AI研修に使える助成金は?人材開発支援助成金の対象・助成額・申請方法
AI研修には人材開発支援助成金を活用できる

生成AIをはじめとするAI技術の活用が広がる中で、従業員にAIの知識やスキルを身につけてもらうため、研修の実施を検討する企業が増えています。
一方で、研修費用や受講期間中の賃金などが負担となり、導入を躊躇うケースもあります。
そのような場合に活用を検討したいのが、助成金です。特に厚生労働省が管轄する「人材開発支援助成金」は、AI研修に活用することも可能となっています。
ただし、AI研修だからといって無条件に助成対象となるわけではありません。
そこで当記事では、AI研修に使える助成金として人材開発支援助成金の対象や助成額、申請方法などを解説します。
この記事の目次
AI研修に使える制度「人材開発支援助成金」とは
人材開発支援助成金とは、事業主が雇用する労働者に向けて職務に関連する職業訓練(OJT・Off-JT)を実施した場合、その時の経費や訓練期間中の賃金を一部助成する制度です。
管轄は厚生労働省であり、労働者が知識や技術を身につけることで、生産性の向上などが期待できます。
人材開発支援助成金を活用すれば、資金力の低い中小企業であっても、研修費用や資格取得費用が助成金で補填できるため、質の高い教育を受けることが可能です。
さらに、成長機会を従業員に提供することで、エンゲージメントの向上から離職率の低下につながる場合もあります。
AI研修で活用できる人材開発支援助成金のコース・助成額

人材開発支援助成金には複数のコースが用意されており、それぞれ支給対象となる訓練や助成率・助成額などが異なります。
| 向いているAI研修 | 経費助成率 | 賃金助成額(1人1時間あたり) | 主な条件 | 中小企業・大企業の違い | |
|---|---|---|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | AIを活用した新サービス開発にともなう研修など | 中小企業:75% 大企業:60% |
中小企業:1,000円 大企業:500円 |
・訓練時間数10時間以上 ・Off-JTであること など |
中小企業のみ設備投資加算(助成率50%)を申請できる |
| 人への投資促進コース | 高度なAI・デジタル人材の育成など、専門性の高い研修、定額制訓練 | 中小企業:75% 大企業:60% ※高度デジタル人材訓練、成長分野等人材訓練の場合 |
中小企業:1,000円 大企業:500円 ※高度デジタル人材訓練、成長分野等人材訓練の場合 |
・各コースが定める対象訓練に該当すること | コースによっては経費助成率・賃金助成額が中小企業のほうが高い |
| 人材育成支援コース | 業務でAIツールを活用するための基礎・実務研修など | 中小企業:45% 大企業30% ※人材育成訓練・正規雇用の場合 |
中小企業:800円 大企業:400円 |
・職務関連の知識・技能を習得させる訓練であること ・各コースが定める対象訓練に該当すること |
受講者1人1訓練あたりの経費助成限度額は中小企業のほうが高い |
なお、人材開発支援助成金には「教育訓練休暇等付与コース」もありますが、こちらは有給教育訓練休暇制度を導入・利用した場合の助成であり、AI研修を実施したからといってこのコースが活用できるわけではありません。
事業展開等リスキリング支援コース|DXや新事業にともなうAI研修
事業展開等リスキリング支援コースは、主にDX化や新規事業などに向けたリスキリングを対象とするコースです。
AIを活用した業務改革やDX、新しいサービスの開発などを進めることを目的に、従業員へAI研修を実施する場合に活用を検討可能です。
例えば、生成AIを使った業務効率化や新規サービス開発へのAI活用、AIを組み込んだ業務プロセスの設計など、これまで社内になかった知識・スキルを習得する研修が考えられます。
ただし、単にAIツールの使い方を学ぶだけでなく、事業展開との関連性が求められます。研修を実施する目的や新たな事業・業務との関係性を明確にしておくことが重要です。
人への投資促進コース|高度・定額制のAI研修
人への投資促進コースは、デジタル・DX人材の育成など、企業における人への投資を促進するための訓練を対象としています。
人への投資促進コースは複数の訓練メニューがあり、それぞれ対象となる訓練や要件が異なります。
-
- 定額制訓練
- 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
- 情報技術分野認定実習併用職業訓練
- 自発的職業能力開発訓練
- 長期教育訓練休暇等制度
AIに関する専門的な知識やスキルを身につける研修のほか、一定の要件を満たす定額制の研修も対象となるため、従業員のAIスキルを継続的に高めたい企業にも適しています。
人材育成支援コース|通常業務に直結するAI研修
人材育成支援コースは、職務に関連する知識・技能を習得させるための訓練などを実施した際に、訓練経費・訓練期間中の賃金の一部を助成するコースです。
AIを現在の業務に役立つスキルとして従業員に習得させる場合には、このコースが候補になります。
例えば、生成AIを使った文書や議事録、営業資料の作成、情報収集、データ分析などです。
人材育成支援コースも支給対象となる訓練が複数用意されています。それぞれ要件などが異なるため注意が必要です。
-
- 人材育成訓練
- 認定実習併用職業訓練
- 有期実習型訓練
- 中高年齢者実習型訓練
【2026年8月改正】助成対象になるAI研修・ならないAI研修

2026年8月3日から、事業展開等リスキリング支援コースにおいて汎用的なプロンプト作成やAIリテラシーの習得だけにとどまる研修は助成対象外となりました。
一方、生成AIを活用した営業提案書の作成など、特定の職務に直接結びつくような研修は対象になり得ます。
ここで、助成対象になるAI研修・ならないAI研修について紹介します。
助成対象になり得るAI研修
助成対象になり得るのは、受講者の担当業務と直接関係し、習得したAIの知識・技能を実務で活用できる内容の研修です。
例えば、営業担当者を対象に、生成AIを使って顧客ごとの提案書を作成・修正する方法について学ぶ研修は対象になり得ます。
ほかにも、以下の研修が考えられます。
-
- マーケティング担当者が生成AIを活用した広告文やコンテンツの作成方法を学ぶ研修
- 経理担当者がAIを活用したデータ整理や分析方法を学ぶ研修
- カスタマーサポート担当者がAIで問い合わせ内容の要約や回答案を作成する方法を学ぶ研修など
重要なのは、研修で学ぶ内容と受講者の職務が具体的につながっていることです。実際の業務でどのように活用するのかまで明確にした研修設計が求められます。
助成対象外となるAI研修
一方、AIやDXについて幅広く学ぶだけで、受講者の具体的な職務との関連性に乏しい研修は、助成対象外となる可能性があります。
特に汎用的なプロンプトの作成方法やAI・DXの基本概念、データ活用の考え方などは、学んだとしても実際の業務で必要な知識・技能の習得にはつながらないため注意が必要です。
例えば、同じプロンプト作成の研修であっても、営業担当者が提案書作成に使うプロンプトを実務に即して学ぶ場合と、職務との関係を設定せず汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ場合では、制度上の扱いが異なる可能性があります。
AI研修で人材開発支援助成金を受給するための主な要件
実際にAI研修で人材開発助成金を受給するには、要件を満たしている必要があります。
ここでは、対象となる事業主・従業員の要件から研修時間・実施方法に関する要件、助成対象となる経費について解説します。
対象となる事業主・従業員の要件
人材開発支援助成金はすべての事業主・従業員が対象となるものではありません。前提として以下の要件を満たしている必要があります。
・雇用保険適用事業所である
人材開発支援助成金を利用するには、雇用保険の適用事業所であることが基本的な要件です。
・対象者が雇用保険被保険者である
原則として訓練を受ける従業員は、雇用保険の被保険者であることが求められます。
・訓練費用を事業主が負担する
助成対象となる訓練について、受講料などの費用を事業主が負担している必要があります。
・職業能力開発推進者を選任する
職業能力開発推進者を選任し、事業内職業能力開発計画を策定して従業員に周知させる措置が求められます。
研修時間や実施方法に関する要件
研修時間や実施方法に関する要件は以下のとおりです。
・職務との直接的な関連性
AI研修は、受講者の現在または将来的な職務に必要な知識・技能の習得につながる内容であることが重要です。
・必要な訓練時間
必要な訓練時間はコースやメニューによって異なります。例えば、Off-JTの実訓練時間数は10時間以上のカリキュラムであることが要件です。
・Off-JTの要件
助成対象となる訓練は、通常の業務と区別して実施するOff-JTなど、各コースの定める実施要件を満たす必要があります。
・対面・オンライン・eラーニングの扱い
対面だけでなく、一定の要件を満たすオンライン研修やeラーニングも対象になり得ます。
助成対象となる経費
助成対象となる経費は、主に訓練の実施に直接必要な費用が挙げられます。
・受講料・入学料など
研修の受講料や入学料などは訓練の実施に直接費用な費用になるため、助成対象になり得ます。
・賃金助成
訓練経費に加え、訓練を実施した時間について一定の要件を満たす場合は、従業員に支払った賃金の一部も助成対象となります。
・対象外となる経費
AI研修に関連する費用であっても、制度上対象外とされる経費があります。例えば、出席率などの要件を満たさない場合は、支給対象外になる可能性が高いです。
人材開発支援助成金の申請手順

続いては、人材開発支援助成金をAI研修に活用する際の申請手順を紹介します。
1.利用するコースとAI研修を選ぶ
まずは自社が実施したいAI研修の内容や目的に合うコースを選びます。
例えば、新規事業やDX推進にともなうAI研修なら「事業展開等リスキリング支援コース」、高度なデジタル人材を育成したいなら「人への投資促進コース」などが候補になります。
研修内容が助成対象となるか、対象者や訓練時間などの要件を満たすかも事前に確認してください。
2.職業能力開発推進者の選任と計画策定を行う
利用するコースが決まったら、職業能力開発推進者の選任や事業内職業能力開発計画を策定し、従業員へ周知させます。
職業能力開発推進者は、事業内職業能力開発計画の作成や実施、従業員への適切な相談・指導が行える権限を持つ人を選任してください。
また、事業内職業能力開発計画では、人材育成の基本的な方針・目標から人事考課などに関する事項、職務に必要な職業能力に関する事項、教育訓練体系などを記載することがポイントです。
3.訓練開始日の1カ月前までに計画届を提出する
どのような訓練を誰が実施するのかなどをまとめた、職業訓練実施計画書を作成し、管轄の労働局へ提出します。
職業訓練実施計画書は、訓練開始日の6カ月前から1カ月前までの間に提出が必要です。
コースによって必要な書類が異なるため、最新の様式を確認した上で準備してください。
4.計画に沿ってAI研修を実施する
計画届の内容に沿ってAI研修を実施します。訓練期間中は後ほどの支給申請で証拠書類を提出する必要があるため、記録を残しておくことが重要です。
-
- 出席記録
- 訓練にかかる経費の領収書
- 賃金台帳、タイムカード
- 外部講師の資格証明書 など
5.支給申請書を提出して審査を受ける
AI研修が終了したら、終了日翌日から起算して2カ月以内に、支給申請書と証拠書類を提出します。労働局が審査を行い、無事に認められれば助成金が支給されます。
なお、審査期間は各自治体や時期によって変わりますが、数カ月程度かかるのが一般的です。
審査を通過した場合、支給決定通知が届き、その後指定の口座に助成金が振り込まれます。
申請時に必要となる主な書類
必要書類はステップごとに異なります。申請時に必要となる主な書類は以下のとおりです。
| ステップ | 必要書類 |
| 職業訓練実施計画届の提出時 | ・職業訓練実施計画書 ・事業内職業能力開発計画 ・職業能力開発推進者選任届 ・対象労働者のリスト ・訓練カリキュラム・実施要項 ・事業所の雇用保険適用事業所番号確認書類 |
| 支給申請時 | ・支給申請書 ・訓練修了者のリスト ・受講証明書・修了証明書 ・受講料の領収書・請求書 ・訓練期間中の賃金台帳 ・出席記録(受講者の署名付き) ・雇用・賃金に関する確認書類(雇用保険被保険者資格取得等確認通知書など) |
AI研修で助成金を活用する際の注意点
AI研修で人材開発支援助成金を活用する場合、対象要件以外にも申請のタイミングや研修の実施方法、記録の管理など様々な注意点もあります。
ここで、事前に押さえておきたい注意点を紹介します。
計画届を提出する前に研修を開始しない
人材開発支援助成金は、原則として訓練開始日の6カ月前から1カ月前までの期間に職業訓練実施計画書を提出し、受理される必要があります。
研修の契約自体は計画届を提出する前でも問題ありません。
しかし、計画が受理される前からAI研修を実施してしまうと、助成対象として認められなくなる可能性があるため、注意してください。
研修会社との契約や受講開始のタイミングも含めて、事前に管轄の労働局へ確認しておくと安心です。
研修費用を一時的に全額負担する必要がある
人材開発支援助成金は、原則後払いになります。そのため、一旦事業主側で訓練費用を負担しなくてはなりません。
また、支給申請を行ってから実際に助成金が振り込まれるのは数カ月後になるケースが多いです。
このことも踏まえた上で、事前に資金繰りを確認して計画的に進められるようにしてください。
出席状況や受講履歴などの記録を残す
支給申請では、実際に計画どおり研修を実施したことを確認できる資料が必要です。
例えば、出席状況や実施状況を確認できる資料、オンライン研修やeラーニングなら受講履歴などが挙げられます。
遅刻や欠席が多い場合は支給額が減ってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
eラーニングの受講回数や実施要件を確認する
eラーニングによるAI研修も助成対象となる場合がありますが、コースごとに標準学習時間や期間などの要件が求められています。
例えば、人への投資促進コースにある「高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練」では、eラーニングの場合1コースあたりの標準学習時間が10時間以上、もしくは1コースあたりの標準学習期間が1カ月以上あることが要件です。
判断に迷った場合は労働局や専門家に相談する
AI研修が助成対象になるか、どのコースを利用できるか、eラーニングの要件を満たしているかなど、判断が難しいケースもあります。
制度の支給要件や申請様式は改正されることもあるため、迷った場合は自己判断せず、管轄の労働局やハローワーク、社会保険労務士などに確認してください。
特に研修開始前に相談し、対象要件や必要書類を確認しておくことが重要です。
AI研修の助成金についてよくある質問
AI研修に人材開発支援助成金を活用する際は、さまざまな疑問が生じやすいものです。ここでは、AI研修を実施する際によくある質問について解説します。
個人事業主でも人材開発支援助成金を申請できますか?
人材開発支援助成金の申請者は事業主に限られており、従業員を雇用している個人事業主であれば活用できる場合があります。
ただし、事業主本人の研修費用は対象外となるため、注意が必要です。
オンライン・eラーニングのAI研修も対象ですか?
オンライン研修やeラーニングによるAI研修も、コースごとに定められた要件を満たすことで、助成対象となる場合があります。
ただし、2026年8月3日改正で事業展開等リスキリング支援コースのeラーニングによる訓練は、1労働者1年度あたり1回までに制限されたので受講回数に注意してください。
また、オンライン研修やeラーニングで助成金を活用したい場合、支給申請の際に受講履歴や修了状況の記録が必要です。
研修を申し込んだ後でも申請できますか?
人材開発支援助成金は、研修を開始した後に計画届を提出することは原則できません。基本的には訓練開始日の1カ月前までに計画書を提出する必要があります。
そのため、研修会社への申し込みや契約、受講開始の時期と助成金の手続きを事前に確認することが大切です。
まとめ・AI研修の目的と対象要件を確認して助成金を活用しよう
企業の競争力を高めるためにもAI技術の活用は1つの方法になり得ます。AI技術を事業に活かすには、AI研修の実施が必要になってくるでしょう。
人材開発支援助成金を活用すれば、AI研修を実施した際の費用が一部助成され、負担を抑えつつ従業員のスキル向上が目指せます。
ただし、人材開発支援助成金にはコースごとに要件が設けられているため、事前に確認した上で助成金制度を活用してみてください。
創業手帳(冊子版)は、人材育成に悩む企業担当者や事業主に役立つ制度の紹介も行っています。会社の成長と従業員のスキルアップを両立して目指したい人も、ぜひ創業手帳をお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)
創業手帳
創業手帳0
補助金ガイド
飲食開業手帳