今さら聞けない!?法人税の計算に必要な8つの決算資料
法人税の計算に使う資料、全部揃っていますか?
(2017/05/01更新)
個人であっても法人であっても、所得を得ると必ずかかるもの。それは税金です。
事業を行うにあたり、個人として所得税を納めるよりも、法人として納める方が税率が低く、節税対策になると言われており、会社を設立する理由として、一番に挙げられます。しかし、実際に税率の計算など、複雑に感じ、その効果を理解できていない人も多いのでは?
今回は、今さら聞けない「法人税の計算方法」について、解説していきます。
この記事の目次
そもそも法人税とは?
一言で言うならば法人に課せられた所得税です。
当然のことなのですが、事業を行うには、個人であろうと、法人であろうと、法律にのっとっていなければなりません。
個人は、あくまで事業をしている本人のことを指します。そのため、人間がひとりで行なっていることなので、法律上は「自然人」と呼ばれ、権利・義務の主体であると認められています。
これに対して法人は、会社や社団法人などのように、事業をするために人が集まったもののことを指します。あくまで人間ではなく、できあがった集合体に対してつけられる呼び名ですが、法律上は人格を与え、法律行為を有効にし、権利・義務の主体となる資格を与えられます。
「グループだけれど、ひとりの人間として扱ってしまいましょう」ということですね。
法人税とは、この法人というひとつの人格が得た所得に対して課せられる税金のことを指します。
法人税の基本的な計算方法
法人税を計算するには、「会計上の利益」と「税法上の所得」を理解する必要があります。
決算によって、「会計上の利益」を求めます。これは、簡単に言うと事業で挙がった収益から、かかった経費を引きます。計算式でいうと、下記のように計算します。
会計上の利益=収益-費用
一方、「税法上の所得」は下記のように計算します。
税務上の所得=益金―損金
よく、「利益=所得」だと思っている人がいるのですが、これは間違いです。
これは、会社法と税法の2つに関わってくる話であるがゆえ起こる考え方に違いで、会社法上では費用になるのに、税法上では費用にならないことがあったり、費用として認められる限度額が決められていたりなど、双方でズレが生じます。そこで実務的には、まず会計上の利益を計算し、そこに調整を加える形で税務上の所得を計算します。
法人税の所得を求めたら、税率をかけて税額を求めます。その後、税額に対して控除を行い、法人税額を確定するのです。
法人税の計算に必要な8つの決算資料
法人税を計算するには「決算資料」を用意しなければなりません。これは、決算や法人税の申告時に計算するために使うのはもちろんのこと、法的に保存期間が決められており、万が一税務調査が入った際にも必要な資料となっています。
1. 総勘定元帳
法人が行う全ての経理処理が勘定科目ごとに記録された元帳です。事業を始めれば様々な取引が発生し、経理処理も行われますので、設立間もない会社でも、かなりの量にになることがあります。
2. 領収書綴り
経費の領収書などを日付順に綴ったもので、後々の領収書確認時に必要になります。
3. 決算報告書
貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書(C/F)、株主資本等変動計算書(S/S)など、法人税申告書に添付する書類です。
4. 勘定科目明細書
主要な勘定科目ごとの詳細を記載したもので、日頃からきちんと帳簿をつけておかないと、決算でこの書類を作成する際に大きな手間と時間がかかります。
5. 法人税申告書
税務計算書類、勘定科目明細書、決算申告書をつづったものですが、最低でも20ページ以上の厚さになります。
6. 消費税申告書
消費税および地方消費税の申告をする際に使用します。計算内訳の付表を添付する必要があります。
7. 法人事業概況説明書
事業内容、従業員数、取引状況、経理状況などを所定の書式に従い記載します。申告書と併せて、税務署への提出が義務付けられています。
8. 地方税申告書
法人都民税又は法人道府県税および法人事業税の申告書です。各都道府県へ提出します。
特に、総勘定元帳と領収書綴りは、作成後7年間の保存が義務付けられています。税務調査でも必ずチェックされるものなので、抜け落ちがないように気を付けましょう。
法人税率は法人の種類によって変わる
法人税は、法人の種類や大きさによっても変わってきます。
普通法人のうち各事業年度終了の時に、資本金の額か、出資金の額が1億円以下であるもの。または、資本・出資を有しないものを中小法人といいます。これらの法人は、年800万円以下の所得金額においては、平成29年3月31日までは15%、それ以降は19%の税率となります。一般社団法人や、公益社団法人も、これに入ります。
また、年800万円超の所得金額に対して、もしくは中小法人以外の普通法人に関しては平成29年3月31日までは23.4%、それ以降は23.2%の税率となります。
実際に計算してみよう
実際に所得金額に合わせて計算式を見てみましょう。3つ目の所得は、800万円以下の分とそれを超えたもので分けられています。
・資本金1億5千万円、所得1000万円の場合
1000万円×23.4%
・資本金5千万円、所得500万円の場合
500万円×15%
・資本金5千万円、所得1000万円の場合
800万円×15%+200万円×23.4%
まとめ
実際に法人を立ち上げて起業をする場合は、こうした税率の違いなどを頭に入れて、税金対策をするのも大事なこと。自分のお金を守るには、知識を仕入れることが必要なのです。
法人税は計算に必要な書類も多く、複雑ですが、まずは基本をしっかりと押さえることが重要です。法人税を正しく知って賢く経営していきましょう!
(執筆:創業手帳編集部)
創業手帳冊子版は毎月アップデートしており、起業家や経営者の方に今知っておいてほしい最新の情報をお届けしています。無料でお取り寄せ可能となっています。