Newbee 蜂須賀 大貴|「勝てるプロダクト開発」で強い日本企業を創る
メディア×プロダクトの2軸で個人や企業の成長を支援

AIの普及で開発スピードが加速する一方、現代のスタートアップは「商品・サービスを作ったけれど売れない」「現場と経営の視座が噛み合わない」という深い課題に直面しています。そんな中、メディアと外部CPOの2軸で企業成長を強固に支援するのが、Newbee株式会社の蜂須賀大貴さんです。著書『勝てるプロダクト開発の教科書』を手掛け、数々のプロダクト組織を牽引してきた蜂須賀さんに、自身の創業の背景や資金調達の考え方、経営者に伴走支援する際に心がけていることなどを聞いていきます。
株式会社IMAGICAでエンジニアとしてキャリアを開始。フリーランスPMを経て株式会社サイカにて新規プロダクト戦略を牽引。PIVOT株式会社ではPM兼プロダクト組織の立ち上げを担う。
2025年3月、Newbee株式会社を創業。現在、テクノロジーメディア「Newbee」の運営や映像受託制作、外部CPOとして支援する。
2026年7月22日に『勝てるプロダクト開発の教科書』(翔泳社)を発売。
この記事の目次
キャリアを積む中で培った「人を惹きつけるメディア設計」と「堅実な資金戦略」
蜂須賀:主に2つありまして、1つ目はテクノロジーメディア「Newbee」です。様々なスタートアップのCTOなどのインタビューや考察を、YouTubeやポッドキャスト、noteでお届けしています。現在、YouTubeのチャンネル登録者数が13,000人ほどです。それに付随してタイアップ動画の制作や、主にスタートアップのテクノロジー系の人材の採用に向けた映像の制作を行っています。
2つ目が外部CPO(チーフプロダクトオフィサー)です。様々な企業の経営層の方と対話をしながら、私自身がプロダクト戦略を立てるというアドバイザリー業務をしています。
蜂須賀:もともとエンジニアからキャリアを始めたのですが、2年目ぐらいからエンジニアとして自分が手を動かすよりも、チームと一緒に事業成果を伸ばす、プロジェクトマネージャーのような役割へと期待がシフトしていき、最終的には新規事業開発に携わるようになりました。その後、主にプロダクトマネージャーとしてフリーランスも経験しながら何社か転職をしています。いずれも、それぞれの立場の数字的・役割的な壁を感じて、自分が可能性があると思って進めていたものを実現するために必要な権限や力を求めてキャリアチェンジしてきた感覚があります。
例えば事業を立ち上げる立場にいても、事業責任者の方は別にいるので、経営判断として事業を畳んだり、別の方向に伸ばすという判断はできないですよね。そういう場面で、自分の判断でビジネスに挑戦してみたいと思った時に、キャリアの幅を広げてきたという感じです。
蜂須賀:ずっとメディアとテクノロジーという部分に携わってきまして、前職でもテクノロジーのコンテンツに関しては、自分で企画や出演もしていました。出演はコンテンツのチームに依頼されたのですが、その際に「人を惹きつけるコンテンツにするためには、特にテクノロジーや金融、医療のようなジャンルは専門家が出演する必要がある」と感じたんです。
メディアでテクノロジーを扱うのが難しいように、テクノロジー企業がメディアをやるというのもノウハウがなく難しいものかもしれないと感じ、たまたま両方の経験がある自分が挑戦すべき領域だと思い、起業しました。
蜂須賀:過去の実績や、メディアに出演していたこともあり、プロダクトの責任者として業界ではわりと知名度があったので、自然と仕事のお声がけをいただくことが多かったですね。
前職のPIVOTにいた頃がちょうどYouTubeが伸びていく時代で、PIVOTのチャンネル登録者も3万人から300万人ぐらいまで急成長しました。動画という市場が作られ、メディアに出演することが珍しいことではなく一般的なものになっていく様子を中から見ることができた貴重な経験でした。その経験から「自社でも同じことをやりたい」というニーズは必ず出てくるだろうと思って起業したので、それは正しかったと思っています。
蜂須賀:意図的にデットの調達、つまり銀行からの借り入れだけにしています。プラス自己資金ですね。前職ではVCから資金調達してシリーズAまでを経験しました。その後順調に黒字化し、資金的に問題はなかったのですが、メディアという事業は、あまりにも急速に伸びていくと、結果的に少し飽きられてしまう可能性があると思うんです。
メディアとはインフラであると僕は思うので、急速に成長するより長く存在している方が価値があるという前提のもと、エクイティの調達はビジネスモデルとして合わないと判断しました。
外部CPOの役割とは?ブレない軸と試作力でイノベーションを加速
蜂須賀:最初はどの創業者も志があり、それを実現するための手段として会社やプロダクトがあるわけです。しかし、例えば作ったプロダクトに反応が無かったり、お客様に認めてもらえなかったりすると金銭的に苦しくなってくると同時にモチベーションも下がってしまいます。そんな時に投資家や周囲の声を聞いていると、当初のやりたいことからずれていってしまうことはよくあるんです。
「会社や事業を存続するために当初の思いやビジョンを曲げる」のは本末転倒だと個人的には思っているので、最初に掲げたビジョンや会社が存在する本質をしっかりと守れるようにしていくことが重要だと考えています。
蜂須賀:基本的に僕にご相談いただくということは、その時点で何かしらの悩みがあって専門家の力を借りたいと思っているということですよね。まずはお話を聞いて、どんな痛みを抱えているのか、または何かしらプラスの要素があってアクセルを踏みたいという状況なのかを客観的に判断します。
コンサルティングやアドバイザリーの方は、自分の得意領域において一気に介入して改善していくことが多いように思いますが、僕の場合は必ずしもその方法が当てはまらないと感じた時には、「一旦立ち止まることも検討してみては」と声をおかけすることもありますね。企業のフェーズにもよりますが、ヒアリングをしながら、中の人と遜色ない状態で話ができるかどうかということをまずは考えます。
例えばまだ生まれたてのスタートアップで、代表の方が営業やマーケティングなどプロダクト責任者以外の出身だった場合、最初は何を検証して何を作ればいいかわからないという悩みがあることが多いです。そういう場合は、持っているアイディアを一緒に棚卸ししながら、世の中にどのような価値提供ができるかを話し合います。そのように進めていくと、試作品が欲しくなってくるので、一緒にそれを作ったり、試作品をどんな対象に向けて作るべきか、どんなリアクションがあれば投資をしていいのかという仮説検証を様々なフレームワークを使いながら一緒に行ったりもするんです。
組織づくりや採用基準についても一緒に取り組むこともありますし、クライアントのフェーズに応じて、必要なことを行っていきます。
蜂須賀:視座の違いが大きいと思っています。経営者は何かしらの思いがあって創業しているので、自分の愛着があるプロダクトやサービスを提供しているはずです。しかし、例えば別の業務を担当する、もしくは組織拡大にあたってマネージャーを間に置くなど、それをプロダクトやサービスの責任者に託すことがあります。経営者にとっては我が子のように育ててきたものを、里親に預けるような話になるんです。期待値が非常に高いため、細かくいろいろ言いたくなってしまうんですよね。ですが、任せられる側はその意図が汲み取れなかったり、ビジネスをどう伸ばせばいいか分からなかったりというギャップが生じることがあります。そういう時は、間に入ってお互いの立場や思いを説明したり翻訳したりしながら両者をつなげていきます。
「作ったけど売れない」を防ぐ。AI時代のプロダクト作りに求められる◯◯力
蜂須賀:「任せるところは任せる」ことが大切だと考えています。例えば経理などの専門性が高い分野に関しては任せられるのに、プロダクトに関しては何かと口を出してしまいがちです。
そうすると、担当者は「自分に期待して任せてもらっていると思っていたのに、信じてもらえていないんですか?」と感じてしまい、強いプロダクト組織をつくることは難しいでしょう。
蜂須賀:各企業は売上をつくる、または事業を成立させるためにプロダクトを作ると思いますが、「作ったけれど売れない」「結果が出ない」という声を多く聞きます。
世の中にあるプロダクト開発の本は作ることにフォーカスしたものが多いですが、それなら私が書く意味はないと思いました。相談を受ける中で、例えば作ったプロダクトが著作権の問題でボツになった例などを聞いていると、事業や経営の視点を持った人がプロダクトを作る必要があると感じ、プロダクトを作る前後のことについて、つまりプロダクトにまつわる事業視点のすべてを網羅する本を書こうと考えたんです。
もちろん、法務の専門書のようなものはありますが、プロダクトに必要なのはそういった専門書の一部なので、プロダクトに関わる方のためになるように、本当に必要な情報だけを集めました。感想も興味深く、営業出身の方は「営業の章はさらっと読んだけど広報の部分は知らないことばかりで刺さりました」と言う一方で、エンジニア出身の方は「経営管理や数字のところは疎かったので、そこが印象的でした」と反応してくれました。
会社って意外と分業制でそれぞれの役割が分けられているのですが、今はAIで営業の方が簡単なモックアップを作ってデモをしたり、開発の方がリサーチをしたりする例も実際にあります。AIで、個人が分業を越境する武器を得た今だからこそ、改めて全部を見ることが大切というメッセージを本に込めました。
エンジニアからスタートして、プロダクトを作り、事業を成功させるうえで必要なことは全て行うためにキャリアを積んできた、今までのリアルな経験が本を作成することによって実を結んだと感じています。
蜂須賀:AIでアウトプットは簡単になりましたが、それがいいものであるかどうかはまた別の話です。Xやnoteの記事などで、明らかにAIが作ったものが既に大量に世の中に出ていますよね。そういったノイズが多い中で、本当に価値があるものを探す負担がユーザー側にかかっていると思いますし、だからこそ差別化が大事です。同じ素材があってもどこを使うのか、どこを強調するのかという意思決定がポイントになります。これはプロダクトも一緒で、ものづくりだけでなく、よりユーザーの価値を高めるものを取捨選択する意思決定力が今後一層必要になると感じています。
強い日本企業を作るために個人のスキルアップの支援をしたい
蜂須賀:もともと創業時にメディアから事業を始めたのは、情報を得られない人に隙間時間で情報を届けたいという思いがあってのことでした。
例えばエンジニアの給与は年収約300万円から3,000万円まで、10倍の開きがあるんです。もちろんスキルの差もありますが、情報格差という面も大きいと思っています。300万円の人は自分のいる職場以外の待遇はあまり知らなかったり、そもそも忙しすぎて外の人と話す機会がなかったりする可能性があります。
そんな人たちが少しでも情報が得られるようにという意図があり、YouTubeから事業をスタートしたんです。エンジニアやプロダクト開発の世界って、勉強会やコミュニティがけっこう盛んなので、外に目を向けるといろいろな人と話す機会がわりとあります。そこで実際に違う世界の人と話して視野が広がると、自分のスキルの上げ方が具体的に分かります。スキルを上げることによって正しく評価されて、次の活躍できる場所に行けると思うんです。
今はそのきっかけとなる情報を提供することはできていますが、次にアクションを起こすところへの後押しをしていけたらと思っています。先日、その一歩目として、テクノロジーやデザインのトップの人たちがAIとビジネスについて考えていることをディスカッションするカンファレンスを行いました。来場者からは「こういうイベントに来たことがなかったけど、初めて足を運んでみました」という声を聞くことができました。このように見て満足するだけではなく、行動につなげる支援に今後は力を入れていきたいと考えています。
ふと気づくと、我々が毎月支払っているサブスクリプションって全部アメリカの企業だったりしませんか。そういった企業に勝てるような日本企業を外側から作る方法はないか?と僕はよく考えます。
まだ年収は低くても、ダイヤの原石のようなエンジニアも、適切な機会を与えられれば年収3,000万円のエンジニアになれると思うんです。多少の企業の統廃合はあると思いますが、スキルを持った人材がどんどん増えていくと、優秀な会社にいい人材が集まっていき、いつかアメリカの大企業にも勝てるような強い企業が作れるのではないかと考えています。
おそらく多くの経営者は自分の会社をそうしていこうとするのでしょうが、僕はそれを外部からできる方法はないかなと考えていて、こういったアプローチを取っています。
蜂須賀:あまり会社を大きくしたいという野心がないんです。自らがユニコーン企業になるよりも、「外部の企業を支援してユニコーン企業に成長させられたら」という思いで事業をやっています。大きく成長するよりも、持続可能な会社であり続けたいと考えていますね。
蜂須賀:メディアの宿命として、世の中の変化を感じ取り、新しい情報を発信するためには、常に世の中の動きを学習して情報を更新していく必要があると思っています。また、様々な方が関わり、交差する場所としてのプラットフォームという部分をこれからも意識して運営をしていきたいですね。
蜂須賀:どんなに画期的なアイディアを持っていても、戦う土壌を間違えると効果が出ません。その画期的なアイディアの価値を最大化できる場所はどこか、ターゲットは誰なのかを冷静に考えることが大切です。例えば全てを見渡せる丘の上に陣取った方がいいのか、地の利を使うために川の近くに陣取った方がいいのかというように、自分の持っている特技も合わせて、ビジネスを展開する戦略を練ると、勝ち筋が見えてくると思います。
既に成功している、ご自分が目標とする企業はどのようにビジネスを展開しているかを観察するのもおすすめです。
プロダクトを開発し、組織をまとめて、事業として継続的に利益をあげていくためには膨大な仕事があります。「どのような市場をねらうのか」「いかにして顧客理解を深めるのか」「プロダクト開発はチーム体制で臨むか」「どういった売り方をすれば利益が出るか」「どんな法律や規制に注意すればいいのか」「責任者は何を握り、専門家に何を任せればいいのか」これら一つひとつの疑問に対して丁寧に解説します。

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