チアドライブ 保科 昌孝|ファンの力で盛り上げる!車にステッカーを貼って走る「新しい広告の形」

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年07月に行われた取材時点のものです。

ドライバーが車に広告ステッカーを貼って走ると、走行距離に応じて報酬や特典がもらえる画期的なサービス


広告媒体がテレビからインターネットに移行し、企業のPR方法が大きく変わりつつあります。一方で「クラウドファンディング」や「シェアリングエコノミー」という新しいビジネスモデルの登場で、企業と一般ユーザーの関わり方も変化しています。

この点に着目して「一般ドライバー×企業広告」という新しい広告の形を作ったのがチアドライブの保科さんです。

起業までの経緯やCheer Driveが生み出す新しい価値について、創業手帳代表の大久保が聞きました。

保科 昌孝(ほしな まさたか)
株式会社チアドライブ 代表取締役
2008年インターネット広告代理店に新卒で入社。2012年ドワンゴへ転職し、ニコニコ生放送公式番組のプロデューサーとして、将棋の電王戦などを担当。2015年学校法人角川ドワンゴ学園に出向し、N高等学校の立ち上げに携わる。2018年からは副本部長として教育事業全体を統括。2020年に株式会社チアドライブを設立。2021年に企業と一般ドライバーが相互に応援するサービス「Cheer Drive」をリリース。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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N高で起業部を立ち上げたことが刺激となり「脱サラ起業」を決意

大久保:起業の経緯を教えてください。

保科:起業前に勤めていた「ドワンゴ」では、ニコニコ動画の番組プロデューサーを担当し、次にN高という通信制の高校の立ち上げメンバーになりました。

N高で数々の新しい取り組みをする中で、N高生が起業について学ぶための部活として「起業部」を設立しました。起業部の部費は年間1000万円で、講師には堀江貴文氏や家入一真氏など様々な分野の経営のプロをアドバイザーにお招きしました。

N高の起業部は私にとっても刺激的な経験で、高校生が自分のやりたいことを「起業」という手段を使って、どんどん実現する姿を目の当たりにして、純粋に生徒たちが羨ましいと思うようになったんです。

それまで起業はハードルが高く、縁遠いものだと思っていましたが、生徒たちを見ていると起業へのハードルがグッと下がりました。

そこで、私も自分のやりたい事業を起業という手段で叶えたいと思い、脱サラして起業しました。

「ドワンゴ」と「KADOKAWAが」作ったN高独自の教育カリキュラム


画像参照:https://nnn.ed.jp/

大久保:N高はどんな学校ですか?

保科:今までの通信制高校は様々な事情で学校に行けない生徒のための選択肢というようなイメージがありましたが、N高では生徒達が前向きな気持ちで通えるカリキュラムを用意しました。

学校に行きたくても行けない生徒だけでなく、学校の授業のもっと先を勉強したいという生徒にも選ばれています。東京大学を始めとした国立大学や有名私立大学への進学者も多数輩出しています。

N高はドワンゴ創業者の川上量生氏と、KADOKAWA創業者の角川歴彦氏を中心に、教育に携わってきていない人たちが作り上げた学校です。

なので、教育の固定観念から外れて「生きていく上で必要なこと」「働くために必要なこと」「大人になって学びたかったこと」をカリキュラム化し、これまでになかった視点で学校作りができたと思います。

これまでの常識では考えられない「新しい教育」を学校に馴染めない生徒でも自己肯定感を高めながら、ITを通して学ぶというブランドを作り上げました。

起業部の他にも、投資部やスタンフォード大学との提携など、様々な未来の学びを作ることができたので、大変やりがいのある仕事でした。世の中になかったものを作る社会貢献性の高さも実感しましたね。

村上世彰氏を特別顧問に迎えたN高投資部の設立

大久保:部活に投資部があるのはすごいですね。

保科:子どもに向けた金融教育に力を入れている一般財団法人村上財団のバックアップを受け「N高投資部」が実現しました。村上財団から現金20万円をN高生に渡して、学びながら実際に投資をしてもらいます。

そして、村上財団代表の村上世彰氏がフィードバックをくれるという大人でも羨ましい経験を提供しています。これはN高のブランド力の引き上げに大きくつながりましたね。

大久保:N高事業の統括をした経験はチアドライブの起業に生かされましたか?

保科:サラリーマン時代にN高を含めて複数の事業を統括させていただいた経験は起業にとても役立ちました。

採用やプロモーション、システム開発、財務、法務、経理など、会社経営の全体をマネジメントしていたので、その経験は起業に活かせていると感じます。

大久保:事業を作り上げる上で何が1番大切ですか?

保科:新しい事業を立ち上げる際には「マネジメント」をする体制づくりが大切だと思います。責任者1人で行うのではなく、たくさんの人を巻き込んで問題を解決する体制が必要なのです。

大久保:起業するアイディアはいくつかありましたか?

保科:N高の起業部を作った頃から、私自身の中でも「起業する」という選択肢が出てきました。起業部が盛り上がるにつれて、私の中にもたくさんのアイディアが思い浮かびましたが、N高の仕事も本当に楽しかったので、本当にやりたいことが見つかった時に起業しようと思いました。

その中で「Cheer Drive」事業を思いついて、世の中に出してみたいという思いが強くなり、N高を辞めて起業することを決意しました。

ファンの力で盛り上げる新しいPRの形「Cheer Drive」を創業

大久保:Cheer Driveをやろうと思ったきっかけを教えてください。

保科Cheer Driveをやろうと思ったきっかけは「水曜どうでしょう」という番組なんです。16年くらい前からある番組ですが、この番組が好きな人はロゴステッカーを車に貼る文化があります。

そこで自分の好きなコンテンツを象徴するステッカーを自分の車のリアウィンドウに貼って、応援したり、好きであることをアピールしたい人が多いことに気がつきました。これを事業として成立させれば、愛されている商品・サービスはもっと応援してもらえる仕組みが作れると思いました。

このビジネスモデルは前例がなかったので、どれくらい売れるか予測が立てられませんでしたが、Cheer Driveの本質はここ数年で浸透してきている「応援消費」や「シェアリングエコノミー」なので、今後十分な成長が見込めると考えています。

大久保:「商品が好きだから応援する」という気持ちや行動をビジネスにしたんですね。

保科:有名なゲームや映画、スポーツなど愛されている商品やサービスであれば、ファンの力を使って新しいPRの形が作れると思いました。

一般消費者が日常の中で、企業の広告費の一部を受け取れる仕組みを考えた結果、「車には大きな平面があること」「人の目に触れやすいこと」「日本には約6000万台の車があること」を考慮して広告媒体に「車」を選びました。

Cheer Driveは車を持っていて、運転するだけでPR効果を出せるのが新しいところなのです。

車のリアウィンドウに広告ステッカーを貼って走るとお金がもらえる仕組み

大久保:Cheer Driveの利用者はどんな人が多いですか?

保科:商品やサービスが好きな人、もしくは報酬が欲しくてやっている人も多いです。

例えば、走行1kmあたり5円〜7円もらえるキャンペーンに参加すると、1ヶ月で5,000円〜7,000円稼げることもあります。この場合では、1ヶ月のガソリン代の半分以上がCheer Driveで稼げるかもしれません。

運転中は必ず前を見ながら運転するため、リアウィンドウに貼るステッカーはドライバーが目にする機会が多く、広告の訴求力が高いと思います。

大久保:サービスの対象は個人だけですか?

保科:今のところは対象は個人のみです。

今まで企業がプロモーションを実施する場合は、広告媒体の所有者に広告費を払うしかありませんでした。

しかし、対象が個人であれば飲食店の食事券、商品の詰め合わせ、ゲーム会社の課金アイテム、限定グッズなど、企業が持つお金以外の資産を元手にPRを実施できるのがCheer Driveの特徴です。

これは、広告媒体の所有者が一般の方だからこそ成立する仕組みで、対象が法人になると通常の屋外広告と変わらなくなります。

大久保:キャンペーン終了後もシールを貼り続けている参加者もいますか?

保科:アニメのキャラクターやアイドルグループのキャンペーンは参加費もかかりますが、キャンペーン終了後も広告シールを貼り続けている参加者も多いです。

自分の車を好きなキャラクターでデコレーションしようとすると60万円くらいかかると言われています。これに比べると、Cheer Driveのキャンペーンの参加費は安く、走行距離に応じて限定特典もあるので、参加者にメリットを感じてもらえたと思います。参加者から参加費用を頂く場合は、企業側の広告費負担は少ないので双方にメリットがあるのです。

大久保:シールを貼ることで運転がしづらくなることはないですか?

保科:シースルーフィルムを使っていて、内側から外側は透けて見えるので問題ありません。リアウィンドウに広告シールを貼っても、バックミラーで後方確認ができるのも好評です。

「GPS」と「ヒートマップ」データの活用で、精度の高い計測を実現

大久保:今登録されているのはどんな企業や団体が多いですか?

保科1番相性が良いのはスポーツチームです。他にも、多くのファンに愛されているコンテンツも登録していただいていますね。

アイドルグループのキャンペーンを実施した時は、多くのファンの方にご参加いただきました。

大久保:これからのCheer Driveの展望を教えてください。

保科GPSでドライバーの位置情報をトラッキングし、大手通信事業者からもらうヒートマップデータと掛け合わせて、運転中にリーチできた人数を高い精度で計測する新機能を実装予定です。

今までは1km毎の課金体系が主流でしたが、新機能搭載後は1リーチあたりでの請求が可能になります。つまり、走った距離ではなく、どれだけの人に広告を見てもらったかを計測して報酬が発生する仕組みです。リーチ数が明確になり、広告を出す企業も安心して出稿できるようになります

また、日本でノウハウを積んで、いずれは海外でもチャレンジしたいと思っています。Cheer Driveは、車とスマホ、インターネット、配送インフラがある国であれば、どこでも簡単にサービスの開始が可能です。

インプレッション精算の実装で、広告主も安心して出稿が可能に

大久保:「車×広告」と聞くとアナログなサービスだと感じられるかもしれませんが、デジタルを活用して精密に計測できるのは面白いですね。

保科:広告主である企業からの要望が多かったこともあり、ヒートマップデータの活用は今年の7月に実装されます。

また、車が走る道が下道か高速かも判断しており、高速道路には歩行者がいないので、広告を見る人が減ります。その点までもしっかりと把握し、評価しているので、高い精度でリーチ数を計測できます。

以前、緊急事態宣言が発令された時期のように、様々な理由で人通りが減った場合は、一般的な屋外の看板広告は人目に触れる機会が減るリスクがあります。

しかし、Cheer Driveは広告を見た人数を計算して、実数で広告費が発生します。これは広告を出す企業からすると、安心して広告を出せるサービスだと思います。

自家用車に企業広告を貼るという新しい文化を作りたい

大久保:Cheer Driveの立ち上げで大変なことはありましたか?

保科:サラリーマン時代に1年以上の時間をかけて起業準備をしていたので、準備段階でほとんどの問題点は解消できていたと思います。

自分の車に広告を貼るというCheer Driveの文化が定着していないので、今が大変な時期かもしれません。新しい文化を作ることに苦労していますが、少しずつ理解や認知が増えてきて徐々に成果が出始めました。

Jリーグのチームも昨年の夏から動いていましたが、最初の1チーム目の契約が決まるまではとても苦労しました。ですが1チーム目が決まると、一気に12チームが決まったんです。

どの業界でも最初の事例を作ることには今でもとても苦労しています。

大久保:起業してよかったことを教えてください。

保科:大きく分けて2つ良いことがあります。

1つ目は、「株式会社」の経営を実務で把握できたことです。株式会社の大半は業務が細分化されているので、会社全体を俯瞰して把握する機会はサラリーマンにはあまりないと思います。

実際に起業してみて、会社がどのように運営されているのかを、体験を通じて理解できたことはよかったです。

2つ目によかったことは、自分が経営する会社であれば、自分がやりたいことを実現できることです。自分の信念に基づいて「自分のやりたいことができる」「自分の作りたい世界を作れる」というのは起業しないとできないことだと思います。

大久保:最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

保科:この世にない新しいサービスを作って、世の中に貢献していくことはとても社会貢献性が高いことです。それが起業の醍醐味だと思いますので、起業家の方々はぜひ一緒に頑張りましょう。

広告コストを抑えたり、ニーズに合わせた広告展開に興味がある方は、ぜひ「Cheer Drive」を活用してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 株式会社チアドライブ 代表取締役 保科 昌孝
(編集: 創業手帳編集部)



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