商店街起業・承継支援事業とは?概要や申請方法を解説
商店街の店舗開業に役立つ支援策を活用しよう
後継者不足や客足の減少といった問題を背景に商店街の衰退が懸念されています。
そのような中、東京都では商店街の活性化を目的に「商店街起業・承継支援事業」を行っています。
商店街での店舗開業に向けて役立つ支援策となっているため、東京都にある商店街で事業をはじめようと考えているのであれば活用を検討してみてください。
そこで今回は、商店街起業・承継支援事業の助成対象者や助成内容といった概要を解説すると共に、申請方法や申請スケジュールなどを解説していきます。
審査のポイントや注意点も紹介していくので、制度の活用を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
商店街起業・承継支援事業とは
まずは、商店街起業・承継支援事業について、助成対象事業や対象者を含めて解説していきます。
商店街の活性化を目指す助成金事業
東京都産業労働局の「令和4年度東京都商店街実態調査報告書」によると、東京都内の商店街の数が年々減少しているといいます。
2001年から2022年までの商店街の数は以下の通りです。
年度 | 商店街数 |
---|---|
2001年 | 2,873件 |
2004年 | 2,785件 |
2007年 | 2,717件 |
2010年 | 2,683件 |
2013年 | 2,625件 |
2016年 | 2,535件 |
2019年 | 2,447件 |
2021年 | 2,374件 |
商店街が衰退している要因としては、後継者不足や集客の核となる店舗がない、空き店舗の増加などが挙げられます。
こうした問題の解消を図るため、商店街の活性化を図るために作られた制度が「商店街起業・承継支援事業」です。
商店街での開業を目指す人たちを支援する制度となっており、店舗の工事費や経費の一部を助成してくれます。
助成対象事業
商店街起業・承継支援事業の助成内容は、開業・多角化・事業承継の3つの区分があります。それぞれの内容の解説です。
開業
都内にある商店街で新しく実店舗を開設する際に利用できます。ただし、都内に限らず、申請時点で実店舗のない場合に限ります。
実店舗を持たずにインターネットショップのみでの営業活動を実施していた人が店舗を開設する場合が対象です。
なお、実店舗には利用日時が制限されたシェアキッチンや自治体が運営するチャレンジショップは含まれません。
多角化
実店舗を持っている中小企業者が既存事業とは違う分野に進出する際に、都内の商店街で既存の店舗とは異なる物件で新しく店舗を開設する場合に利用できます。
実店舗のない中小企業者が新しく実店舗を持つ場合には、開業の区分となるので注意してください。
事業承継
中小企業の後継者が、都内にある商店街において既存事業を引き継いで店舗改修をする際に利用できます。
ただし、以下のいずれかに該当している必要があります。
-
- 継承する事業を営む既存店舗で事業を継続する
- 都内にある別の商店街に店舗を移動して事業を実施する
助成対象業種
助成の対象となる業種は以下の通りです。
-
- 農業、林業
- 漁業
- 鉱業、採石業、砂利採取業
- 建設業
- 製造業
- 電気、ガス、熱供給、水道業
- 情報通信業
- 運輸業、郵便業
- 卸売業、小売業
- 金融業、保険業
- 不動産業、物品賃貸業
- 学術研究、専門技術サービス
- 宿泊業、飲食サービス業
- 生活関連サービス業、娯楽業
- 教育、学習支援業
- 医療、福祉
- 複合サービス事業
- サービス業(ほかに分類されない事業)
- 公務(ほかに分類されるものを除く)
- 分類不能の産業
上記大分類されている事業から、さらに細かく分類されています。
申請する際には細かく分類された業種に該当している必要があるので、東京都中小企業振興公社のホームページにある商店街起業・承継支援事業を確認の上、申請を実施してください。
助成対象者
助成対象者は、開業・多角化・事業承継の区分ごとに異なります。
創業予定の個人や中小企業者であること以外にも、以下の要件に該当する人は助成の対象者です。
-
- 交付が決定してから1年以内に開業する
- 開業するまでに申請事業を行うにあたって必要な許認可を取得している
- 経営に関する知識を習得し、実務知識を有していること
要件に当てはまっていなければ申請できないため、あらかじめ確認しておく必要があります。
「令和7年度 商店街企業・承継支援事業募集要項」を確認の上、申請を実施してください。
商店街起業・承継支援事業の助成内容
ここからは、助成内容の詳細を解説していきます。助成限度額や助成対象となる経費の内容について解説するので参考にしてください。
助成限度額
助成限度額は以下の通りです。
経費区分 | 対象の費用 | 助成率 | 助成限度額 |
---|---|---|---|
事業所整備費 | 店舗の新装や改正工事費 設備や備品の購入費 宣伝広告費 |
2/3以内 | 250万円 |
店舗賃借料 | 交付決定から3年間の店舗賃借料 | 2/3以内 | 1年目:月15万円 2年目:月12万円 3年目:月10万円 |
具体的な経費の内容
助成の対象となる具体的な経費は以下の通りです。
【店舗新装・改装工事費】
商店街で開業するために実施する店舗の新装や改装に要した工事費用が対象になります。
ただし、以下の点に注意してください。
-
- 交付が決定する前に契約や着工した工事は交付決定日以降に支払う工事代金の税込残高が総額の30%以上である
- 申請書に記載した工事業者の工事に限り対象
- 住居兼店舗では店舗専有部分のみが対象
- 工事をともなう据え置き型のカウンターや椅子、エアコンは工事費の対象となる
店舗の購入費や解体撤去費用は対象外です。原材料を自分で調達して工事も自分で行った場合の費用も対象にはなりません。
【設備・備品購入費】
店舗開業時に必要となった設備や備品(ひとつ税込10万円以上)購入にかかった費用が対象です。
住居兼店舗の場合は、店舗専有部分で必要になった設備や備品のみが対象となります。
また、設備の運搬費や取付費、配送料も含まれます。
-
- 中古購入費
- 車両購入費
- 使用目的が事業遂行に必要なものだと特定できない設備や備品
- 税込10万円以内のもの
- オーダー品のデザイン費
- 設備のリース料やレンタル料
- 消耗品の購入費 など
上記は対象外となります。
【宣伝広告費】
Webサイトの制作や改修費、チラシの制作費、広告掲載費などが対象です。ただし、広告掲載費では全国紙への掲載費は対象外です。
【店舗賃借料】
事業の遂行に必要な店舗を新しく借りる際の賃借料が対象となります。事業承継については、契約中や更新をする賃貸借契約も対象です。
ただし、店舗賃借料のみの申請はできないので注意してください。
-
- 敷金や礼金、仲介手数料
- 保証金や管理費
- 火災保険料や地震保険料
などは対象外となります。
商店街起業・承継支援事業の申請方法
商店街起業・承継支援事業を申請する流れは以下の通りです。
1.募集要項の確認
2.出店予定地がどの商店街に属すのか確認
3.商店街に出店の確認を取る
4.工事の見積もりや図面作成、備品の認定
5.申請
6.書類審査・面接審査
7.採択結果発表
8.開業
申請方法は電子申請と郵送申請の2つから選べます。
電子申請
商店街起業・承継支援事業は原則電子申請で、デジタル庁が提供する「jGrants」を利用して申請します。
この時、GビズIDプライムアカウントを取得する必要があるため、事前に取得してください。
GビズIDプライムのアカウントを取得したら、申請書をダウンロードして必要事項を入力していきます。後はjGrantsで電子申請を行えば、申請が受理されることになります。
郵送申請
原則電子申請となるため、持参やFAX、電子メールなどによる申請書の提出は認められていません。ただし、jGrantsの利用が難しい場合には郵送での申請も可能です。
郵送で申請する場合には、商店街起業・承継支援事業のホームページから郵送書類をダウンロードし、必要事項を入力していきます。
書類数が多く、さらにzip形式でダウンロードされることから、PCからのダウンロードがおすすめです。
書類を準備できたら受付期間内までに公社助成課へ提出します。なお、書留やレターパックなど、記録に残る方法で提出してください。
商店街起業・承継支援事業の申請スケジュール
令和7年度の申請スケジュールは以下の通りです。
第1回 | 第2回 | 第3回 | |
---|---|---|---|
対象 | 2025年8月1日以降に開業する人 | 2025年11月1日以降に開業する人 | 2026年2月1日以降に開業する人 |
申請書類の提出 | 募集終了 | 6月23日~7月14日 | 9月18日~10月9日 |
一次審査 (資格・書類審査) |
5月中旬~6月上旬 | 7月下旬~9月上旬 | 10月中旬~11月下旬 |
二次審査 (面接審査) |
6月下旬 | 9月下旬 | 12月中旬 |
交付決定日 (助成対象者決定) |
8月1日(予定) | 11月1日(予定) | 2026年2月1日(予定) |
4月末に第1回の申請書類提出は募集が終了しているものの、11月1日以降に開業を予定している人と、翌年の2月1日に開業する予定がある人は、スケジュールに則って準備を進めてください。
商店街起業・承継支援事業の審査ポイントや注意点
商店街起業・承継支援事業を申請した場合でも、審査に通らなければ制度を活用できません。そこで、ここからは審査ポイントや注意点などを紹介します。
どのようなことに気を付ければ良いのか、どうすれば審査に通りやすくなるのかを事前に知っておくことが大切です。
審査のポイント
商店街起業・承継支援事業の審査は、申請書類に基づいて行われる一次審査(資格・書類審査)と、二次審査(面接審査)があります。
いずれの審査も以下のポイントを重視してチェックされます。
事業の実現可能性 | ・店舗のコンセプト、取扱商品・サービスの特徴が明確に存在するか ・予定の店舗物件とその周辺環境は、ターゲットとなる顧客層と合致しているか ・事業に必要なスキル・経験を持っており、継続性が見込める事業か など |
資金計画などの妥当性 | ・資金調達や資金繰り、開業までのスケジュールに無理はないか ・損益計画の積算根拠は明確か ・販売戦略は妥当か など |
商店街活性化への寄与 | ・自店舗の経営に加え、商店街活動への参加や他店舗との協業など、商店街の活性化に貢献することを具体的に考えてお り、長期的に活動参加が見込めるか など |
経営者の適格性 | ・事業経営にあたって十分な知識・経験を備えているか ・経営者としての資質や意欲、人脈を持っているか など |
すべて採択されるわけではない
商店街起業・承継支援事業は商店街の活性化を図りたいと考え、開業初期にかかる費用の負担軽減を支援してくれますが、必ずしもすべての企業が採択されるわけではありません。
上記でも紹介した審査のポイントを押さえた店舗・企業が採択され、書類に不備が見られたり計画性が不十分だったりする場合は、採択されない可能性があります。
令和6年度の採択件数と採択倍率は以下のとおりです。
第1回 | 第2回 | 第3回 | |
---|---|---|---|
申請者数 | 62件 | 56件 | 77件 |
採択件数 | 23件 | 15件 | 19件 |
採択倍率 | 2.7倍 | 3.7倍 | 4.1倍 |
助成金の支払いは後払い
助成金が支払われるタイミングに注意が必要です。
助成金は、東京都中小企業振興公社が開業した店舗の現地調査や、開業するのに実際にかかった経費の支払い処理などを確認した上で支払われます。
つまり、開業してすぐに受け取れるわけではありません。
後払いであることを知っていないと、事前に助成金が支払われると勘違いしてしまい、資金不足に陥ってしまう可能性もあります。
開業前ではなく後払いになることを念頭に置いてください。
専門家に相談すればアドバイスをもらえる
商店街起業・承継支援事業の採択率を高めるためには、補助金・助成金に関する専門家に相談するのもおすすめです。
専門家は豊富な知識とノウハウに基づき、自分に合ったアドバイスを送ってくれます。
相談先としては、行政書士や中小企業診断士といった士業に加え、商工会・商工会議所、コンサルティング会社なども挙げられます。
申請について不安な要素がある場合や、疑問が解消されない場合は、専門家に相談してみてください。
まとめ・スムーズな申請を目指すためにも内容を理解しよう
この事業は個人や中小企業が商店街で新規開業・事業承継をする際の一部経費を支援するための制度です。
商店街で自分の店を開業させたいものの資金が不足している場合などは、商店街起業・承継支援事業の申請を行うことで、費用の負担を抑えつつ新たな事業をスタートできます。
スムーズに申請するためにも、事業の内容についてよく理解しておくことが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)