただし、あれもこれもと内装工事を増やせばコストがかさんでしまいます。
コストも考えて本当に必要な内装、設備を選別してください。

医療機器の選定と設置

診療科によって違いはありますが、医療機器は必要になります。
どの科であっても考えなければならないのが電子カルテです。どの電子カルテを導入するか選ぶ時には、必ず操作性や価格、サポートの有無を比較してください。

エックス線やエコー、内視鏡といった医療機器はそのクリニックに必要なものを選びます。
同じ医療機器であってもグレードによって値段は異なるため、経営面から採算が取れるかどうかも考える必要があります。
診療内容から採算が合わなくても必要な医療機器もあるかもしれません。
その場合には、事業計画から見直して無理がない範囲で対応してください。

人材の確保

一般的なクリニックでは、看護師数名と受付の事務員を雇用しています。
どのような人材を採用するかは、クリニックの雰囲気を決定づけるポイントです。求人には人材募集サイトに求人を掲載したり、折込広告で人材募集広告を掲載します。
クリニックでの勤務経験が豊富なスタッフであれば、一緒に働いていても頼りやすく、円滑なクリニック運営が可能です。

また、受付事務にはレセプト業務や診療報酬に詳しい人を探すと、業務をスムーズに始められます。

リスクマネジメント

クリニックで開業することで、医師であるとともに経営者になります。必ずクリニックのリスクマネジメントも行ってください。
リスクとして見逃しがちなのが、医師自身の健康面です。
勤務医であれば、もし自分に何かがあっても代わりの人間を用意しやすく、個人として責任を負う場面も原則ありません。

しかし、開業した場合には仕事を休むことでそのフォローや責任は自分で負う必要があります。
開業したタイミングで、自分が働けない時の保障も見直してください。
加えて、患者さんやその家族とのトラブルもリスクとなります。
医療過誤の発生や賠償責任を求められるリスクもあるので、自分とスタッフを守れるような備えをしてください。

開業医向けの「医師賠償責任保険(医賠責)」であればクリニック内で起きた医療以外の賠償責任まで補償されます。
また、万が一に備えて、顧問弁護士やコンサルタントを探しておくことも検討してください。

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クリニックを開業する時には、必ずホームページを用意してください。

患者さんは、インターネットを使ってクリニックの情報を探すことが多いです。患者さんが探しやすいようにホームページを作成し、アクセスや診療時間も掲載します。

ホームページ制作について、詳しくはこちらの記事を>>
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クリニック開業で失敗しないためのポイント


クリニック開業で失敗する人も珍しくはありません。
クリニック開業で失敗しないためには、ターゲットを絞込み、強みや専門性を打ち出すことが重要です。
それをもとに、既存のクリニックや年齢構成をマーケティング、需要とマッチするかどうかを検討します。

また、開業してからも事業が軌道に乗るまでは時間がかかります。
初めのうちは、常勤スタッフを減らして、パートで雇用する方法で人件費を削減することも手段のひとつです。
経営の観点から、必要な人材、医療機器も慎重に決定してください。

まとめ

クリニックの開業は、初期費用も大きくなり、立地の選定から資金調達まで多くの工程があります。
前もって開業の流れや注意点を把握しておくことで、クリニックを開業してからも安定した運営体制が整います。
なかなか開業準備の時間が取れない場合には、開業コンサルタントに相談することも検討してみてください。

創業手帳の冊子版(無料)は、資金調達や節税など起業後に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
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(編集:創業手帳編集部)

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