angle reserve 伊藤啓二|「壊すほうが儲かる」を終わらせる。南アフリカのサファリロッジに挑む3度目の起業と、海外事業を支えるアメックスのビジネス・カード
「努力は夢中に勝てない」。2度のイグジットを経た起業家が、南アフリカで“自然を守るほど稼げる”仕組みをつくる

angle reserve株式会社 代表取締役・伊藤啓二氏
南アフリカ・クルーガー国立公園エリアの私営保護区。日本からドア・トゥ・ドアで25〜30時間かかるサバンナの只中に、日本人が営むサファリロッジ「Xihare(シハレ)」があります。
手がけるのは、angle reserve株式会社 代表の伊藤啓二氏。大学で環境経済を学び、リクルート、9か月の世界一周、2度の起業と売却(イグジット)を経て、3社目のテーマに選んだのは「自然を守ることで収益を上げる」事業でした。
日本の常識が通じない海外事業を、一枚のビジネス・カードがどう支えているのか。3度の創業経験に裏打ちされたカード活用術とあわせて聞きました。
angle reserve株式会社 代表取締役
ビジネスの力で社会課題の解決に挑むソーシャル・アントレプレナー。リクルートを経て2社の創業とイグジットを経験し、2024年5月にangle reserve株式会社を設立。「自然と人間が共生する世界」を掲げ、2025年には南アフリカの私営保護区で日本人初のサファリロッジ「Xihare(シハレ)」を開業。エコツーリズムをはじめとしたNature Businessの創造を軸に、自然を守ることで収益が上がるモデルづくりに取り組む。
この記事の目次
学生時代に出会った「カーボンクレジット」が原点
伊藤:大学では環境経済や環境会計を学んでいて、そこで排出量取引、いわゆるカーボンクレジットに出会ったんです。当時はまだ市場も小さく、ヨーロッパやカリフォルニアなど一部の地域で実証されていた時期。これを使ってビジネスがしたい、というのは学生の頃から思っていました。
自然環境が残っている場所は農村部が多いので、貧困の解決にもなって、ビジネスにもなる。すごく素敵なモデルだなと。ただ、当時はまだ市場自体が小さくて、また自分自身の経営経験もなくて、どれだけ事業計画を書いても黒字化のイメージがまったく湧かなかった。じゃあまずビジネスを学ぼう、ということでリクルートに入りました。
伊藤:9か月かけて回りました。行きたい観光地を巡るというより、目的は「社会課題の現場を見ること」です。リクルートでビジネスのいろはは学べたけれど、排出量取引のような制度を作る側の視点は知っていても、現場に行ったことはほとんどなかった。だから、気になるNPOや企業にボランティアをさせてもらいながら泊めてもらう、というスタイルで回りました。
「自然が消えればいい」と思っている人に、会ったことがない
伊藤:コンセプトとして目指すのは「自然と人間が共生する世界」です。そのために、きちんと保全・保護を行いながら収益が上がるモデルを作っている会社です。いまのコアはサファリロッジ、つまりエコツーリズムですね。
ただ、それだけでは保全に回るお金がまだまだ足りないので、新規事業も作っていますし、この領域のプレイヤーを増やすために「Nature Business Lab」というコミュニティ、エコシステムも運営しています。この分野はまだ新しくて、僕のアイデアが正解だとも思っていません。だからこそ、スタートアップ、大企業、アカデミア、投資家など、立場の違う人たちが交わる場所を作ろうと。
伊藤:たとえば、東京の港区くらいの土地をポンと買って「ここを保護区にします」と言っても、維持できなければ意味がないんです。レンジャーの人件費も、設備の維持費もかかる。その運営費をどう賄うかというときに、エコツーリズムで収益を上げる。
観光のお客様がロッジに宿泊し、サファリドライブやウォーキングサファリを楽しむ。そのお金で自然を守っていく、という構造です。国立公園は基本的に税金と入園料で運営されますが、私営保護区はそうはいかない。自分たちで稼がないと、自然をメンテナンスするお金が生まれないんです。
伊藤:僕、今年37歳なんですけど、これまでの人生で一度も「自然や動物なんて消えればいい」と思っている人に会ったことがないんですよ。誰も望んでいないのに、自然は減り続けている。
これがすごく純粋に疑問だったんです。世界一周で各地を回って分かったのは、みんな自分や家族や将来のために働いていて、その仕事が開発につながっている、ということ。生活のために働くのは当たり前で、ある意味しょうがない。だとしたら、「自然を守りましょう」と言うだけではダメで、守ることがきちんと収益化されるインセンティブがないと、多くの人は巻き込めない。
自分の経験でもそうでした。大学時代、NPOでインターンとして活躍している優秀な学生はいっぱいいたのに、就職となるとみんな大企業に行く。やっぱりお給料が違うから。みんな自然を残したほうがいいと思っているのに、経済的なインセンティブとズレている。
このズレ自体が気持ち悪いなとずっと思っていて、だったらくっつければいいじゃないか、と。いまAIの領域に優秀な人が集まっているのは、面白くて、稼げるからですよね。同じように、この領域もちゃんと収益が上がるようにしないと、優秀な人は集まらないし、そもそも課題を解決できません。

「守ることで収益を上げる」構想を語る伊藤氏
2度のイグジットで得た学び——「努力は夢中に勝てない」
伊藤:反省やら学びやらだらけなんですが、一番を挙げるなら「努力は夢中に勝てない」ということです。論語に「これを知る者はこれを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」という言葉がありますが、本当にその通りだなと。努力って、時間を決めてやるじゃないですか。「1日1時間頑張る」って。でも好きな人は24時間やるんです。勝てるわけがない。ビジネスでもエンジニアリングでも、何の仕事でもそうだと思います。
たとえば僕、大学でコーディングの授業を取っていて、成績は上位だったんです。でも同じ高評価の友人は、試験が終わった後も食事中ずっとコードのことを考えている。「あそこはこう書けば1行で済んだかな」って。その姿を見て、コーディングの世界でこの人には絶対勝てない、と思いました。
だから自分自身の役割も、メンバーへの仕事のお願いも、採用も、この視点を大切にしています。僕は0→1の事業構想や、人とつながっていくことは夢中になれる。昨日も「早く寝なきゃ」と思いながら、気になることが出てきて寝られませんでした(笑)。逆に、細かいオペレーションを詰めるのは努力の時間になってしまう。だったらそこが好きな人に任せたほうが、没頭して考えて、うまく作ってくれるんです。

2度の起業で得た一番の学びは「努力は夢中に勝てない」
南部アフリカで日本人初のサファリロッジ「Xihare」。1年半で分かったのは「2〜3割」
伊藤:現地で動物を意味する言葉です。僕らは自然と人間の共生を目指しているので、自然の代表として動物。そして「X」には、人間と自然の掛け算という意味も込めています。
伊藤:もともとは学生時代に描いたカーボンクレジットをやろうとしていて、小さくテストもしていました。ただ、自社で土地を購入して保全区にする費用を全部賄うのはまだ難しい。そう思っていたときに、サファリツーリズムがすごい勢いで成長しているデータを2021年に見たんです。僕が学生時代に見ていたのは2010年頃のデータなので、「めちゃくちゃ伸びてるな」と。
これなら場所によっては保護区を作れるかもしれない。とはいえ、いきなりアフリカで大きくやりますとはできないので、いろいろ視察して南アフリカに決めて、まずロッジ運営のリスクやペインはどこか、どんなコストがかかるのか、ユニットエコノミクスを小さく検証しようと。僕は自分でやってみないと分からないタイプなので。1号店は、その意味でパイロットの性格も含んでいます。
伊藤:無数にありますね(笑)。まず外国人による不動産購入の壁。南アフリカの査証は審査がめちゃくちゃ厳しくて、資産関係の書類も必要で、「こんなに書類が必要なのか」という驚きの連続でした。土地を買うにも、そのエリアは先住民の土地請求問題が解決済みか、水が溜まりやすい場所ではないか、チェックすべきことが山ほどある。動物はいるけれど密猟が多いエリアだと、レンジャーを増やす必要があってコストが上がる。そのようなコスト計算、日本で事業計画を作っている時点では出てこないですから。
雨がどれくらい強くて、屋根をどの頻度で直すのか。水道が壊れたら誰に頼むのか。ソーラーパネルの角度は本当にいまがベストなのか。現状、まだ2〜3割分かったかな、というところです。
マネジメントも日本とは全然違います。南アフリカは多民族国家で、民族ごとに文化も言語も違う。なかには、対立していたことのある民族もあるようです。その中で、たとえば1つの言語だけで「おはよう」と言ったら、他の言語を話す方々は気分が良くないかもしれない。日本では考えなくてよかった種類の配慮が、たくさんあります。

南アフリカでの「想定外の連続」を振り返る
伊藤:それが、まったく逆でした。僕らは雇用を生む側なので、意外とウェルカムでした。また、既存マーケットではなく、日本マーケットを目指しているのもウェルカムだった理由の1つかもしれません。これには理由があって、2030年までに陸と海の30%を保全しようという「30by30」という国際目標があるんですが、そこに必要なお金のうち、いま賄えているのは15%ほどと言われています。
既存のマーケットでパイを取り合っても、この15%は増えない。日本はまだサファリに行く人が少ないので、ここに新しい市場を作れば、保全に回るお金の総量が増える。現地のロッジオーナーから見れば、僕らはお客様を奪うライバルではなく、変わったことをやっているお隣さんで、しかも日本からお客様を連れてきてくれる存在。うちに来た日本人が、近くのサファリガイドのツアーにも行ってくれるかもしれないわけですから。
海外で一番難しいのは「ネットワーク」だった
伊藤:ネットワークですね。日本なら、小中高や大学のつながりや前職の同僚、スタートアップ界隈、過去2社のお客様やメンバー、パートナーなど、困ったら「こういうときどうしたらいい?」と聞ける人が必ずどこかにいる。
しかし、南アフリカでは相談相手を見つけるのも困難なんです。正しいサプライヤーの見つけ方ひとつ取っても、知っている人に聞けば一瞬だったんだろうな、ということに山ほど時間を使いました。

「海外で一番難しいのはネットワーク」
伊藤:実は小中高の後輩なんですよ。高校の恩師が「後輩にこういうことをやっている子がいるよ」とつないでくれて。ちょうどサファリツーリズムが伸びていて、現地を視察していたタイミングだったので、いろいろ情報を聞いたのが最初です。同じ学校の出身でコミュニティが近いから、信頼の土台がある。現地の保護区やサファリのことは、本当に助けてもらいました。
伊藤:フィロソフィーの合う人が見つかるまで、とにかく会いに行きます。長く付き合う弁護士さんを決めるためだけに、来週ケープタウンに行く、みたいなことをやっています。返信が遅いのはあるあるですし、先輩経営者からは「机の下の賄賂を使いたがる人は、後で必ずリスクになるから避けろ」と教わりました。
アフリカで挑戦した先輩たちに話を聞くと、「入金した瞬間に連絡が取れなくなったパートナーがいた」なんて話はいくらでもあるんです。日本と同じ感覚ではいけない。だから、長期で付き合う相手にはコストをとことんかけて、直接会う。「この人何か合わないな」と違和感を覚えた人とは、高確率で何かトラブルが出てくる。会って話すと、結構見えるものがあると思っています。
3度の起業で確信。「最初からビジネス・カードを作ればよかった」
伊藤:1社目のときにアメックスのビジネス・カードを導入して、会計ソフトと連携すると本当に楽だな、と実感しました。ところが2社目のとき、創業したてで「審査に落ちるかもしれない」とビビってしまって、個人でアメックスのカードを作り、それをほぼ会社用として使っていたんです。
そうすると経理が全部「僕への立て替え」になって、処理がややこしいんですよ。だから3社目のangle reserveでは、設立してすぐ法人カードを申し込みました。落ちるかもと思いながら出したら、問題なく通った。結論、もっと早くビジネス・カードを作っておけばよかったです。個人の立て替えがなくなるだけで、圧倒的に楽ですから。
伊藤:経費は基本的にすべてアメックスのビジネス・カードです。現金は現地でチップを渡すくらいで、カードで払えるものは全部カード。会計ソフトとの自動連携で明細が入ってくるので、経理はそのまま流れていきます。なるべく自動化したいので、事業用カードを分けて連携しておくのが一番早いですね。

経費はビジネス・カードと会計ソフトの自動連携で処理する
国境ごとに通貨が変わる。海外事業でこそ効くカードの価値
伊藤:まず、通貨が変わっても楽なことです。南アフリカはランド、ボツワナに行けばまた別の通貨、ナミビアに行けばまた通貨がある。国境を越えるたびに両替していたら大変ですし、街中に都合よく両替所があるわけでもない。そのときにカードで払えたら楽です。ロッジや大きいスーパー、国立公園の宿泊はカードで払えます。逆に、街の小さな店やタクシーは現金しか使えないところもある。それさえ知っていれば、現金は必要最小限だけ引き出して、あとはカードで回れるんです。
伊藤:これは海外のほうが効きます。日本だと請求は翌月末払いが普通ですが、南アフリカの振込は「今日から2週間以内に払ってください」みたいな短い期限が多いんです。うちの運営コストは振込で支払うものも多く、キャッシュがどんどん早く出ていく。だからこそ、カードで払えるものはなるべくカードにして支払いを後ろ倒せる価値が、日本以上に大きい。仕組み自体は国内と同じなんですけど、全体で見るとより助かっているな、と感じます。
伊藤:渡航が多いので、まず保険ですね。※特にアフリカ路線では長距離なうえに荷物の扱いが日本とは違うので、荷物が壊れたときの安心感があります。それから移動の負担。僕の場合ドア・トゥ・ドアで25〜30時間かかるので、空港ラウンジには本当に助けられています。
あとはコンシェルジュ。※一番多くお願いするのは航空券探しです。「この時間帯で、いくつか候補を探しておいてください」とお願いしておけば、自分の仕事がひと段落する頃にはパッと候補が返ってくる。
乗り継ぎでヨハネスブルグに一泊が必要なときに、ホテルの手配を相談することもあります。探す時間って、結構ばかにならないんですよ。それを巻き取ってもらえるのはありがたいです。
それと、いまお願いしている税理士さんは、アメックスさんの紹介なんですよ。※会社の規模が変わると、それまでの税理士さんでは料金が合わなくなることってよくあるじゃないですか。かといって自分でゼロから探すと、使っている会計ソフトに対応しているかを調べるところから始まって、ものすごく時間がかかる。
アメックスさんが一定のフィルターをかけた税理士さんなら、よっぽど変なことにはならないだろうという安心感があるし、条件に合う候補を数件に絞って紹介してもらえるので、会う人数も探す時間も減る。僕は「人はとことん会って選ぶ」タイプなので、その前段を短縮してもらえるのは大きいです。
伊藤:実はまだ、うまく活用しきれていないんです。ポイントに有効期限がないので、※「次でいいや」と安心して貯め続けてしまっていて(笑)。航空会社のマイルやホテルのポイントに使えたら一番うれしいので、賢い使い方を詳しい方にぜひ聞きたいですね。
あと助かっているのがステータスの連携です。※アメックスのホテル系カードのステータスがきっかけで、よく乗る航空会社の上級会員資格が得られて、優先搭乗やラウンジが利用できる。普段使っていない航空会社でも優遇してもらえるのは、長距離移動の多い身にはありがたい限りです。
※カード付帯特典およびサービス内容はカードの種別により異なります。アメリカン・エキスプレスのビジネス・カード各種詳細をご確認ください。
伊藤:会社を経営していると、自分が大事にしたいことと、絶対に嫌なこと、NGポイントがだんだん見えてくるんです。僕の場合、大事にしたいのはネットワークと、手間をなくすこと、会食の場の雰囲気。NGはストレスや心配ごとが増えること。それが見えてきたときに「じゃあ、それに合うカードは何だっけ?」と考えたら、アメックスだったんですよね。
実は父がカードの不正利用に遭ったことがあるんですが、アメックスさんは電話一本で解決したそうなんです。僕自身は学生時代、別のカードで不正利用に遭って、ものすごく面倒な思いをした。ああいうことは絶対に起きてほしくない。
いいお店やいい人につないでくれて、嫌なことを取り除いてくれる。以前は「なんとなく良いブランド」と思って使っていたのが、いまは「こういう理由で自分に刺さっているんだ」と明確になった。ここには年会費を払う価値がある、と納得して使っています。

「アメックスは、自分が大事にしたいことに合っている」
取り返しのつかないこと以外は、小さく早く失敗する
伊藤:やるべきことは、とにかくいろんな人に話を聞くことです。僕は3回目ですが、1回目、2回目より明らかに創業がうまくなっているんですよ。当たり前ですが、たくさん経験するとうまくなっていきます。なので経験のある人にどんどん聞けると良いと思います。
事業やお金のことだけじゃなくて、雑務もそうです。登記のあとどこに何を届け出るのか、どこに頼めば安く済むのか。カードもそうですよね。最初からビジネス・カードを作って会計ソフトに連携しておけば、領収書の山と格闘する必要もない。1社目は「これ全部自分でやるの?」と途方に暮れていたことが、3社目では最初から自動連携で終わっている。何かとスムーズなんです。いまはAIにも聞けますし、経験者に聞けば一瞬で済むことがたくさんある。
避けるべきは、取り返しのつかないことです。たとえば資本政策や資金調達。ここはじっくり考えたほうがいい。逆に言えば、こういったこと以外は取り返しがつくので、早くアクションして、小さく失敗していくことが大事だと思います。
伊藤:サファリツーリズムは規模を拡大していきたいですし、30by30に向けてはツーリズムだけでは足りないので、新規事業を作っていきます。これは1社で解決できる課題ではないので、国内外の大手企業や起業家、アカデミアと連携しながら。その先に「自然と人間の共生」が叶えられたらと思っています。
伊藤:事業を作っていくのは、本当に楽しくてエキサイティングです。まずそれを楽しんでほしい。僕にとって大事だったのは「努力は夢中に勝てない」ということと、人とのつながりでした。でも、正解はないんです。だから、とにかくたくさんチャレンジすること。取り返しのつかないこと以外は、小さく、早く、いっぱい失敗していけばいいんじゃないかなと思います。
(編集:創業手帳編集部)
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