キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」のまとめ

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社会保険の加入で非正規社員のモチベーションアップ!助成金も受給できるキャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」とは?

キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」のまとめ
ベンチャー・中小企業であれば従業員第一号は、短時間勤務のパートやアルバイトというケースも多いのではないだろうか? そんな起業家・経営者向けに、短時間労働者、つまりパートやアルバイトの就労時間を、社会保険の加入が必要な程度まで延長することによって受給できる助成金がある。

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それがキャリアアップ助成金短時間労働者の週所定労働時間延長コース」である。今回は、キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」について制度の概要をまとめた(2015/3/2現在)。

キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」とは?

労働時間が一定時間以下の場合は、会社はパートやアルバイトなどの社会保険に加入させなくてもよいケースがある。

キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」は、彼らパートやアルバイトなど短時間労働者の労働時間を延長し、社会保険に加入ができるような環境を整えることで、彼らが安心してキャリアアップを図れるようにサポートする助成金だ。

キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」は厚生労働省が提供するキャリアアップ助成金6コースの一つである。

厚生労働省 キャリアアップ助成金 6つのコース

  1. 有期契約労働者等の正規雇用等への転換等を助成する「正規雇用等転換コース
  2. 有期契約労働者等に対する職業訓練を助成する「人材育成コース
  3. 有期契約労働者等の賃金テーブルの改善を助成する「処遇改善コース
  4. 有期契約労働者等に対する健康診断制度の導入を助成する「健康管理コース
  5. 労働者の短時間正社員への転換や新規雇入れを助成する「短時間正社員コース
  6. 短時間労働者の週所定労働時間を社会保険加入ができるよう延長することを助成する「短時間労働者の週所定労働時間延長コース

助成額は、1人あたり10万円(大企業の場合は7.5万円)で、最大で1年度1事業所あたり10人まで助成される。

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キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」の意義とメリット

非正規労働者がこれだけ多い現在の日本において、厚生年金に加入していない方の老後をどのように支えていくのかは深刻な問題である(国民年金の加入だけの場合、もらえる年金は満額でも現状では年額80万円程度)。

また、国民年金ではなく健康保険に加入していれば、もしもの病気で就労ができなくなった時も、一定の条件を満たせば報酬(給与)のおおよそ2/3程度が補償される「傷病手当金制度」も利用できる。社会保険に加入するということは社員の安心にもつながる。

助成金を活用し、社員の老後と生活の安定を保証しながら、そつなく助成金も利用する。キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」は、会社と社員の双方がハッピーになることができる、実利も社会的意義もある助成金制度なのである。
キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」の意義とメリット

対象となる短時間労働者とは?

キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」は、会社にも社員にもメリットが大きい制度だが、条件に制約が多いのがデメリットだと言える。

厚生労働省は、次のすべてに該当する労働者が助成金の対象になると定めている。

助成金の対象となる短期労働者

  • 有期契約労働者や期間の定めのない労働契約で、正規雇用労働者以外の労働者
  • 週所定労働時間が25時間未満の有期契約労働者等として6か月以上雇用されている
  • 週所定労働時間を30時間以上に延長した日の前日から過去6か月間社会保険に加入していない

あなたの会社に、1週間の労働時間が25時間未満で、社会保険に未加入で6カ月以上働いている「非正規社員」がいるとしよう。彼(彼女)と話し合いの上、1週間に30時間以上働いてもらうことにし、その条件で6カ月が経過する。

ややこしいが、ここで初めて、キャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」の対象になる。

助成対象になるために必要な手続き

「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」の手続きはかなり複雑で手間がかかる。この手続きの煩雑さもデメリットと言えるだろう。

助成金の対象になるには、事業主は、以下のすべてをおこなわなければならない。

助成対象になるために必要な手続き

  1. キャリアアップ管理者を置く
  2. 事前にキャリアアップ計画を作成し労働局長の認定を受ける
  3. 雇用する週所定労働時間が25時間未満の有期契約労働者等について、週所定労働時間を30時間以上に延長する
  4. 週所定労働時間を30時間以上に延長した労働者を延長後6ヶ月以上の期間継続して雇用し、延長後の処遇で6ヶ月分の賃金を支給(通常の勤務をした日数が11日未満の月は除く)する
  5. 週所定労働時間を30時間以上に延長した日以降の期間、その労働者を社会保険に加入させている
  6. 週所定労働時間を30時間以上に延長した際に、週所定労働時間および社会保険加入状況を明確にした「労働条件通知書」または「雇用契約書」を作成、交付している

前章で述べたように、助成金の対象となるためには、まず、短時間労働者の労働時間を延長しなければならない。この時、労働条件通知書等をキチンと整備し、社会保険に加入させる(「3」「5」「6」)。

そして、その雇用条件で6カ月間働いてもらう(「4」)。

ここまでが前提である。しかし助成金を受けるためには、そもそも事前にキャリアアップを管理監督する担当者を任命し(「1」)、次に、キャリアアップ計画を作成して、管轄の労働局に提出して認定を受けなければいけない(「2」:詳細は後述する)。

このようなプロセスを経て、初めてキャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」は受給できるのである。

「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」申請の流れ

①キャリアアップ計画書を作成し届出する

助成金が欲しいがために、いきなり週所定労働時間を延長したりしてはいけない。多くの助成金申請に共通することだが、「既に〇〇を行いましたので助成金ください」はNGだ。

まずは、「これからこういう改善をします」と宣言してから、実際にそれを実施し、その結果に応じて助成を受けるのが制度の原則である。ここでいう「これからこういう改善をします」という宣言こそ、キャリアアップ計画書の作成と提出なのである。

届出は、週指定労働時間延長を実施する前日から起算して1ヶ月前までに管轄の労働局に提出しておこう。

②労働条件通知書等を整備しよう

「あなた来月から週30時間に延長ね」などと、口頭で約束しただけではもちろんNGだ。助成金の審査をするのは労働局。その担当者が確認できるように、週所定労働時間が30時間以上となることを新たな労働条件通知書等に明確にしておこう。

「採用した当初はこんな助成金を申請するとは思わなかったので『労働条件通知書』なんて作ってなかった」ではアウトだ。そもそも助成金の申請に関係なく、労働条件の明示は会社の義務である。普段の労務管理を適切に行うことが、いざ助成金の申請時に重要になってくるのである。

③社会保険加入手続きも忘れずに

所定労働時間を延長しただけで安心してはいけない。週所定労働時間を延長したら年金事務所で社会保険の加入手続き、つまり年金と健康保険の資格取得の手続きを行おう(健康保険組合加入の会社の場合は健康保険組合の資格取得も)。

期限は5日以内である。円滑に手続きを行う為、労働者からは事前に年金手帳等を提出させておこう。

④手続き書類を労働局に提出しよう

週所定働時時間を延長した後、しばらく新しい勤務体系で働いてもらい、6ヶ月分の賃金を支払った時点から2ヶ月以内に必要書類を労働局(ハローワーク経由)で提出する。

助成金申請は、原則として提出期限を過ぎたら申請はまず受理してもらえない。ここは非常にシビアであり、書類が揃わなかった理由を延々と述べてもまず門前払いをくらうのが一般的だ。

入社や退社にかかわる一般的な手続きの場合、法定提出期限を多少過ぎていても受理されることが多いが、助成金申請は期限を過ぎたらまず無理だと認識しておこう。したがって、書類の不備を指摘されることも考慮に入れ、期限には余裕を持って提出しよう。

助成金を受給するために必要な書類

助成金を受給するために必要な書類の詳細説明
ここでは、「申請の流れ」で述べた準備すべき各種書類について、もう少し詳しく説明しておこう。

申請書とキャリアアップ計画書

支給申請に必要なのが以下の書類であり、事前に提出し認定を受けた「キャリアアップ計画書」もここで再度提出する。

申請書とキャリアアップ計画書

  • 支給申請書(様式第7号(別添様式含む))
  • 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
  • 支払方法・受取人住所届(助成金の振込口座を指定するための書類)
  • 管轄労働局長の確認を受けたキャリアアップ計画書

各申請書類は、厚労省HPからダウンロードできる。

> 申請様式のダウンロード(キャリアアップ助成金)|厚生労働省

計画書の具体的な作成方法は厚労省HPを参考にするとよい。記入例もあるので書類の作成自体は決して難しいものではないことがわかるだろう。

> キャリアアップ助成金 ≪キャリアアップ計画書≫ 様式第1号

対象となる短期労働者に関する書類

さらに、以下の各書類も、社内で作成しているものを準備する。

社内で準備する労働者に関する書類(※労働時間延長前・延長後の両方が必要)

  • 対象労働者の労働条件通知書など
  • 対象労働者の賃金台帳
  • 対象労働者の出勤簿など、出勤状況が確認できる書類

これらの書類は、労働時間延長前と延長後のものの両方が必要なので注意が必要だ。

賃金台帳は、労働時間延長後6ヶ月分だけでなく、労働時間延長前6ヶ月分、すなわち労働時間延長の適用を受けた日の前日から6ヶ月前の日までの賃金台帳も必要になる。

出勤状況を確認するためのタイムカードや出勤簿も同様だ。労働時間の延長前6か月分と延長後6か月分のものが必要になる。

中小企業であることを証明する書類

大企業の場合は、1人あたりの助成金の額は7.5万円だが、中小企業事業主であると認められば、1人あたり10万円に助成金がアップする。

中小企業事業主であることを証明するために、次のいずれかの書類が必要だ。

中小企業であることを証明する書類

  • 企業の資本の額または出資の総額により、中小企業事業主に該当する場合
  •  → 登記事項証明書、資本の額または出資の総額を記載した書類など

  • 企業全体の常時使用する労働者の数により、中小企業事業主に該当する場合
  •  → 事業所確認表(様式第8号)

> 申請様式のダウンロード(キャリアアップ助成金)|厚生労働省

短時間労働者の週所定労働時間延長コースまとめ

今回はキャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」の制度の概要と、支給申請の手続きついて取り上げた。

社会保険の加入で非正規社員のモチベーションもアップし、会社は助成金が受給できるので、会社と社員がWin-Winの関係になれるキャリアアップ助成金「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」は、ベンチャー・中小企業にとって、使わない手はない助成金制度なのである。

ただし、助成金の申請には、事前に整えておくべき制度や書類も多く、手続きも複雑だ。申請する場合は、社会保険労務士などの専門家のサポートを受けながら、計画的に進めていくとよいだろう。

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(監修:東京北社会保険労務士事務所 代表 堀 拓磨 社労士)
(編集:創業手帳編集部)

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