【最新・社労士監修】令和8年度 業務改善助成金とは?支給金額や対象経費、変更点などをご紹介
賃上げと設備投資による生産性向上・業務効率化を支援する最大600万円の助成金

業務改善助成金は、生産性向上につながる設備投資(機械やシステムの導入、業務フロー見直し等)と事業場内最低賃金の引き上げをあわせて行う企業に対し、費用の一部を最大600万円助成する制度です。
令和8年度も継続されますが、今年度は対象事業場や労働者の要件、申請期間等の変更点が少なくありません。特に、申請・賃上げ・設備導入の順番を誤ると助成対象外となるため注意が必要です。本記事では、基本的な仕組みから令和8年度の変更点、実務上の注意点までわかりやすく解説します。

法政大学卒。令和6年度宮城働き方改革推進支援センター・センター長。起業家としてこれまで複数企業を立ち上げる。現在も複数法人の代表を務める。
社会保険労務士法人ブレインズ(仙台・東京虎ノ門)では助成金専門チームを設置。法令遵守に基づく助成金申請から運用定着まで一貫してサポートできる体制を構築。
この記事の目次
令和8年度 業務改善助成金の主な変更点
2026年度(令和8年度)、政府は賃上げをより強力に後押しするため、「業務改善助成金」の内容を拡充・再編する方針です。主な変更が予定されているポイントは以下です。
1.助成率4/5の適用基準が「1,050円未満」へ引き上げ
令和8年度より、高い助成率(4/5)が適用される事業場内最低賃金の基準が、従来の1,000円未満から1,050円未満に緩和されました。
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- 判定の注意点:事業場内最低賃金は、賞与や通勤手当、残業代等を除外した金額で判定します。月給制の場合は時給換算が必要です。
- 地域による違い:地域別最低賃金がすでに1,050円以上の都道府県では、事業場内最低賃金も必然的に1,050円以上となるため、助成率は一律3/4となります。自社が「1,050円未満」の区分に該当するかは、所在地域の最低賃金と併せて確認が必要です。
2.賃上げコースの再編:最低50円以上の引き上げが必要に
令和8年度より、賃上げ額に応じたコースは「50円・70円・90円」の3区分に集約されました。従来の30円・45円コースは廃止されたため、申請には50円以上の賃上げが必須となります。これは、近年の大幅な最低賃金引き上げ(令和7年度:66円増など)に合わせた見直しです。
上限額は「賃上げ額コース」と「対象人数」で決まります。
- 助成上限額と特例区分
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- 基本区分: 1人、2〜3人、4〜5人、6〜7人、8人以上の5段階。
- 特例事業者: 事業場内最低賃金が1,050円未満、または物価高騰等の影響を受けている事業者は、「10人以上」のさらに高い上限枠を利用可能です。
※実際の支給額は「設備投資にかかった費用 × 助成率」と「上限額」を比較し、低い方の金額となります。
3.募集時期の「重点化」
申請期限は「最低賃金の発効日前日」または「11月30日」 令和8年度の申請期間は9月1日から開始されますが、期限は以下のいずれか早い日までとなります。
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1.各都道府県の「地域別最低賃金」の発効日前日(例:10月1日発効なら9月30日)
2.令和8年11月30日
スケジュール管理が成否を分けます。賃金引上げは「申請後」かつ「上記期限まで」に完了させる必要があります。特に10月上旬に最低賃金が変わる地域では、9月中のわずか1ヶ月間で「申請」と「賃上げ」の両方を終えなければなりません。
事前に設備投資の相見積もりや計画作成を済ませ、9月1日の受付開始と同時に動けるよう準備しておくことが不可欠です。
4.引き上げ対象労働者の要件変更
令和8年度より、助成上限額を左右する「引き上げ労働者数」のカウントには、以下の2条件を満たす必要があります。
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1.申請日時点で雇用保険の被保険者であること
2.雇入れ後6か月を経過していること
ただし、事業場内最低賃金を引き上げる場合、対象となる労働者(新賃金未満の人)は全員引き上げる義務がありますが、助成金の「人数区分」に算入できるのは上記要件を満たす人のみです。
例: 賃上げ対象が3人いても、うち2人が「入社3か月」や「雇用保険未加入」であれば、上限額の判定は「1人」として扱われます。
申請前に、対象者の雇用保険加入状況と入社日を必ず確認し、正確な助成上限額を算出しておくことが重要です。
5.自動車の取扱変更
令和8年度は、自動車の取扱いにも注意が必要です。これまで特例的に助成対象として扱われていた自動車(特殊用途自動車を除く)は、令和8年度から対象外となりました。たとえば営業車などを導入して助成金を活用しようと考えていても、使えません。
6.特例事業者における物価高騰等要件の変更
物価高騰等を理由に特例事業者として申請する場合、利益率の確認方法が厳格化されました。令和8年度は、直近6か月間の平均利益率を前年同期と比較し、「3%ポイント以上」低下していることが要件となります。特定の1か月の落ち込みだけでは判定できなくなったため、1年分(直近6か月+前年同期6か月)の試算表等の準備が必要です。
この要件を満たすと、以下の優遇措置が受けられます。
- 特例事業者になるメリット
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- 上限額の拡大: 「10人以上」の引き上げ区分が利用可能に。
- 対象経費の拡大: 通常は対象外となるパソコン、タブレット、スマートフォン等の購入費用も助成対象となります。
業務改善助成金とは

業務改善助成金とは「事業場内最低賃金の引き上げ」と「生産性向上のための設備投資」をセットで支援する制度です。
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- 対象となる例: POSレジ、会計・給与ソフト、作業短縮のための機械導入など。
- 対象外の例: 広告宣伝費、消耗品、PC・スマホ等の汎用端末は原則対象外です。また、令和8年度より自動車(特殊車両を除く)も一律対象外となりました。
業務改善助成金の対象となる事業者・主な要件
業務改善助成金は、原則として中小企業事業者・小規模事業者(従業員を雇用する個人事業主を含む)であり、以下の要件を満たす事業所ごとに申請します。
・対象事業場の拡充:「改定後の最低賃金」に届かない事業場も対象に これまで申請の要件だった「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内」という制限が、令和8年度より撤廃されました。
これにより、現在の地域別最低賃金は上回っていても、「令和8年度に改定される新しい最低賃金」に届いていない事業場であれば、広く申請が可能になります。
例:
現行の地域別最低賃金:1,000円
改定後の地域別最低賃金:1,063円
自社の事業場内最低賃金:1,055円
上記の場合、これまでは「差額50円超」で対象外でしたが、令和8年度は申請が可能となります。
・労働者の要件: 「雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者」の賃金を一定額以上引き上げる必要があります。そのため、雇用保険未加入の労働者は引き上げ対象にカウントできません。対象労働者がいない場合や、全員が雇用期間6か月未満の場合、または従業員を雇わず事業主本人のみで働いている場合は申請不可となります。
例:
・対象になる例:
現行が1,000円、改定後が1,060円の地域で、自社の最低賃金が1,040円の場合。
(現時点では法をクリアしていても、改定後の1,060円に届かないため、申請可能です)
・対象外の例:
自社の最低賃金がすでに1,060円以上の場合。
「いま」の基準ではなく、「新しく発表される基準」に届いていなければ、広く対象となり得ます。
申請期限と事業完了期限
業務改善助成金の申請期限および事業完了期限は以下の通りです。
申請期間: 令和8年(2026年)9月1日 ~ 申請事業所の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日、又は同年11月30日のいずれか早い日まで。
賃金引き上げ期間: 令和8年9月1日 ~ 申請事業所に適用される地域別最低賃金発効日の前日まで。
事業完了期限: 交付決定年度の1月31日(※やむを得ない理由がある場合は事前の申請により3月31日まで延長される場合があります)
業務改善助成金の対象となる経費
業務改善助成金では、「生産性向上につながる設備・機器の導入」や「業務の効率化に資するシステム等の整備」に要する経費が助成対象となります。
例として、POSレジや勤怠管理システムの導入による業務処理の効率化、リフト付き車両等の導入による作業負担の軽減と時間短縮 などが挙げられます。
なお、一般事業者と物価高騰等の影響を受けた特例事業者では、助成対象となる経費の範囲が異なります。
一般事業者の場合
制度の定める特定の要件に合致しない場合は「一般事業者」となります。一般事業者における助成対象の経費は以下が例です。
業務改善助成金の助成対象となる経費は、次のいずれにも該当するものとします。
・機械装置等購入費(生産性向上に資する機械装置、器具備品等の購入費用)
・委託費(調査会社、システム開発会社等への情報システム等の開発・導入委託費用など)
・経営コンサルティング経費(国家資格者による業務フロー見直しなど)
・謝金・旅費(外部講師による操作研修などに対する謝礼や交通費)
・印刷製本費・原材料費(導入機器のマニュアル作成費用や、資材購入費用など)
・造作費・借損料(機械装置の据付費用、器具機械の借料など)
・パソコン、タブレット、スマートフォン等の汎用端末(一般事業者の場合)
・自動車(特殊用途自動車を除く全ての自動車が対象外)
・人員削減または労働条件の引下げを目的とする経営コンサルティング経費
・単なる経費削減を目的とした経費(LED電球への交換、通信プランの変更など)
・通常の事業活動に伴う経費(消耗品費、交際費、通信費、事務所借料、光熱費など)
・不快感の軽減や動線確保など、職場環境の改善を目的とした改築費用や備品購入費
出典:厚生労働省「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要領」
特例事業者の場合
業務改善助成金における「特例事業者」は、物価高騰等の影響を受けたうえでなお事業場内最低賃金が1,000円未満である事業場、すなわち「事業場内最低賃金が1,000円未満であること」と「申請前3か月間のうち任意の1か月で利益率が3%以上低下していること」のいずれかを満たした事業場を指します。
| 【要件】特例事業者の条件 | 特例内容 |
|---|---|
| 【賃金要件】
事業場内最低賃金が 1,050円未満であること |
・助成上限額の拡大(10人以上引き上げ時の上限枠の適用) |
| 【物価高騰等要件】
最近(直近)6か月間平均において、利益率が前年同期と比べて3%ポイント以上低下していること |
・助成上限の拡大
・対象経費の拡大 |
このうち、「物価高騰等要件」を満たす場合に限り、通常は対象外であるパソコンやタブレット等の汎用端末も、新規導入に限り助成対象として認められます(※単なる営業目的での導入は対象外)。
飲食業者が業務効率化のために受注管理システムとフライヤーを導入し、あわせて時給を引き上げた場合、それらの導入費用と業務手順改善のコンサルティング費用が助成対象となります。詳しい活用事例は、厚生労働省の「生産性向上のヒント集」もご活用ください。
業務改善助成金の助成上限額・助成率

業務改善助成金の助成上限額は、賃金引上げの幅(コース)と引き上げ対象となる労働者数に応じて設定されます。一般事業者では上限額は最大450万円ですが、事業場内最低賃金が1,050円未満であり、かつ物価高騰等の影響により利益率が低下している「特例事業者」に該当する場合は、上限額が最大600万円となります。
| 助成上限額
※10人以上の上限額区分は、特例事業者のみ対象 |
|||
|---|---|---|---|
| コース区分
(引き上げ金額) |
引き上げる労働者数 | 右記以外の事業者 | 事業場規模30人未満の事業者 |
| 50円コース
(50円以上) |
1人 | 30万円 | 40万円 |
| 2〜3人 | 40万円 | 70万円 | |
| 4〜5人 | 70万円 | 70万円 | |
| 6〜7人 | 90万円 | 90万円 | |
| 8人以上 | 110万円 | 110万円 | |
| 10人以上※ | 130万円 | 130万円 | |
| 70円コース
(70円以上) |
1人 | 40万円 | 50万円 |
| 2〜3人 | 50万円 | 100万円 | |
| 4〜5人 | 130万円 | 130万円 | |
| 6〜7人 | 180万円 | 180万円 | |
| 8人以上 | 230万円 | 230万円 | |
| 10人以上※ | 300万円 | 300万円 | |
| 90円コース
(90円以上) |
1人 | 90万円 | 100万円 |
| 2〜3人 | 150万円 | 240万円 | |
| 4〜5人 | 270万円 | 270万円 | |
| 6〜7人 | 360万円 | 360万円 | |
| 8人以上 | 450万円 | 450万円 | |
| 10人以上※ | 600万円 | 600万円 | |
設備・システム等の導入費に対する助成率は、事業場内最低賃金により異なります。事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は助成率は4/5、1,050円以上の場合は3/4となります。
・助成率は「助成対象経費」に適用されます。上限額とは別の基準です(両方で支給額が決まる)
・事業場内最低賃金の水準が判定基準。法人全体の平均賃金ではありません
・特例事業者の場合は、この助成率に加えて 助成上限額・対象経費が拡大される可能性があります。ただし「物価高騰等要件 + 賃金要件」の 両方を満たした場合に限る
各出典:厚生労働省「業務改善助成金」
引き上げる労働者数のカウント方法
助成額を決める「引き上げる労働者数」として数えられるのは、大前提として「雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者」であり、かつ次の①と②の両方を満たす労働者です。なお、①は a または b のいずれか に該当する必要があります。
a:賃上げ前に事業場内最低賃金であった労働者
b:賃上げにより設定される「新事業場内最低賃金」により、賃上げ前の賃金が a の水準に追い抜かれる労働者
② 申請コースの基準額以上の賃上げを行っていること
(例:70円コースであれば、70円以上の引上げ)
新事業場内最低賃金とは、賃上げ後に事業場内で最も低くなる時給のことです。すべての労働者がこの金額以上となることが前提ですが、引き上げた労働者が全員「人数」として数えられるわけではありません。
以下の具体例をもとに、最低賃金1,050円の企業が70円コースを申請する場合を考えます。この場合、引き上げる労働者数としてカウントできるのは、「新事業場内最低賃金よりも低い賃金だった労働者」かつ「70円以上の賃上げを受ける労働者」 に該当するAとCの計2名です。

出典:厚生労働省「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)申請マニュアル」
| 労働者 | 算入可否 | 理由 |
|---|---|---|
| A | 〇 | 事業場内最低賃金の労働者であり、70円の賃上げを行なっているため |
| B | ✕ | 賃上げ額が70円に満たないため |
| C | 〇 | 賃上げ前の賃金がAに追い抜かれており、30円の引き上げを行なっているため |
| D | ✕ | 賃上げ前に新事業場内最低賃金に達しているため |
この辺りのルールはやや複雑です。引き上げ前後の賃金と引き上げ額の条件をすべて満たしているか、また対象者が雇用保険に加入しているのか、しっかり確認しましょう。
助成金額の計算方法
業務改善助成金の支給額は、次の①と②のうち金額が低い方となります。
①設備投資等にかかった対象経費 × 助成率
②賃金引上げのコースと引き上げ人数に応じて決まる助成上限額
事業場内最低賃金:1,040円(助成率4/5)
申請コース:90円
賃上げ人数:8人
設備投資等の費用:600万円
この場合の助成上限額は450万円です。
600万円に助成率4/5を乗じると480万円になります。
450万円 < 480万円なので、この事業所が受けられる助成額は450万円です。
業務改善助成金 申請から支給までの流れ

業務改善助成金の交付申請は、事業所のある都道府県労働局に対して行います。交付申請から支払いまでの手続きフローは下記の通りです。
- 交付申請(都道府県労働局へ申請書類を提出)
- 交付決定(労働局での審査後、通知が届く)
- 事業の実施(必ず交付決定後に実施)
- 実績報告(導入証憑・賃金引上げ確認書類の提出)
- 助成金受領
- 状況報告(賃金引上げ後6か月経過時点)
1.交付申請
労働局にて提出された申請書類や事業実施計画書の審査が行われます。内容が適正と認められると、労働局から助成金の「交付決定通知書」が届きます。 交付申請から交付決定までは、約3か月程度かかる場合があります。なお、この交付決定通知が届く前に対象設備の導入(発注・契約等)を行ってしまうと助成対象外となってしまうため、必ず通知を受け取ってから次のステップへ進むことが非常に重要です。
2.交付決定
労働局にて提出された申請書類や事業実施計画書の審査が行われます。内容が適正と認められると、労働局から助成金の「交付決定通知書」が届きます。 交付申請から交付決定までは、約3か月程度かかる場合があります。なお、この交付決定通知が届く前に対象設備の導入(発注・契約等)を行ってしまうと助成対象外となってしまうため、必ず通知を受け取ってから次のステップへ進むことが非常に重要です。
3.事業の実施
交付決定通知が届いた後に、申請した内容に基づいて事業を開始します。業務改善助成金では、事業場内最低賃金の引き上げと、生産性向上につながる設備・システム等の導入の両方を、事業完了期限までに実施する必要があります。
特に設備導入については、納品や導入が完了しているだけでなく、代金の支払いまで事業完了期限内に済んでいることが助成対象となる条件です。納期に時間を要する機器や設置工事を伴う設備の場合、期限に間に合わないと助成の対象外となるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
3.事業実績の報告
取り組みの完了後、実績に基づき「事業実績報告書」と「支給申請書」を提出します。これらの様式は厚生労働省の業務改善助成金ページからダウンロードできます。
提出期限は、事業完了日から1か月以内または翌年度4月10日のいずれか早い日となりますので、期限を過ぎないよう注意が必要です。
4.助成金受領
実績報告が受理・審査され、内容に問題がなければ「支給決定通知書」が届き、指定の口座へ助成金が振り込まれます。(審査は原則受理後20日以内ですが、混雑状況により時間を要する場合があります。)
5. 状況報告
助成金支給後も、賃金引上げが継続しているか等を確認するため、「賃金引上げ後6か月を経過した時点」で、労働局へ状況報告書(様式第8号)や対象労働者の賃金台帳などを提出する必要があります。
業務改善助成金申請時の注意点
1.賃上げや就業規則等の改定は必ず「申請後」に行う
業務改善助成金は、賃上げをしてから申請する制度ではありません。令和8年度も、賃金引上げは実際の交付申請をした後から、地域別最低賃金の発効日前日または11月30日のいずれか早い日までに行う必要があります。
また、引上げ後の事業場内最低賃金額を就業規則等に定める必要がありますが、この改定作業や新しい規則の適用も必ず「申請後」に行うことが重要です。
事前に進めるのは案の作成や社内調整までにとどめ、「先に申請、後で賃上げ・規則改定」の順番を厳守してください。
2.賃上げは分割できず一度で引き上げる必要があります
業務改善助成金では、賃上げを何回かに分けて行うことはできません。 たとえば、最初に30円上げて、その後にさらに20円上げるというやり方では、50円コースの要件を満たしたことにはなりません。50円コースなら一度で50円以上、引き上げる必要があります。
また、新しい事業場内最低賃金より低くなる人がいればその人もあわせて引き上げる必要があり、最終的にいくらにするかを先に決めて、その金額まで一度で引き上げることが必要です。
3.設備投資は相見積が必要になることがあります
業務改善助成金では、設備投資の内容によっては、価格の妥当性を示すために相見積が必要になります。随意契約中古機械の導入などで複数の見積もりを求められるケースがあるため、見積書の準備は設備投資を検討する段階から進めておくことが重要です。(※相見積もりの具体的な条件等については、管轄の労働局や最新の交付要綱・要領をご確認ください。)
4.引き上げ対象者は申請した事業場で賃上げ実績を確認できることが重要
業務改善助成金では、申請の時点で対象者を決めるだけでは足りず、申請した事業場で、実際に賃上げを行い、その支払実績を確認できることが必要です。
育児休業中、休職中、長期欠勤中の労働者や、異動予定のある労働者を対象に含める場合は、要件を満たしているか申請前に慎重に確認しておくことが重要です。(※具体的な実績確認の運用については、管轄の労働局にご確認ください。)
5.適切な労務管理と法令遵守が前提
業務改善助成金は「賃金を上げれば必ず受け取れる助成金」ではなく、労働条件の法令遵守と適切な労務管理が前提となる制度です。労働関係法令に違反していることが明らか(司法処分等)となった場合は、助成金の不交付事由に該当します。また、申請に必須となる「賃金台帳」は労働基準法で定める法定項目が網羅されている必要があり、不備があれば受理されません。 実務の審査においては、以下の点についても厳格に確認される場合があります(※詳細は管轄の労働局へ要確認)。
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- 割増賃金の適正な支払い:副業・兼業を行っている労働者の労働時間通算による時間外割増賃金などが未払いの場合、遡及して適正に支払わなければ認められないおそれがあります。
- 各種労務書類の適合性:賃金台帳や就業規則だけでなく、雇用契約書(労働条件通知書)や出勤簿(タイムカード)の内容が法令に適合しているかが確認される場合があります。
申請を成功させる最大のポイントは、余裕を持ったスケジュール管理と、日頃からの適切な労務管理(法令遵守)です。
業務改善助成金の事業実施計画書の書き方について:社労士 澤田 裕一’sポイント
まとめ・業務改善助成金で会社を強くしましょう
業務改善助成金は、賃金の引き上げと、生産性向上につながる設備・システム等の導入を同時に進める中小企業・小規模事業者を支援する制度です。助成率が高く、自己負担を抑えながら業務改善に取り組むことができるため、「必要だが先送りしていた投資」を実行に移す大きなきっかけとなります。
賃上げは必須要件ですが、作業時間の短縮や業務負担の軽減によって生産性を高めることで、結果として人件費と収益のバランス改善が期待できます。過去に利用した事業場でも、再申請が可能です。
「人手が足りない」「時間に余裕がない」「現場の負担が重い」。これらの課題を、単に頑張りで解決するのではなく、設備・仕組みで解決するための制度です。業務のムダを減らし、働く環境を整え、会社を強くする。この助成金を活用して、経営改革の一歩としてご活用ください。
創業手帳
飲食開業手帳
補助金ガイド
創業手帳カレンダー
業務改善助成金の事業実施計画書では、設備やシステムの導入によって、業務がどのように改善されるかを「定性」と「定量」の両面で示すことが重要です。とくに厚生労働省の助成金である以上、「生産性の向上」は具体的な労働時間の削減として示す必要があり、定量的な記載が審査における最も重要なポイントとなります。
「便利になる」「業務がスムーズになる」といった抽象的な表現だけでは不十分で、導入前と導入後で、誰のどの作業にどれくらいの時間がかかり、その時間がどの程度削減されるのかを、1日の作業時間、月間作業時間といった形で算出し、合理的かつ現実的な数値で示す必要があります。
例として、勤怠管理を手作業で行っていた場合、管理者が1日30分、月に約10時間かけていた作業が、クラウド勤怠システムの導入により1日5分、月1.7時間まで短縮されるといった形で、削減できる労働時間を具体的な数字で示します。
このように、導入前後の比較を数値で明確に示すことで、「どれだけ生産性が向上するか」が客観的に説明でき、審査に通りやすい計画書になります。
▼事業計画書の例(医療機関でロボット掃除機導入)
当院では、診療前の準備時間に看護師が院内清掃を担当しており、待合スペースや廊下、処置スペース等の床清掃に毎日約〇分、さらに週〇回は水拭き作業に〇分程度を要しています。これらを合計すると、月間で約〇時間の看護師の業務時間が清掃に充てられている状況です。
本来、診療前の時間は、患者受け入れ準備、処置や検査の準備、衛生材料や備品の確認、カルテの整理など、診療の質と安全性に直結する業務に集中すべき時間であり、清掃が看護師の業務時間を圧迫していることは、人的資源の活用面において非効率となっています。
今回、吸引および水拭き機能を備えたロボット掃除機を導入することで、床清掃にかかっていた作業を自動化し、看護師が清掃に従事していた毎日約〇分、月間約〇時間の業務時間を、患者対応や診療準備といったコア業務に再配分することが可能になります。これにより、診療開始前の準備作業がより計画的かつ正確に実施でき、患者受け入れ体制の安定性が高まるとともに、看護師が本来業務に集中できる環境が整います。また、清掃作業は腰や膝への負担が大きい作業であるため、ロボット導入により身体的負担が軽減され、疲労蓄積の抑制や職場環境の改善にも寄与します。加えて、機械による清掃は清掃品質のばらつきを防ぎ、院内の衛生状態を一定水準で維持できるため、感染対策の面でも有効です。
以上より、ロボット掃除機の導入は、看護師が診療前に確保すべき準備時間を取り戻し、医療サービスの質と業務効率を同時に高める、生産性向上に資する合理的な設備投資となります。