エアコンの取り替えに使える補助金とは?要件や採択されるポイントなどを紹介

創業手帳

エアコンの取り替えは補助金を使ってお得に!


エアコンは室内の気温を安定させる設備であり、快適に過ごせる空間を維持するためには欠かせません。
そのようなエアコンも長く使っていると劣化や故障したり、電気代が気になったりして、新しいエアコンへの取り替えを検討するケースがあります。
その際に補助金が使えると、通常よりもお得にエアコンの取り替えが可能です。

そこで今回は、オフィスなどのエアコンの取り替えに使える補助金の種類や採択のポイント、交換におすすめのタイミングなどについて解説します。

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【エアコン取り替えに活用できる補助金①】省エネルギー投資促進支援事業費補助金(設備単位型)


省エネルギー投資促進支援事業費補助金(省エネ補助金)は、省エネ性の高い設備やシステムに投資・更新する際に使える補助金制度です。
環境問題への対応の必要性が高まったことで、省エネ設備への投資が推進されるようになり、設備投資の促進を目的に設立されました。

この補助金制度には、大きく4つの事業区分があります。
そのうち事業区分Ⅲの設備単位型は、SIIが定めたエネルギー消費効率陶の基準を満たした、指定の省エネ設備機器の更新投資を対象にしています。
具体的に補助対象となる設備は以下の15品目です。

【ユーティリティ設備】
  • 高効率空調(産業・業務用エアコンなど)
  • 産業ヒートポンプ
  • 業務用給湯器
  • 高性能ボイラ
  • 高効率コージェネレーション
  • 低炭素工業炉
  • 変圧器
  • 冷凍冷蔵設備
  • 産業用モータ
  • 制御機能付きLED照明器具
【生産設備】
  • 工作機械
  • プラスチック加工機械
  • プレス機器
  • 印刷機器
  • ダイカストマシン

設備単位型の対象設備には高効率空調が含まれているため、産業用や業務用エアコンの取り替えに補助金を適用することが可能です。
補助金は、1次公募と2次公募の2回に分けて公募が行われます。
2024年度の公募はすでに終了していますが、2025年度の予算案の概算要求に盛り込まれています。
今後再開する可能性が高いので、最新の情報をチェックしてください。

補助対象の事業者

省エネ補助金の設備単位型を活用するためには、9つの要件をすべて満たす必要があります。

1.国内で事業活動を営んでいる法人・個人事業主
※年間エネルギー使用量が原油換算1,500kl以上ある事業者は、省エネ法に基づいて中長期計画および定期報告書を提出していること
2.本事業の実施に必要な経営基盤を持ち、事業の継続性が認められる者
※直近の年度決算で債務超過している場合は対象外
3.本事業で国内に設置する補助対象設備の所有者であり、設備の処分制限期間、継続的に使用する者
4.本事業で取得した補助対象設備をSIIが交付規定で定める取得財産等管理台帳に記載し、善良な管理者の注意をもってその設備等を管理し、補助金の交付目的に従って運用する者
5.経済産業省から補助金交付等停止処置や指名停止措置を受けていない者
6.公的資金の交付先として、社会通念上適切と認められない者ではない
7.風俗営業等の規則および性風俗関連特殊営業を含む事業者、それに類ずる事業所ではない
8.成果報告時に、導入した設備の最低1週間以上のエネルギー使用量の実測データ等を使って省エネ効果の報告ができる者
9.会計検査院による現地検査等を受ける際に、事業者として社会単位で誠実に対応できる者

実際には、大企業や中小企業、個人事業主の企業体の定義や細かい留意点があるので、省エネ補助金の公募要領をよく確認してください。

補助額・補助率

設備単位型の補助対象経費は、設備費のみです。工事費などは対象外なので注意してください。
補助率は1/3以内です。下限は30万円/事業全体から、上限は1億円/事業全体までとなっています。

省エネ補助金の採択率

直近2年の省エネ補助金の採択結果は以下のとおりです。

【2022年度・2023年度の採択結果】

申請件数 採択件数 採択率
2022年度 1,594件 828件 51.9%
2023年度 1次公募 1,920件 1,307件 68.1%
2次公募 1,622件 1,515件 93.4%

省エネ補助金の採択率は例年60%前後でした。2023年度は大幅に採択率が上がっており、2次公募においては1,622件中1,515件が採択され、採択率は93.4%になりました。

また、設備別の採択結果では、15種類の対象設備のうち最も申請が多いのは高効率空調でした。
高効率空調の採択結果は以下のとおりです。

【2023年度の高効率空調の採択結果】

申請件数 採択件数 採択率
1次公募 921件 652件 70.8%
2次公募 808件 763件 99.4%

1次公募では921件中652件が採択され、採択率は70%です。2次公募では808件中763件が採択され、採択率は99.4%となっています。
どちらの公募期間もほとんどの事業者が採択されている結果となりました。

省エネ補助金で採択されるためのポイント

直近の省エネ補助金は採択率が高い傾向にあります。しかし、すべての事業者の申請が受理されているわけではありません。
ここで、省エネ補助金で採択されるために押さえておきたいポイントを紹介します。

省エネ効果を具体的に示す

省エネ補助金では、申請する際に設備の導入によってどれくらいの省エネになるのか提示する必要があります。
省エネ効果は、具体的な数値で示すことが重要です。また、その数値の根拠を示すための書類を準備して提出してください。

正確性のある申請書類を作成する

申請書類を正確に作ることも大切です。申請書類は、図面や比較表を使って事業内容をわかりやすく伝えられるように作成しなければなりません。
その図面・比較表などの情報が間違っていれば、矛盾を指摘されたり、審査に通らなかったりする可能性があります。

書類を提出する前に、不備がないかしっかり確認してください。申請に不安があれば、省エネ補助金に詳しい専門家に相談しながら作成するのもおすすめです。

加点措置を活用する

省エネ補助金では、省エネ診断を受けた場合に加点措置が行われます。この措置を活用することで、採択される可能性が高まります。
省エネ補助金の主な加点措置は以下のとおりです。

省エネ最適化診断 専門家から費用のかからない省エネに関するアドバイスを受けられる
経営力向上計画の認定 人材育成・コスト管理などのマネジメント向上や設備投資など、経営力を向上することを目的に実施する計画で、認定を受ける税制措置や金融支援を受けられる
経営革新計画の認定 新しいビジネスモデル・サービスを導入して、市場での競争力を高める計画で、認定されると販売開拓支援や資金調達で優遇されるなどのメリットがある

これらを利用すると省エネ補助金で採択されやすくなるだけではなく、省エネ改善や資金調達で有利になる、節税効果を得られるなどのメリットもあります。

【エアコン取り替えに活用できる補助金②】子育てエコホーム支援事業


子育てエコホーム支援事業は、省エネ性に優れた新築住宅の取得や住宅の省エネ改修などの支援を行うための補助金制度です。
主に物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯を対象にしています。
この補助金制度での補助対象は以下のとおりです。

  • 注文住宅の新築
  • 新築分譲住宅の購入
  • リフォーム

このうちリフォームに関しては、子育て世帯・若者夫婦世帯以外の世帯も補助金を申請することが可能です。

この補助金を活用してエアコンを取り替える際は、空気清浄機能か換気機能が備わっており、試験機関等で効果を認証されているエアコンでなければなりません。
試験機関は、国・地方公共団体や独立行政法人が運営する機関、国等の許可を受けている機関、法令・条例に基づいて試験を国等から受託している機関に限られます。

2024年度の交付申請はすでに終了しています。
ただし、2025年度補正予算内で新設される「子育てグリーン住宅支援事業」が盛り込まれているため、今後はこの制度を利用してお得にエアコンの取り替えられる可能性があります。

補助対象者

子育てエコホーム支援事業の対象者は以下のとおりです。

補助対象 対象者
注文住宅の新築 建築主
新築分譲住宅の購入 購入者
リフォーム 工事発注者

注文住宅の新築・新築分譲住宅の購入の対象者は、子育て世帯と若者夫婦世帯に限定されます。
それぞれの世帯の定義は以下のとおりです。

子育て世帯 申請時点で18歳未満の子を持つ世帯
若者夫婦世帯 申請時点で夫婦であり、2023年4月1日時点で39歳以下の世帯

補助額

補助対象別の補助額は以下のとおりです。

注文住宅の新築・新築分譲住宅の購入 ・長期優良住宅の場合:100万円/戸
※市街地化調整区域や土砂災害警戒区域または浸水想定区域に立地する住宅は、原則50万円/戸

・ZEH住宅の場合:80万円/戸
※市街地化調整区域や土砂災害警戒区域または浸水想定区域に立地する住宅は、原則40万円/戸

リフォーム ・子育て・若者夫婦世帯:上限30万円/戸
※中古住宅の購入が伴う場合は上限60万円/戸
・その他世帯:上限20万円/戸

長期優良リフォームの場合
・子育て・若者夫婦世帯:上限45万円/戸
・その他世帯:上限30万円/戸

省エネ性の高いエアコンの取り替えを含めたリフォームをする場合、子育て・若者夫婦世帯であれば上限は30万円/戸(中古住宅も購入する場合は60万円/戸)、そのほかの世帯は上限が20万円/戸です。

長期優良リフォームであれば、子育て・若者夫婦世帯が上限45万円/戸、そのほかの世帯は上限30万円/戸と、上限が少し増えます。

法人で補助金を利用できるケース

子育てエコホーム支援事業を活用してリフォームする場合、リフォームをする住宅の所有者が対象となります。
この対象に該当する人は以下のとおりです。

  • 住宅を所有していて居住する個人または家族
  • 住宅を所有していて賃貸住宅として貸し出している個人や法人
  • 賃借人
  • 共同住宅の管理組合・法人

つまり、リフォームする所有住宅で賃貸業を行う法人・共同住宅の管理組合・法人は、補助金を利用することが可能です。
高齢者が暮らすグループホームや高齢者向け賃貸住宅も要件をクリアしていれば、リフォームの際に補助金を適用できます。

ただし、子育てエコホーム支援事業はあくまでも個人かつ居住用の住宅を対象とした制度になります。
エアコンの取り替えを含む店舗改装として利用することはできません。店舗併用住宅では、住居部分のリフォームのみ補助金が使えるので注意してください。

【エアコン取り替えに活用できる補助金③】地方自治体の補助


自治体によっては、独自に産業・業務用エアコンの取り替えに使える補助金を設けているケースがあります。
そのため、自治体のホームページをチェックして、利用できる補助金がないか探してみるのもおすすめです。
ここで参考に、各自治体が実施する補助金制度の例を紹介します。

補助金制度 実施自治体 概要
物価高騰対策省エネ設備等投資支援事業補助金 東京都江戸川区 ・高効率空調を含む省エネ設備導入対象経費の2/3(上限200万円)を補助
・本区で1年以上同一事業を継続する中小規模事業者等が対象
※2024年度は受付終了
《事業所用》かつしかエコ助成金 東京都葛飾区 ・空調設備機器改修の場合、補助対象経費の1/4(上限100万円)を補助
・本区の事業所に対象機器等を導入する中小企業等が対象
※2024年4月1日~2025年3月31日まで受付
CO2排出削減設備導入補助金 埼玉県 ・「省エネルギー投資促進支援事業費補助金(C)指定設備導入事業」の補助対象となる空調設備などが補助対象
・補助対象経費(設備費・工事費)の1/2以内(上限500万円)を補助
※2024年度は受付終了

自治体ごとに制度の概要や要件、公募期間などが異なります。すでに募集が終了している制度でも、次の年度で再開する可能性があります。
自治体の最新情報をこまめにチェックしてみてください。

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エアコンの取り替えに最適なタイミングは?


補助金を活用してエアコンの取り替えを行う前に、そもそもエアコンの取り替えが必要なのか考えてください。
お得に取り替えができるとは言え、それだけの理由で交換すると逆に損をする可能性があるので要注意です。
ここで、エアコンの取り替えに適したタイミングを紹介します。

一般的な交換のタイミングは10~15年

業務用エアコンの交換に適したタイミングは、10~15年程とされています。業務用エアコンは固定資産となり、減価償却の対象になります。
減価償却におけるエアコンの法定耐用年数は、冷凍機の出力が22kW以下なら13年、22kW以上なら15年です。

この耐用年数から10~15年が取り替えの目安と考えられています。家庭用エアコンも一般的に10年程度で寿命が来るといわれています。
自宅で仕事をしており、家庭用エアコンを使っている個人事業主も10年を目安に交換が必要か検討するのがおすすめです。

多湿な環境は寿命が早まる可能性がある

エアコンの寿命は10~15年と長めですが、設置環境によって寿命が変わる点に注意してください。
例えば、湿度の高い環境はエアコン内部の部品を腐食させる可能性があるため、エアコンの寿命を縮めるかもしれません。
ほかにも調理場では、調理の際に油を含んだ水蒸気が発生し、エアコンに入り込む可能性があります。
油が内部に侵入すると、フィルターや金属に付着して通気口を塞いでしまい、その影響でエアコンが故障しやすくなるケースもあるので注意が必要です。

省エネ化したい時や故障の可能性があれば交換を検討しよう

耐用年数を満たしていなくても、省エネ化したい時やエアコンが故障している可能性があれば交換に適したタイミングといえます。
まだ使えるエアコンでも使い続けているうちに性能が衰え、冷暖房効率が下がります。
エアコンが効かないからと、出力を上げて使い続けると電気代が高騰するかもしれません。
日頃から電気代が気になっているのであれば、省エネ性の高いエアコンに交換するのがおすすめです。

また、エアコンが急に故障すると、室内の快適性を保てなくなります。本格的に故障する前に取り替えを検討してみてください。
ただし、修理のほうがお得というケースもあるので、修理した場合の費用と比較して検討することが大切です。

まとめ・補助金で賢くエアコンを取り替えよう

エアコンは室内空間を快適に保つために欠かせない設備ですが、取り替えるとなるとかなりの費用がかかります。
そのような時は補助金を活用することで、通常よりもお得にエアコンを取り替えることが可能です。
国や自治体では産業・業務用エアコンや家庭用エアコンで使える補助金を用意しているので、最新情報を確認した上で申請を検討してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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