現物給与とは?代表例や課税対象、価額の算定方法などを詳しく解説!

現物給与は税務上の取り扱いを間違えないように注意しよう


現物給与は、金銭以外の経済的利益を意味します。給与は現金での支給が一般的ですが、現物給与では食事、通勤時の定期券、制服、住宅費などが該当します。
しかし、現物給与は法律によって範囲が異なる部分もあるのが実情です。

そこで、この記事では現物給与が何かに加えて代表例、課税対象、価額の算定についても解説します。現物支給の内容や範囲について知りたい人はぜひ参考にしてください。

現物給与とは?簡単にわかりやすく解説


現物給与とは、金銭以外で支給される経済的利益です。
簡単に言えばお金以外で支給される給与が対象で、社員食堂での食事、社員旅行、通勤定期券、社宅の貸出などが該当します。

現金給与に比べて支給される形態が異なりますが、現物給与であっても給与所得の中に含まれるので原則課税対象です。
法律では、現物給与の対象となる範囲が異なるケースもあるのでこれらを詳しく理解しておくと安心です。

国税庁では、その性質上給与に課税しなくても良いとされるものを現物給与として認めています。
例えば、仕事上欠かせないもの、受け取る側が選べないもの、換金しにくいもの、価値を評価するのが難しいもの、非課税になっているものです。
労働基準法では、労働の対価として支払われるものが賃金であり、現物支給や代金を従業員から徴収する際には原則賃金にはなりません。

現物給与に該当する代表例一覧


ここでは、現物給与に該当する例を紹介していきます。

社宅・家賃補助

現物給与の代表的なものとして社宅や家賃補助があります。
従業員に社員寮や社宅を貸与する場合、賃貸料相当額の50%以上を徴収していた場合は給与課税にならないので所得税や社会保険料の負担軽減にもなります。
従業員に無償で社員寮や社宅を貸与した場合、賃料相当額は給与内で課税対象になる仕組みです。

食事の支給

食事の支給は、一般的に福利厚生費として処理されます。役員や従業員に対して食事を支給する場合、決まった条件を満たしていれば給与課税にはなりません。
役員や従業員が食事価額の半分以上を負担していたり、食事価額から役員や従業員負担分を控除したりした残額が1カ月3,500円以下となる場合が対象です。
※令和8年度税制改正の大綱では非課税限度額の引き上げが決定され、令和8年4月から引き上げられる予定

通勤用定期券の支給

現物給与対象の典型的なものである通勤用定期券は、経済的・合理的な経路や方法での通勤に限り、通勤定期券が非課税になります。
通勤に必要な定期券の費用が15万円を超える場合、超えた分が課税対象となり、上限15万円までが非課税です。
この場合、電車やバスに限らず新幹線や特急列車であっても、最も経済的・合理的な経路や方法と判断された場合は非課税での支給ができます。

ただし、通勤手当に関しては賃金の一部とみなされているため、本来であれば現金支給でなくてはならないものです。
労働協約がある場合のみ、定期券などの現物での支給が可能なので注意してください。

自社製品・サービスの無償提供

現物給与の代表的なものとして、自社製品やサポートの無償提供が挙げられます。
自社商品を無償で提供した場合、提供された品物が資産と認識され、これに応じた金額が給与として支給したものと考えられるので、税金も課税対象です。
給与に該当する金額は、提供される資産に応じて異なり、商品やサービスが一般的に販売や提供される場合は通常の販売価格が課税対象となります。

商品券・カタログギフト

商品券やカタログギフトは原則現物給与の対象となり、全額所得税の課税対象となっています。
ギフト券についても同じ扱いであり、換金性の高さや自由に商品が選べるなどの点から現金支払いと同じになるのです。

社員旅行の費用

社員旅行の費用に関しても、原則現物給与として課税対象になっています。ただし、現物給与の対象になるのは会社から社員に提供する旅費です。
福利厚生として非課税で扱われるには、4泊5日以内・全従業員の半分以上の参加・社会通念上一般的な内容であることが、会社の行う社員旅行の条件となります。
そのため現物支給される旅行は、細かな部分までチェックすると安心です。

その他

現物給与には、他にも記念品、社員レクリエーション費用、人間ドックの会社負担、冠婚葬祭でのご祝儀や香典、お見舞金、レジャークラブの入会金、年会費などもあります。
これらは、従業員に対して直接的な金銭以外の経済的利益を与えていることで現物給与に該当するという仕組みです。

現物給与は課税対象になる?


現物給与に関係する税金の扱いは、どのようになっているでしょうか。
課税対象になるケースもあれば、非課税になるケースがあるだけでなく、消費税についても細かく決まっています。
ここでは課税対象と非課税について解説します。

課税対象となるケース

課税対象になるケースは以下のとおりです。

課税対象になるもの 内容・条件
通勤手当(電車・バス) ・税金の種類:厳選所得税
・1カ月あたりの非課税限度額を超えた部分が給与の課税対象です
通勤手当(車・自転車) ・税金の種類:厳選所得税
・片道2km未満の場合、全額課税対象です
・非課税の限度額以上の通勤手当が課税対象となります
・最も経済的・合理的な経路や方法に該当していても1カ月あたり15万円以上となった場合は超えた部分の金額が課税対象です
記念品・永年勤続表彰記念品 ・税金の種類:源泉所得税
・記念品支給、旅行、観劇の招待費用、現金、商品券の支給などの場合は全額給与に課税されます
・本人が自由に記念品を選択できる場合も価額が給与として課税されます
食事の支給 ・税金の種類:源泉所得税
①役員、使用人が食事の価額を半分以上負担している
②「食事の価額-役員、使用人が負担している金額」の計算式で算出された金額が1カ月あたり3,500円以下
上記の要件を満たしていない場合は課税対象です
・食事を支給するのではなく、現金で食事代補助を行う場合1食あたり300円(消費税抜き)以下の金額を支給する場合を除いて補助全額が給与課税対象です

※令和8年4月から限度額が引き上げ予定

使用人に社宅や寮を貸した ・税金の種類:源泉所得税
・給与課税の範囲は使用人に無償で貸与する場合、賃借料相当額よりも低い家賃の場合、現金で支給される住宅手当や入居者の直接契約での家賃負担が課税範囲です
従業員のレクリエーション旅行、研修旅行 ・税金の種類:源泉所得税
・研修旅行が会社の業務に直接必要でない場合はその費用が給与として課税対象になります
・研修旅行での業務に直接関係ない部分でかかった費用がある場合はこの分が課税対象です

非課税になるケース

続いて、非課税になるケースは以下のとおりです。

非課税になるもの 内容・条件
通勤手当(電車・バス) ・税金の種類:厳選所得税
・通勤手当や通勤定期券など一定の限度額までは非課税ですが、最も経済的で合理的な経路や方法で通勤した場合に限ります
・上記の方法で通勤した場合、1カ月あたり15万円を超える際には15万円が非課税となる限度額です
通勤手当(車・自転車) ・税金の種類:厳選所得税
・通常の給与に加算して支給している通勤手当に限り、一定の限度額までは非課税です
・限度額は片道の通勤距離に応じて限度額が異なります
・2km未満:全額課税対象
・2km以上10km未満:4,200円
・10km以上15km未満:7,300円
・15km以上25km未満:13,500円
・25km以上35km未満:19,700円
・35km以上45km未満:25,900円
・45km以上55km未満:32,300円
・55km以上:38,700円
※有料道路利用の場合も最も経済的・合理的な経路や方法であれば非課税の通勤手当に該当します
記念品・永年勤続表彰記念品 ・税金の種類:源泉所得税
・記念品は要件を満たしていれば給与課税しなくてもよいとされています
食事の支給 ・税金の種類:源泉所得税
・役員、使用人に支給する食事は2つの要件を満たしていれば給与課税がされません
①役員、使用人が食事の価額を半分以上負担している
②「食事の価額-役員、使用人が負担している金額」の計算式で算出された金額が1カ月あたり3,500円以下
※令和8年4月から限度額が引き上げ予定
使用人に社宅や寮を貸した ・税金の種類:源泉所得税
・使用人に社宅や寮を貸与している場合、1カ月あたり賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば給与に課税されません
【賃貸料相当額の計算方法】
・(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
・12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡))
・(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
従業員のレクリエーション旅行、研修旅行 ・税金の種類:源泉所得税
・従業員のレクリエーション旅行は内容を総合的に勘案して社会通念上一般的なレクリエーション旅行と認められる場合に限り、参加者の給与にしなくてもよいとされます
・旅行期間が4泊5日以内
・参加者が全体人数の50%以上

なお、現物給与も給与として考えられるので健康保険、被保険者の保険料算定の基礎や構成献金保険などの標準報酬月額にも含まれる仕組みです。
現物給与の現物には消費税も含まれるため、含んだ金額が源泉徴収されます。

【比較】課税・非課税の早見表


課税と非課税について比較してみました。以下を参考にして課税か非課税かを判断してみてください。
迷う場合は税理士、社会保険労務士への確認や相談がおすすめです。

項目 原則 課税となるケース 非課税の条件
通勤手当 非課税部分あり 限度を超えた分 法定限度額以内
食事の支給 原則課税 条件を超えた分 2つの条件を満たしている
社宅や寮 原則課税 無償提供 一定の賃料徴収
商品券 原則課税 原則課税対象 なし
社員旅行 条件により非課税 業務に直接的な関係がない部分 業務に直接的な関係があって社会通念上の範囲

現物給与の社会保険上の取り扱い


社会保険と労働保険では、現物給与の扱い方が異なっています。ここでは、どのように扱いが異なるかを解説します。

労働保険上の現物給与との違い

労働保険(雇用保険・労災保険)では、現物給与も賃金として扱われる点は同じですが、評価方法が社会保険と異なります。労働保険では、以下のような考え方で評価されます。

  • 実際の価格や市場価値を基準に評価する
  • 通常の賃金として労働者に利益があるものは賃金に含める

例えば、会社が食事を提供している場合、食事の実際の費用相当額が賃金として扱われ、労働保険料の算定基礎となる賃金総額に含まれることになります。
社会保険のように全国一律の評価表があるわけではなく、実態に基づいて判断される点が特徴です。

標準報酬月額の算定方法

社会保険の場合、現物給与は報酬として扱われていて標準報酬月額の算定に含まれますが、労働保険の場合は現物給与を賃金の一部として扱い、特定の条件に基づいた価額によって算出されます。
食事や住居の提供については現物給与と認められていて、厚生労働省が定めている基準に基づいた計算が行われます。
社会保険では標準報酬額を基準に保険料の算定を行いますが、労働保険では実際に支払った賃金の総額を基準とします。
労働保険では標準報酬月額を基準としないことを覚えておくと理解しやすいです。

現物給与の価額を算定する方法


ここでは、現物給与の価額を算定する方法について解説します。

現物給与の価額とは?

現物給与の価額とは、従業員に対して提供されるサービスや物の価値を示すもので、住宅や食事などの現物給与について厚生労働省が定めているものです。
価額は時価に基づいた換算が行われていて、各都道府県によって異なります。
例えば、大阪は1人1日あたりの食事額が790円に対して、東京都では810円、沖縄は840円となります。

算定方法の基本ルール

算定方法の基本的なルールは、以下のとおりです。

・社宅の計算方法
社宅などの住宅を提供する場合、都道府県ごとに定められている現物給与価額に部屋の大きさをかける方法で計算します。
計算で出た答えが従業員から徴収している使用料よりも多くなる場合、これを引いた金額が現物給与です。

・食事支給の計算方法
従業員に食事を提供している場合、厚生労働省が定めている都道府県別の価額を元に計算します。
被保険者が費用の一部を負担しているかによって違う計算方法が適用されるので注意してください。

現物給与を導入する際のポイント


今後、現物給与を導入する際には、どのような部分を意識して取り入れるべきでしょうか。ここでは、導入のポイントについて解説します。

就業規則などに明記し、従業員からの同意も得る

現物給与を今後導入する場合、従業員が把握しやすく理解できるように就業規則や労働契約書に明記しておく必要があります。
これは従業員にとっても影響があるため、事前に十分な説明を行って理解や同意を得る必要があるからです。
また、税務処理においても課税や非課税の内容やルールを間違えてしまうと、税務調査の際に指摘を受けてしまうので専門家からアドバイスを受けて進めると安心です。

専門家からアドバイスを得て正しく導入する

現物給与における専門家は税理士や社労士です。
社労士を設置している企業であれば、社会保険の手続きを代行してもらったり、労務関連のコンサルタントと依頼したりできます。
税理士なら、税務関連の書類や代理、相談などを受けているので、各種税金関連の対応を相談できる存在です。
このような専門家からのアドバイスを得て正しく導入するようにしてください。

まとめ・現物給与の仕組みを正しく理解し、適切に活用しよう

現物給与は企業において福利厚生や税制優遇などのメリットがありますが、細かな条件や要項があるので正しく理解する必要があります。
従業員への理解を進めつつ、専門家に相談してからのスタートがおすすめです。

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(編集:創業手帳編集部)