合同会社はなぜ定款認証が不要なの?理由と株式会社との違いをわかりやすく解説

合同会社は定款認証が不要!ただし「定款の作成」は必須


合同会社を設立する際には公証役場での定款認証が法律上不要です。しかし、会社の根本規則を定めた「定款」自体の作成は会社法に基づき必須です。
作成した定款は会社の商号や本店所在地および目的を明確にする重要な書類であり、公証人の認証を受けない場合でも発起人全員の署名または記名押印が必要になります。
定款は設立登記の申請時に法務局へ提出する添付書類なので、認証が不要だからといって作成を怠ると会社設立の手続きを進められません。

合同会社と定款の扱いについて以下で解説します。

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この記事の目次

なぜ合同会社は定款認証が不要なのか


合同会社においては、定款認証が免除されています。その背景には、制度上の柔軟性や設立の迅速化を重視する独自の仕組みがあり、以下の3つの具体的な理由が挙げられます。

合同会社は公証人による定款認証制度の対象外だから

会社法において、定款の認証が義務付けられているのは株式会社のみです。合同会社を含む持分会社は法律上、認証の対象とされていません

合同会社は営利法人ではありますが、設立時における原始定款の真正を公証人が証明するプロセスが省かれ、行政コストが削減されています。
認証プロセスをスキップすることで、株式会社と比較して認証手数料の約3万円から5万円程度の費用を節約しつつスムーズに登記を進めることができます。

合同会社は株式会社より内部自治が重視される会社形態だから

そもそも合同会社は「所有と経営の一致」を原則とする持分会社の一種です。
会社のルールである定款によって組織の運営ルールを自由に定める広範な内部自治が認められています。

一方で、株式会社は、株主と経営者が分離している会社形態です。
株式会社とは異なり、合同会社は出資者全員が経営に関与して、社員の総意で経営を進める組合に近い性質の組織なので、公権力である公証人が定款の内容に介入する必要性が低いという考えです。

定款の内容に関しても法律の強行規定に反しない限り、合同会社は利益の配分や権限の所在を柔軟に設定できる特徴があります。
形式的な認証よりも実質的な合意が優先される仕組みが採用されています。

制度上、設立手続きの簡素化・低コスト化が図られているから

合同会社は中小企業や起業家がより手軽に法人格を取得できるよう設計された制度です。定款認証を不要とすることで設立にかかる時間と費用のハードルを下げています。
定款認証がなければ公証役場へ出向く手間や事前の予約調整が不要になり、発起人が定款を作成してから法務局へ登記申請を行うまでのリードタイムを大幅に短縮できます。

起業時は少しの資金でも事業に回したいと考えるのが自然です。
限られた資金を事業運営に集中させるため、公証人へ支払う手数料をゼロに抑えられるメリットは、小規模なスタートアップや個人事業主の法人化において極めて大きいです。

そもそも「定款認証」とは?何をする手続き?


定款認証とは公証人が定款の作成手続きが正当な手順で行われたと証明し、その内容が法令に違反していないかを確認した上で、それを公的な証書とする手続きです。
株式会社では原則として定款認証が必要であり、原始定款に公証人の認証を受けなければ、その効力が発生しません。定款認証がなければ会社の設立登記も認められません。

合同会社は「認証不要」です。しかし、定款自体は必ず作成する必要があり、作成した書面は会社の本店に備え置きます。
また、銀行での法人口座の開設や融資の審査時に定款の提出を求められることがあります。

合同会社と株式会社の違い|定款認証・費用・設立スピードを比較


合同会社と株式会社はどちらも有限責任という点では共通しているものの、設立プロセスにおける事務負担や法定費用、および対外的な評価において明確に違いがあります。
それぞれの違いを以下の表でまとめました。

合同会社 株式会社
定款認証の有無 不要 必要
設立費用の違い 6万円~ 15万円~
設立までの期間の違い 1〜2週間 2〜3週間
信用力の違い 認知度と信用力は相対的に低い 認知度と信用力が高い

定款認証の有無

株式会社の設立には、公証役場での定款認証が法律で義務付けられています。合同会社の場合は公証人の確認を受ける必要がなく、作成した定款をそのまま登記に使用可能です。

認証が不要な合同会社は公証役場との事前打ち合わせや訪問の手間を省略できるため、作成から申請までの事務作業を自分たちだけで完結させやすいというメリットがあります。

株式会社であっても電子定款を利用すれば印紙税は節約できますが、公証人へ支払う認証手数料そのものは免除されません。
そのため、認証の有無は両者の手続き上の大きな分かれ目です。

設立費用の違い

合同会社の設立費用は登録免許税が最低6万円であり、定款認証の手数料もかかりません。株式会社に比べて法定費用を安く抑えられます。
株式会社の設立には、登録免許税が最低15万円かかることに加え、公証人への認証手数料が約3万円(資本金に応じて最大5万円)が発生するので初期の設立コストはどうしても高くなってしまいます。

どちらの形態でも電子定款を導入して収入印紙代の4万円を節約できますが、合同会社の方が圧倒的に低コストで法人格を取得できる経済的なメリットは揺るぎません。

設立までの期間の違い

合同会社は定款認証のステップを省略できる分、書類の準備さえ整えば即日で登記申請を行えます。
入札や案件の受注に法人であることが求められるなど、急ぎで法人格が必要なビジネスシーンにおいて非常に有利です。

株式会社の場合は公証役場の予約状況や定款案の事前確認に数日を要することが一般的です。定款の作成から認証完了までに一定の待機期間が発生することは避けられません。
登記申請後の審査期間はどちらの会社形態でも法務局の混雑状況に依存します。
しかし、申請までの準備期間を最短にできる合同会社は、起業のスピード感を重視する場合に適しています。

信用力や資金調達面の違い

株式会社は上場が可能な唯一の会社形態であり、株式を発行して広く投資家から資金を募ることができます。
そのため、大規模な資金調達や対外的なブランド力の構築を目指すなら株式会社が向いています。

合同会社は、営利組織としての機能は株式会社と同等です。
しかし、認知度の面で大企業や保守的な取引先からは株式会社よりも低く見られるリスクが一部で残っているのが現状です。

銀行融資では返済能力が最優先になり、会社の形態よりも事業計画や純資産が重視されます。そのため、合同会社であるだけの理由で融資を断られることはありません。
しかし、将来的に上場したりベンチャーキャピタルなどから出資を受けたりする予定がある場合は、株式会社を選択するのが一般的です。

合同会社を設立する場合の流れ|定款認証なしでも必要な手続き


定款認証が不要であっても、法務局への登記申請までには法令に基づいた正確なステップを踏む必要があります。
特に、書類の整合性については細心の注意を払わなければいけません。
以下では合同会社を設立する時の流れを紹介していきます。

STEP1 会社の基本事項を決める(商号・本店・事業目的など)

合同会社を設立するために、まず会社の基本事項を決めます。会社の名前である商号や本店所在地、事業内容を示す目的などを決定します。
類似商号の確認や許認可が必要な事業かどうかの公的な事前調査も必要です。

資本金の額や出資者である社員の構成、および会計年度をいつからいつまでにするかといった、会社の骨組みとなる事項を決めるので慎重に判断してください。
ここで会社のルールをあらかじめ明確にしておくことが後のトラブルを防ぎます。

事業目的の記載方法には一定のルールがあります。法務局での登記審査で受理されるためには、適法であり、明確性や営利性を備えた具体的な文言で表現しなければならない点に注意してください。
将来的に行う可能性がある事業があれば、設立時に追加しておきます。後から追加もできますが、定款を変更するために手間と費用がかかってしまいます。

STEP2 定款を作成する

決定した基本事項に基づき、会社法に定められた絶対的記載事項を漏れなく盛り込んだ定款を作成します。
完成したら、社員全員の合意を証明するために署名または記名押印を施します。

紙の定款を作成する場合は4万円の収入印紙を貼付する義務がありますが、PDF形式の電子定款を作成すれば印紙税法上の課税対象外です。
設立コストを削減するなら電子定款をおすすめします。

合同会社の定款は認証を受けない代わりに自分たちで内容の正確性を担保しなければいけません。法務局では定款の記載例の雛形を公表しています。
参考にしつつも自社の実情に合わせた条項を整備してください。

STEP3 出資金(資本金)を払い込む

定款の作成後、代表社員となる個人の銀行口座に対して、各社員が定款で定めた出資額の全額を振り込みます。振込の記録が通帳に記載されることで払い込みの証明となります。
振込時の通帳の表紙、見開きページ、および振込内容が印字されたページのコピーを取って、別途作成する「払込証明書」を綴じてから登記申請の添付書類にしてください。

会社設立前には会社名義の口座を作ることができません。そのため、暫定的に代表者の個人口座を利用します。
この時、入金名義人が出資者と一致していることを必ず確認しなければいけません。

STEP4 必要書類をそろえて法務局へ登記申請する

登記申請書、定款、代表社員の就任承諾書、払込証明書、印鑑届書などの必要書類が一式そろったら、管轄の法務局へ直接持参するか郵送またはオンラインで申請を行います。
登記申請を行った日が会社の「設立日」です。

大安や記念日などの特定の日を設立日にしたい場合は、法務局の窓口が開いている平日に申請を完了させてください。
申請書類に不備がある場合は法務局から補正の指示が入るため、申請書には連絡がつく電話番号を記載して届出印を持参して速やかに対応できる体制を整えておくようにしましょう。

STEP5 設立後の各種届出を行う

登記を完了後に「履歴事項全部証明書」を取得したら、税務署や都道府県税事務所および市町村役場へ法人設立届出書を提出して税務上の手続きを期限内に完了させます。

従業員を雇用する場合は年金事務所や労働基準監督署、ハローワークでの社会保険・労働保険の加入手続きが必要であり、それぞれの届出期限を守らなければいけません。
会社名義の銀行口座開設や法人カードの申し込み、事業に必要な許認可の申請など、営業を開始するために必要な事務手続きを登記後の証明書を用いて速やかに進めてください。

合同会社の定款で必ず決めるべき主な記載事項


合同会社の定款は認証がないからこそ、法的な有効性を保つために「絶対的記載事項」などの必須項目を正確に記述して、将来の紛争を防ぐためのルール作りが欠かせません。
必ず決めるべき主な記載事項をまとめました。

絶対的記載事項

合同会社の定款に記載する内容は、絶対的記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項に分けられます。

会社法第576条では、目的、商号、本店所在地、社員の氏名または名称および住所、社員が有限責任である旨、出資の目的およびその価額の6項目は必ず記載するように定められています。
これらの事項がひとつでも欠けている定款は法律上無効となり、法務局での登記申請が受理されません。記載漏れがないよう作成後の最終チェックを念入りに行ってください。

特に「社員が有限責任であること」の明記は合同会社の法的性質を定義する重要な項目です。
株式会社の定款にはない持分会社特有の必須記載事項として認識してください。

相対的記載事項・任意的記載事項

相対的記載事項とは、定款に記載しなければその効力が認められない事項です。業務執行社員の定めや利益の配分に関する特約、持分の譲渡制限などがこれに該当します。

任意的記載事項は、会社の運営ルールとして定款に記載しておくことができる事項です。定時社員総会の開催時期や役員の任期、公告の方法などを自由に追加できます。
これらの事項を活用することで、出資比率に関わらず利益配分を決めたり、意思決定のプロセスを簡略化したりするなど、合同会社ならではの柔軟な組織設計が可能です。

合同会社ならではの「社員」「業務執行社員」「代表社員」の定め方

合同会社では出資者を「社員」と呼び、原則として全員が業務を執行する権利を持ちます。
ただし、特定の社員のみが経営を行う場合は定款で「業務執行社員」を定めなければいけません。

会社の外部に対して代表する者を「代表社員」として定款または社員の互選で決定し、登記することで、誰が会社を代表して契約などの行為を行う権限を持つかを明確にします。
法人を業務執行社員として選任することも可能ではありますが、その場合にはその法人の職務を行うべき「職務執行者」を選任し、定款や登記に反映させなければならないとされています。

合同会社の定款認証が不要でも注意したいポイント


定款認証が不要な点は合同会社を選ぶメリットです。その一方で、チェック機能が働かないことによるリスクも存在します。
特に以下の4つのポイントについては自ら管理を徹底するようにしてください。

電子定款の場合は作成環境の整備が必要

合同会社において電子定款を作成した場合、公証人の認証を受けないだけでなく、紙の定款に貼付が必要な4万円の収入印紙も不要で設立費用を抑えられます。

しかし、電子定款を作成するためにはPDFへの電子署名が必要であり、マイナンバーカードやICカードリーダライタ、専用の署名プラグインなどの環境整備が必要です。
すべての電子署名環境を整えるコストや手間を考えると行政書士などの専門家に依頼したほうがコストが低いケースもあります。

専門家に依頼することで、印紙代を浮かした上で確実に書類を作成できる場合もあるので、ひとりですべてを完了させようとするよりも、専門家の力を借りることを検討してください。

内容不備による「登記の却下・補正」リスクがある

公証人による事前チェックがない合同会社では、条文の内容が法律に抵触していたり誤字脱字があったりすると、法務局の登記審査で差し戻しや補正を命じられます。
特に、事業目的の文言が具体性を欠いている場合や、本店所在地の記載が不正確な場合は、再度社員全員の押印をやり直すなど、余計な手間と時間が発生するかもしれません。

登記が遅れると銀行口座の開設や契約締結のスケジュールも狂ってしまいます。
認証不要だからといって安易に考えず、法務局の事前相談などを活用して不備を防ぐように努力しましょう。

事業目的・代表社員・公告方法などは後から修正が面倒

一度登記が完了した後に定款の内容を変更する場合は、社員総会の決議が必要になるだけでなく、変更登記のために3万円から6万円程度の登録免許税が別途発生します。
設立時に認証がないことを逆手に取って不十分な内容で済ませてしまうと、将来の事業拡大や役員交代の際に、余計なコストと手続き負担が発生してしまいます。

特に「公告の方法」を官報にするか電子公告にするかなどは、運用コストに直結する項目です。設立段階で自社の規模や将来像に合わせた最適な選択を探ってください。

原本の保管や変更手続きの義務は残る

定款認証が不要であることは手続きの簡略化を意味し、それは作成した定款の内容に関するすべての責任を出資者である社員が負うという自己責任の原則に基づいています。
銀行融資の審査や許認可の申請では、公証人の認証がない代わりに、代表社員が「これは原本に相違ない」と証明した定款の写しを提出し、その正当性を担保することになります。

万が一、定款の紛失や内容の改ざんが疑われるような管理体制では社会的な信用を得られません。
認証がないからこそ定款の原本管理と議事録の備え置きを徹底してください。

まとめ|合同会社は定款認証不要で設立しやすいが、定款の内容は慎重に作ろう

合同会社は定款認証が不要なため、株式会社に比べて費用と認証までの日数を節約できます。しかし、法的な効力を持つ定款の作成自体は避けて通れません。
認証という外部チェックが入らないからこそ、絶対的記載事項の漏れや事業目的の不備がないよう、法務局の指針や会社法の規定に則った正確な書類作成が自己責任で求められます。
初期コストの低さというメリットを最大限に活かしつつ、将来の組織変更やトラブルを未然に防ぐために、実情に即した柔軟かつ強固な定款を作成することが成功への第一歩です。

合同会社は株式会社に比べて設立しやすい会社形態ですが、定款作成や登記、設立後の各種届出など、事前に押さえておきたいポイントが多くあります。起業準備をスムーズに進めたい方は、無料で取り寄せできる「創業手帳」冊子版もぜひご活用ください。会社設立後の手続きや資金調達、税務・労務など、創業期に必要な情報をまとめて確認できます。

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(編集:創業手帳編集部)