LOIVE 前川 彩香|従業員約99%が女性企業の経営者が語る、組織作りにおけるパーパスの重要性

※このインタビュー内容は2026年04月に行われた取材時点のものです。

フィットネスとの出会いで気づいた「自分を愛することの大切さ」をもっと多くの女性に届けたい


「ホットヨガスタジオ loIve」や「pilates K」などの女性専用フィットネスサービスをマルチブランド展開している株式会社LOIVEは、2025年4月に東京証券取引所グロース市場に上場するなど、今最も勢いのあるフィットネスサービス企業です。代表の前川さんは元々専業主婦で、未経験からフィットネス事業を立ち上げられました。今回はそんな前川さんにLOIVEの企業パーパスである「自分を愛し、輝く女性を創る」の体現に向けた取り組みについて伺いました。

前川 彩香(まえかわ あやか)株式会社LOIVE 代表取締役社長
北海道でホットヨガスタジオをスタートし、現在は全国に200店舗以上を展開。従業員の約99%が女性という環境で「自分を愛し、輝く女性を創る」というパーパスを掲げ、社員の自己肯定感向上に力を入れた独自の研修システムを構築し、2025年秋『Mission’S(ミッションズ)』として社外へも展開。子連れ出張制度など女性が働きやすい環境づくりにも積極的に取り組み、女性活躍企業に贈られる「Forbes Woman Award 2021(300名以上、1000名未満の部)」第1位を獲得。

15歳の頃芽生えた「起業家」という夢

ー起業前は専業主婦をされていたとのことですが、どのような経緯で起業を目指されたのですか?

前川:昔から、将来の夢は「起業して経営者になること」でした。高校生で進路を考え始めるタイミングで「私は人の指示を受け、人の下につくのではなく、自分で仕事をしたい」と思うようになっていたからです。何かやりたい仕事があったわけではなく、ただ漠然と「経営者になる」という目標を持っていました。

ただ、その後結婚・出産を経てその夢は一旦保留に。当時の夫から「子どもが3歳になるまでは専業主婦でいてほしい」と言われていたんです。約束通り、子どもが2歳半になったタイミングで起業の準備をスタートしました。

ー様々な業種・業態の中から、なぜホットヨガのビジネスを選択されたのですか?

前川:友人が東京でホットヨガに通っており、当時北海道はおろか都心部以外ではまだホットヨガは浸透しておらず「これからブームが来るのではないか」と直感したんです。また、ホットヨガはスタジオという「箱」さえあればインストラクター1人に対して30人のクラスが開催でき、個人レッスンのようにキャンセルなどのリスクも少なく、人件費効率が非常に良いことも知りました。ビジネスモデルとしての魅力も大きいことが分かり、スタジオを開くことに決めたんです。

とはいえ、私自身ホットヨガの経験はゼロ。インストラクター未経験の友人たちと立ち上げ、そのうちのひとりの友人にインストラクターの資格をとってもらい、友人たちと試行錯誤しながらスタートしました。札幌で初となる1号店をオープンして営業する中で、お客様はもちろん、私たち自身がホットヨガを通してポジティブな変化を感じるようになったんです。立ち上げメンバーの一人はホットヨガで15キロのダイエットに成功し、別のメンバーは長年悩んでいた腰痛が解消されるなど、フィジカル面の変化はもちろんメンタル面でも良い変化を実感するようになりました。当社の掲げるパーパスである「自分を愛し、輝く女性を創る」という言葉も、この実体験から来ています。

ー売上や集客面では順調なスタートを切られたとのことですが、逆に苦労されたことなどはありますか?

前川:一番の課題は、スタッフのマネジメントでした。2号店オープンが決まり、私が2号店の準備につきっきりになってしまったタイミングで、1号店のスタッフが続々離職してしまったんです。店舗が1つしかなかった頃は私一人で管理できていましたが、今後の多店舗展開を踏まえると、マネジメントシステムの構築が急務でした。そこで、思い切って1号店を閉店。半年分の家賃が無駄になりましたが、その分マネジメントシステムの構築とプログラムの作り込みに専念できました。

「自分を愛し、輝く女性を創る」パーパスの浸透で、一気に事業が加速

ーその際に構築されたプログラムで、現在でも大切にされているものはありますか?

前川当社のパーパスである「自分を愛し、輝く女性を創る」の実現を、社員全員で目指すことです。先述の通り、私たち自身がホットヨガに出会ったことで自己肯定感が上がり、自分自身を大切にできるようになりました。スタッフ全員が自分自身を愛し、高い自己肯定感で仕事に向き合うことで、お客様に健全なサービスを提供できると考え、スキルよりもスタンスに比重を置いた研修に力を入れていますね。全員で同じ方向を向き意識を統一させることで、仕事における働きがいとパフォーマンスを向上させることはもちろん、エンゲージメントの高い組織を構築できると感じています。

この時に構築した研修システムは現在も続いており、昨年10月からは「Mission’S(ミッションズ)」という新規事業として、社外への販売も開始しました。

ー創業からわずか2年で北海道から仙台へと出店。その後も全国展開を進められていますが、資金調達などはどのようにされたのですか?

前川:創業から10年は私自身が会社の株式を100%保有しており、資金は銀行から借入していました。そして、大幅に店舗拡大をするタイミングだった8年前から資金調達を実施。2016年からはサーフエクササイズ専門スタジオ「Surf Fit」、2018年マシンピラティス専門スタジオ「pilates K」、2022年にはグループ筋トレマシンジム「REDY’S GYM」など、多種多様なブランド展開も進めています。どのブランドにも共通しているのは、個人ではなくグループレッスンを提供すること。より多くの女性に通っていただきたいという想いから、マルチブランドで展開し、様々なライフスタイル・ペルソナの女性たちに向けて事業を行っております。

ーホットヨガやピラティスなど、業態の選定はどのようにされていますか?

前川:毎年海外視察に行っており、海外のフィットネストレンドをリサーチしています。ホットヨガもピラティスも日本でトレンドになる少し前にサービスを展開したことで、会員数・売上ともにどの店舗も順調で、新規受付がキャンセル待ち状態になっている店舗もありますね。常にトレンドを意識したブランド・店舗出店にこだわっています。

ー競合サービスも年々増加傾向にあるかと思いますが、差別化やロイヤリティを高めるためにどんなことにこだわられていますか?

前川:確かにフィットネススタジオは年々増加していますが、当社は業界内でも高い入会率、低い解約率を維持できていますね。その最大の理由は、スタッフの教育だと考えています。

私たちが提供しているサービスはレッスンそのもの、つまりは「人」です。そのため、スタッフの質が全てを決めると考えています。どの店舗、どのスタッフのレッスンを受けても等しく高いサービスを受けられるよう、教育にはかなりのリソースを割いています。

当社が全店舗直営店管理を採用しているのもそのためです。FCであればスピーディに店舗展開が行えますが、どうしてもスタッフの質にばらつきが出てしまいます。直営店の方が人件費はかかりますが、当社ではFCは一切募集していません。また、研修の回数もかなり多い方だと思いますね。全社で集まる集合型研修、階層別研修のほか、毎月本部のメンバーが実際にレッスンを受け、スタッフに直接フィードバックすることもあります。

お客様は、広告だけでは本当に良いサービスがどれなのか見分けがつきません。来店されたお客様に対するクオリティやサービスで差をつける。そのために今後も教育で差別化を図っていきたいと考えています。

働く女性の憧れや夢が詰まった「コミュニティ」へと成長

ー従業員の約99%が女性というのも貴社ならではの特徴だと思いますが、経営において大切にしているポイントはありますか?

前川:「ロールモデル」を作ることです。社内に「こうなりたい」「こんな働き方をしたい」と思える憧れの存在を作ることで、長く働き続けるスタッフが増えますし、一度退職しても戻ってくるメンバーも多いんです。そのための一つの取り組みとして、スタッフのみが閲覧できる非公開のInstagramで、本社や店舗スタッフの様子を日々発信しています。今や、会社というより「自分を愛し、輝く女性」が集まる巨大なコミュニティのようになっていて、元々お客様だった方が当社のファンになってくださり、そのまま入社されるケースも増えているんです。

ー育児中や出張中の子連れ制度など、女性にとって嬉しいユニークな福利厚生を導入されていますよね。

前川:年に2回全社員が集まるイベントでは、子連れでの参加も可能にしています。私自身、出張中に子どもから泣いて電話がかかってくることがよくあり、そういった経験を踏まえ、ママになっても長く働いてほしいという思いから導入しました。今では多くの子どもが参加してくれるようになり、イベント会場は子どもの遊び場になっています(笑)。

また、働くママが悩む「働いても保育園代に取られてしまう」という問題解決に向け、保育園無償化前から役職に応じて最大全額会社負担する保育料補助も取り組んでいます。子どもが生まれるとどうしても制限が多くなってしまいますが、ストレスなく長く働いてもらえる環境作りは非常に重要だと感じています。

ー2025年4月24日に東京証券取引所グロース市場に上場されましたが、上場を視野に入れ始めたきっかけと、そのプロセスで特に苦労した点などがあれば教えてください。

前川:上場を目指し始めたのは8年前です。会社の将来を考えたとき、上場かイグジットの選択肢がありましたが、パーパスの実現には上場が最適だと考えました。結婚や出産を経てもキャリアを諦めずに、自分らしく働いている姿を発信していくという意味でも、上場はパブリックな証明になると思ったんです。もちろん上場は資金調達の意味でも有効だと考えましたが、どちらかというと社会意義の方に重きを置いた選択でした。

上場に際して特に苦労したのは、新型コロナウイルスによる売上停滞です。休会・退会者も増加し、新型コロナウイルスの影響で上場は数年延期になってしまいました。ですが、この停滞を逆手に取り、利益構造やコストコントロールの抜本的な見直しを実施。広告のかけ方なども含めて、全体最適を考え直すよい機会になったと感じています。

出産や育児を経ても自分らしくキャリアを築ける社会を実現したい

ー今後の展望について教えてください。

前川:ブレずに「自分を愛し、輝く女性を創る」というパーパスの実現を目指し続けます。そのためには、主力サービスである「pilates K」を軸にさらなる店舗展開を目指しつつ、先述した「Mission’S(ミッションズ)」という研修ビジネスにも力を入れていく方針です。フィットネスはあくまでも「自分を愛し、輝く女性」を体現するための一つのツールであると考えています。今後はフィットネスの枠を超え、研修事業を通じて女性が多い企業や女性活躍を推進したい企業向けに、当社のノウハウを提供することで「自分を愛し、輝く女性を創る」の実現に向けて歩んでまいります。

ー最後に、これから起業を目指す人へのアドバイスをお願いします。

前川:男女問わず、経営において最も重要なのはパーパスだと考えています。どんなビジネスをするにしても、自分の想いをしっかり言語化して、その想いを社員にしっかり浸透させ、それを体現できる組織を作ることが成功につながります。そのためにはまず、自分自身を信頼し、大きなビジョンを持っていただきたいですね。

日本は世界と比べると、女性起業家の数は圧倒的に少ない状況です。もちろん、出産・育児などによるハンデをゼロにすることはできませんが、ライフステージが変わっても自分らしく生きる選択肢を持てる社会を作ることは、子どもたちの未来のためにも必要です。私たちはそんな想いを持つすべての方のロールモデルになるべく、自分たちはもちろん、関わるすべての方々が「自分を愛し、輝く女性」として生きられるよう、その姿を体現し続けたいと考えています。

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