飲食店店舗「二等立地」での開業のメリット・デメリットとは。

飲食開業手帳

不利な土地での飲食店経営について、オーナーに聞いてみた。

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(2016/10/13更新)

新規で飲食店の開業を考えられている方なら事業継承等を除きほとんどの方がお考えになるであろう「出店候補地」。
駅の乗降客数が多く視認性の良い誰もが「一等地」だとわかるテナント。賃貸物件の情報サイトをご覧になられていればは誰もが出店したい物件は、なかなか空きがでない、若しくは賃料等の条件が高すぎて資金面などの理由で現実的には出店が難しい事に気づかされた方も多いのではないでしょうか。そうなると次は希望条件から「何か」を妥協した物件を候補に挙げ出店を検討しなければならなくなります。

そこで今回は、特に賃料等の資金面で条件の悪い立地しか選択肢がなく開業を悩まれている新規開業者様の背中を「ポン!」と押してくれるような、誰もが認める二等立地で10年間営業を続けていらっしゃられる先輩のお話を伺って参りました。

今回お話をお伺いさせて頂いたのは、お世辞にも大手、個人に限らず飲食店の元気が良いとは言えない東京の東端「金町駅」の繁華街から外れた住宅街に居酒屋を出店し、今年で11年目を迎えた「居酒屋しろし」さんです。

店舗情報
金町の一軒家居酒屋 しろし
〒125-0041 東京都葛飾区東金町2-17-18
電話:03-3608-5271
営業時間:17時~0時(L.O.23:30)
定休日:不定休(年に数日)

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開業した当初の初心は「地元に愛される店になる」誰でもそうでしょ?

隣の亀有は「こち亀連載終了特需」で大いに盛り上がっているというのに、金町の飲食店が軒を連ねる商店街は平日という事もあるのか閑散とした雰囲気。そんな商店街を抜け、駅から歩くこと7分とちょっとの住宅街にしろしさんはポツンと佇んでいます。
店内は一階がカウンター6席と4名掛けのテーブル席が2台。二階は座敷になっており最大で25名まで収納可能とのこと。現在はご兄妹の2人でお店を運営しております。
週末はいつも予約でいっぱい。平日も遅くまで料理とお酒を楽しむお客様がいらっしゃられるそうです。

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民家を改装した居酒屋の為、元々自分の住まいだった家を改装したのかと思いきや多くの飲食店と同じく賃貸物件とのこと。探せばもう少し駅に近い物件もあったであろうに、やはり一番聞きたい事は失礼ながら「何故こんな不利な場所で開業を決断されたか」。

その問いに対する答えは「賃料との折り合い」、さらに「お店を始めるにあたって誰も数年でたたむ事なんて考えないでしょ?認知されるまでは大変かもしれないけど長く続ければ常連さんもついてくれるだろうし、地元の人達に愛される店になれば立地は関係ないと思った。地元に愛される店にしようって思いでお店を始めるのは誰もが一緒なんじゃないの?長いスパンで考えれば立地はそこまで重要ではなくなりますよ。」との事。

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開店当初は集客に苦労、ただそこを抜ければメリットに

今でこそ繁盛店ですが、前途した通り住宅街のしかも中地にある物件だけあって視認性も悪く開店当初は苦労も多かったようです。売上0円の日が続くこともあったのだとか。ただ席数が多く従業員を多く雇い高額な賃料の物件だったら成り立たなかったかもしれない中、賃料が安い物件だったからこそ苦労をしながらでも我慢をしながら持ちこたえられたのだと。

賃料は開店しまってからは削ることのできない経費ですから最初の我慢も徐々に常連が増えて安定してくると固定費を安く抑える事に貢献し、今では安い賃料は逆にメリットになっております。

通常飲食店では理想の賃料は売上の10%以下と言われております。都心の一等地で入れ替わりの激しい物件の多くが飲食店には向かない賃料である事がよくあります。坪単価4万5万若しくはそれ以上のテナントは幾ら立地が良くとも個人での出店はリスクが高いと思って頂けた方が良いかと思います。

例えば
坪単価4万円 × 15坪の店舗 = 賃料60万円
目標月販600万円(無休で営業して平均日販20万円が必要)
22席確保で席単価約9000円
客単価の想定が4000円なら2回転以上、3000円なら3回転必要になります。
(1500〜2000名/月の来店が必要)

端からみれば繁盛していそうな一等地のバル等がいつのまにか閉店している理由のひとつは売上に見合っていなかったという事も要因のひとつです。上記の例で考えても現実的に月2000名の来店をコンスタンスに見込むのはなかなか難しいのではないでしょうか?

逆に今の条件を坪単価1万円に置き換えてみてください。
客単価3000円計算でも月に500名、25日営業にしても一日平均20人入ればよく、対応する客数が減る分、人件費の削減若しくは余裕のある接客が可能となり客単価アップも目指す事が可能になるのでは無いでしょうか?

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お話を伺ったのはお兄さんの大日方博さんですが、博さんはあまり写真に映るのが好きではないとの事で妹の聖子さんをパシャリ。

10年間一日も休まず営業

いくら賃料が安いからと言っても、良いお店でなければ売上を維持していくことはできません。お店がどのように工夫を続け10年以上常連を愉しませ続けたかについても博さんに伺いました。

「その日のメニューは日々の仕入れ状況から決めています。それを楽しみにお越し頂くお客様がほとんどです。」、「またウチでは開店当初からマグロだけは最高のモノを食べて貰いたいので採算度外視でお出ししています。中にはマグロを目当てに来店してくださるお客様もたくさんいらっしゃられます。」との事。

拝見させて頂くと毎日毎日丁寧な手書きでメニューを更新されています。更に博さんは「ウチは10年間、盆暮正月1日も休まないで営業しました。少しお店の調子が良くなった時は休みをとって遊びに行きたくもなりましたが当初決めた事を10年間継続出来た事が自信になっています。最近は10年経ってようやく少しだけお休みを頂くようにしています。」

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毎日メニューは試行錯誤しながらも開店当初から変わらぬ兄妹の笑顔がお客様に安心感を与えているのではないでしょうか?

オーナーからのアドバイス

最後にこれから新規で開業される方への立地選びについてアドバイスを頂きました。

「自分が信じたやり方を継続すればお客様はお越しくださいます。確かに高額な家賃の物件は目に付きやすいでしょうがその分競合もたくさん居ます。お客様が来てくれる保証なんて無いのですから支出は可能な限り抑えた方が厳しい時期もなんとか我慢ができます。息の長い活躍を目標に結果を急がずじっくりと出店計画を練って頑張ってください。」

ご兄妹共にITには疎かったことからweb系の販促は一切行っていなかったとの事ですが、今年11年目にして聖子さんが携帯をスマホに変えたのをきっかけに、夏からホームページを作成し毎日Twitterで情報を更新する事で新たなお客様も足を運ぶようになりつつあるんだとか。今の時代webでの集客も万能薬ではなくなりつつありますが、「ホームページくらいはないと」という時代です。

不動産屋の立場からも恐れながら申し上げさせて頂きますと、「皆様が理想とお考えになられるご希望の条件は100%出てきません!」立地が悪い分集客には苦労をしますが賃料が安ければその分販促に割ける費用も捻出しやすくなります。弊社の取引先や創業手帳様からも助走期間を短くする為に飲食店に強い販促業者様をご紹介可能です。

そう考えると賃料の低い悪立地も一考ではないでしょうか?

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(監修:東京不動産
(編集:創業手帳編集部)

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