【第二回】「テプラ」「ポメラ」などヒット商品連発のセオリーとは?キングジム宮本社長独占インタビュー
キングジムの商品開発のセオリー
(2015/07/24更新)
表示用のラベルが手元で簡単に作れる「テプラ」、文章入力に特化した「ポメラ」などヒットを連発しているキングジム宮本社長に独占インタビューしました。市場調査では分からない「ユーザーが本当に欲しい物」を開発するセオリーを伺いました。(全二回)
【第一回】「テプラ」・「ポメラ」を生んだヒット商品連発のセオリーとは?キングジム宮本社長独占インタビュー
1954年生、東京生まれ。慶応義塾大学卒業後、祖父が創業した文具メーカー・キングジムに入社。84年に常務取締役総合企画室長、86年に専務取締役に就任。85年に、それまで自社で扱っていなかった電子文具の開発を目指す「Eプロジェクト」を立ち上げ、88年に発売した「テプラ」は大ヒット商品となった。
92年に代表取締役社長に就任。その後も「ポメラ」「ショットノート」をはじめ、独創的なアイディア商品を次々とヒットさせ、脚光を浴び続けている。
アンケートや市場調査は新規概念商品には無効
宮本:やり方次第だとは思いますが、あまりあてにはならないと感じています。
マーケティング会社の力量にもよりますが、ほとんどは正しい調査方法になっていないと思っています。
「ポメラ」で、新製品の方向性を見極めるために街頭調査をやったのですが、「ポメラ」の認知度調査をすると、圧倒的に若い人が知っていて、中年層は全然知らない。
欲しいかどうかを問うても、圧倒的に欲しいのは若者ばかりなのです。
若者に認知度が高く、若者が欲しい商品だから、若者に売れると思うじゃないですか。
そこで、若者向けの商品開発をすると、全く大失敗をするのです。
それは、何故かというと、若者は色々な情報網も持っているから様々な情報に詳しいけれど、情報と同時に買いたいものも沢山あるのです。
欲しいと言っても人間は優先順位で買い物をする。おなかがすくと食べ物を買う、喉が渇くと飲み物を買うじゃないですか。
その次に、女性の場合はファッションとか、欲しいものが次々に出てきて、「ポメラ」が欲しいといっても優先順位の15位ぐらいにランクされているので、お金がそこまで回らない。
だいたいは優先順位の6、7番までで終わってしまうのです。これではずっと買ってもらえません。
ところが、中年男性は買うのです。そもそも買いたいものが少ないから、必然的に優先順位が高いのです。
商品の情報を知らない人が多いから、もっと情報があったら買うという人はいるのです。
そういう人に向けてPRすると、「ポメラ」は売れる。
買うものがないにもかかわらず、お金は若者よりも持っているし。「最先端らしい…」となると、買わないと流行に遅れるような気がして買う人が多いのです。ですから、「ポメラ」は結果的には40代50代の男性に圧倒的に売れているのです。この結果は市場調査ではなかなか出てきません。
ニーズから生まれる商品開発
宮本:当社には電子機器の専門家は多くはいません。技術系に関して下地があまりないですから、当然ニーズから持ってくるしかないですよね。
ニーズから開発というのはとても必要なことだと思います。
「テプラ」はニッチ商品でもあり、事務用品、オフィス用品でもあるのですが、実は消耗品ビジネスでもあるのです。
「テプラ」の本体が目立ちますが、実際のビジネスとしてはテープカートリッジから得られる利益が大きい事業構造です。たくさん使っていくうちにどんどんテープの種類を揃えたくなるじゃないですか。色も各種ありますからね。
長い間、継続してお使いいただけているのが、「テプラ」のいいところです。
卓上名刺ホルダーの「メックル」。デジタル商品なのにグリップを持った時の感触や見た目など、絶妙なアナログ感が秀逸。全ての層に受けなくても一部のファンに強く支持されそうな特徴的な使用感です。
宮本:「メックル」という卓上の名刺ホルダー感覚で使えるデジタル名刺管理ツールに期待しています。
こちらの商品のヒットのカギは手で回すダイアルの感覚だと思います。名刺を本体のスキャナで読み取り、画像データで名刺を検索することが可能です。その検索の際に本体のダイアルを回して検索するのですが、ダイアルを回す感覚はクセになりますよ。
基本的に当社では、アイデアを出した人がリーダーとなって責任を持って商品開発を行っています。なぜなら、アイデアを出した本人が誰よりも一番商品に対するこだわりや情熱があるからです。
「メックル」もデジタル機器ではありますが、このダイアルのような手触りや使用感といった開発担当の細かなこだわりがユーザーの満足度を高め、ヒット商品につながると考えています。
開発担当のアイデアが商品として実現するためには、コストや効率といった様々な条件をクリアしていかなければなりませんが、使い心地や感覚に至る細かな部分へのこだわりが商品のクオリティーを高め、ヒットするか否かを決定する要因の1つと考えています。
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(取材協力:株式会社キングジム/宮本社長)
(編集:創業手帳編集部)