あなたはどれに当てはまる?コトラーの競争地位の4類型【起業家のための経営学講座】
フィリップ・コトラー提唱、業界内での自社の地位を確認し、最適な戦略を立てる方法
(2017/08/31更新)
コトラーの競争地位戦略とは、経営学者のフィリップ・コトラーが1980年に提唱した競争戦略のための理論です。
量的経営資源と質的経営資源から企業を4つに類型化し、競争地位に応じた戦略目標を立てるというものです。
コトラーの競争地位4つの分類と戦略
企業はマーケットシェアの観点から4つに類型化できます。
その4つとは
「マーケット・リーダー」
「マーケット・チャレンジャー」
「マーケット・フォロワー」
「マーケット・ニッチャー」です。
これらの地位によって、それぞれ異なった戦略を立てることが要求されます。
それではさっそく、各競争地位を見ていきましょう。
リーダー
ある業界において最大のシェアを持つ企業のことです。
新製品の投入や、価格設定などさまざまな面で指導的な立場にあります。
マーケットのシェアの維持や、マーケットの拡大を積極的に行うことが戦略目標で、上位のシェアが肉薄している業界ではリーダーは複数社となることもあります。
代表的な企業としては、自動車業界でのトヨタなどです。
リーダーの戦略
あなた自身が業界においてマーケット・リーダーの立場である場合は、マーケットの最大化を維持するために以下のような戦略をとっていきましょう。
「周辺需要拡大」
商品を販売するとき、ターゲットの市場の周辺にいる新たな顧客を開拓すること
「同質化」
他企業が差別化戦略で挑んできたとき、同じ戦略を採用することで相手の差別化を無効化する戦略
「非価格対応」
価格以外のすべての分野で差別化を目指す戦略
「最適市場シェア」
シェアの拡大だけでなく、最大の投資収益率が得られるエリアや市場のシェアを確保・維持する戦略
コストダウン戦略をとってしまうと、他社も追随してくるため、市場全体の売上が落ちてしまいます。
リーダーはしっかりとした基盤があるため、ブランド戦略などで差別化を図り、市場の拡大を目指すのが良いでしょう。
チャレンジャー
ある業界における2番手や3番手で、トップの座を奪うことを目標としている企業です。
シェアが高まると収益性も高まるため、トップを狙うことができます。
自動車業界でいうとホンダや日産になります。
チャレンジャーの戦略
チャレンジャーはトップ企業よりも経営資源が質的に劣っているため、リーダーと同じ戦略をとり、直接対決で勝つことは難しい立場にあります。
そのため、リーダー企業がまだ手を付けていない分野に注力することでシェアを奪う戦略をとります。
また、自社よりもシェアの低い企業を攻撃してシェアを拡大する戦略もあります。
どちらの戦略にしても、徹底した差別化、思い切った価格設定などの戦略が必要となります。
差別化にしてもリーダーにすぐに模倣され同質化戦略をとられてしまうと意味がないので、リーダー企業のことを充分研究することが大事です。
フォロワー
経営資源が量的にも質的にも少ない企業はトップを狙うことができないため、フォロワーとなります。
競合他社の戦略や製品を模倣することで、低コストでシェアを維持することを目指します。
フォロワーの戦略
経営資源が質的にも量的にも少ないため、コストを抑えて利益率を高める戦略をとります。
コストを抑えるためには、リーダー企業などの競合他社の戦略や製品を模倣する模倣戦略をとります。
リーダーやチャレンジャーが実行し成功した戦略やサービスと同じものを低コストかつ安く販売することで、少しでも利益をあげていきます。
しかし、リーダーやチャレンジャーのおこぼれをもらう戦略のため、あげられる利益は少なく、ずっとフォロワーで生き残っていくのは難しいでしょう。
あなたの企業がフォロワーの位置にいるならば、経営体力や技術力などがついてきたら、チャレンジャーやニッチャーに移行するチャンスを伺うべきです。
または、リーダー企業にとっておいしくない市場に集中し、合理化をすすめる戦略もよくみられます。
ニッチャー
経営資源が量的には少ないが質的には多い場合は、ニッチャーを目指すことができます。徹底的な差別化で、トップ企業が興味を示さない分野に特化したり、商品の価格帯、販売チャネルを限定し、ニッチな市場で勝負します。
自動車業界では軽自動車で国内トップシェアであるスズキになります。
ニッチャーの戦略
ニッチャーがとるべき戦略には以下の3つが考えられます。
「関所戦略」
関所戦略=すきま産業。
生産工程では必要不可欠ですが、トップ企業が進出する価値を見いだせない小さい市場で独占を狙います。
「専門技術戦略」
専門技術によって先行しているため、ほかの企業が参入できないようにする戦略。
この戦略でニッチ市場を確立するためには、タイミングが重要となります。
新しい産業や、新しい習慣、新しい市場が生まれた瞬間からスタートしなければなりません。
「専門市場戦略」
専門技術戦略の市場版。
市場についての専門知識によってニッチ市場を確立します。
また、マーケット・ニッチャーには以下のようなデメリットやリスクも考えられます。
- ニッチ市場は一度独占してしまうと成長が望めなくなる
- ニッチャー企業は、欲張ると大企業に目をつけられる可能性がある
- 模倣されやすい技術や差別化などでは、すぐに同質化戦略をとられ大企業に敗北してしまう。
- 小規模な市場のため売上に上限がある
- 市場そのものがなくなってしまう可能性がある
ここであげている大企業の同質化戦略に対する対策として、特許などで市場を守ることが大事になります。
ニッチャー企業は、市場や世の中の動きをよく見て動向を予想する必要があるといえるでしょう。
まとめ
まずは、業界における自分の立ち位置を確認し、目指すべき目標を掲げ、最適な戦略を立ててきましょう。
実際には多くの起業家が「フォロワー」、または「ニッチャー」の位置にいるのではないかと思います。限られた経営資源の中で生き残っていくために、競合の分析・調査をしっかりと行い、戦略を立てていくことも非常に重要です。
(執筆:創業手帳編集部)
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