笑下村塾 たかまつ なな|芸人・会社員・起業家、3足のわらじを履いて見えた未来
たかまつななの新たなチャレンジを創業手帳の大久保が独占インタビュー
(2019/01/07更新)
お嬢様芸人として一躍注目されたたかまつななさんは、芸人としての活動の他に、お笑いを交えた政治的な啓蒙事業を展開する株式会社「笑下村塾」を設立するなど、起業家としての一面も持ちながら、最近はテレビ局への転身でも話題を集めました。
現在は、テレビ局に勤務しながらボランティアで各界の著名人を招いた「政治×お笑い」がコンセプトのライブイベントを行っています。一般的なカテゴリーでは「25歳の新卒」ですが、その活動はダイナミック。バイタリティの原点は社会起業家、社会への働きかけにあります。
制約の多い大企業に属しながら、どうやって自身の活動を成立させているのか。ユニークな経歴、その背景について、企業に属しながら企業内で起業するイントレプレナー(社内起業家)や、プロボノ(専門家の行うボランティア活動)、社会的なインパクトのある副業や社会起業を目指す人の視点で、創業手帳代表の大久保が話を聞きました。
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フェリス女学院出身のお嬢様芸人としてテレビや舞台で活躍する傍ら、お笑いジャーナリストとして、社会問題に取り組んでいる。慶應義塾大学大学院と東京大学大学院の現役学生時代に株式会社「笑下村塾」を立ち上げる。その後テレビ局員として働きながら、教育・進路講演会・シンポジウム・ワークショップ・企業のビジネス研修の講師としても活躍している。
創業手帳の創業者(代表取締役)
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
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社会問題に興味を持ったのは小学4年の時
2月に社会風刺をテーマにしたネタの単独ライブをされますが、お笑い芸人で政治問題を扱うのは、炎上の問題もあるし、結構リスキーですよね。そういうパワーの要るテーマをテレビ局員でもあり、25歳の新卒の立場で実現してしまっているのが凄いなと思っています。
アルピニストの野口健さんや、田原総一朗さん、評論家の宇野常寛さんもライブ出演に巻き込んでいる。その背景を聞きたいと思いました。
たかまつ:芸人とテレビ局員、今は代表を退いていますが起業家としての活動など、“複数のわらじ”を履いていると、クリエィティブな活動を行う時間を確保するのが難しくなっていました。社会風刺のネタを使う単独ライブはもともとやってみたかったんですけど、「芸人として実力がついたら」とか準備を言い訳にして長年手をつけてなかったこともあり、このままではイカンぞと。
今回のライブにも参加してくださる評論家の宇野常寛さんが、常々「歴史に名を残す仕事をしたい」とおっしゃっている姿を見て、時代に流されるのではなく新しい価値観を生み出すことをやりたいなと思ったこともあり、このイベントに踏み切りました。
たかまつ:野口さんは登山家ですが、ピークエイドというNPOで社会活動家としても活躍していて、富士山やエベレストの清掃、学校づくりや、シェルパ基金のような活動をしています。私は小学校4年生の時、野口健さんのイベントに参加しました。
そこで富士山の不法投棄問題の話題に触れたことを期に、社会問題に興味を持ち始めました。
当時小学生で、自分で問題を取り上げる壁新聞を作ってみたりしたんですが、真面目に問題を取り上げても誰も振り向いてくれないんです。
なぜ伝わらないのだろうと考えたのですが、健さんが講演会で問題について話すときは笑いを交えた面白みがあり、同じ問題について発信するにしても、伝え方がとても大事だと気づきました。
たかまつ:そうなんです。社会問題に取り組む活動が広がらない原因の大半は伝え方に問題があるからと思うんです。
例えば、ビジネスマンは、自分の会社の商品がいくら良くても、「買わないとだめだ!」とは言わないですよね。
これが社会問題となるとなぜか押し売り的な伝え方になってしまうことが多くて。
だから伝わらなくてもったないということも多いです。
今回、野口さんをイベントに招いた背景ですが、特にソーシャルビジネスをやっている人や、NPOなど社会問題に携わっている人に、野口さんの伝え方も聞いて欲しいと思っています。
会社員と個人の活動を両立するためのコツ
キーワードは「伝え方と信頼関係」
たかまつ:この活動はボランティアで、クリエイティブ休暇を取得して行うということでOKしてもらいました。
テレビ局に限らないと思いますが、社員の社外活動って、企業側にとってはリスクと取られやすいんです。その中で会社を説得して、やりたいことをやらせてもらうには、日々の業務の中で信頼関係を築くことがとても大事だと思います。私の場合、部署内で一番多く企画や提案を出したりしています。普段の普通の業務をしっかりやることが一番信頼される近道だと思います。
大企業は視点や感覚が内部で固まりがちで、日本の大企業は閉塞感が漂っている。だから色々な大企業が起業家とコラボしたり、オープンイノベーションに取り組んでいます。たかまつさんのように、社内にいる人が外の活動をやるのは、組織に新しい風を吹き込む意味で、ご自身だけでなく、今いる会社にとってもプラスになるのかなと思いました。
たかまつ:社外での活動が社内や、仕事にも生きるように意識しています。
でも、社内に社外の活動を認めてもらう説得をする時に「外の視点を持ち込むぞ!」という感じを前に出しすぎない方が良い気がします。あくまで、日々の仕事を地道にやって、信頼関係築いて、認めてもらうのが一番大事だと思います。
例えば、40代とか50代、60代の特に男性って、会社の中で経験もあるし、権力という意味でのパワーもある。そういう人は背負っているものもあるけれど、組織の中で動かせるパワーが、組織に入ったばかりの若い人と違うわけです。
だからたかまつさんにとっては大変なこと、嬉しかったことも大きいのかなと思いますが。
たかまつ:まず単独ライブをやった時、自分のためにたくさんの人が応援しに来てくれることが嬉しいです。
あとは、仕事で限られた関係の中だけで向き合っていると、自分を見失いがちになることもあります。そんなときにライブ活動が「自分は何をしたいのか」という原点に戻れる場所になります。テレビ局の社員も、お笑いも社会活動も世の中に影響を与えたいということです。
辛い時や迷ったときは、お客さんのことを思い出して、純粋な気持ちで応援してくれる人の声に勇気づけられています。
たかまつ:まずはやはり、認知度が圧倒的に低いことですかね。
大企業の管理職の人たちや学生の間で認知度は高いけれど、中小企業ではほとんど知られていません。導入している企業の中でも、具体的に目標を定めて行動に移していくという点ではまだ不十分で、形式的になってしまっているケースも多いです。
私達もSDGsについて知ってもらうセミナーをいろんな企業で開催したりしていますが、セミナーで得た知見を自社に持ち帰ってどう実現していくか、どうイノベーションを起こすかという先の段階を意識してほしいという想いがあります。
※SDGs・・・「Sustainable Development Goals」の略称で、和訳は“持続可能な開発目標”。世界が抱える問題を解決し、持続可能な社会を作るために世界各国が合意した17の目標で、2015年9月に開催された国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されて以来、世界各国の政府や企業が課題解決に取り組んでいる。
たかまつ:「伝える力」を伸ばしてほしいと伝えたいです。すごくいい事業をやっているのか、話を聞くと何をやってるのかよく分からない、という起業家の人が多い気がします。
私はこれまで、お笑い政治、教育と全くお金にならないことをやってきたけれど、なんとか踏ん張って会社を運営したり活動を続けられたのは、自分がストーリーテラーになれたからだと思っています。自分がやっていることや会社の価値をしっかり伝えることができれば、いろんな人を巻き込むことができたり、一緒に働きたいと思う仲間がどんどん増えていきます。
あと個人的に意識しているのは、事業と取引先を分散させるということですかね。事業を展開する上で、大きな企業や組織の下請けになるのが比較的やりやすいルートだと思うんですが、そのやり方を選ぶと、本当にイエスマンにしかなれなくなってしまうんです。業績アップや人件費の確保を重視するあまり、一つの大きな組織に依存する形を取ると、本当にやりたかったことを見失うことがあります。私自身、一度この失敗をしました。
これから起業する人には、「ビジョンを明確に持つことを第一に、実現する手段はたくさんあったほうがいい」と伝えたいです。
“1.伝える力を伸ばす
2.ビジョンを実現する手段は複数持つ”
ーイベント情報ー
・第11回たかまつなな単独ライブ「お笑いジャーナリスト宣言」
・開催日程
2月08日(金) 19:30 漫才師 ナイツ塙宣之 【完売】
2月09日(土) 15:00 アルピニスト 野口健 / 18:00 ジャーナリスト田原総一朗
2月10日(日) 14:00 評論家 宇野常寛 /
・場所
松竹芸能 新宿角座(〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目20-8 WaMallトップスハウス4F)
予約・詳細はPeatixから
(取材協力:たかまつなな)
(編集:創業手帳編集部)