法人税申告書作成時に知っておこう!よく使用する明細書8種類と作成時の注意点
ポイントを押さえて法人税申告に備えよう
(2017/06/01更新)
申告納税制度というシステムをご存知ですか?法人税法では、法人自らが税額を申告・納税しなければなりません。その際に必要な書類は、意外と数多いもの…。今回は法人税を申告する際に使用する明細書18種類の中から、よく使う8種類について解説していきます。
この記事の目次
法人税申告書とは
法人税申告書とは、「別表1~18」までがあり、表紙も入れると最低でも20枚もの厚さになる資料です。特に別表1は「確定申告書」と呼ばれ、馴染みのある方も多いかもしれません。
それ以外の別表は、いわゆる確定申告の「明細書」として取り扱われています。確定申告書に、明細書を添付して、法人税申告書と呼びます。必要な書類は多岐に渡りますので、添付の忘れがないように注意が必要です。
なぜ、多くの書類が必要になるの?
では、なぜそんなにも多くの書類が必要なのでしょうか?
それは、法人税というものが各法人の経営状態・規模などによって金額が異なるので、割り出された法人税が、「なぜ、その金額になったのか」という理由を説明する必要があるからです。
いわば、「法人税の説明書」と言うべき存在ですね。
申告書作成前の事前準備3ステップ
1.「決算整理」を確認する
まずは、当期に行うべき取引のうち、まだ未処理のものをきれいに整理する必要があります。これを「決算整理」といいます。自社の財政状態を可視化するために、※貸借対照表を使用して現状を把握します。
※貸借対照表:いわゆる「バランスシート」と呼ばれるもので、企業の一定期間の財政状態を「資産」・「負債」・「純資産」で見ることができる表のこと。
関連記事:貸借対照表(BS)読めますか? 7つのチェックポイントで、倒産リスクを分析しよう!
ここで注目したいのが、下記の3点です。
- 資産:会社の運用状態のこと。現金、預金、売掛金、固定資産や、繰延資産など、会社がどのような状態でモノやお金を持っているのかを示します。
- 負債:借りた資金で調達したもの。これには、買掛金や未払金、未払い費用などの「流動資産」。長期の借入金となる「固定負債」が挙げられます。
- 純資産:株主の資金で調達したものです。
これらを整理することで、年をまたぐお金を、当年分と翌年以降の分に分けることができます。
また、賃借対照表と同じく、申告書作成に不可欠なのが、会社の経営成績を収入と費用で対比し、差額から利益を示すことができる損益計算書の作成です。
申告書の作成には、上記2つの表を作成する必要があります。
2.「勘定科目内訳書」の作成は済んでいるか?
決算整理によって作成した賃借対照表や、損益計算書を、各勘定科目の内訳を示した明細書として、提出する資料を「勘定科目内訳書」といいます。
実は、決算日の翌日から2カ月以内には確定申告書や決算報告書と共に税務署に提出しなければなりません。
3.「残高試算表」を作成してみる
「残高試算表」とは、各勘定口座の残高のみを集めた表のことです。勘定科目を中央に置き、左手に借方、右手に貸方のマスを作って記入を進め、その合計額が一致しているのかを確認します。
関連記事:試算表とは|3つの試算表の「違い・見方・作り方」を解説!
申告書はどのくらい種類がある?
申告書は「別表1~18」まであります。とは言うものの、例えば別表3には、「3の1」「3の2」「付表」まであるなど、実際には18枚以上あります。
書式の様式は毎年少しずつ変わっています。
別表の数も増減しており、平成29年4月1日以後終了事業年度から適用される法人税申告書(別表)の様式を定めた改正法人税法施行規則は、4月14日付官報号外第82号で公布され、その内容が明らかとなったばかりです。
時期や法制度で、枚数が変わる明細書。非常にややこしく感じますが、法人として事業をしている以上、避けては通れぬものです。多少の変化はありますが、基本的な書き方は押さえておきましょう。
そこで、基本的に、よく使う明細書の書き方を紹介していきます。
よく使用する明細書8種類と注意するポイント
数ある別表の中でも、主要なものは「別表1~7」です。ここでは、概要と注意点を解説します。
別表1(1):各事業年度の所得にかかる申告書(法人税申告書)
いわば、法人税申告書のメインで、別表の表紙のような存在です。
他の別表を作成後、確定した数字を転記することになります。
青色、白色と2種類の申告書がありますが、ここでは、「普通法人等の青色申告」について、概要と注意点を解説します。
別表1作成の注意点
- 期末の申告だけでなく中間申告や修正報告にも使用可能。そのための記入欄があるので、間違えないように注意が必要。
- 「代表者自署押印」は代表者の自筆署名が必要。
- 「一般社団・財団法人の区分」は、該当する場合のみ記入。それ以外は空欄でよし。
- 「税務署処理欄」は原則として記載不要。ただし、消費税の事業者免税点を判定する際に参考となるので「売上金額」の欄は記入するよう勧められています。
- 「翌年以降送付要不要」の項目で「送付不要」にチェックを入れている場合は注意。翌年度以降に「要」にチェックを入れても、別表セットと勘定科目内訳明細書は送られてこなくなります。必要な場合は税務署に連絡を。
- 法人税額の計算(30~33)という項目は、「中小法人等」であるか、「その他の法人」であるかによって記載欄が異なる。
当期末における資本金または出資金が1億円以下の普通法人や一般社団法人のことを「中小法人等」といいます。資本金または出資金が5億円以上の法人と、その子会社など、完全支配関係や受託法人の関係である場合は「その他の法人(項目33)」に記入します。
別表2:同族会社の判定に関する明細書
法人が「同族会社」、あるいは「特定同族会社」に該当するかどうかを判断するための明細書。該当する場合には、その法人の支払う納税額が異なります。
判断材料は「株主との関係性」と「保有株式比率」で、「特定同族会社の判定割合(17)」が 50%超の場合は「特定同族会社」とみなされます。
また、「特定同族会社の判定割合(17)」が 50%以下かつ「同族会社の判定割合10」が50%超の場合は「同族会社」、「同族会社の判定割合(10)」が 50%以下の場合は「非同族会社」と判断されます。
別表3(1):特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書
別表2で特定同族会社に該当した場合に必要となる書類です。
別表4:所得の金額に関する明細書
ここはとても大切な部分で、会計上の利益と税務計算における所得の違いを理解しておく必要があります。その中で、損益計算書の利益をもとにして、税務計算上の所得金額や欠損金額を調整し、計算し直します。
「加算」の欄には、収益ではないが益金に当たるものや、費用ではあるけれど、損金に当たらないものを記載。主に、減価償却超過額・役員給与と交際費の一部等が、これにあたります。
「減算」の欄には、収益ではあるが益金にしないものや、費用ではないが損益にする者が対象となります。還付法人税・受取配当金等は、ここに記載するものです。
別表5(1):利益積立金及び資本金等の額の計算に関する明細書
いわゆる賃借対照表の機能を有しています。期首の資本金から、(別表4の「加算」「減算」によって調整した)当期の減算をして、利益と積立金を割り出します。
別表5(1)作成の注意点
総額表示により記載するため、期首から期末までの増減額を明記。
「納税充当金」の欄には、決算書の未払法人税等の増減を記載。①「期首現在利益積立金額」の欄には、前期で未払の法人税等を記載し、②の「減少」今期に前期の未払法人税等を納付したことを②減少の欄に記載します。
③の「増加」の欄には今期に確定した未法人税等を、最後に④「差引翌期首現在利益積立金額」の欄に、決算書の未払い法人税等の金額を記載します。
別表5(2):租税公課の納付状況等に関する明細書
税金関係の金額(法人税・都道府県民税・市町村民税・事業税・利子税など)を記入していきます。
「その他」の欄の損金算入の利子税と印紙税等の合計額が、決算書の租税公課の金額と一致しているかどうかや、期末納税充当金の金額が、決算書の未払法人税等の金額と一致しているかどうか、などに注意して作成しましょう。
別表6(1):所得税の控除に関する明細書
期中に支払いを受ける利子や配当、償還差益等があった場合、課税された所得税の控除を受けるために記載する明細書です。
別表7(1):欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書
欠損金とは、赤字のこと。単年度での課税所得がマイナスとなった時に発生するものです。赤字を出した翌年以降に課税所得がプラスになると、マイナスになっていた部分と相殺することができます。
この繰越期間は定められており、9年間となっています。
まとめ
膨大な量がある法人申告書の明細書。忙しい創業者にとって、作成は大変なことですが、ポイントをおさえれば時間を短縮できるかもしれません。
おさえるべきポイントは、「会社の種類」と、「企業会計との差異」です。税務署に提出する時には、特に後者をしっかりと割り出し、見栄えの良い明細書を作成しましょう!
(執筆:創業手帳編集部)
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