社長が休職した時に備える対策とは?働けなくなる理由やリスクも解説

社長の休職リスクに備えよう

社長の休職
社長が休職する場合、経営への影響が大きいので経営体制の整備が必須です。
また、役員報酬に関しては基本的に支払われますが、長期化すれば減額や解任の可能性があるので注意が必要です。

そこで今回は、社長が休職してしまう理由や就業不能になった場合の入院日数などを解説していきます。
休職した場合のリスクや備えについても紹介していくので、リスクを抑えるためにも参考にしてみてください。

社長(代表取締役)は「休職」できる?従業員との違い


怪我や病気といった理由であれば、社長でも休職することは可能です。
しかし、一般的な従業員とは異なり、会社役員となるため休職のルールは従業員とは異なります。

休職の判断は、取締役会や株主総会での決議が必要です。
休職期間については一般的な従業員向けの就業規則が適用されないケースが多いため、基本的には会社の内規や取締役会などの決定で期間や条件で決まります。

社長が休職してしまう理由


まずは、社長が休職する理由を解説していきます。どういった理由で休職するリスクがあるのか把握するためにも役立ててください。

就業不能の実態

2021年7月にエヌエヌ生命保険株式会社が発表した「中小企業経営者の就業不能に関する実態調査」によれば、就業不能の原因の多くが「病気」と回答しています。詳しい結果は以下の通りです。

就業不能になった原因 割合
病気 67.0%
業務外の事故 18.9%
業務関連の事故 11.9%
その他 2.2%

具体的な病名についてはガンが19.6%と最も多く、次いで脳卒中が9.8%、心疾患が9.1%、精神疾患が7.2%、胃腸炎が5.4%と続いています。

心の不調にも注意が必要

株式会社Awarefyが実施した「メンタルケアに関するアンケート」においては、経営者の約半数が心の不調を感じた経験があるという結果が出ています。
経営者になってから心の不調による症状を感じたことがあるか質問をした結果、「ある」と回答した人が47.3%と多く、眠れなくなったり食欲がなくなったりといった経験がある人が多いことがわかっています。

なぜ、心の不調に陥るのかその要因としては、以下のような結果です。

心の不調の要因 割合
資金繰り 45.1%
将来の見通し 44.4%
業績 31.7%
激務・休めない 26.1%
社内の人間関係 20.4%
メンバーの育成 18.3%

「孤独を感じたことがあるか」という質問では「とてもある」と「ややある」が合わせて44.3%となり、4割以上の人が孤独を感じたことがあることがわかりました。
そのため、悩みを抱えながらも相談できずに精神的に疲れてしまった人が多いことが予想できます。

社長が病気で就業不能になった場合の入院日数


社長が病気になった場合、入院が必要になればどの程度休む必要があるのか疑問に感じている人もいるでしょう。
入院日数を事前に把握しておけば、休職する日数の把握に役立ちます。
厚生労働省による「令和5年患者調査によれば、退院患者の平均在院日数は28.4日となっています。傷病別の平均入院日数は以下の通りです。

傷病の種類 平均在院日数
統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 569.5日
血管性及び詳細不明の認知症 285.2日
アルツハイマー病 279.6日
気分(感情)障害 118.2日
脳血管疾患 68.9日
結核 44.3日
高血圧性疾患 41.6日
骨折 35.4日
糖尿病 31.8日
肺炎 26.0日
肝疾患 22.3日
結腸及び直腸の悪性新生物 15.3日
胃の悪性新生物 14.7日
気管、気管支及び肺の悪性新生物 14.1日
肝及び肝内胆管の悪性新生物 13.6日
ウイルス性肝炎 13.4日

社長が休職した場合のリスク


社長が休職すると、様々なリスクがあります。どういったリスクが降りかかる恐れがあるのか解説していきます。

売上の減少

中小企業では社長が自ら営業を行っているケースも多いです。会社の業績を支えている社長が休職によって不在となれば、経営に大きな影響を与えてしまいます。
社長がトップセールスであれば、社長不在の状態では売上の維持や向上が難しく、休職が長引けば長引くほど、その影響が大きくなります。
最悪の場合は倒産の危機が訪れる危険性があるので注意が必要です。

社長以外にも営業力のある人材を育成することで、売上の減少リスクを抑えることができます。

信用力の低下

社長の休職は信用力の低下にもつながります。中小企業や起業直後の会社の場合、社長の技術力や営業力が信用につながっているケースも多いです。
そのため、休職によって社長が不在となれば、取引先や金融機関にとっても不安要素となってしまいます。

前述したように社長自らが営業を実施していた場合、社長が不在となることで売上にも大きな影響を与えます。
そのため、「このまま取引を続けてもいいのか?」と不安視する取引先もいるでしょう。不安要素が多ければ取引が停止になる可能性も十分にあり得ます。

金融機関も同じように考えるため、たとえ社長不在によって資金繰りが難しくなったとしても、融資を受け入れてくれない可能性があります。
こうしたリスクを抑えるためにも、経営者が就業不能になった時の体制整備が重要です。

判断力の低下

病気や怪我によって社長が休職した場合、判断力の低下リスクも存在します。
体調不良によって精神的な負担も大きくなれば、判断能力の低下が懸念され、適切な経営判断ができなくなる可能性があります。

経営者の決定は会社の命運を左右するため、判断力が低下している状況下では病気や怪我を患っている社長が意思決定をするのは非常に危険です。
思わぬリスクを背負わないためにも、社長代理となる人材をあらかじめ選出しておき、社長が不在となった際にはその人材に判断を任せる体制を作っておくことが大切です。

従業員の退職

社長が長期休職となれば、「社長が不在な中でもこの会社は大丈夫なのか」と将来を不安に感じる従業員も出てきます。
休職が長期化すればするほど、その不安感は大きくなり、加えて社長が営業を率先して行っていた場合は売上にも影響を与えるため、より不安視する声が多くなります。

その結果、退職を願い出る従業員も中にはいるので注意が必要です。優秀な従業員が退職してしまえば売上にも直結し、経営が危ぶまれる可能性も高まります。
経営者の不在は従業員の離職を促すため、社長がたとえ不在となっても安心できる環境を整備することが大切です。

社長本人や家族の生活への影響

社長は会社の経営だけではなく、本人や家族の生計も担っています。そのため、就業不能になればプライベートのお金にも影響が及ぶ可能性が高いです。
社長の場合、休職をしても役員報酬が支払われるため家計に影響はないと考える人もいます。

しかし、役員報酬は株主総会や取締役会の決議によって減額や停止が可能です。
万が一減額や停止が決定すれば、プライベートで使えるお金が減ってしまうため、家賃や住宅ローン、教育費や税金、日々の生活費などの支払いに問題が生じるケースもあります。
怪我や病気による治療や入院といった医療費もプラスでかかるため、働けない状態が長期化すれば、経済的に厳しくなる可能性が高いです。

社会保障制度は社長でも適用される?


会社員が怪我や病気で働けなくなれば健康保険や労災などの社会保障制度があるので収入や治療費の不足分をカバーできます。
しかし、社長でも適用されるか疑問に感じている人も多いかもしれません。適用の有無について詳しく解説していきます。

要件を満たせば傷病手当金を受け取れる

健康保険の被保険者は、怪我や病気で働けなくなった際、傷病手当金を受け取ることができます。これは、社長でも同様です。
しかし、要件を満たしている必要があるので注意してください。傷病手当金を受け取れる条件は以下の通りです。

  • 業務外の事由による怪我や病気での療養のための休業である
  • 怪我や病気が理由で労務不能になった
  • 連続する3日間を含む4日以上、仕事に従事できなかった
  • 休職中に報酬の支払いがない、もしくは減額されていた(減額の場合は報酬額が傷病手当金の額よりも少ない)

社長も健康保険に加入していれば、上記の要件を全て満たすことで4日目から傷病手当金を受け取れます。

労災保険は原則として対象外

会社の事業主は原則として労災保険に加入できません。これは、労働基準法上の労働者に該当しないためです。
ただし、一定の条件を満たしていれば特別加入できるケースがあります。

・中小事業主等
1年間に100日以上にわたって労働者を使用している事業主を指します。事業主と共に事業に従事する家族も対象となります。
雇用する労働者に対して保険関係が成立していることと、労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していることが要件です。
ただし、業種によって労働者数の条件が異なる点に注意が必要です。

業種 労働者数
金融業 50人以下
保険業 50人以下
不動産業 50人以下
小売業 50人以下
卸売業 100人以下
サービス業 100人以下
その他 300人以下

・一人親方
労働者を雇用せずに特定事業を実施している事業主が一人親方です。個人事業主として建設業や運送業を営んでいる人や一人社長が当てはまります。
特別加入の対象となる業種は定期的に見直しがされているので、厚生労働省による労災補償といった最新の情報を確認するようにしてください。

社長が休職した場合の備え


社長が休職した際のリスク対策となる制度を紹介していきます。リスクに対する備えとなるため活用を検討してみてください。

小規模企業共済の経営者貸付

小規模企業共済とは、中小機構が運営する退職金制度です。小規模企業共済には共済契約者が利用できる貸付制度が設けられています。
簡易迅速に事業資金などの貸付が受けられる一般貸付と、特別な事情がある際に貸付を受けられる特別貸付の2種類があります。

小規模企業共済の貸付制度は、掛金の範囲内に限りますが審査なしで利用できる特徴があるので、資金調達が迅速に行える点がメリットです。担保や保証人も必要ありません。
また、一般貸付制度の借入金の使途は事業だけではありません。生活資金にも充てられる点が特徴です。

所得補償保険(損害保険)

怪我や病気で働けなくなった時の所得減少を補償する保険が所得補償保険です。
具体的には、入院や医師の指示による自宅療養によって就業できなくなった場合の所得減少が補償されるもので、短期型と長期型の2種類があります。

短期型は、怪我や病気によって短期間働けなくなる場合に備える保険で、保証される期間は数年と短いですが、免責期間が7日間ほどと短いことが特徴です。
長期型は、寝たきりになり働けなくなるような状況に備えるための保険です。
保険期間は60歳または65歳までと長いですが、免責期間も60~365日ほどと長くなる傾向にあります。

就業不能保険(生命保険)

怪我や病気で働けなくなった際に毎月の生活費や治療費をサポートするための保険が就業不能保険です。
就業不能の状態は保険商品によって異なりますが、多くの場合では怪我や病気による治療のために長期間入院している場合や医師の指示で自宅療養が必要になった時、障害等級1級または2級に認定された際などが当てはまります。

  • 毎月給付金を受け取れる
  • 一時金として受け取る
  • 一時金と月額給付の組み合わせ

給付金の受け取り方や期間の違いによって上記のようにタイプが異なっています。
一般的なのは毎月給付金を受け取るタイプで、就業不能の状態が継続している間、毎月定額の給付金を受け取れる仕組みです。
ただし、免責期間があるため就業不能な状態になってもすぐには給付金を受け取ることができません。

事業継続計画の準備も重要


社長が怪我や病気で働けなくなれば会社の経営状況が悪化する懸念があります。
経営者不在の状態になれば様々な影響が考えられるため、事業継続計画を準備するのもリスクに備えるための対策の一つです。
事業継続計画とは、地震や火事といった災害の他、サイバー攻撃といった緊急事態において、損害を最小限に抑えて中核事業を早期復旧し、継続させるための具体的な行動計画を指します。
防災対策として認識している人もいますが、社長の休職といった経営者不在の事態にも適応することが可能です。

事業継続計画では、社長が働けなくなってから復帰するまでのマニュアルを制作します。

  • 社長代理の選出
  • 社長代理としてそれぞれの人材が担当する業務
  • 取引先や金融機関に対する対応

誰か1人に絞って社長代理を任せられるのが理想的ですが、難しい場合には複数に人材に業務を割り振ることも可能です。
その場合は、担当する業務内容と負うべき責任についても詳細に記します。

また、運転資金に関してもシミュレーションが欠かせません。社長が不在となった時に売上や経費がどの程度変化するのかを見定め、対応策を練っていきます。
資金繰りや資金調達の方法についても、あらかじめ記しておくと緊急時にも素早く対応可能です。

まとめ・社長が治療に専念できるように体制を整えておくことが大切

怪我や病気の療養で働けなくなるリスクを想定し、備えておくことは社長にとって大きな意味を持ちます。
自分が働けなくなった時を想定し、今回紹介した備えを活用することで療養に専念する環境が手に入ります。保険に関しては、保険会社に相談の上、加入先を検討しましょう。

創業手帳(冊子版)では、様々なリスクの備えとなる情報を多数掲載しています。給付金や制度など、役立つ情報が満載なので、ぜひ参考にしてみてください。

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