子育て支援企業向け低利融資がスタートへ|中小企業への影響と今後の見通し

こども家庭庁が子育て支援企業向けの金融支援を開始

子育て支援企業向けの金融支援について解説
こども家庭庁は金融庁と協力し、子育てがしやすい職場環境の整備に取り組む中小企業を支援するため、新たに「こどもまんなかリーディングバンク」を創設しました。
この制度の第一弾として、2026年7月15日に全国14の地域金融機関を「こどもまんなかリーディングバンク」に認定しています。
認定を受けた金融機関は、国から最大2,000万円が補助され、低利融資などの取り組みを推進する原資として活用される予定です。

当記事では、子育て支援企業向けの金融支援がスタートする理由と中小企業への影響、制度を活用する際の注意点などについて解説します。
制度について気になっている人は、ぜひ参考にしてください。

なぜ今、子育て支援企業向けの金融支援が始まったのか

子育て支援企業向けの金融支援が始まった理由
こども家庭庁ではこれまでも様々な支援を実施してきましたが、なぜ今子育て支援企業向けの金融支援をスタートさせたのでしょうか。
支援制度が創設された背景には、「少子化対策」と「地域経済の活性化」という2つの狙いがあります。

少子化対策の一環としての企業支援

こども家庭庁は、企業による子育て支援を後押しすることで、少子化対策を加速させる狙いがあり、「こどもまんなかリーディングバンク」を始動させています。
日本の人口は2026年2月1日時点の確定値で、1億2,297万5,000人とされています。
2023年の推計値を見ると、2040年の段階で65歳以上の人口が全体の約35%にまで上るとされており、さらに2070年には総人口が9,000万人を割り込むと予想されているのです。

こうした少子化の流れを少しでも食い止めるために、こども家庭庁は様々な子育て支援を実施してきました。
今回の制度は企業側の働きやすい環境づくりを金融面からサポートする内容であり、これまでにない新しいアプローチです。
企業価値の向上と子育て支援の両立を目指す「こどもとともに成長する企業構想」の一環として位置づけられています。

地域金融機関に期待される役割

地域の金融機関は取引先企業との関係性も深く、子育て支援の取り組みを日常的に把握しやすい立場にあります。
そのため、こども家庭庁は地域金融機関を「実装のパートナー」として位置づけ、各地域で子育て支援策の普及を託しています。
金融機関側も従業員向けに働き方改革への取り組みが求められていることから、支援する側とされる側の双方で良い変化が期待されます。

中小企業にはどのようなメリットがある?

子育て支援について中小企業にどのようなメリットがあるか
認定を受けた「こどもまんなかリーディングバンク」を通じて、実際に子育て支援に取り組んだ場合、中小企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここで2つのメリットを紹介します。

子育て支援に取り組む企業が低利融資を受けられる可能性

中小企業のメリットとして、子育て支援に取り組む企業が低利融資を受けられる可能性があります。
男性の育児休業取得や時短勤務制度の導入など、子育て支援に積極的な企業は金融機関からの評価が高まる可能性があります。
特に「こどもまんなかリーディングバンク」に認定された金融機関は、子育て支援の取り組み状況を融資審査の判断材料として活用することも考えられるでしょう。

さらに、子育て支援制度を整備する企業は、金融機関から融資を受ける際も低金利などの優遇を受けやすくなる可能性があります。

金融機関ごとの新たな融資商品が期待される

こどもまんなかリーディングバンクに認定された金融機関では、子育て支援企業向けの新たな融資商品が登場する可能性があります。
例えば横浜銀行では、「こども・子育て」に関するKPI(評価指標)を組み込んだ融資商品の展開など、銀行の金融機能を活かした資金面でのサポートを検討している段階です。
また、京都信用金庫では、「こどもの未来」への貢献度を評価する専用の金融商品の開発を手がけています。

金融機関によって融資商品の内容が異なる可能性が高いため、事前に取引金融機関の動向を確認しておいてください。

現時点で対象となる金融機関

今回こども家庭庁から認定を受けた金融機関は全部で14機関あり、いずれも地域密着型の金融機関です。
2026年8月現在、認定を受けた金融機関と想定される取り組みは以下のとおりです。

金融機関 想定される取り組み
横浜銀行 地域企業で子育て世代を支える取り組みの導入・高度化に向けた伴走支援、「こども・子育て」を評価に組み込んだ融資商品の開発など
京都信用金庫 子育て支援事業を企業の成長につなげる伴走支援、低利融資の開発、店舗・拠点のサードプレイス化など
岩手銀行 子育て世帯のニーズ把握、地域企業向け支援メニューの開発など
埼玉りそな銀行 企業のこども支援拠点立ち上げ、子育て環境整備の支援、寄付型預金・融資など
静岡銀行 地域企業への伴走支援、社会貢献寄付型商品の展開、子育て支援に取り組む企業への金融サービスの充実など
西武信用金庫 子育て・仕事の両立支援体制の整備サポート、地域の子育て支援事業への参画サポートなど
千葉銀行 地域企業の「こども・若者・子育てを支援する取り組み」の立ち上げ・伴走支援、低利融資など
肥後銀行 熊本県ブライト企業制度を活用した取り組みの裾野拡大、地域ステークホルダーとの連携強化など
百五銀行 人事コンサルティングサービスの提供、こども・子育て支援融資商品の開発・展開など
百十四銀行 子育て関連コンサルティング・伴走支援、子育て支援企業対象の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)」の始動など
ふくおかフィナンシャルグループ 子育て支援を組み込んだサステナビリティ・リンク・ローンの新設、SSIndexなどを活用した伴走支援など
ほくほくフィナンシャルグループ(北海道銀行) 子育て支援ツール・メニューの提供、人的資本ファイナンス(こどもまんなか支援賛同型)の開発など
武蔵野銀行 社会課題解決の目標達成状況で融資条件が変わるローン、住宅ローンの産休・育休特例(男性も対象)や子育て世代への金利優遇策など
琉球銀行 低利融資の開発、コンサルティング・伴走支援など

今後は認定制度や税制優遇も検討

こどもまんなかリーディングバンクの制度開始をきっかけに、こども家庭庁は中小企業に対する支援をさらに強化することも検討されています。

地域企業認定制度

子育て支援に対して積極的な地域企業を、国や自治体が認定する新たな制度の創設が検討されています。
認定を受けた企業は取引先や求職者に対して、子育て支援への取り組みをアピールしやすくなる可能性が高いです。
認定制度の詳細な基準・運用方法はまだ明確になっていません。
しかし、授乳室の設置や子ども食堂への支援、子育て関連商品・サービスの開発、職場体験の協力など、幅広い取り組みが評価されるものとしています。

税優遇

上記の地域企業認定制度について、認定を取得した企業には法人税の一定額を差し引く税額控除が適用される可能性があります。
税優遇が実現されれば、中小企業でも育休制度や時短勤務などの子育て支援策への投資の後押しにつながる効果が期待できます。
2026年8月時点では具体的な優遇内容や適用条件は決まっていないため、今後の制度設計の動向を注視してください。

公共調達加点

新たな認定制度において、公共調達の加点につながる可能性も考えられます。
女性の活躍推進や子育てを支援する企業が取得できる「えるぼし認定」や「くるみん認定・プラチナくるみん認定」では、価格以外の要素を評価する際、認定企業を加点評価することが国の方針として定められました。
そのため、子育て支援につながる地域企業認定制度も同様に、公共調達時に加点評価される可能性があります。

公共調達時に加点評価されれば、子育て支援に積極的な中小企業が官公庁の入札で有利になることが期待されます。
具体的な内容はまだ決まっていないものの、今後の制度整備の中で明確化される可能性が高いです。

制度を活用する際の注意点

中小企業の子育て支援をサポートする制度や融資への期待が高まる一方で、活用にあたって押さえておくべき注意点もあります。

低利融資は保証されるものではない

子育て支援に取り組んでいれば、自動的に低利融資を受けられるというわけではありません。通常の融資と同様に、与信審査は引き続き行われると考えられます。
審査において、子育て支援はあくまで評価材料の1つであり、財務状況や事業計画なども見て総合的に判断される可能性が高いです。
過度な期待を持たず、通常の融資を申し込むときと同じように必要書類や事業計画を綿密に準備することが大切です。

融資条件は金融機関ごとの判断による

低利融資の金利や融資限度額などの具体的な条件は、それぞれの金融機関が独自に設定するため、一律にはなりません。
こどもまんなかリーディングバンクに認定された銀行同士でも、商品内容に差が出る可能性があるため、複数の銀行で比較・検討することが望ましいです。
融資条件などは、各銀行から最新情報として発表された際に確認してみてください。

制度の詳細は今後変更される可能性がある

「こどもまんなかリーディングバンク」は、2026年度から開始された制度であり、具体的な運用ルールに関してはこれから固まっていく段階にあります。
例えば、低利融資を受ける際に対象となる子育て支援をどのように評価するのか、審査される項目などについても、今後運用していく中で見直され、変更される可能性があります。

制度の活用を検討する際は、定期的に情報を確認するだけでなく、申し込む直前にも各金融機関の公式サイトや窓口などで最新の条件を確認することが大切です。

自社だけで判断せず専門家や金融機関に相談する

低利融資の活用や子育て支援制度の整備について、自社だけで判断しようとせず、税理士や社会保険労務士などの専門家、もしくは取引金融機関の担当者に相談するのがおすすめです。
専門家や金融機関に相談することで、自社の取り組みが融資審査でどのように評価されるか、具体的なイメージを得やすくなります。
また、商工会議所や中小企業支援機関といった公的な相談窓口を活用するのも有効な手段の1つです。

創業・中小企業は今から何を準備すべき?

中小企業が準備すべき6つのこと
子育て支援企業向け低利融資が本格的に普及する前に、創業期・中小企業は今からどのようなことを準備すべきなのでしょう。
ここで、創業期・中小企業が準備すべきことを紹介します。

育休取得制度を整備する

まず重要となるのは、現在実施している制度の見直しと整備です。
例えば、育休取得制度について、男性社員も取得しやすい制度に整備することで、金融機関からの評価向上につながる可能性があります。
育休取得の実績を積み重ねていけば、将来的に低利融資を受けやすくなったり、認定制度の対象になったりするなど、土台づくりにも貢献するでしょう。
制度の見直しと整備に加え、実際に取得しやすい職場風土を醸成することも大切です。

就業規則を見直す

時短勤務や在宅勤務など、子育てと仕事が両立しやすい働き方を就業規則に明文化することも望ましいです。
就業規則を見直すことで、金融機関や取引先に「子育て支援を積極的に行っている姿勢」を具体的に示せます。
就業規則を見直す際は、社会保険労務士などの専門家と相談しつつ、自社の業務内容や環境に最適な規則へ段階的に改定してください。

子育て支援制度を可視化する

現在自社で行っている子育て支援策を一覧にしてまとめ、社外にも説明できるよう整理しておくことも大切です。
一覧にまとめることで可視化させると、金融機関の審査や将来認定制度へ申請する際に活用できる資料にもなります。
また、採用活動や取引先に説明する資料としても役立つため、早めに資料を作成しておくと便利です。

地域金融機関の新商品をチェックする

自社が取引している地域金融機関で、子育て支援の取り組みを行う企業に向けた新たな金融商品が展開されていないか、定期的にチェックすることもおすすめです。
低利融資などの新商品は、各金融機関で申し込み条件や優遇内容などが異なってきます。そのため、実際に利用する際は複数の商品を比較し、自社に適した融資へ申し込むのが望ましいです。
普段から金融機関の担当者と関係性を構築しておくことで、新商品に関する情報もいち早く入手できる可能性が高まります。

社内の子育て支援の取り組み実績を記録する

育休取得者数や時短勤務の利用状況など、社内での子育て支援に関する取り組み実績を日頃から記録しておくことも、やっておきたい準備の1つです。
子育て支援の取り組み実績をデータとしてまとめておくと、金融機関への融資申し込み時や将来認定制度に申請する際などに、説得力のある根拠として活用できます。
また、継続して記録することで、客観的に子育て支援策の効果を検証でき、改善につなげることも可能です。

取引金融機関との情報交換を行う

取引先の金融機関の担当者とは日頃から情報交換を行い、子育て支援に関する制度の動向を把握することも重要なポイントです。
定期的に情報交換することで、新制度が本格的に開始した際にはスムーズに支援を受けられる体制づくりにつながります。
金融機関側も企業がどれくらい子育て支援に対して積極的なのか、現在の取り組み状況はどれくらいなのかを把握することで、適切な融資・支援策を提案しやすくなります。

子育て支援企業向けの金融支援に関するよくある質問

最後に、子育て支援企業向けの金融支援に関する質問にお答えしていきます。

低利融資はいつから申し込める?

具体的な申し込み開始時期などは認定金融機関によって異なり、順次商品化や案内が進められていく見通しです。
まだ制度が始まったばかりということもあり、これから詳細な申し込みスケジュールなどが公表されていくと考えられます。
申し込みを検討されている人は、取引金融機関の公式サイトや窓口などで、随時最新の受付状況などを確認しておくと安心です。

認定金融機関と取引がない企業は支援を受けられない?

2026年8月時点で低利融資などの支援は、認定を受けている14の地域金融機関を通じて提供される仕組みが想定されています。
上記で紹介した14の地域金融機関と取引がない企業は、まず自社の事業エリアに認定金融機関が含まれているか確認することが大切です。
また、制度開始時点で14の地域金融機関が認定されましたが、将来的に認定金融機関が増える可能性もあるため、自社が取引をしている金融機関の動向にも注目してください。

まとめ|子育て支援と金融支援を両輪に中小企業の成長を目指そう

こども家庭庁による「こどもまんなかリーディングバンク」は、子育て支援に取り組む中小企業に対して新たな追い風となる制度です。
各金融機関で低利融資や独自の金融商品が展開されると考えられます。また、今後は認定制度や税優遇など、制度が拡充される可能性も期待できます。
創業期・中小企業は育休制度の整備や取り組みの可視化を今のうちから進めておき、本格的に活用できるよう備えておくことが大切です。

創業手帳(冊子版)では、最新の制度の概要や押さえるべきポイント、注意点などをわかりやすく解説しています。「制度を活用したいものの、どうすればいいかわからない」という人も、ぜひ創業手帳をご活用ください。

(編集:創業手帳編集部)