リバースピッチとは?一般的な流れやメリット、成功させるポイントを解説

リバースピッチは企業や自治体が課題を提示して協業先を募る手法

企業や自治体が課題を提示し、スタートアップから協業先を募るリバースピッチのイメージ
現在注目を集めているのが「リバースピッチ」と呼ばれる手法です。
企業や自治体が課題を提示し、協業先を募る手法となり、課題解決のアプローチ法として注目を集めています。
しかし、中にはリバースピッチについて知らない人もいるでしょう。

そこで今回は、通常のピッチとの違いや活用場面などの基本的な情報のほか、メリットや一般的な流れ、活用事例や成功させるポイントなどを解説していきます。
課題解決を目指している企業やリバースピッチに興味のある企業担当者は、ぜひ参考にしてみてください。

リバースピッチとは

前述したように、大企業や自治体が抱えている課題を解決するために協業先を募る手法をリバースピッチといいます。
自社のリソースや技術だけでは解決できない悩みを解決する手法として注目されており、優れた技術やアイデアを持つスタートアップやパートナー企業からの提案を募り、新しいビジネスや価値の共創を前提とした協業関係が築きやすい点が特徴です。

通常のピッチとの違い

リバースピッチは、通常のピッチとは逆の構造を持っています。
通常のピッチは、スタートアップ側が企業や投資家を相手に自社のビジネスを売り込む手法です。

また、プレゼンテーションとは異なり、事業内容についてはすべてを詳細に説明するのではなく、相手の興味を引くことを重視し、一般的には3~5分程度の短時間で伝える特徴があります。

主な特徴を表にまとめました。

リバースピッチ 通常のピッチ
発表者 大手企業や自治体 スタートアップ企業や起業家
内容 自社が抱える課題や協業したいテーマ、求めている技術の提示 自社の事業や製品、アイデアの紹介
目的 参加するスタートアップやパートナー企業から解決策やアイデアを募る 投資家や大手企業からの資金調達やパートナーシップの獲得

リバースピッチを行う主な組織と活用場面

リバースピッチを行う主な組織や活用場面は以下が挙げられます。

・大企業や事業会社
既存事業のDX化や新規事業の立ち上げなどを目的に、自社のリソースと組み合わせられるパートナーを募っていきます。

・自治体や行政機関
地域社会が抱えている少子高齢化や環境・インフラなどの行政課題を公開して、民間企業が持つ斬新なアイデアやソリューションを募っていきます。

・銀行や業界団体
顧客企業とスタートアップを結ぶ協業ハブとして、融資以外の非金融支援やビジネスマッチングを促していきます。

一般公募や招待制で発表する場を設けたり、マッチングイベントを開催したりして、協業先を探していくことが一般的です。

リバースピッチのメリット

課題を提示する企業や自治体側、提案するスタートアップ側では、それぞれどのようなメリットがあるのか比較していきます。

課題を提示する側が得られるメリット ・シナジー効果が期待できる
・新たな発想が生まれやすくなる
・オープンイノベーションへの姿勢を発信できるブランディングにつながる
提案する側が得られるメリット ・協業や事業提携の機会を得られる
・販路拡大や市場開拓につながる
・実績づくりや認知度向上につながる信頼性がアップする

課題を提示する企業・自治体側のメリット

企業が行っている現在の取り組みや抱えている課題を提示することで、スタートアップ側はどのような技術やアセットを組み合わせれば良いのかが明確になります。
そのため、強みを最大限活かした提案ができるようになり、制度の高い協業につながる可能性が生まれます。
大企業は事業部門の数も多いため、スタートアップ側からすると内情が見えにくいです。
しかし、リバースピッチによって社内の課題をオープンにすれば、高いシナジー効果が期待できます。

また、外部の視点や異業種の知見を取り入れることで、自社内だけでは辿り着けないようなイノベーションを引き起こせる点もメリットです。
外部の起業家やスタートアップ企業の自由な発想に触れる機会も多くなるため、課題を提示する側の社内メンバーにとっても強い刺激となることが予想できます。
組織全体のマインドセット変革や新しい発想を生み出しやすい土壌づくりにも影響を与えてくれるでしょう。

また、リバースピッチはパートナー探しだけではなく、ブランディングツールとしても機能します。
自社の課題や内情を隠さずにオープンにし、外部のスタートアップと積極的に手を組もうとする姿勢を示すことで、業界内部に「柔軟性がある企業」「オープンイノベーションに積極的な企業」といったイメージを与えます。
その結果、先進的な企業としてのイメージが浸透するため、信頼獲得や採用市場へのアピールにもつながるでしょう。

提案するスタートアップ側のメリット

提案する側のメリットとして、協業や事業提携の機会を得られる点が挙げられます。
リバースピッチにおいては、大企業側が求めている課題が最初から明確に提示されるため、自社の技術やサービスをどのように活かせるかを見極めやすいです。
その結果、精度の高いマッチングやスピーディーな共創へとつながりやすくなります。

また、販路拡大や市場開拓にもリバースピッチはつながります。大企業の場合、様々な外部企業とのつながりを持っていることが多いです。
そのため、協業することで信頼を得られれば、そのほかの企業とも取引できる可能性が期待できます。

そのほかに、実績づくりや認知度向上につながる点もメリットとして挙げられます。
スタートアップの場合、企業に対するブランド価値や信頼性がまだ低いため、他社との契約に結び付かないケースも多いです。
しかし、大企業と協業した経験があれば、信頼性が高まるため新たな契約もスムーズに決まりやすくなることが期待できます。

リバースピッチの一般的な流れ

リバースピッチで課題提示から質疑応答、解決策の提案、実証実験・協業へ進む一般的な流れ
リバースピッチは、協業相手を探す際にイベントが活用されるケースが一般的です。
その際の流れを解説していきます。

1.課題提示側が課題・ニーズ・活用可能なリソースを説明する

まずは、主催者側の担当者による課題やニーズの提示が行われます。
具体例としては以下の通りです。

  • 自己紹介:登壇する企業や自治体が自社の概要やこれまでの実績などを紹介する
  • リソース:自社が持つアセット(販路、顧客基盤、技術、ブランド力、資金など)を提示する
  • 解決したい課題(ペイン):自社単体では解決できない事業上の課題、新規事業のテーマ、デジタル化のニーズなどを具体的に開示する
  • 求めるパートナー像:どのような技術やアイデアを持ったスタートアップや企業と組みたいかを提示

2.質疑応答や意見交換を行う

主催者側のプレゼンが終了した後には参加しているスタートアップ側からの質疑応答が実施されます。
提示された課題の背景や、現在の社内リソースの状況についての深掘りを行い、「自社の技術であれば、この部分を活用できるかも」といったように、その場での簡単なすり合わせを行います。

3.スタートアップが解決策を提案・応募する

次に、リバースピッチの内容に共感したスタートアップ側や自社の技術で課題を解決できると判断したスタートアップ側が、具体的な提案を行っていきます。
提案方法としては、以下が挙げられます。

  • エントリーシートや提案書の提出:イベント後、指定のフォーマットで具体的なソリューション案を提出するケースが一般的
  • サイドピッチ(逆ピッチの返し):イベントによっては、その場で数社のスタートアップが「御社の課題に対して、我が社ならこう解決できる」と短時間のピッチで応戦することもある

4.個別面談や実証実験・協業を検討する

スタートアップ側から提出された提案の中から主催者側が協業できる可能性が高いと判断した企業を選択し、興味を持った企業に対して個別でアプローチを実施するほか、提案書(企画書)を提出したり、個別面談を実施したりします。
面談では、お互いの担当者同士で詳細なディスカッションが行われます。

その後、実証実験のスタートです。
アイデアが固まれば小規模な実証実験を行い、本格的な協業や出資、導入へとステップアップしていきます。

リバースピッチの活用事例

ここからは、リバースピッチの活用事例を紹介していきます。

大企業・CVCがスタートアップに協業テーマを提示する事例

・東芝
エネルギーや社会インフラ、デジタルソリューションといった幅広い領域で貢献している東芝では、社会課題が複雑化する中でも持続的な価値を生み出していくために、従来とは違う視点で技術を活用したいと考えています。
そのような中、2020年にスタートアップとの協業で先端技術の新たな活用法を模索する「Toshiba OPEN INNOVATION PROGRAM」をスタートしました。
初年度には18社ものアイデアが採択されて事業化に向けて動き出しています。

・日立グループ
日立製作所では、グループ横断でイノベーションの創出を目指す「Special Interest Group」を2022年に発足し、Web3やメタバースなどの新分野における事業機会の創出に取り組んでいます。
2022年にはWeb3とメタバース、2023年にはAIをテーマにし、それぞれで実績を持つスタートアップと意見交換を行いました。
その結果、既存の事業延長では出てこないような新たな仮説検証の視点を得ることができ、さらには事業開発の可能性が生まれる結果を出しています。

自治体・行政機関が地域や行政の課題を提示する事例

・岐阜県
岐阜県では、県内にある自治体が抱えている課題を解決するために、スタートアップを募集しています。
高山市では介護現場のICT/DX、美濃加茂市では野菜摂取量の増加による市民の健康づくりや道路や水路に接する草や枝の繁茂対策などが課題となっており、提案を募集しています。
2027年に成果報告会が行われる予定です。

・東京都
2026年4月に東京都で開催されたのが「地域課題解決イノベーション創出イベント」です。
秋田県、山形県、新潟県、東京都の知事が登壇し、各自治体を取り巻く課題を提示し、意見交換を行いました。
秋田県では中山間地域の農業振興対策、山形県では持続可能な米作り、新潟県では豪雪地域の雪害防止が課題になっており、その課題に対する優れた技術やアイデアの提案も実施されています。

リバースピッチを成功させるポイント

ここからは、リバースピッチを成功させるポイントを解説していきます。

課題提示側は目的・課題・提供できるリソースを明確にする

課題を提示する側となる大企業や自治体側は、目的や課題、提供できるリソースを明確化させておく必要があります。
単に「アイデアが欲しい」ではなく、「○年以内に新規事業の柱を作りたい」といったように明確な着地点を考えておきます。
また、「意見交換から始めたい」「すぐに実証実験に進めるパートナーが欲しい」など、参加者側に求めるアクションを示すことも大切です。

また、提供できるリソースでは、相手に差し出せる価値を具体的に提示します。
自社の名前やブランド力だけではなく、顧客基盤や蓄積されたデータ、出資や実証実験の予算や専任チームの配置など、細かく開示してください。

スタートアップ側は課題に沿った具体的な提案を行う

スタートアップ側は、課題に沿った具体的な提案を行わなければいけません。
「弊社の技術が使えます」という抽象的なアピールに留めるのではなく、企業のどの部署のどの業務フローに技術を組み込めるのか、またどのような成果が期待できるのかを具体的に示していきます。

その際には、過去の実績やデータなど、数字を用いると効果的です。

意思決定者を含めた社内体制とフォローアップ方法を決める

スタートピッチを単なる意見交換の場で終わらせるのではなく、実際の共創や協業へとつなげるためには、意思決定者を含めた社内体制の構築と迅速で継続的なフォローアップが不可欠です。
現場担当者だけでリバースピッチを行い、いざ協業となると社内調整に多くの期間を要してしまうケースは多いです。
そのため、ピッチの場やその直後の面談から、予算やプロジェクトの決裁権を持つ意思決定者を同席させ、スピーディーに判断できる体制を整えておいてください。

また、役割分担を明確にした社内チームをあらかじめ作っておくことも大切です。
次のステップに移るためにも、「一度持ち帰ります」で終わらせずに、「○日までに一度オンラインで壁打ちをしましょう」「次回までにNDAの準備を進めましょう」などと、具体的なアクションと期限を明確に握ることが、案件の頓挫を防ぐポイントとなります。

実証実験の範囲と評価基準をすり合わせる

リバースピッチを経て実際に協業や実証実験などに移行する際、実証実験の範囲や評価基準のすり合わせを曖昧にしたままスタートさせると、認識のズレからトラブルに発展する可能性があります。
プロジェクトの頓挫を防ぐためにも、すり合わせは重要なポイントです。

まず、検証する範囲をあらかじめ限定します。
欲張って検証すると時間もコストも膨らんでしまうため、技術的に動くか、現場で本当に使われるかなど、懸念点を1つに絞って検証してください。

また、成功の基準は、数値や事実ベースで決めておく必要もあります。
「なんとなく良かった」「イマイチだった」などという主観的な感想で判断するのではなく、「ヒアリング対象の○割が利用を継続したいと回答したら」「業務時間が○%削減できたら」などと、具体的な数値を用いて合格基準を設けます。

リバースピッチに参加・実施する際の注意点

リバースピッチによって協業相手と出会える可能性があり、大企業側は課題解決に向けて突き進めるチャンスを掴めます。
提案をするスタートアップ側も協業相手を見つけることで信頼の獲得や出資を受けられる可能性があり、メリットが非常に多いです。
しかし、リバースピッチのイベントに参加したからといって、協業・発注・出資が必ず決まるわけではありません。
協業候補と出会うきっかけである点をよく理解しておいてください。

ここでは、リバースピッチの注意点を解説していきます。

参加しても資金調達や協業が決まるとは限らない

リバースピッチのイベントに参加をしても、資金調達や協業が決まるとは限りません。
大企業側の抱えている課題に対する技術水準やスピード感が合わずに見送りになる可能性があります。

また、リバースピッチのイベントに参加した後には、提案内容の審査、個別面談、条件交渉、PoCなどが行われるケースが多いです。
イベントによって目的やその後の流れが異なるため、選考基準、スケジュール、採択後の支援内容を事前に確認する必要があります。

資金調達については、大企業側は「資金調達ができる」と断定せず、「協業や資金調達につながる可能性がある」と示すことが大切です。

秘密情報・知的財産・費用負担の扱いを確認する

リバースピッチでは、後々のトラブルを避けるためにも、機密情報や知的財産、費用負担の3点は取り扱いを慎重にする必要があります。

公開の場で営業秘密や未公開技術を不用意に開示しないこと、詳細情報の共有前にはNDAを検討することが重要です。
また、PoCや共同開発へ進む場合には、成果物・知的財産の帰属、利用範囲、費用負担、役割分担、評価基準、中止条件などをあらかじめ書面で確認しておいてください。

まとめ・リバースピッチを協業のきっかけにして成長を目指そう

大企業や自治体がスタートアップと連携することで、新たな成長機会を生み出せる可能性があります。
それぞれの強みや技術を活かすことで、自社のみでは創出できないようなイノベーションが期待できます。
課題を解決するため、そして協業のきっかけにして成長を目指すためにも、リバースピッチイベントへの参加を検討してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)