【法人・個人事業主向け】外壁塗装で使える助成金とは?申請の流れや注意点などを解説
店舗・事務所の外壁塗装は助成金で金銭的な負担を軽減
店舗や事務所といった建物の美観や機能を維持したり、見た目をリニューアルしたりするためには、外壁塗装が必要です。
塗料や建物の規模などによりますが、外壁塗装にはそれなりに高額な工事費が発生してしまうでしょう。
そのような時、助成金を活用することで金銭的な負担を軽減できる可能性があります。
今回は、法人・個人事業主が利用できる外壁塗装の助成金の種類や、申請の流れ、注意点などについて解説します。
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この記事の目次
法人や個人事業主が利用できる外壁塗装の助成金はある?
国や自治体が実施している建物関係の助成金は、個人の住宅を対象にしているケースがほとんどです。
個人宅を対象にしている助成金では、法人・個人事業主が事業に利用する店舗・事務所は対象外となります。
そこで、法人・個人事業主が外壁塗装時に利用できる助成金について紹介します。
外壁塗装に利用できる助成金は二通り
法人・個人事業主が外壁塗装に利用できる助成金は多くありませんが、新事業進出補助金や小規模事業者持続化補助金の2つが利用できる可能性があります。
ただし、この2つの補助金は事業の発展を目的にした助成金・補助金制度であるため、外壁塗装だけでは利用できないと考えられます。
そのため、必ず専門家の意見を聞いた上で、助成金を活用するようにしてください。
新事業進出補助金
新事業進出補助金は、2025年からスタートする補助金制度です。対象経費に建物費が含まれているため、外壁塗装も含まれる可能性があります。
まだ公募開始時期などの詳しい詳細は出ておらず、今後発表される予定です。
この補助金は、事業構築補助金の後続といわれています。事業再構築補助金では、新事業の展開や事業転換の一環として外壁塗装を行った場合、補助金の対象になりました。
例えば、新サービスの提供によって施設の改修を行ったり、店舗をリノベーションして新たな販路開拓を目指したりするケースが該当します。
事業再構築補助金の後続であれば、同様の目的で補助金が利用できるかもしれません。
なお、2025年4月時点で公表されている新事業進出補助金の詳細は以下のとおりです。
補助対象 | 企業の成長・拡大にむけて新規事業に挑戦する中小企業等 |
---|---|
補助上限 | 従業員20人以下:2,500万円(3,000万円) 従業員21~50人以下:4,000万円(5,000万円) 従業員51~100人以下:5,500万円(7,000万円) 従業員101人以上:7,000万円(9,000万円) ※補助下限750万円、カッコ内は大幅賃上げ特例を適用した場合 |
補助率 | 1/2 |
補助事業期間 | 交付期間日から14カ月以内 |
補助対象経費 | 建物費、構築物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販促促進費 |
基本要件が設定されており、「付加価値額の年平均成長率+4.0%以上増加」などの要件をすべて満たし、3~5年の事業計画に取り組む必要があるので注意してください。
小規模事業者持続補助金
小規模事業者持続化補助金は、個人事業主や小規模事業者を対象に、販路開拓するための支援を目的とした補助金です。
申請窓口は、事業を営む地域を管轄する商工会や商工会議所になります。
補助金を申請するためには、経営を見直し、持続的な経営を実現するための経営計画を立てなければなりません。
この補助金の対象経費は、機械装置等費や広告費、委託・外注費などです。
販路開拓や業務効率化を目的にした取組みと関連していれば、外壁塗装も適用される可能性があります。
外壁塗装を含む店舗改修費で補助金を利用する場合、委託・外注費で計上することになります。
委託・外注費は、店舗改装など自社では難しい業務を第三者に依頼した場合にかかった経費が対象です。
例えば、新店舗の開業にともなう外壁改修や広告効果を狙った店舗のリノベーションであれば、外壁塗装の費用も対象となるかもしれません。
小規模事業者持続化補助金の概要は以下のとおりです。
通常枠 | 賃金引き上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 | |
---|---|---|---|---|---|
補助率 | 2/3 | 2/3 ※赤字事業者は3/4 |
2/3 | ||
補助上限 | 50万円 | 200万円 | |||
インボイス特例 | 50万円 ※インボイス特例の要件を満たした場合、補助上限額に上乗せ |
通常枠や賃金引き上げ枠など、5つの申請類型があるので、目的に合わせて選ぶ必要があります。
法人・個人事業主が外壁塗装で利用できる自治体の助成金例
自治体の中には、独自に店舗・事務所などの改修に利用できる助成金・補助金制度を用意していることがあります。
参考として、自治体の助成金・補助金制度の事例を4つ紹介します。なお、過去に実施された制度を含むため、最新情報は自治体のホームページを確認してください。
狭山市「店舗・住宅改修工事費補助金制度」
埼玉県狭山市では、店舗・空き店舗、住宅のリフォームにかかる経費の一部補助をするために店舗・住宅改修工事費補助金制度を実施しています。
この補助金制度の目的は、市内の経済活性化と住環境の向上、空き店舗の活用を促進することです。
市税を完納しており、狭山市内に存在し、申請者が所有している店舗・空き店舗、住宅であるなどの要件を満たしていれば申請できます。
なお、対象の改修工事が一定期間内に完了し、実績報告書類を提出することも条件です。
市内の施工業者が実施する改修工事であり、金額が20万円(税抜)以上となる場合が補助金の対象です。
補助金額は、店舗・空き店舗は税抜工事費の10%で、上限は30万円までとなっています。
坂戸市「店舗・住宅等リフォーム補助事業」
店舗・住宅等リフォーム補助事業は、埼玉県の坂戸市商会が実施している補助金制度です。
市内の業者で店舗や事務所、住宅の改修を行った人を対象に、工事費の一部を補助してくれます。
店舗・事務所の改修を目的にしている場合、市内に存在する店舗・事務所であり、所有者または店舗等で自ら事業を営む人が対象です。
また、補助金の交付は1人につき1回限りとなっているので注意してください。
補助金額は、3万円を限度に改修工事に必要な費用の100分の5に相当する額です。
書類審査に加えて、必要に応じて現地調査を行った上で交付が決定し、補助金額も確定します。
嘉麻市「商業店舗リフォーム補助金制度」
福島市嘉麻市では、商業店舗リフォーム補助金制度を実施しています。
これは、商業の復興や活性化を図るために店舗改装などを行い、売上拡大を目指す商業店舗が補助金の対象です。
嘉麻市内に本社や本店所在地を有する法人・個人事業主が対象者です。
また、風営法事業ではないこと、リフォーム後も営業を継続することが見込まれているなどの要件が定められています。
補助金は50万円が上限で、改修工事費用(税抜)の1/2に相当する金額が支給されます。
東京都「商店街起業・承継支援事業」
東京都では、商店街起業・事業継承事業を実施しています。
都内の商店街に限定されますが、新店舗を開業する人を支援し、商店街の活性化を図る目的として補助金を支給しています。
この補助金では、店舗の工事費などの一部経費が助成されるので、開業の初期費用の不安を軽減することが可能です。
商店街起業・承継支援事業は、年齢・性別に制限はなく、創業予定者から個人事業主、法人まで対象者です。
申請区分は開業・多角化・事業承継の3つに分かれているので、自分に合った区分を選択できます。
助成金の上限は654万円となっており、経費区分によって助成限度額が異なります。助成率に関しては区分ごとに共通で、2/3以内が上限です。
外壁塗装工事で助成金を利用する流れ
助成金や補助金は、適切な手順を踏んで申請する必要があります。法人や個人事業主が外壁塗装工事で補助金を利用する場合の流れは以下のとおりです。
1.外壁塗装工事の依頼を行う
2.工事前に助成金・補助金の申請を行う
3.外壁塗装工事の完了後、実績報告書(工事完了報告書)と請求書を提出する
4.約1~2カ月後に指定口座に助成金・補助金が振り込まれる
助成金・補助金の申請は着工前に行うことになります。
また、工事完了後は、補助金を支給する自治体や商工会や商工会議所に、実績報告書と請求書を提出しなければなりません。
提出後、問題がなければ申請時に指定した銀行口座に補助金・助成金が支給されます。自治体によっては商品券が支給されるケースもあるので、事前に確認しておいてください。
外壁塗装業者では、助成金・補助金申請の代行やサポートを行ってくれるケースが多いです。
そのため、助成金・補助金に詳しい業者に依頼するのがおすすめです。
助成金を利用して外壁塗装をする場合の注意点
助成金を利用して外壁塗装を行った場合、どのような注意点があるのか解説していきます。
抽選や先着順となっていることがある
助成金制度は基本的に予算が決まっており、抽選や先着順となっているケースがほとんどです。
希望者数が多ければ多いほど予算にすぐ達してしまう可能性もあり、予算に達すれば早々に締め切られてしまう場合もあります。
せっかく助成金を受けようと思っていたのに、気付いたら締め切られていたというケースもあるかもしれません。
このような事態に陥らないためにも、早めに塗装業者から見積もりを提出してもらい、申請してください。
自治体指定の業者に依頼する必要がある
各自治体によって助成金の条件は異なってくるものの、中には自治体が指定した塗装業者に依頼しなくてはいけない場合もあります。
その多くは地元に本店または支店を置いている施工業者です。
あらかじめ見積もりをとっていた業者が自治体指定ではなかった場合、指定業者に見積もりを依頼する必要があります。
無駄な手間を増やさないためにも、自治体指定の業者に依頼するようにしてください。
工事前に申請しなければならない
外壁塗装に使用できる助成金制度の多くは、塗装工事を行う前に申請手続きをする必要があります。
申請時にすでに塗装工事が始まっていたり、すでに完了していたりする場合は申請できなくなってしまうので注意しましょう。
助成金制度を活用する際には、施工のスケジュールを把握し、計画的に申請手続きを進め、工事をスタートできるように調整してください。
税金を滞納していると利用できない
各自治体の多くは、助成金制度を利用する条件として「税金を滞納していないこと」を挙げています。この場合の税金とは、以下の3種類が該当します。
-
- 市民税
- 国民健康保険料
- 介護保険料
いずれも自治体に納める税金であり、ひとつでも滞納していた場合は助成金を申請できません。
また、家主は税金を滞納していなくても、世帯全員が対象となるため、誰かひとりでも滞納していると利用できなくなってしまいます。
【新事業進出補助金】新規事業への挑戦に該当する必要がある
新事業進出補助金を使って外壁塗装をすることは可能ですが、その目的が「企業の成長や拡大に向けた新規事業への挑戦」である必要があります。
また、付加価値額の年平均成長率+4.0%以上増加や事業所内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上の水準であることなど、基本要件もすべて満たす3~5年の事業計画に取り組まなくてはなりません。
うまく新規事業への挑戦と外壁塗装を落とし込めるように、事業計画を立ててみてください。
【小規模事業者持続化補助金】補助対象外の事業ではないか確認する
小規模事業者持続化補助金は、すべての事業が対象になるわけではありません。以下に該当する事業の場合、補助対象外となってしまいます。
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- 国などが支援するほかの制度と同様、または類似する事業(介護報酬・保険診療報酬が適用されるサービス)
- 事業終了後1年以内に売上につながることが見込まれない事業(試作品開発のみ、既存の包装パッケージの印刷など)
- 公の秩序を害するなど、公的な支援が適切ではないと判断される事業(麻雀店、パチンコ店、ゲームセンター店、性風俗関連特殊営業など)
助成金以外で外壁塗装の費用を抑える方法
助成金制度以外の方法でも外壁塗装の費用を抑えることは可能です。具体的にどのような方法があるのか、解説します。
相見積もりをとって比較する
塗装業者はどれも同じ料金設定で提供しているわけではなく、同じ塗料を使っていても金額に差が生じる場合もあります。
外壁を塗る面積によっては、差額が10万円以上になることもあります。
そのため、少しでも外壁塗装の費用を安く抑えるには、複数の業者から相見積もりをとって比較することが大切です。
金額はもちろん、施工実績やサポート内容なども確認した上で業者を決定してください。
塗料のグレードを下げる
塗料にも様々な種類があり、その種類によって金額も大きく異なります。
例えば、フッ素塗料や無機塗料は比較的高額になりますが、シリコン系塗料なら費用を抑えることが可能です。
ただし、すでにシリコン系の塗料が指定されていた場合は、グレードを下げたとしてもそれほどコストを削減できません。
逆に塗膜の耐用年数が下がってしまい、結果として塗り替え期間が早まることでコストが増えてしまう可能性もあるので注意してください。
まとめ・外壁塗装をする前に自治体の助成金をチェックしてみよう
店舗や事務所などの外壁塗装は、建物の美観や耐久性を維持するために、定期的に必要となる工事です。
意外に高額な費用になりやすく、経費の負担が大きくなることがあります。
事業の拡大や成長のための改修工事として外壁塗装を行う場合、国や自治体の助成金や補助金が使える可能性があります。
そのため、最新の助成金・補助金制度をチェックし、使える制度があれば外壁塗装工事をする際に利用を検討してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)