スタートアップに自治体との取引チャンス!?「4号随契」の活用を国が後押し

スタートアップ企業にとって「4号随契」の積極活用が鍵

4号随契を活用してスタートアップと自治体が直接取引するイメージ
2026年8月4日に総務省と経済産業省は、地方公共団体に対して「4号随契」の積極的な活用を促す通知を出しました。
これは新たな事業分野の開拓を図る事業者として自治体の長から認定を受けた事業者から、新商品・新役務を随意契約で調達できる仕組みです。

しかし、2023年4月1日から2025年7月18日までの調査によると調査対象となった全国1,788の地方公共団体のうち4号随契の実績があったのはわずか30団体で約2%にとどまりました。
自治体がスタートアップにとって「最初の顧客」となる可能性が広がる一方で利用には一定の要件が課せられています。

本記事では、「4号随契」制度の仕組みとスタートアップ企業の活用ポイントを解説しました。

総務省・経済産業省が4号随契の活用を自治体へ通知

総務省と経済産業省は2026年8月4日、地方公共団体へ「地方自治法施行令第167条の2第1項第4号に基づく随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について」の通知を出しました。
この通知にあわせて4号随契の実績調査および活用事例集も公表され、自治体が制度を検討する際の参考資料として提供されています。
地方公共団体に積極活用を促すように通知した背景にあるのは、スタートアップの新商品・新サービスの販路拡大を国として後押ししたいという政策的な狙いです。

また、J-Startupの選定など一定の条件を満たす場合には、学識経験者の意見聴取を代替できる考え方も示されました。
こうした運用の整理により、今後、スタートアップからの調達拡大が期待されています。

4号随契とは

一般競争入札と4号随契の手続きや契約方法の違い
4号随契という制度自体が初耳という人も多いはずです。初めに、4号随契の制度そのものについて内容を整理します。
一般的な公共調達との違いや法的な位置づけ、スタートアップが対象になる理由を順に見ていきます。

一般競争入札との違い

4号随契は、随意契約の通称で地方自治法施行令第167条の2第1項第4号に基づきます。
随意契約とは、競争入札を経ずに自治体が特定の相手方と直接契約を結ぶことができる調達方式です。

公共の調達では、原則として一般競争入札が採用されています。一般競争入札は原則として多数の事業者が参加できる公正な調達方法です。
しかし、実績のない新商品の調達のように一般競争入札が不向きな場合があります。

4号随契は、新商品・新役務によって新たな事業分野の開拓を図る事業者を自治体が認定し、その事業者から新商品等を随意契約で調達できる制度です。
柔軟な対応がしやすい契約方式として今後の活用が期待されています。

4号随契の法的根拠と位置づけ

4号随契は地方自治法施行令第167条の2第1項第4号を根拠としています。
この条項は、新商品の生産や新役務の提供によって新たな事業分野の開拓を図る事業者を認定し、その事業者から新商品等を随意契約で調達できるようにするものです。

例えば、自治体が新商品等として認定した物品・サービスを随意契約で調達できる仕組みです。
随意契約の一類型として法令上明確に位置づけられているため、自治体は要件を満たせば手続きに則って活用でき、スタートアップ側にとってもビジネスにつながるチャンスがあります。

スタートアップが対象になる理由

4号随契は、これまで自治体などでの導入実績が少ない新商品・新サービスであっても、一定の要件を満たして認定されれば随意契約による調達の対象となり得ます。
つまり、スタートアップを含む新商品・新役務によって新たな事業分野の開拓を図る事業者と親和性が高い制度です。

ただし、スタートアップであれば自動的に対象になるわけではなく、事業計画の提出や自治体による認定手続きが必要です。
創業間もない企業が持つ独自技術やサービスを行政が積極的に取り入れるための制度的な受け皿としての役割が今後期待されています。

なぜ今、4号随契の活用が進められるのか

4号随契の実績がある自治体は調査対象1,788団体のうち30団体で約2%
4号随契の制度自体は以前から存在していました。しかし、残念ながら実際の活用は進んではいませんでした。
ここでは、4号随契に関する調査結果とスタートアップ側の課題を整理して紹介します。

活用自治体は約2%にとどまる

総務省自治行政局行政課は、2026年8月「地方自治法施行令第167条の2第1項第4号に基づく随意契約実績に関する調査」を公表しました。
これは、今後の制度活用拡大につながるように各団体の調達事例をフィードバックすることなどが目的です。

2023年4月から2025年7月までの調査対象となった1,788自治体のうち、4号随契の実績があったのはわずか30団体でした。
加えて、指定都市における活用率は約45%である一方、その他の市区町村では約1%にとどまり、大きな差が生じている点も課題といえます。

調査期間中の契約191件のうち、スタートアップからの調達は80件です。
活用されている自治体では一定数の実績が積み上がっている一方で、さらなる活用の拡大が求められています。

スタートアップは「最初の顧客」が最大の課題

4号随契は、自治体が新しいサービスを試行し、地域の課題に合わせて活用できるメリットがあり、調達を請け負うスタートアップ側にも多くの魅力がある制度です。

創業間もないスタートアップにとって、「最初の顧客」を獲得し、導入実績を作ることは大きな課題のひとつです。
せっかく起業したものの顧客を獲得できないまま調達した資金が尽きて廃業してしまうといった事態を避けるためには、積極的な顧客獲得が欠かせません。

導入実績のない商品やサービスは民間企業から信頼を得にくく、営業活動においても不利な立場に置かれてしまいがちです。
自治体がファーストカスタマーになれば実績が生まれ、他地域や民間企業への展開の可能性が広がります。

実際にどのようなサービスが採用されているのか

経済産業省と総務省が公表した事例集では、幅広い分野でスタートアップの新商品・新サービスが4号随契により調達されています。ここでは代表的な分野の事例を紹介します。

防災分野:防災用トイレの調達

地方自治体の課題として防災は欠かすことができません。災害時に活用できる防災用トイレが、4号随契を通じて自治体に調達された事例が事例集で紹介されています。

具体的には間伐材のおがくずを使った非常用トイレが調達されたほか、防災トイレの調達事例が複数報告されました。
防災用品は導入実績が少ないと採用されにくい分野ではありますが、自治体調達によって実績づくりの機会が得られます。

災害対応という自治体の重要な政策課題に直結する分野であり、今後も同様の調達が広がる可能性があります。

インフラ分野:下水道管点検ドローンの調達

下水道管の点検を行うドローンが、インフラ維持管理分野におけるスタートアップ製品の採用事例として公開されています。

下水道管のように老朽化するインフラの維持管理は多くの自治体にとって共通課題です。作業員の安全性を確保しながら効率化する技術への需要は全国で高まると想定されます。
ドローンやAIといった最新技術を活用して点検作業の省力化につながる製品は、他の自治体からも同様のニーズを引き出しやすい分野です。

子育て分野:学習支援システムの導入

教育現場の学習支援サービスも、4号随契を通じて自治体に導入されています。
授業の様子を録音・録画し、発話量や発話内容を自動でデータ化して授業改善に役立てる学習支援システムや、読み書きが苦手な児童向けに部品の組み合わせで漢字を覚える教材、答えが分かった状態でタイムアタック形式に解く新感覚の計算ドリルなど、幅広い学習支援サービスが4号随契により調達されています。

学力向上や個別最適な学びの実現に直結するテーマであり、他自治体への横展開もしやすい分野といえます。

ビジネス分野:行政DXを推進するサービスの活用

行政事務の効率化やデジタル化を支援するサービスも、4号随契を通じて自治体に導入されました。
行政DXは国が全国的に推進している政策分野であり、スタートアップの新技術が採用されやすい領域です。

行政内部の業務改善に資するサービスは、自治体の課題解決に直結するため今後の需要拡大が見込まれます。
ビジネスとしての可能性も幅広く、コミュニケーションの円滑化や事務効率化のように汎用性が高いサービスを提供できるでしょう。

スタートアップが4号随契を活用するための手順

スタートアップが自治体の4号随契を活用して認定を受けるまでの4つの手順
4号随契制度の目的や仕組みを理解したうえで、ここからは実際に活用するにはどのような手順が必要になるのかを整理します。
どういった手順が必要なのか確認しておきましょう。

自治体ごとの制度導入状況を確認

4号随契はどこでも使えるわけではありません。4号随契の認定制度を導入していない自治体も多く、全国一律ではない制度です。

スタートアップが制度を活用する際は、まず取引を検討する自治体が認定制度を導入しているかを確認してください。制度の有無や運用状況は自治体ごとに異なります。
事前に担当窓口へ問い合わせて詳しい情報を集めるようにおすすめします。

新商品等の事業計画を提出する

4号随契を利用するには、対象となる事業者が新商品等に関する事業計画を自治体へ提出しなければいけません。
事業計画には商品やサービスの概要、想定される効果、価格の妥当性などを具体的に示します。

事業計画の提出は自治体側からの働きかけではなく、原則としてスタートアップ側が主体となって行う手続きです。
受け身になって待つのではなく、ビジネスチャンスをつかむために一歩踏み出すことが大切です。

学識経験者の意見を踏まえた審査を受ける

4号随契の認定では、原則として学識経験者の意見を聴取する手続きがあります。
専門的な知見を交えた審査を経ることで、新商品等としての妥当性や公共調達としての適正性が確認される仕組みです。

ただし、2026年8月4日の通知では、J-Startupの選定や、他の地方公共団体ですでに認定された新商品等について一定の条件を満たす場合には、学識経験者の意見聴取と同等の効果があるものとして取り扱う考え方が示されました。

自治体から新商品等の認定を受ける

審査を経て自治体が新商品等として認定した場合に限り、4号随契による随意契約の対象になります。
当然、認定を受けていない商品やサービスは随意契約の対象とならず、通常の競争入札等の手続きが求められます。

また、認定後も契約に至るまでには自治体内での予算措置や担当部署との調整が必要になる場合があるので注意してください。

スタートアップにとってどんなメリットがある?

4号随契で自治体との取引が実現した場合、スタートアップには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。以下では5つの観点から解説します。

初めての顧客を獲得できる

実績のないスタートアップにとって、自治体との契約は事業として初めての正式な顧客獲得につながる貴重な機会です。
自治体との契約実績を早期に作ることで、その後の営業活動や事業展開につながる可能性があります。

公的機関との取引実績があれば、その後の営業活動において商品やサービスの信頼性を示す材料として機能します。
なお、認定を受けたからといって、自治体との契約が必ず成立するわけではありません。認定後も予算や具体的な調達需要、庁内での手続きなどを踏まえて契約が検討されます。

実績を営業資料にできる

自治体との契約実績は、他の自治体や民間企業への営業活動において具体的な導入事例として提示できます。
「公的機関で採用された」ことは、商品やサービスの信頼性を示す材料のひとつになります。

営業資料に具体的な導入自治体名や活用場面を記載できることで、商談における説得力が大きく向上します。

他自治体への横展開

ひとつの自治体での導入実績が生まれれば、それをきっかけにして同様の課題を抱える他の自治体からも問い合わせを受けやすくなります。
4号随契の事例集に掲載される場合があるので、全国の自治体担当者に商品やサービスの存在を知ってもらうチャンスです。

複数自治体への横展開が進めば、ひとつの製品やサービスを広域で安定的に供給できる体制づくりにつながります。

民間企業への販路拡大

自治体という公的機関での採用実績は、民間企業に対する提案時にも強力な信頼材料です。
行政での導入事例があることで、同業種や関連業種の民間企業からの引き合いが増えるかもしれません。

採用されることによって公共分野で培った実績とノウハウを積み重ねられます。得られた知見を民間向けサービスの改善や新規展開に応用することも可能です。

資金調達にもプラスになる可能性

自治体との契約実績は、投資家や金融機関に対して事業の実現性や信頼性を示す材料のひとつです。
公的機関からの調達実績があることで、資金調達の際の事業計画に説得力を持たせやすくなります。

金融機関との審査でも継続的な取引や横展開の見込みを示せれば、将来的な収益性の裏付けとして評価される可能性があります。
自治体との契約実績は、事業の実現性や導入実績を示す材料のひとつとなり、資金調達の際の事業計画に説得力を持たせる要素にもなるでしょう。

まとめ:4号随契は補助金に代わる新たな販路支援策になり得る

スタートアップの心強い味方は補助金だけではありません。
4号随契は、補助金とは異なる形で販路開拓を支援する仕組みとして、実績を残してビジネスチャンスを広げる制度です。
多くの魅力がある一方で、活用実績は全国でわずか約2%にとどまっており、多くの自治体で制度の周知や導入が進んでいないのが現状です。
自治体への提案を検討するスタートアップは、まず認定制度の有無を確認し、事業計画の準備を進めましょう。

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(編集:創業手帳編集部)