【税理士監修】上半期が終わる前に!経営者が今すぐやっておくべき”中間節税チェック”【2026年版】

決算月に後悔しないために、今すぐ動ける5つの節税チェックを解説

節税ポイントを解説
「決算月に慌てて節税策を探したが、もう手遅れだった」という失敗談は経営者あるあるです。節税は仕込みのタイミングが命。今まさに上半期が終わろうとしているこの時期が、残り半年の打ち手を決める最大のチャンスです。決算月に関わらず「残り半年」のタイミングで動き始めることが、今期の節税を成功させる鍵です。この記事では、今すぐ動ける節税チェックを実務レベルで整理します。

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監修:石黒 健太(いしぐろ けんた)石黒健太税理士事務所 代表税理士
2013年税理士登録。2016年に石黒健太税理士事務所を開業。
京都駅前を拠点に、創業支援およびDX支援を中心に事業を展開している。
また、自らのノウハウを活かして税理士向けの経営塾も主催しており、多角的な視点から経営者のビジネス成長をサポートしている。


この記事の目次

なぜ「今」確認するのか──決算月に動いても遅い理由

節税策には「仕込みが必要なもの」と「期末でも間に合うもの」がある

節税と聞くと「決算前に慌てて動くもの」というイメージを持つ経営者は少なくありません。しかし実際には、節税策は大きく2種類に分かれます。

タイプ 主な施策 動くべき時期
仕込み型(事前準備が必要) 経営セーフティ共済の加入・増額、経営力向上計画の認定申請、役員報酬の変更 決算の3〜6ヶ月前
駆け込み型(期末でも対応可) 少額消耗品の購入、広告宣伝費の前倒し発注、決算賞与の支給 決算1〜2ヶ月前

今まさに上半期が終わろうとしているこの時期は、「仕込み型」の節税策を動かせるラストチャンスです。この時期を逃すと、今期は手をこまねいたまま決算を迎えることになります。

経営力向上計画の認定には1ヶ月以上かかる

設備投資による即時償却(中小企業経営強化税制)を活用するには、事前に「経営力向上計画」の認定を受ける必要があります。認定までの期間は申請先や内容によって異なりますが、標準処理期間は30日程度とされ、書類不備や共管申請がある場合はさらに時間がかかることがあります。

原則として、経営力向上計画に位置づける設備は、取得前に計画の認定を受ける必要があります。例外的に、申請書到達日から遡って60日以内に取得した設備が認められる場合もありますが、対象外となるケースもあるため、実務上は認定後の取得を前提に進めるのが安全です。

つまり、決算直前に「この設備を買って節税しよう」と思い立っても、認定が間に合わず翌期に先送りになるケースが頻繁に起きます。今の時期から動き始めることで、認定→設備取得→今期の節税、という流れが初めて成立します。

まず現状把握──上半期の利益を”今すぐ”確認する

月次試算表を経営判断ツールとして使えているか

節税を考える前に、まず「今期いくら利益が出そうか」を把握することが出発点です。ところが、試算表を税理士任せにして自分では見ていない、という経営者は意外に多いものです。

月次試算表は単なる経理書類ではなく、利益見通しを早期に把握するための経営判断ツールです。理想は月次15日までに前月分を締め、月末までに経営者自身がレビューするサイクルを作ること。クラウド会計ソフト(弥生・freee・マネーフォワードクラウドなど)を導入すると月次決算のスピードが大幅に上がり、節税の意思決定も前倒しできるようになります。
また、会計ソフトを導入するだけでなく、請求書の受取から記帳までの一連の業務フローをデジタル化・仕組み化し、経営者が実務に追われなくても自動で数字が上がってくる体制を作ることが、最速の現状把握に繋がります。

年間着地予想の立て方──3つの数字を見るだけでOK

難しく考える必要はありません。以下の3つの数字を前年同期と比較するだけで、今期の着地イメージはおおむね見えてきます。

  • 売上高 前年同期比で増減トレンドを確認
  • 売上総利益(粗利) 原価率の変化をチェック
  • 営業利益 販管費を含めた本業の稼ぎを確認

「このペースで行くと年間利益はおよそ○○円になりそう」という感覚を今の時期に持っておくことが、以降の節税策の判断材料になります。利益が予想より出ていれば積極的に節税を仕込む、出ていなければ無理な節税は控える、というシンプルな判断軸です。

節税チェック①──経営セーフティ共済(倒産防止共済)に加入・増額する

経営セーフティ共済とは?基本をおさらい

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先が倒産した際に無担保・無保証で借入ができる中小企業向けの共済制度です。節税面では掛金が全額損金算入できるという大きなメリットがあります。

項目 内容
掛金 月額5,000円〜20万円(5,000円単位で選択)
積立上限 累計800万円
税務上の扱い 掛金全額が損金(法人)または必要経費(個人事業主)に算入
解約返戻金 40ヶ月以上加入で掛金全額が戻る

中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営しており、金融機関経由で申し込めます。

今の時期に加入・増額を検討すべき理由

倒産防止共済は「過去の月に遡って掛金を払うことや、増額すること」は制度上できません。決算月に慌てて過去分を埋め合わせることは不可能なため、上半期の今の段階から早めに活用検討を始めることが極めて有効です。
経営セーフティ共済は加入月から損金算入が始まるため、今月加入すれば今期の残り月数分がそのまま節税に直結します。また、掛金を前納(最大12ヶ月分)することで、一度に大きな損金を作ることも可能です。

すでに加入済みの方は、増額を検討する時期でもあります。上半期の利益が想定より多く出ているなら、月額の掛金を引き上げて今期の課税所得を圧縮する選択肢があります。変更手続きは金融機関の窓口またはオンラインで完結します。

なお、2024年10月1日以降に共済契約を解約し、再度契約を締結した場合、解約日から2年を経過する日までに支出する掛金は、必要経費または損金に算入できません。再加入自体は可能ですが、節税効果を得られない期間が生じるため、解約や再加入は慎重に判断しましょう。

節税チェック②──設備投資の即時償却を活用する

少額減価償却資産の特例が2026年度に拡充

中小企業・個人事業主が使いやすい節税策として、少額減価償却資産の特例があります。通常、30万円未満の資産は取得年度に一括で費用計上できましたが、2026年度の税制改正でこの上限が40万円未満に引き上げられています(年間300万円の総額枠は変わらず)。

これにより、これまで「30万円をわずかに超えるから分割計上せざるを得なかった」PC・業務ソフト・什器などが、今期中の一括損金算入の対象になります。今期に必要な設備の購入を検討している方は、「今期中に取得し、稼働させる(使い始める)こと」を意識してみてください。「設備の購入(取得)」だけでなく、「今期中に納品され、実際に事業で使い始めていること(事業の用に供していること)」が損金算入の絶対条件となります。箱から出していない状態では否認されるリスクがあるため注意が必要です。

経営強化税制による即時償却──対象設備と手続きの流れ

より大きな設備投資には、経営強化税制(中小企業経営強化税制)による即時償却または10%税額控除が活用できます。

対象となる主な設備は以下のとおりです。

  • A類型 最新モデルの機械・装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなど
  • B類型 投資収益率が年平均5%以上(2026年度改正で7%以上に引き上げ予定)の設備

手続きの流れは「工業会等による確認(A類型)または経済産業局への事前確認(B類型)→経営力向上計画を申請→認定後に設備取得→税務申告で適用」となります。認定取得に1ヶ月前後かかるため、今から手続きを始めれば今期中の取得・使用・適用が現実的なラインに入ります。

節税チェック③──役員報酬の見直しタイミングを確認する

役員報酬は「事業年度開始から3ヶ月以内」しか変更できない

法人が役員報酬を損金算入するには、毎月同額を支払う「定期同額給与」であることが原則です。そして、この金額を変更できるのは原則として事業年度開始から3ヶ月以内のみ。期中に業績が好調だからといって役員報酬を増やしても、増額分は損金に算入されないリスクがあります。

決算月 役員報酬変更の期限
3月決算 6月末まで(すでに期限到来)
6月決算 9月末まで
9月決算 12月末まで
12月決算 3月末まで

3月決算の法人はすでに今期の変更タイミングを過ぎていますが、他の決算月の法人はまだ変更できる可能性があります。まず自社の決算月を確認し、変更可能な期間内かどうかをチェックしましょう。

来期の役員報酬設計に向けて今から準備する

今期の変更が間に合わなかった3月決算法人でも、今の時期から来期の役員報酬をシミュレーションしておくことには大きな意味があります。

毎月の定額報酬だけでなく、あらかじめ税務署に届け出ることで損金算入が可能になる「事前確定届出給与(役員への賞与)」の活用も含めて、来期の報酬設計を今からシミュレーションしておきましょう。

役員報酬は高すぎると法人の課税所得は下がりますが役員個人の所得税・社会保険料が増え、低すぎると法人に利益が残り法人税が増えます。法人税と個人の所得税・社会保険料のバランスが最適になる水準を今期の利益着地予想をもとに試算しておき、来期の期初にすぐ変更手続きができる状態にしておくと万全です。

節税チェック④──広告宣伝費・修繕費の前倒し発注を検討する

今期中に使い切れる経費を洗い出す

上半期の利益が想定より多く出ている場合、今期中に予定していた支出を前倒しすることで課税所得を圧縮できます。代表的なものは以下のとおりです。

  • 広告宣伝費 Web広告の出稿増額、チラシ・カタログの制作・印刷
  • 修繕費 オフィスや店舗の修繕・メンテナンス
  • 消耗品費 事務用品、備品の補充
  • 研修・採用費 社員研修、求人広告

ただし、これらはあくまで「本当に必要な支出を前倒しする」という考え方が大前提です。節税のためだけに実態のない支出を作ることは、税務調査で否認されるリスクがあります。
また、経費の過度な前倒しは手元資金を圧迫します。節税ばかりに気を取られず、必ず資金繰り表とセットで無理のない範囲で実行することが大前提です。

短期前払費用の特例も視野に

毎月継続して発生する一定のサービス費用については、契約内容や支払条件によって、短期前払費用の特例を検討できる場合があります。代表例として、家賃・保険料・サーバー費用などがあります。

適用の主な条件は以下の5点です。

  • サービスの提供期間が1年以内であること
  • 継続して同様の処理をすること(毎期継続適用が必要)
  • 収益と対応させる必要がない費用であること
  • 年払いという契約に基づくものであること
  • 支払った事業年度内にサービスの提供が開始されていること

たとえば、月額10万円のオフィス家賃を7月に12ヶ月分(120万円)前払いすれば、今期に120万円を一括で損金算入できます。資金繰りに余裕がある場合は検討の価値があります。

ただし、顧問料など人的役務の性質が強い費用は判断が分かれやすいため、税理士に確認しましょう。

やってはいけない”駆け込み節税”の落とし穴

税務調査で否認されやすい3つのNG

節税への意識が高まる時期だからこそ、やってはいけない行為も確認しておきましょう。以下の3パターンは税務調査で否認されやすく、重加算税(本来の税額の35〜40%)が課されるリスクがあります。

  • ①手続きなしの役員賞与 事前確定届出給与の届出を税務署に提出せずに役員へ賞与を支払っても、損金算入は認められません
  • ②実態のない経費計上 実際に使っていない経費や、プライベートと混同した支出を経費にすることはNGです
  • ③事業供用前の前倒し計上 購入・発注したが期末までに事業に使っていない設備を、今期の損金として計上することはできません

「節税」と「脱税」の境界線

節税と脱税の違いは一言でいえば、「制度の趣旨に沿って使っているか否か」です。国が用意した制度を正しく活用した結果として税負担が下がるのが節税。事実を隠したり架空の支出を作ったりして税額を減らすのが脱税です。

「制度に沿って使った結果として節税になる」という順序を守ることが、長期的に最も安定した決算対策につながります。判断に迷う施策は、必ず顧問税理士に相談してから実行するようにしましょう。

今すぐできる!中間節税チェックリスト

この記事の内容を、すぐに確認できるチェックリストとしてまとめました。ひとつずつ確認してみてください。

チェック項目 今すぐやること
□ 上半期の利益を確認した 試算表を開いて年間着地予想を概算する
□ 経営セーフティ共済を検討した 未加入なら申込手続きを開始。加入済みなら増額・前納を検討
□ 設備投資の計画を確認した 今期中に必要な設備があれば経営力向上計画の申請を開始
□ 役員報酬の変更期限を確認した 自社の決算月から変更期限を逆算し、来期の水準をシミュレーション
□ 前倒しできる経費を洗い出した 広告・修繕・短期前払費用の対象費用をリストアップ
□ NG施策を確認した 実態のない経費・手続きなしの役員賞与が混入していないか点検

節税は”未来への投資”で選ぶ:税理士 石黒 健太のポイント

「決算前の駆け込み節税」は、実は手元の資金(キャッシュ)を無駄に減らしてしまう悪手になりがちです。記事にある通り、上半期が終わるこのタイミングで利益の着地を見極め、「仕込み」を始めることが経営の安定に直結します。

私から経営者の皆様にお伝えしたいのは、節税を「単なる経費の消費」にしないことです。どうせ資金を使うのであれば、属人的な業務をなくすためのITツール導入や、少人数でも回る組織の「仕組み化」など、来期以降の生産性を劇的に高める「未来への投資」に予算を振り向けてください。

また、節税策の選択肢を増やすためには、自社の数値をタイムリーに把握できるデジタル環境の構築が不可欠です。この中間決算の時期を、自社の経理体制や業務フローを根本から見直す良い機会として捉えてみてください。

まとめ

節税は「決算直前に慌てて動くもの」ではなく、「上半期が終わる今の時期から仕込んでおくもの」です。

経営セーフティ共済への加入・増額、設備投資の認定申請、役員報酬のシミュレーション──これらはどれも、今動けば今期に間に合う施策です。まず試算表を開いて上半期の利益を確認し、顧問税理士と30分話す時間を作ることが、今できる最善の一歩です。

「今動ける人」と「決算月に後悔する人」の差は、情報とタイミングだけ。ぜひこの記事をきっかけに、今期の節税対策を前倒しでスタートしてください。

(編集:創業手帳編集部)