パスポート申請の費用は経費にできる?適切な処理方法や会社負担時の注意点を解説

パスポート申請費用は経費として計上できるが注意点もある


パスポートを所有していない段階で、海外出張が決まると取得費用は決して安い価格ではないため、「自分が負担?それとも会社が負担?」と悩む人もいるでしょう。
結論としては、経費計上が認められるケースがあります。しかし、注意点もあるので注意が必要です。

この記事では、パスポート申請時の費用が経費として計上できるケースとできないケースをそれぞれ解説していきます。
処理する際の勘定科目についても解説していくので、経費処理で悩んでいる人も、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の目次

パスポート申請費用の経費計上が認められるケース


経費計上が可能な場合を、具体例を挙げながら解説していきます。

海外出張・海外赴任など業務上の必要性が明確な場合

パスポートの申請にかかる費用が経費になる代表例のひとつが、業務上の必要性が明確な場合です。具体的には、海外出張が頻繁にある・海外赴任のある会社などです。
通常の業務で海外出張が頻繁にあり、パスポートの取得や更新が事業に欠かせないと判断できる場合であれば、経費への計上が認められる可能性があります。
海外の取引先との商談が日常的に行われる、海外にある工場に出向いて定期的に技術指導を実施するといった事例が当てはまります。

また、海外赴任をする従業員にとってパスポートは業務を遂行するにあたって必須な書類です。
赴任準備の一環として、経費と承認される可能性があるので、申請する前に会社に聞いてみてください。

会社の業務命令や採用条件として取得が必要な場合

業務命令や採用条件としてパスポートの取得が必要な場合も経費で落とせる可能性があります。
例えば、新卒採用や中途採用において、国際営業職といった特定の職種の求人募集を実施している場合、「パスポートの取得が入社条件」と求人票や労働契約書に明記されていることがあります。
この場合であれば、パスポートの取得が業務に直結しているといえるため、事業を行う上で必要な支出であると見なされやすいです。

ただし、これらは採用時に明確な要件として提示されている場合のみです。
求人票や労働契約書に明記されていないのであれば、入社後に急遽海外への出張が必要になったとしても、後付けで会社負担にするのは難しいので注意してください。

個人事業主が事業用に使用し、私用分を按分できる場合

企業に勤めている会社員ではなく、個人事業主だとパスポートの扱いがどうなるのか気になる人も多いかもしれません。
結論としては、会社員と同じように仕事に必要なものであると証明できれば経費で落とすことが可能です。

その際には、仕事とプライベートとの使用割合に応じて按分計上するのが基本です。
証明する書類としては、海外の取引先との契約書や海外で開催されるセミナー・勉強会の資料、過去の海外での取引履歴などが挙げられます。

パスポート申請費用が経費として認められないケース


パスポートの申請の際に発生する費用が経費として許可されるには、「業務上必要」であることがポイントです。以下のようなケースでは、容認されないため注意してください。

プライベート旅行や私的利用が主な目的の場合

プライベートでの旅行や私的利用が海外へ行く目的であれば、「業務」とはいえないためパスポート申請費用は経費として認められません。
例えば申請時の領収書があったとしても、仕事のために取得したとはならないため、計上は難しいです。

しかし、プライベート用でパスポートを作ったとしても、海外出張に流用するケースもあります。
出張のために新たにパスポートを申請した人がおり、なおかつ申請費用を計上しているとなれば、不公平感が生まれてしまいます。
会社に対して不満を感じる要因となるため、不公平感をなくすためにも一律の出張準備金を用意すると不平不満が生まれにくいです。

海外業務の予定がなく、将来の可能性だけで取得した場合

海外での業務や海外出張、海外赴任の予定がないにも関わらず、パスポートを申請した際には私用での利用と見なされる可能性が高いため経費として計上するのは難しいです。
そのため、「もしかしたら今後海外出張があるかも」といった段階だけでは経費として認められません。
たとえ海外出張がある会社に勤めたとしても、出張を打診されていない段階でのパスポートの申請は行わないようにしてください。

私用と業務利用が混在しているのに区分できない場合

私用と業務での利用が混在しているのに区分できないケースでは、経費計上は難しいです。
例えば、5年間のうちに海外出張が1回で、それ以外は私的利用だった場合、出張分だけを少額経費にするといった対応が可能です。

しかし、その説明責任は個人事業主にあります。
明確に証明できる資料がないとなれば業務で使用していたとしても経費にすることは難しいため、証拠となる資料の保管を徹底し、説明できるよう根拠を明確にすることも忘れないようにしてください。

パスポート申請費用を処理する際の勘定科目と仕訳例


ここからは、勘定科目や仕訳例を紹介していきます。処理方法で悩んでいる人は参考にしてください。

旅費交通費:一般的な出張にともなう取得の場合

海外出張にともなってパスポートを発行する必要があった場合、その際にかかる代金は「旅費交通費」として経費計上できます。
計上できる内容は、業務に必要な範囲です。
パスポート申請以外にも、ビザ申請にかかる費用も旅費交通費に含めることが可能です。

租税公課:手数料(印紙・証紙代)を区分する場合

パスポートを発行する際にかかる一部費用は租税公課として計上することもできます。租税公課とは、政治や自治体に支払う手数料のほか、税金を含む勘定科目です。

パスポート申請では、収入印紙代や発行手数料がかかるため、仕訳では租税公課として処理ができます。
また、申請時に必要となる戸籍謄本や住民表などの発行手数料も租税公課に含まれます。

福利厚生費:全社員を対象とした社員旅行などの場合

パスポート申請費用は条件が合えば福利厚生費として計上可能です。福利厚生費とは、会社が従業員のために支払う費用です。

  • 賃金とは別
  • 全従業員が対象
  • 社会通念上、妥当な金額

上記を満たせば福利厚生費として認められます。そのため、全社員を対象として社員旅行が目的のパスポート申請時には福利厚生費として計上できます。

支払手数料・雑費:写真代や証明書取得費用

雑費とは、ほかの主要な勘定科目に該当せず、少額で一時的に発生した支出を処理する際に使われる勘定科目です。
パスポート申請においては、証明写真代が雑費に分類されます。

雑費として処理できれば、パスポートを申請する際に必要となる細かな支出を正確に処理できるようになります。
証明写真であれば、撮影費用の領収書がパスポートの発行費用とは別になっているため処理がしやすい利点もあります。

パスポート申請費用を経費計上する際の運用ルールと注意点


パスポート申請費用を経費計上する際には、税務リスクを避けるためにも注意を払う必要があります。
運用ルールや注意点を解説していくので、運用時の参考にしてみてください。

慶弔規定や旅費規定(社内規定)を整備しておく

パスポート申請時の費用を会社が負担する可能性があれば、前もって慶弔規定や旅費規定を整備しておく必要があります。
「どういった場合に」「どこまでの範囲で」会社が費用を負担するのかを具体的に定め、それぞれに記してください。
例えば、「海外赴任者のみ」「年間○回以上海外出張が発生する社員」など、具体的な条件を設定します。

また、申請時に発生する印紙代や写真代など、対象となる費用を具体的に記し、加えて領収書の取得や保管方法、申請や承認プロセスなど、精算フローも定めておくと、従業員の申請ミスを防ぐことに役立ちます。
経費担当者が行う処理もスムーズになるでしょう。

領収書だけでなく「業務上の必要性」を示す証憑を保管する

「業務上の必要性」が認められなければ経費計上はできません。
パスポートに関しては、税務調査で社員に対する給与と認定されるリスクがあるため、回避するためにも関連する記録の保管が求められます。

  • 出入国記録
  • 交通機関の領収書
  • 宿泊先の領収書
  • 取引先とのやり取りの記録
  • 出張報告書
  • 商談議事録
  • 訪問先で撮影した写真 など

上記の資料は保存期間に従って適切に保管してください。
適切に保存されていない場合は、税務調査で経費として認められない可能性があるほか、追徴課税が課されるケースもあります。

パスポートを発行するタイミングに気を付ける

パスポート申請時にかかる費用を経費にしたい場合、業務目的でパスポートを取得した時や更新する場合のみ、会社負担の対象です。
そのため、すでにプライベートでの利用を目的にパスポートを発行している場合は、海外出張が決まったとしても発行にかかった費用は経費として計上できません。

未発行の場合でも、海外出張が決まっていないタイミングで申請をすれば、経費計上できないため注意してください。
海外出張や海外赴任が決まり、その段階でパスポートの申請や更新をすれば経費計上ができるため、タイミングには注意が必要です。

諸費用の課税・非課税を明確に仕分ける

パスポート申請費用のうち、印紙代といった租税公課で処理ができる費用は非課税です。
しかし、パスポートは個人での利用もできるため、取得にかかる諸費用の「どこからどこまでをどの科目で仕分けるのか」はっきりさせる必要があります。
パスポート申請に関わる費用の一部では課税対象の科目が含まれるケースもあるため、写真代は雑費にするなど、諸費用の課税・非課税を明確に仕分け、経費処理のルールを設けることも大切です。

パスポート申請費用の経費計上に関するQ&A


最後に、パスポート申請時の経費計上に関する疑問を解決していきます。

個人事業主もパスポート申請費用を経費計上できる?

会社員と同じように、個人事業主もパスポートを発行した際には、業務上必要であると判断された場合のみ、経費計上が可能です。
ただし、プライベートでも使用する機会があるため、使用割合に応じた按分計上を行う必要があります。

事業との関連性を証明する必要があるため、海外の取引先との契約書や参加したセミナー、勉強会の資料などを必ず保管しておくことが大切です。

パスポート申請にかかる具体的な費用はいくら?

パスポートを発行する際にかかる具体的な費用は以下の通りです。

申請種類 都道府県手数料 国の手数料 合計
10年間有効(窓口申請) 2,300円 14,000円 16,300円
10年間有効(オンライン申請) 1,900円 14,000円 15,900円
5年有効(窓口申請) 2,300円 9,000円 11,300円
5年有効(オンライン申請) 1,900円 9,000円 10,900円
残存有効期間同一旅行券(窓口申請) 2,300円 4,000円 6,300円
残存有効期間同一旅行券(オンライン申請) 1,900円 4,000円 5,900円

残存有効期間同一旅行券は、名前や本籍地に変更があった時、パスポートの査証欄の余白のページが少なくなった時などに発行するパスポートで、現在所有しているものと残存有効期間が同じパスポートのことを指します。
出張で頻繁に海外に行くとなれば査証欄のページが少なくなるケースも多いため、前もってどの程度の費用がかかるのか覚えておくと安心です。

パスポート申請費用以外に渡航関連費用で経費計上できるものはある?

海外出張や海外赴任の際、パスポートの申請費用やビザの申請費用、現地までの往復航空券代や移動時のタクシー代など、様々な費用がかかります。
それらは経費計上可能ですが、海外ではチップを支払うケースも多いです。
業務の際に利用したレストランやタクシー、宿泊先のホテルで働くスタッフに対して規定の料金とは別に「心づけ」として渡す現金のことです。

チップを経費計上したい場合、会社によって方法が異なります。
チップの金額を出張清算書に記載してほかの出張経費と一緒に経費精算する場合もあれば、あらかじめ日当にチップ代を含める会社も多いです。

まとめ・パスポート申請費用の経費計上は「業務上の必要性」と「証拠」がカギ

パスポート申請にかかる費用は、「業務上の必要性」が判断できれば経費計上が可能です。
しかし、経費として処理するためには、業務に従事した実績が必要です。「証拠」となる領収書や取引先とのやり取り、資料などは必ず保管しておいてください。
加えて、企業は事前に社内規定を整備する必要もあります。今回紹介した内容を参考に、ルールの作成や従業員への周知を行ってみてください。

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(編集:創業手帳編集部)