オフィス移転後に必ず確認すべき手続き・実務チェックリスト【保存版】

オフィス移転は「引越し」で終わりではない


オフィスの移転は、引越しの作業やパソコン等のセットアップなどに追われてしまいます。
オフィス移転後にやるべきことは多くある上、うっかりすると失念してしまうからです。
特に必要な手続きを怠ると罰則・信用低下の可能性が発生してしまいます。4月は移転が集中する時期でもあるため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。

どういった手続きや実務が発生するのかまとめました。

オフィス移転後にまず確認すべき公的手続き


オフィス移転の後は、荷解きやセッティングといった物理的な作業が発生します。
しかし、それ以外にも法令で定められた多種多様な行政手続きを短期間で完遂しなければいけません。
以下は、オフィスを移転してからまず確認してほしい公的手続きです。それぞれを確認してください。




法務局での本店移転登記

会社法第915条では、本店所在地変更から2週間以内の登記申請を義務付けています。同一法務局管轄内の移転では変更登記のみで問題ありません。
しかし、管轄外に移転した場合には新旧双方の登記が求められます。

本店移転登記に必要な書類は、会社の形態やオフィス移転の内容によって違います。必ず必要なのは本店移転登記申請書です。
株主総会議事録と株主リスト、取締役会議事録か取締役の決定書、委任状は必要に応じて準備してください。

管轄外移転の場合には、上記の書類に加えて新管轄の法務局へ印鑑を登録し直すための印鑑届書も必要になります。
変更登記に必要な登録免許税は管轄内移転で3万円、管轄外移転で6万円です。登記にかかる費用は、事前に準備しておいてください。

税務署への異動届出

法人の税務申告は、税務署に関わる国税と都道府県、市町村にかかる地方税があります。税務署への異動届は国税に関わる届け出です。
法人が本店を移転した後は、所轄税務署へ異動届出書を提出しなければいけません
消費税課税事業者の納税地変更がある場合には、消費税関係届出書も提出してください。

提出期限は原則として異動後速やかに行うこととされています。提出時期について締め切りが設けられているわけではありません。
しかし、納税に関わる部分であり手続きの遅延は行政指導の対象となります。

都道府県税事務所・市区町村への届け出

法人住民税や法人事業税といった地方税は都道府県税事務所の管轄です。移転した日から速やかに都道府県税事務所まで届け出てください。

提出期限は、自治体ごとに異なるので確認しておいたほうが良いです。都道府県をまたいで移転する場合には、移転前と移転後の自治体でそれぞれ税額を計算します。
両方の都道府県税事務所で手続きをしなければいけないので、引越し計画と併せて計画的に進めてください。

年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへの届け出

オフィス移転は健康保険・厚生年金保険にも関わります。事業所所在地変更届を年金事務所へ提出しなければいけません。
提出期限は事実発生から5日以内で登記事項証明書が必要です。

また、労働者を雇用していれば労働保険に加入しています。オフィス移転していた場合には、労働基準監督署へ労働保険名称・所在地等変更届を提出します。
提出期限は原則として変更日から10日以内です。
ハローワークでは、「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。これはオフィス移転後10日以内に届け出てください。

オフィス移転後の金融機関・契約関係の変更手続き


金融機関や契約関係の変更は資金繰りや信用維持に直結します。事業に影響する部分なので速やかに対応してください。



銀行・融資先への住所変更

法人は、取引銀行へ所在地変更届を提出しなければ重要書類が旧住所へ送付されてしまいます。
加えて、融資契約では登記簿住所と一致していることが前提であり、不一致は確認・照会の対象になります。 必ず所定の変更届を提出してください。
変更届は、住所変更以外にも代表者の変更や商号、連絡先の変更の時にも必要です。

金融機関は定期的に登記事項証明書の提出を求めるため、移転後の整合性が取れるようにしてください。
住所変更は、日本政策金融公庫との融資契約上、報告義務違反に該当する可能性もあります。早急に手続きするようにしてください。

リース契約・保険契約の確認

オフィスを移転すると、各種契約の内容にも影響します。
複合機などオフィス設備のリース契約は設置場所が契約条件となる場合があり、変更を届け出なければいけないケースがあります。

火災保険の見直しもオフィス移転のタイミングで行ってください。火災保険は所在地や用途により保険料が異なるため、移転後に再評価が必要です。
契約変更を怠ると補償対象外となる可能性があるため、必ず約款確認を確認して連絡してください。

取引先との契約書の住所修正

取引先との契約書の住所もオフィス移転にともなって変更します。継続契約の場合は、契約書の当事者住所を変更覚書で修正してください。

また、請求書や発注書の住所不一致があると、トラブルにつながります。
入札に参加する場合、変更があったにもかかわらず、変更手続きをせず入札・契約を行うと、入札参加資格停止措置になる可能性もあるので注意してください。

オフィス移転後に見落としがちな実務チェック項目


公的手続き完了後も、実務面での修正作業を漏れなく実施しなければいけません。うっかり見落としがちな項目をまとめました。




ホームページ・Googleビジネスプロフィールの更新

会社は公式サイトの所在地表示を速やかに更新しなければ、誤認表示となってしまいます。
Googleビジネスプロフィールは実在住所の正確性が求められるため、必ず新住所へ更新しなければいけません。
所在地不一致のままにしておくと、検索で調べた人が混乱してしまうだけでなく、その会社の評価や顧客信頼に影響を及ぼす可能性があります。

名刺・封筒・請求書フォーマットの更新

引越しにともない、対外書類の住所表示も最新情報に統一してください。
住所が印刷されている書類にはいろいろあります。具体的には、名刺や封筒といった印刷物です。
在庫となっている旧住所の印刷物は廃棄または修正してください。そのままにしておくと誤使用となってしまいます。

また、請求書や納品書といったデータにも住所が記載されています。これらのミスは信用の失墜につながるので、早めに防止するよう管理してください。

会社印鑑・登記簿謄本の再取得

移転登記を完了してから、新住所の登記事項証明書を再取得し住所変更を行います。印鑑証明書も、所在地が反映された最新のものを必要に応じて再取得してください。
税務署や社会保険事務所などでは必ず必要になるほか、許認可が必要な業種の変更届でも提出が必要になるので確認しておきましょう。

さらに、金融機関や取引先から変更後の登記簿謄本の提出を求められることがあります。
オフィス移転を伝える時に、書類提出の要不要を前もって確認しておくとスムーズです。

定款の本店所在地の確認

定款に本店所在地を市区町村まで記載している場合は、定款の本店所在地も変更してください。定款の本店所在地は、最小行政区画までなので、番地などは必要ありません。
そのため、番地等の変更で済む場合には定款変更が不要な場合があります。

定款の変更には株主総会決議と、会社法に基づき議事録作成が求められます。議事録や本店移転登記申請書、収入印紙等の必要書類とともに法務局に提出してください。
定款の変更は、時間や費用といったコストがかかります。定款の本店所在地は、市区町村までに定めておけばその範囲内の移転時に定款変更が不要です。
定款を定める時に、オフィス移転の可能性があるかどうかも考えておいてください。

移転後に確認すべき税務・会計のポイント


オフィスの移転は会計処理や税務判断に直結する論点が多くあります。それぞれの勘定科目や税務区分を整理して対応するようにしてください。




家賃の勘定科目変更

事業用建物の賃借料は地代家賃勘定で処理することが一般的です。オフィス移転にともなって契約内容がに変更がある時には帳簿に反映させなければいけません。

賃料改定や共益費の区分変更は、費用区分を明確にして会計処理を行います。ただし、決算書上の表示科目は継続性の原則に基づき統一してください。
変更がある時はその合理的理由を整理して、後からわかるように帳簿などに記録しておきます。

敷金・保証金の処理

引越しにともなう敷金や保証金も会計処理が必要です。敷金や保証金は返還請求権を有するため、原則として資産として長期前払費用に計上します。
退去時には敷金、保証金から現状回復にかかる費用を差し引いて返還されるのが一般的です。返還されない金額が確定した場合は、その金額を費用として計上します。

また、移転にともなって旧契約分の敷金、保証金が返還された場合はその入金処理と資産減少を正確に記帳してください。

原状回復費の扱い

賃貸のオフィスから退去する時には、現状回復して入居前の状態に戻さなければいけません。この時の費用は修繕費に該当します。
保証金や敷金を計上している場合には、借方に修繕費、貸方に差入保証金か敷金を計上してください。
オフィス移転にともなって、不用品の処分をした場合には雑費で処理できます。固定資産の廃棄や撤去に費用が生じた時には固定資産除却損を計上してください。

また、資産の価値を高めるような内装、設備工事がある時には建物の価値を高める資本的支出として資産計上します。
具体的には、間取りやレイアウトの変更、壁の全面改修や空調の導入などです。

減価償却資産の所在地

固定資産税は、その資産の所在地に納入します。原則1月1日時点で資産があった市区町村へ納税する仕組みです。
オフィスを移転した時には、固定資産台帳に資産の所在地を記載し、固定資産の実在を明らかにしなければいけません。

移転によって固定資産の設置場所が変わった場合は、台帳情報を速やかに更新します。
税務調査では資産の現物確認が行われます。所在地情報の整合性が取れるよう、廃棄した場合もその記録を残してください。

オフィス移転後に起こりやすいトラブル


移転すると、新しいオフィスに不慣れであることでトラブルが発生することがあります。中でも手続き漏れや情報不一致が原因となるトラブルは起こりがちです。
トラブルが発生してから後手で対応するよりも事前に対策を講じてください。

郵便物が旧住所へ届く

引越しで発生しがちなのが郵便物が旧住所に届いてしまうケースです。旧住所に郵便物が配達されないようにするには、転居届を日本郵便へ提出します。

転居届は、近くの郵便局窓口のほか、ポスト投函やWebサイト、郵便局アプリで提出できます。
転居届を提出してから登録までには3~7営業日を要するので早めに提出してください。

転送届けによる転送期間は原則1年間です。期間経過後は、差出人に郵便物等を返還します。
この期間内に各種住所変更を完了させてください。

補助金申請書類の不一致

補助金や助成金の受給は、スケジュールも長く期間中にオフィスを移転するケースもあります。
これらの申請には、登記事項証明書と申請書の所在地が一致していなければいけません。

所在地不一致は形式要件不備と判断され、審査対象外となってしまうリスクがあります。移転直後に住所変更を申請する場合は、登記完了後に再度新住所で書類取得が必要です。
補助金や助成金のスケジュールも確認して、オフィス移転のタイミングを決めておくことも検討してください。

労働保険未変更による指摘

オフィスを移転した時には、変更があった翌日から起算して10日以内に「労働保険名称、所在地等変更届」を労働基準監督署か公共職業安定所に、「雇用保険事業主事業所各種変更届」を公共職業安定所に提出しなければいけません。
これらの変更届を提出しなければ、行政指導の対象となってしまいます。年度更新手続きにも影響を及ぼすので注意してください。

手続き関連については漏れがないようにチェックリストを作成するようにおすすめします。

公的手続きと実務対応の管理不足

オフィスを移転すると、様々な公的手続きや引越しの作業が発生します。引越してから業務に支障をきたさないように確実に処理してください。
ミスを防ぐには、登記、税務、社会保険の各手続きを一覧化して管理するようにおすすめします。

また、必要に応じてそれぞれの手続きについて担当を決めて役割分担してください。
担当者を明確に定めておかないと、誰かがしているはずと考えて届け出漏れや期限超過が発生しやすくなってしまいます。
移転計画段階でチェックリストを作成し、担当者を決めておくのが理想的です。

まとめ:オフィス移転後は「やり忘れゼロ」を目指すことが重要

オフィス移転は引越しして終わりではなく、各種届け出を期限内に終えることが本当の完了です。
手続きが多く大変に感じるかもしれませんが、手続きが複数あるだけで優先順位をつけることで進めやすくなります。
登記や税務、社会保険の手続きを一覧で整理し、抜け漏れなく進めるようにしてください。
移転直後は混乱しやすいため、ひとつずつ確実に対応することが重要です。新しいスタートを心地良くはじめるために、オフィス移転を計画的に実行してください。

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(編集:創業手帳編集部)