家族経営を法人化すると節税につながる?メリットや注意点、失敗を防ぐポイントを解説
家族を経営に参画させると節税などのメリットが得られる!

個人事業主として働いている人の中には、家族を役員や従業員として雇い入れ、法人化を目指そうと考えている人もいるでしょう。
慣れ親しんだ家族と一緒に経営をすることで、節税を含めた様々なメリットが得られます。しかし、家族経営では注意点も存在します。
そこで今回は、家族経営で法人化を目指す際に節税できる理由や節税以外に得られるメリット、注意すべきポイントなどを解説していきます。
家族経営を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
家族経営を法人化すると節税につながる理由

家族経営で法人化すると、なぜ節税につながるのか、その理由を解説していきます。
所得の分散によって税負担が抑えられる
法人化して家族に役員報酬を支払えば、所得の分散効果によって社長の所得税を節税できます。
個人事業主や社長1人のみの会社の場合、事業の利益はすべて社長となる自分に集中します。
日本の所得税は、累進課税という仕組みを採用しているため、所得が多くなれば多くなるほど、税率が高くなる仕組みです。
そのため、自分1人で会社を経営して利益を得ていれば、所得が高くなるにつれて税率も上がってしまいます。
しかし、家族を役員や従業員として採用し、その働きに見合った報酬を支払えば、所得を分散できるため、税負担を抑えられます。
1人で税金を支払うよりも、世帯全体で支払う税金の合計額の方が少ないため、大きく節税することが可能です。
経費計上できる範囲が広がる
家族経営で法人化すれば、個人事業主のころと比較して経費計上できる範囲が広がります。
例えば家族への給与です。
経営に参画する家族を役員にすれば、役員報酬として毎月定額を経費計上できます。ただし、家族への給与を経費とする際には厳しい制限があるため注意してください。
また、自宅を社宅化することで家賃の一部を経費化できます。賃貸物件や持ち家を法人名義で契約し、役員社宅として家族に貸し出せば、本来はプライベートな支出である家賃の一部を経費計上できます。
ただし、適正な家賃負担ルールに従うことが基本となるため注意してください。
その他にも、生命保険(法人契約に限る)や退職金、出張日当などを経費として計上できます。
家族経営を法人化する際の2つのタイプ

家族経営を法人化するケースとして2つのタイプが挙げられます。どのタイプで法人化を目指したいか検討する際に役立ててください。
家族を従業員として雇用するタイプ
1つ目が、家族を従業員として雇い入れて法人化するタイプです。給与を支払えば家族の収入源を確保でき、世帯全体の所得構成が変わります。
個人事業主のように専従者給与の制限がなく、実際に即した適正な金額であれば全額経費にできる仕組みです。
不当に高い給与を設定すれば経費として認められない可能性があり、税務調査では家族の雇用状況を厳しくチェックされるケースもあります。
その場合に備えて業務内容や報酬を明確に記録しておくことが大切です。
また、社会保険や労働保険の取り扱いについても注意してください。雇用保険は同居の親族従業員については、適用除外が原則です。
労災保険に関しても対象から外れるケースがあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
家族を役員にするタイプ
もう1つのタイプが、家族を役員として雇用するケースです。
家族を役員として登用すれば、経営方針が共有しやすくなり、意思決定の迅速化や一体感の高まりといったメリットを得られます。
社会保険や所得税の取り扱いは他の役員と変わりがなく、税務面での扱いが一貫しているため、予算の見通しも立てやすいです。
また、従業員として雇い入れる際と同様に、報酬で不当に高い金額を設定すると経費として認められない可能性があります。
実際の業務内容や責任に応じて金額を設定するようにしてください。
家族の給与・報酬が損金として認められる要件

法人化して家族に給与や役員報酬を支払う場合、基本的には損金として認められます。しかし、条件があるので注意が必要です。
例えば、従業員として雇用する場合は、法人税法上は他の一般的な従業員と同様に全額損金算入できます。
実際に労働している事実を証明できるように、タイムカードや業務日誌などを残すことが重要です。
一方、役員として報酬を支払う場合には原則として毎月同じ金額を支払う「定期同額給与」である必要があります。
途中で増額や減額させることは難しく、変更したい場合には株主総会で変更議案を決議しなければいけません。
また、ボーナスを支給する際には事前に「事前確定届出給与」を税務署に提出する必要もあります。
家族経営で法人化する節税以外のメリット

家族を従業員や役員として雇い入れて法人化する場合、節税以外にも様々なメリットがあります。
それぞれを具体的に解説していきます。
配偶者向けの手厚い社会保障が受けられる
家族と一緒に法人化すれば、雇用された家族は社会保険に加入できます。
これまで自分の扶養に入っていた家族が役員として社会保険に加入できれば、将来受け取れる年金額が国民年金のみと比較すると手厚くなる点がメリットです。
老後の生活に潤いができるため、大きな魅力だと言えます。
ただし、非常勤役員であると社会保険には原則加入できません。常勤と非常勤の区別は勤務の日数や報酬、監督権といった要素を総合的に判断して決定されます。
留意点がありますが、適切に運用すれば将来的なメリットが期待できるでしょう。
家族全員分の退職金を準備できる
自分だけではなく、従業員や役員である家族に対して将来、退職金を支払うことができます。
長年の貢献に報いる退職金を準備すれば、その額すべてを経費計上できる仕組みです。
個人事業主ではできない法人ならではのメリットとなり、老後のための資産形成術として活用できます。
事業承継も円滑にできる
「自分の代で会社を終わらせたくない」と考える人にとって、家族経営での法人化は事業承継を円滑に進めるためにも効果的です。
将来、事業を継がせたいと考える親族を若いうちから従業員や役員として参加させれば、企業理念や事業方針を深く理解させるために役立ちます。
事業内容だけではなく、経営に関する教育も早い段階から進めていけるため、後継者として必要な知識やスキルなどを計画的に蓄積することが可能です。
他の従業員や関係者からの理解も得やすいです。
相続税・贈与税対策も期待できる
家族を従業員や役員として雇い入れることは、相続税や贈与税対策としても有効な手段となります。
役員報酬として資産を家族に渡していけば、相続時に課税される財産の総額を減らせるためです。
相続税と贈与税は、累進課税制度が当てはまります。財産が大きくなればなるほど、課税率がアップする仕組みです。
1人の財産をそのまま贈与したり相続させたりするよりも、生前に役員報酬として少しずつ支給した方が節税につながります。
相続税や贈与税対策を検討しているなら、家族経営での法人化を検討してみてください。
家族経営で法人化する際の注意点

家族経営で法人化すると、様々なメリットを受け取れますがデメリットとなる注意点も存在します。
適切に対処できなければ会社の経営に大きな支障をきたす可能性もあるので、事前に理解しておくことが大切です。
保守的な経営になる可能性がある
家族を役員として加えて法人化する場合、経営における意思決定が特定のメンバーに偏りやすい傾向があります。
その結果、意思決定が慎重になってしまうため、変化対応へのスピードが遅くなる可能性がある点に注意が必要です。
過去の成功体験や慣習に固執し過ぎれば、外部環境の変化にも対応しにくくなるため、組織活力の低迷や人材の登用にも影響を与える可能性があります。
こうしたリスクを避けるためにも、外部の意見には積極的に耳を傾け、市場動向や技術革新などにも常に注目し続けることが大切です。
みなし役員に気を付ける
会社の登記簿上には役員として登録されていない従業員でも実質的に経営に従事していることで、税法上は役員として扱われる人物をみなし役員と言います。
みなし役員と判断される基準は以下の通りです。
-
- 会長や相談役、顧問といった肩書で実質的に法人経営に従事している人
- 親族が一定の株式保有割合を満たし、かつ経営に従事している場合
経営に従事している人とは、仕入の決定や資金調達、従業員の採用など、会社にとって主要な業務執行に関する意思決定に関与している人のことを指します。
また、身内で持つ株の比率にも注意が必要です。夫婦の合計で5%を上回る株式がある場合、税務上役員とされるケースがあります。
家族以外の従業員の意欲が削がれやすい
家族を従業員として雇用し法人化を目指すことで、それ以外の従業員のモチベーションが下がる可能性もあります。例えば以下のような事例です。
-
- 経営層が家族メンバーばかりに要職を集中させる
- 家族の方針にそぐわない従業員を遠ざける
- 社長の家族だから遅刻や無断欠席をしても誰も注意できない
- 経費の使い方が甘いメンバーがいても指摘できない
家族間の慣れ合いの空気は、会社の規律を緩める傾向にあります。他の従業員の意欲が削がれやすいため注意してください。
事業の拡大がしにくい
法人化して家族を従業員として雇用する場合、事業拡大がしにくくなる恐れもあります。家族を中心にした経営は、外部から見ると閉鎖的に映ります。
家族以外の従業員の処遇やキャリアパスも、公平性や透明性を意識しなければ大きな批判を生む可能性にも注意しましょう。
配慮が不足してしまえば、人材確保が難しくなるだけではなく、優秀な人材の定着や組織力強化にも影響を与えます。
事業拡大を目指すためにも、適切な人事制度や評価制度を整えることが大切です。
家族仲が悪くなる可能性もある
家族経営で法人化すると、家族仲が悪くなるリスクもあります。
役員になった家族内で意見が対立するケースもあり、対立が深刻化すれば会社の信用や社会的評価を損ねる可能性があります。
経営判断の遅れにも影響し、結果的に従業員の士気や業務にも悪影響を及ぼすため注意が必要です。
こうしたリスクを回避するためにも、家族間の意思疎通は日頃から丁寧に行い、それぞれの役割や決定の流れについては明確に定めておくことがポイントです。
家族経営の法人化後に失敗しないためのポイント

最後に、家族経営の法人化を成功に導くためにも、失敗しないためのポイントを解説していきます。
節税だけを目的にしすぎない
目先の節税だけを目的に法人化を目指すと失敗を招く可能性があります。
社会保険料の負担が増すほか、事務作業の負担増、コストの増加など、法人化することで経営が苦しくなるケースもあります。
増える負担をあらかじめ把握してから法人化を目指すことが大切です。
家族の役割や給与・報酬を明確にする
家族間のトラブルを防ぐためには、事前に役割分担を明確化させる必要があります。
経営戦略や財務に関する意思決定や営業や製造、経理などの実務を担当する人などをあらかじめ明確にし、役職として定義してください。
事業と家庭の調和を図るためにも重要なポイントです。
また、給与や報酬に関しては市場相場や事業規模に合わせて適切に設定しなければいけません。
報酬に関する仕組みは透明性を持たせるためにも全従業員に対して説明する必要もあります。報酬額に関しては、税理士に相談するとアドバイスをもらえます。
意思決定などに透明性を持たせる
人事や経営戦略、目標設定など、経営に関する意思決定は、決定までの過程や基準、根拠などに透明性を持たせる必要があります。
家族経営では、経営者や家族間のみで意思決定が進められる傾向にあるため、その他の従業員の不満や不信感を高める可能性があります。
従業員たちの納得度を高めてモチベーションを維持させるためにも、意思決定のプロセスには透明性を持たせる配慮が必要です。
他従業員と待遇を平等に設定する
家族経営を続ける場合には、他従業員との待遇を平等にすることが大切です。
人事の評価基準を明確化して、家族を含めた全従業員が同じ基準で評価される仕組みづくりが必要です。
すべての従業員に対しては、仕事での成果に応じた評価や報酬を設定し、会社への貢献が正しく評価に反映される仕組みがあることで、モチベーションの維持や定着率アップに役立ちます。
強みやスキルを発揮して仕事に従事できる環境を整えることで、家族以外の従業員が活躍できる場も増えていきます。
家族経営の法人化は節税だけでなく将来の経営基盤安定化にもつながる
家族経営における法人化は、節税を目指せるだけではなく、退職金の準備や相続税対策、事業承継対策としても有効です。
メリットが多いため、家族を迎え入れての法人化をすぐにでも目指したいと考える人もいるでしょう。
しかし、保守的な経営や家族間でのトラブル発生など、注意すべき点も存在します。
あらかじめ理解し、適切な対処をすることでリスクを抑えた法人化を目指せるでしょう。
創業手帳(冊子版)では、法人化をする際に役立つ情報を多数ご紹介しています。家族経営にも役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてください。
(編集:創業手帳編集部)
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