役員報酬を期中に変更するのはなぜダメ?その理由と定期同額給与の仕組みを解説
役員報酬の変更は制限されている

事業を続けていく中で「役員報酬の見直しをしたい」「節税のために役員報酬の額を調整したい」などと考える人もいるでしょう。
しかし、役員報酬は一般の従業員の給与のように自由に増減できるわけではありません。
変更は制限されており、その理由やタイミングによっては税務上の経費として認められないケースもあります。
そこで今回は、役員報酬を期中に変更するのがなぜダメなのか、その理由を解説すると共に、役員報酬を変更できるタイミングや定期同額給与の仕組みなどについて紹介していきます。
報酬の変更を考えている人や役員報酬の注意点について理解したい人は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
役員報酬を期中に変更するのがダメな理由

役員報酬を期中に変更するのがなぜダメと言われているのか、その理由は以下の通りです。
原則、期中での変更は認められておらず、破ってしまうとペナルティが発生するリスクがります。ダメな理由を具体的に解説していきましょう。
利益操作を防ぐため
役員報酬の変更が制限されている理由の1つに「利益操作を防ぐため」が挙げられます。
利益操作とは、経営者が利益を意図的に調整する行為を指し、法人税の負担軽減や業績の維持、安定などを目的に利益を増やしたり、利益を減らしたりすることです。
期中での役員報酬を増やす目的としては以下の利益操作が考えられます。
・利益が出過ぎた場合
期末に役員報酬を増やすことで会社の利益を圧縮して法人税を減らす
・赤字になりそうな場合
役員報酬を減らして会社の利益を良くする
経営者のさじ加減によって税金や決算書の数値を意図的に操作することを防ぐために、役員報酬の変更は制限されています。
定期同額給与のルールから外れ、損金不算入になる可能性があるため
定期同額給与とは、法人が役員に対して毎月支払う給与のうち、「1カ月以下の一定期間ごとに同額で支払われる給与」を指します。
役員報酬を法人税法上の経費として扱うためにも基本となる支給ルールの1つとなっており、利益操作を防ぐ目的で税法上厳格なルールが定められています。
もし、期中に役員報酬の変更を行うとすれば、増減をした部分は損金として認められません。
詳しい内容は、後半で解説するため定期同額給与について詳しく理解したい人は、参考にしてください。
役員報酬は会社側だけで一方的に変更できないため
役員報酬は、会社と取締役の間の契約で定められているため、会社の一方的な都合や経営陣の独断で減額することはできません。
取締役の正当な権利を侵害することになるので注意が必要です。
減額を行いたい場合には、原則として株主総会での決議または取締役会への委任が必要で、対象となる取締役本人の同意も不可欠です。
やむを得ない事情がある場合は、例外的に変更や経費算入が認められていますが、原則は会社側だけで変更ができないため注意してください。
役員報酬を変更できるタイミング

役員報酬の変更は原則行えないことになっていますが、事業年度開始から3カ月以内であれば調整ができます。
ただし、それ以外でもやむをえない理由があれば、変更できるケースもあります。
具体的には以下のタイミングでの変更が可能なので理解しておきましょう。
事業年度開始から3カ月以内
役員報酬の変更ができる期間には決まりがあります。会社設立時を除いて、原則事業年度の期首から3カ月以内です。
例えば、4月1日に事業年度が開始される会社であれば、6月30日までに株主総会を経て役員報酬の金額を決定しなければいけません。
3カ月以内であれば、役員報酬の増額も減額も自由に行えるため、もし変更を考えているのであれば、このタイミングでの変更を検討してみてください。
やむを得ない理由で変更することも可能
「3カ月を過ぎてしまえば変更できないのか」と考える人もいるでしょう。
原則として、期中は報酬の変更はできませんが、やむを得ない理由がある場合に限り、変更できるケースもあります。それぞれ具体的に解説していきます。
期中に役員が増えた場合
会社の合併や規模拡大に伴う経営体制の強化など、役員の数が期中に増えるケースもあります。その場合、役員報酬の金額も変えざるをえないのが一般的です。
役員が就任した後に支給される報酬が毎月一定であれば、定期同額給与に該当するため、損金として計上することが可能です。
月の途中で就任した場合は、「役員報酬を日割りにして支給しても良いのか」と考える人もいますが、役員報酬は一般的な従業員のように日割りにはしません。
月の途中でも同額を支給しないと、定期同額給与とは認められない可能性があるため注意が必要です。
責任の重さが変わった場合
役員の地位が上がって責任が重くなった場合や仕事量が増えた時なども、臨時改定事由として認められます。例えば以下のようなケースです。
-
- 社長が急逝して副社長が社長に昇格した
- 社長が会長へと昇格した
- 役員の1人が病気によって退職し、一般の従業員が役員へと昇格した
上記のケースでは、業務内容だけではなく責任も変わってくるため、報酬額が変動するのは当然ともいえる事例です。
ただし、名義だけが変わり職務内容に変化がない場合や不自然な昇格人事があった際には問題視されることがあります。
税務署に不正だと判断される可能性があるので注意してください。
経営状況が著しく悪化した場合
会社の経営状況が著しく悪化した時には、役員報酬を減額することができます。
ただし、「前期と比較して多少収益がマイナスになった」といった程度では減額は認められないケースが多いです。
役員報酬の変更ができるのは、第三者にまで影響が及ぶほどの経営状況の悪化です。第三者とは、株主や取引先、債権者などの利害関係者を指します。
第三者にまで影響を及ぼすほど経営状況が悪化していると判断されれば、役員報酬を減額して損金算入する手続きが可能になります。
役員報酬を変更する前に知っておきたい「定期同額給与」の仕組み

前述したように1カ月以下の一定期間ごとに同額で支払われる給与を定期同額給与と言います。
役員対象の給与制度となり、一定期間に支払われる給与が同額である特徴があります。
期中での定期同額給与の変更は難しく、特定の条件を満たさなければなりません。
しかし、要件を満たしていれば役員報酬は損金算入できるため、節税効果を得る上でもポイントを押さえておくことが大切です。
損金算入するための要件
役員報酬を損金算入するためには、いくつかの要件があります。下記の表でチェックしてみてください。
| 要件 | 内容 |
| 毎月一定額を支払う | ・事業年度開始から3カ月以内に報酬額と支給時期を確定し、その後は原則として同額を継続支給する ・特定の月だけ増額、頻繁に金額を変更するといった行為が認められていない |
| 決議を記録・保管する | ・役員報酬は定款か株主総会の決議で決めるものと会社法で定義されている ・定款を作成する際に役員報酬について検討する ・決議が正式に行われているか税務署が確認し、報酬額が恣意的に操作されていないか判断する ・税務調査で提示を求められるケースも多い |
| 不当な高額化をしない | ・報酬額が不相当に高額と判断されると定期同額給与であっても損金算入は認められない ・同業他社の役員報酬水準や会社の売上や利益、役割などから総合的に報酬額を判断する ・利益圧縮を目的とした過大な報酬は認められていない |
定期同額給与でも損金算入できないケース
定期同額給与として扱われるためには、決まりを守っている必要があります。要件を満たさない場合は損金算入が認められません。
定期同額給与でも損金算入できない具体的なケースは以下の通りです。
-
- 事業年度の途中から定期同額給与での支給をスタートした場合
- 支給する額を事業年度開始から3カ月経過後に増減した場合
- 一部の月だけ支給額の増加があった場合
事業年度の途中から定期同額給与での支給をスタートした場合は、その事業年度においては損金算入ができません。
例えば、新しく役員を迎えた場合に就任後すぐに報酬を設定せず、数カ月経過してから支給をスタートした場合は、初年度分は定期同額給与とは認められない可能性があるため注意が必要です。
また、支給額を事業年度開始から3カ月以降に増減した場合も、原則として増減後の支給額部分は損金算入が認められません。
年度途中で報酬を引き上げたり、利益圧縮のために減額したりするのは定期同額給与とは認められないため注意してください。
事前の届け出をせずに特定の月だけ報酬額を増額した場合も、定期同額給与の額を超える部分は損金算入することができません。
利益が予想よりも多く出た際には、役員報酬を一時的に増やして利益圧縮を考える人もいますが、恣意的な利益調整とみなされやすいため、損金算入を否認される可能性が高くなります。
役員報酬を変更する際の注意点

役員報酬の変更はポイントを押さえていないと損金算入ができなくなるだけではなく、税務調査での指摘につながる恐れがあります。
ここでは、変更する際に注意すべきポイントを具体的に解説していきます。
株主総会・取締役会での決議が必要
会社法によって、役員報酬の増減は原則として株主総会での決議が必要です。定款で定めがある場合を除いて、取締役会のみでの決定は認められていません。
また、報酬枠を超えて支給する際には、その枠自体の見直しを含めた株主による承認が必須です。
その際には、きちんと議事録を残し、法的に正当な手続きを踏むことが大切です。
増額分が高額すぎないか確認する
報酬を増加した後の金額が、著しく高額な場合は税務上の「不相当に高額な役員報酬」に当てはまるため、経費として認められない可能性があります。
業務内容や同業他社との比較などから合理的であることが認められれば損金算入は可能です。
その場合、説明責任が求められるケースもあるため、理由を説明できるようにしておく必要があります。
報酬を増額すると社会保険料・税負担も増える
役員報酬を増額すると、社会保険料や税負担が増える点を理解しておきましょう。
社会保険料に関しては、会社と折半になるので、会社の法定福利費が増加する要因でもあります。
総報酬額や手取り額、会社のキャッシュフローへの影響などを事前に試算しておき、加えて負担が増えることを見越して金額を設定するようにしてください。
減額の場合は本人から同意を得る必要がある
役員報酬を減額する場合には、原則として本人からの事前同意が必要です。会社側が一方的に減額することは違法となっており、差額払いの義務が生じるリスクがあります。
減額する際には、後々のトラブルを防ぐためにも、減額をする理由や期間、減額後の報酬額などを記載した同意書を本人から取得しておくようにしてください。
役員報酬変更の手順・流れ

最後に、役員報酬を変更する際の流れを解説していきます。
1.変更が必要な理由を整理し、変更案を作成する
まずは、役員報酬の変更を検討するにあたって、「なぜ変更が必要になるのか」その理由を明確にしていきます。
-
- 業績の変化
- 組織改編
- 資金繰りへの対応
- 役員変更 など
決議文書や税務対応時に重要な判断材料となるため、整理した後には変更案を作成しておきましょう。
2.株主総会・取締役会で決議を行う
役員報酬を変更するには株主総会または取締役会を開いて報酬額を決議する必要があります。増額・減額とどちらの場合でも同意を得て承認されなければいけません。
株主総会では普通決議で報酬額が決定されます。
普通決議では、発行株式総数の過半数を保有する株主が出席し、出席株主の議決権の半数以上の賛成をもらう必要があります。
3.議事録を作成・保存する
役員報酬の変更は、株主総会での決議事項を議事録に残して保存する必要があります。議事録に記載する主な内容は以下の通りです。
-
- 開催日時
- 開催場所
- 出席者
- 役員報酬を変更する人の氏名
- 変更後の金額
- 出席者の署名と捺印
議事録は税務署に届ける必要はありませんが、税務調査の際に確認されるケースもあります。
保存していない場合や記載に不備があれば損金算入が認められなくなるため注意してください。
また、議事録の保管期間は10年間です。保管場所は本店となっており、支店がある場合には写しを5年保管する必要もあります。
4.役員報酬の変更に関連する必要な届出を提出する
賞与にあたる事前確定届出給与の変更がある場合には、原則として株主総会による決議から1カ月以内に税務署に「事前確定届出給与に関する変更届出書」を提出しなければいけません。
役員報酬の変更によって社会保険の標準月額報酬が2等級以上変動する際には、日本年金機構の年金事務所において「被保険者報酬月額変更届」の提出も必要です。
必要な届出についても忘れずに提出することが大切です。
まとめ・役員報酬の変更はタイミングが重要!
役員報酬の変更は経営者の独断で行うことはできません。変更するにはタイミングが重要で、事業年度開始から3カ月以内である必要があります。
やむを得ない理由で変更することもできますが、最終的には税務署の判断となります。
ルールを守らなければ損金算入ができなくなるため、今回紹介した内容を参考に変更を進めてみてください。
創業手帳(冊子版)では、事業に役立つ情報を多数掲載しています。疑問解決に役立つ内容となっているので、ぜひチェックしてみてください。
(編集:創業手帳編集部)
創業手帳
飲食開業手帳
補助金ガイド
創業手帳カレンダー