anydeli 呉美麗|ホリエモン絶賛のモバイルオーダー女性起業家!地獄のワンオペ中華から慶應MBAで起業

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年11月に行われた取材時点のものです。

飲食店の経営現場で見た「日本の古い体質」にチャンスを感じ、アジャイル開発で勝負

ホリエモンが絶賛するモバイルオーダー・anydeli(エニデリ)。anydeliは中国から来日した女性起業家の呉美麗さんが手掛けています。

呉さんは中華料理店を日本で開業しましたが、バイトが休むとワンオペ(1人営業)で、店が満席でも1人で店を切り回す事もあったといいます。

そんな過酷な飲食店の現場経験から一念発起して、飲食店を経営しながら慶應大学のMBAに入学。MBAでより広い経営感覚を身につけた呉さんは、anydeli(エニデリ)を開発されました。

そんな呉さんから見た、日本のチャンスと飲食店の課題を創業手帳代表の大久保が聞きました。

呉美麗(ご みれい)
anydeli株式会社 代表取締役
2006年に来日。
2013年に日本と中国で飲食業を開業。
2018年から2020年まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科に在籍。
中国と日本の飲食業の事業を通じて、飲食店のオーダー決済のDXの差に気づく。
2020年9月にanydelを創業。
設立から3か月で500店舗を集めてデリバリーを開始。
翌年2021年にはモバイルオーダーの開発テストを運用。
2024年5月にはホリエモンチャンネルに出演。
2024年9月には「令和の虎」の志願者として出演し、話題となる。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

QRをスマホで読みオーダーと決済がワンストップに完了。店舗運営が楽に


大久保:これってどんなサービスなんですか?

:QRをスマホで読み取って、モバイルでメニューを注文して決済まで完結する仕組みです。

決済だけ、モバイルオーダーだけ、ではなく、テーブルでモバイルオーダーするとそのまま決済まで済んでしまう

だからオーダーを取る仕事と、レジで決済する仕事がいらなくなり、店舗運営が楽になるんです。

ログインなども不要で、スムーズに決済までいけます。

:そして、このサービス、今キャンペーン価格で初期費用、固定費をゼロ円で提供しています。店が払うカード決済手数料は3.4%で通常のクレジットカードの料率と変わりありません。

大久保:えー!そうなるとどうやって儲けるんですか?

:固定費ゼロ円でもちょっとだけカード決済の手数料が入ってくるんです。

無料で広げて手数料で儲ける。大きく広げるからこそ手数料の交渉力も出る。決済で儲けるには取引額を大きくしなくてはいけません。成功するために無料にしているんです。

敷居を低くして取引を大きくしてこそ、我々も、お客様もwin-winで得をするんです。

大久保:なぜこのサービスを始めたんですか?呉さんの起業の経緯を教えてもらえますか?

:2006年に日本に留学し、2012年卒業、少しだけ就職しましたが、半年ぐらいで自分で飲食店を始めました。

でも、最初は今のように大きなビジネスではなく、まずできることをはじめました。

最初は麻辣湯(マーラータン)のお店を始めたんです。辛い春雨のスープで、渋谷や池袋に店を出していました。今では店長に任せていますが、当時は店を経営しながら慶應大学のMBAに通っていました。

小さいビジネスは経験がありましたが、そこでスケールの大きいビジネスの視野や考え方を身に付けました

過酷な飲食店経営とDXの停滞を「モバイルオーダー」で変える


:起業の原体験は麻辣湯(マーラータン)のお店をやっていた時です。

ありがたいことにお店は結構人気で、お客様が満席で並んでいる。でも、バイトが休んでしまうこともあるんですよね。

そんな時は社長といっても私が1人で店を切り回さざるを得ないです。

行列ができて、料理が遅くなるとお客様が怒り出すわけです。接客して、会計もしながら、料理も作ると。飲食店の現場って本当に忙しいんですよ。

特にコロナ後日本の飲食店が潰れる大きな原因の一つが、人手不足です。日本は少子化で益々、人が採用できなくなっている。お店も人を沢山雇う余裕もない。

一方で、故郷の中国は特にそうですが、海外ではモバイルオーダーが当たり前になりつつある。日本ではなぜ飲食店が人手不足で大変なのにモバイルオーダーを使わないのだろうと思いました。

慶應のMBAを出た後すぐコロナになって、デリバリー需要が増えたりしましたが、そこで飲食店がなかなかDXできていない現状を痛感しました。

だから、飲食店の経営を楽にするスマホベースのモバイルオーダーで、決済まで一気通貫でできてしまうシステムを作ろうと決めたんです。

調べるとモバイルオーダーのシステムは中国では当たり前になっているので、経験のある技術者も豊富にいるわけです。

そのため、日本のニーズを元にして、中国のエンジニアを使って開発を進めました。

多言語対応は最初からやるのが当たり前。店舗の現実から発想


大久保:多言語対応してますよね。この時期で考えると早いですね。普通もっと大きくなってから日本の会社は考えそうですが。

:自分のお店でも経験がありましたが、お客様が外国人、スタッフも外国人ということがあります。

今後、働く側も人手不足で外国人が増えますし、日本に観光で来るインバウンドのお客様も益々増える。だから多言語対応は重要で、日本で大きくなってから多言語対応ではなく、最初から多言語対応している。今日本のお店でも外国人のスタッフがいないと立ち行かない店が多いのが現実です。

仮に今大丈夫でも10年後を考えてみて下さい。益々お客様もスタッフも海外の人が増えてくるはずです。

そういった発想も、自分が外国出身であり飲食店の大変さを身を持って経験したということが商品作りに活きているかもしれません。

:立ち上げる中で、堀江さんのホリエモンサロンでビジネスのピッチイベントがあったんです。エントリー10組以上のうちで、堀江さんはダントツで1位でanydeli(エニデリ)評価してくれました。

堀江さんは遠い未来を見る方で、飲食店DXの時代的必要性に共感していただけたのだと思います。そういった出来事もあって、事業を加速させていきました。

なぜ日本のDXは進まないのか?海外では「まず始めてその後直す」のが当たり前


大久保:日本は数十年前、ITが進んでいましたが、今は中国のほうがITでは進んでいますよね。特にキャッシュレスは中国では標準になって久しいです。

なんでこうなってしまったんですかね?

:日本は高くて古いPOSシステムがまだまだ幅を利かせています。

お客様に理解していただくためのコストがとても高いです。

日本はアナログな仕組みがある意味完璧にできあがっており、それを切り替えるのがとても大変なのです。

例えば日本ではクレジットカードが普及していますが、逆に中国ではクレジットカードがそこまで普及していなかったので、一気にキャッシュレスに移行できたんですよね。

また電子決済では「Suica(スイカ)」が世界に先駆けて導入されましたが、その後の進展が少し遅れている印象です。Suicaは本当に素晴らしい技術ですし、日本が発明したものです。ただ、その後、他のキャッシュレス決済がなかなか普及しなかったのは残念です。

既存のサービスを持っていない国の方が、最新の新しい良いものを取り入れやすいという面があります。リープフロッグ現象というものですね。

中国のお店ではだいぶ前から注文や会計も完全にデジタル化、キャッシュレス化されているのに対し、日本では進んでおらずかなり古いと感じました。

そこにチャンスを感じて、そしてすぐに行動したんです。

だから日本の若者にとって古い日本を変えるというのはチャンスなのかもしれないです。

もう一点、日本の良い面でもありますが、完璧主義でお客様に100%のものを提供しなければという責任感が強いです。

それに比べて、中国や他の国では90%完成の状態でリリースして、その後に改善するという柔軟さがあります。デジタル系のサービスはある程度の完成度でリリースして、徐々に改善していくアジャイルな進め方のほうが、早くて、結果的に良いものができるわけです。

笑い話ですが中国では「飛行機が離陸してから機体を直す」ようなところがあります。

飛行機だとそれではダメですが、デジタル系のサービスは後で修正が効くという面が良いところです。

逆に大手企業だと完璧なものを出さなくてはいけないので、行動が遅くなる、ユーザーコスト負担が大きい。そこに日本のスタートアップのチャンスがあると思います。

anydeli(エニデリ)で上場を目指す!


大久保:呉さんの夢を教えて下さい。

:anydeli(エニデリ)は日本で上場を目指しています。

中国から日本にやってきて自分は17年になりますが、そんな自分が飲食店で苦労した経験を元に、同じような日本の飲食店を楽にするanydeliで日本で上場できたら素晴らしい、夢のあることですよね。

だからanydeli(エニデリ)を普及させるために頑張っています。

自分の中国の出身都市は上海の近くの杭州というところで、アリババが生まれた都市です。

日本では起業は少し特殊に思われますが、中国の自分の故郷の杭州では、普通の食堂で食事をしていても周りのテーブルでは若者が起業の話題で盛り上がっているのを当たり前のように見かけます。

もしかしたら昔のソニーやトヨタができた頃の日本もそうだったのかもしれないですが、若い人たちはもっと積極的に挑戦したほうが良いと思います。せっかく若くて力のある人達が、古い既存の仕組みにとらわれて動けない、という人も多いように外国人である自分からは見えます。

若い起業家は、「Just do it」でとにかく行動する事です。常識や「大人の意見」に振り回されず、自分が信じた進むべき道を決めることが大事だと思います。

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(取材協力: anydeli株式会社 代表取締役 呉美麗
(編集: 創業手帳編集部)



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