カンボジアのジャングルに街ができる!?キリロム工科大学学長 猪塚武が創るスマートシティ

創業手帳
※このインタビュー内容は2018年07月に行われた取材時点のものです。

ジャングルの中にできる未来都市

vkirirom

(2018/07/04更新)

日本で起業した後、大企業に売却。その資金を元に、カンボジアで経営者やCTO(最高技術責任者)を養成するための大学を手掛けている、キリロム工科大学 学長の猪塚 武氏。
その猪塚氏が、カンボジアのジャングルに「vキリロムネイチャーシティ」という「スマートシティ(ITや環境技術などを駆使して省資源化を徹底した環境配慮型都市)」を展開することを発表。2018年4月24日に、日本法人が設立されました。

今回は、「vキリロムネイチャーシティ」の概要や今後の展開について、猪塚氏にお話を伺いました。

猪塚 武氏のインタビュー記事はこちら
>>IT業界で成功後、カンボジアで学費無料の大学を設立!猪塚武の国境を超える発想法

猪塚 武(いづか たけし)
キリロム(vKirirom Pte., Ltd.)創業者 兼 CEO /キリロム工科大学学長
1967年、香川県出身。早稲田大学理工学部物理学科、東京工業大学大学院理工学研究科修了。アクセンチュアを経て1998年に株式会社デジタルフォレストを設立。会社を売却後、2010年に日本を離れ、4年間のシンガポール生活を経て、2014年よりプノンペンに移住。
同年、キリロム工科大学を中心とした約1万haの広さの「vキリロムネイチャーシティ」を設立。世界的な起業家組織EO(Entrepreneurs’Organization)の日本支部会長・カンボジア支部会長・アジア理事を務める。2018年4月1日より日本人起業家のグローバルネットワークである一般社団法人WAOJE 代表理事。東京ニュービジネス協議会から 2016年国際アントレプレナー賞 最優秀賞 受賞。
vKirirom Pte., Ltd.は「デロイト 2017年 アジア太平洋地域テクノロジー Fast 500」で28位を獲得(日本・アセアン地域内1位)。

アジア屈指の高成長を続けるカンボジア

ーまずは、カンボジアにはどのような特長があるのか、教えてください。

猪塚カンボジアは、経済成長のメインエンジンとなる若者が非常に多いです。

さらに、カンボジアは経済成長率(※1)が年7%ほど上がっており、アジアでも屈指の高成長ぶりを示しています。中国企業による縫製品製造・輸出、中国マネーによる不動産開発やインフラ建設、さらには、中国人観光客の増加による観光産業の活況など、中国の進出が高成長の要因の一つです。

また、カンボジアは「米ドル」が実質上の通貨です。将来的には自国通貨の「リエル」に切り替わりますが、「米ドル」には、物価の安定と、外国からの投資流入促進の効果があります。「米ドル」に代わって「リエル」に切り替わるということは、「米ドル」に負けない通貨の価値になるということです。そのため、通貨が「リエル」に切り替わることは、投資家にとっても望ましいと思います。

※1
経済成長率:経済規模が拡大する割合。普通,一年間の国民総生産または国民所得の増加率で表される。

ー「vキリロムネイチャーシティ」とは、どのような街なのでしょうか?

猪塚我々が創っている「vキリロムネイチャーシティ」は、森の中に10万人が自然を維持した状態で住めるようにするというものです。世界の中で誰しもが住んでみたい「唯一のスマートシティ」を目指しています。
国連が定義するSDGs(※2)の17目標のうち16目標に関与する、野心的な試みです。

我々のネイチャーシティの基礎は、あくまでもエコツーリズムです。
つまり、地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指していく仕組みです。

※2
SDGs:持続可能な開発目標。「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」などの17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる、国連の開発目標のこと。

国際的な大学に成長し続けるキリロム工科大学

日本人学生の様子
ーキリロム工科大学は、最近はどんな様子でしょうか?

猪塚:カンボジア人学生は1~4年生で118人います。すでに3年生の就職先マッチングがはじまっており、9月には多くの学生の就職先が決まり始めます。また、1~2年生の奨学金スポンサーも増えつつあります。

2018年4月より、本学初の日本人学生(16名)が入学しました。「カンボジア人の方が英語力がある」という環境で、日本人も頑張っています。
また、この秋からはインドからの学生も受け入れる予定です。インターナショナルな大学として次の段階へ進みたいと考えています。

ちなみに、2018年6月9日にカンボジア国内で行われたピッチコンテスト(smart start Competition)で、見事6人の学生が入賞しました。これまで出場したコンテスト全て合わせると、開幕6連勝中です。現在の学生数は1年から4年生までで134人なのですが、これから一年間で200人以上が入学する可能性があります。

キリロム工科大学の学生が、カンボジアで就職するためのデジタル事業部もでき、日本からのシステム・サービス案件の受注もできる体制になりました。

コンテスト優勝の様子
ー「vキリロムネイチャーシティ」の現在の様子はいかがでしょうか?

猪塚:カンボジア政府からの開発承認が投資総額1,300億円でほぼ下りました。これからは、100億円以上の大規模な資金調達に行なっていきます。

2021年ごろからは、「vキリロムネイチャーシティ」のイメージも大きく変わるでしょう。これから3年間は 「Cloud(株主) 」×「Cloud(奨学金)」×「Cloud(学生寮オーナー)」という3乗のクラウドファンディングで皆さんの力をお借りして、歴史に残る街を創っていきたいと思います。

ー今後の構想は?

猪塚:まずは大学を急成長させることです。リゾートからキャンパスタウンへの質的な転換を行います。どれだけイノベーション(革新)のタネを埋め込めるのかが、とても楽しみです。

また、弊社のスタッフと学生が、VR/ARを使った環境保全のためのゴルフ場を開発しています。これが世界からどのように評価されるか、これも楽しみですね。

「カンボジア・日本マーケットから英語圏の市場にどのように受け入れられるのか」が大きなチャレンジです。そのために、今年の9月には教師陣の家族向けのインターナショナルスクール(小学校)を、2019年にはホスピタリティマネジメント学科と建築学科といった新しい学科を始める予定です。

アジアの若者は、レベルが上がってきている

ー今後は、イベントなどを開催する予定はありますか?

猪塚:2018年9月2日に、vkirirom創業以来、最大規模の「vキリロム視察ツアー」を実施いたします。

当日は、「キリロム工科大学とvキリロムネイチャーシティ構想の真の目的」と題し、私がセッションを行うほか、学生によるテクノロジーインターンシップレビューや、ビジネスプランコンテスト決勝等を見学いただくことが可能です。

※この視察ツアーは2018年8月30日~9月1日にプノンペンで開催されるWAOJE Global Venture Forumに合わせたものです。(主催団体:一般社団法人WAOJE 代表理事 猪塚武)弊社代表の大久保も参加します。
【詳細はこちらから】

ー最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします!

猪塚:私の世代(バブル世代)よりも英語ができて、社会的な考え方を持っている日本の若者には、是非世界に出てソーシャルアントレプレナー(社会起業家)として起業して欲しいと思います。

英語さえできるようになれば、ソーシャルアントレプレナーの分野では日本人はとても強いと思います!アジアの新興国の若者のレベルがとても上がってきているので負けないように、そしてコラボレーションできるように頑張ってください!

(取材協力:キリロム工科大学学長/猪塚 武
(編集:創業手帳編集部)

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