インボイス制度の「3割特例」とは?経過措置の内容や要件、ポイントなどを詳しく解説

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2026年度税制改正でインボイス制度に新たな経過措置が追加


インボイス制度の導入時に経過措置として設けられていた「2割特例」は、2026年に適用の終了が予定されています。
しかし、その代わりとして「3割特例」という新たな経過措置が追加されることが、2026年度税制改正の大綱から発表されました。
3割特例とは具体的にどのような措置であり、どういった業種が適用を検討すべきなのでしょうか。

この記事では、2026年度税制改正の大綱で追加された「3割特例」の概要や適用要件、検討すべき業種、押さえておきたいポイントなどを解説します。
また、仕入れ税控除に関する変更内容も併せて解説しているため、気になる人はぜひ参考にしてください。

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税制改正で追加されたインボイス制度の「3割特例」とは?


インボイス制度の3割特例がどういったものなのか、まずは概要や適用の目的と背景、適用するための要件、対象期間について解説します。

3割特例の概要

3割特例とは、免税事業者がインボイス登録事業者になった際に、一定期間における納税負担を抑えるために設けられた軽減措置です。
本来、インボイス登録事業者になると消費税を納税しなくてはならないため、中小事業者にとっては大きな負担になっていました。

しかし、この特例措置によって売上げにかかる消費税額は実質3割負担となり、税額を抑えて納めることになります。
また、仕入税額控除の計算も不要になるため、事務負担が大きく軽減されるという特徴があります。

適用される目的・背景

今回3割特例が適用される背景として、2割特例の終了が挙げられます。
2023年から開始された2割特例は、あくまで期限付きの経過措置であり、個人事業者は2026年分の確定申告まで、法人は2026年9月30日の属する課税期間の確定申告まで適用されるものでした。
しかし、今後免税事業者からインボイス登録事業者に転換した場合に、個人事業者は特に税額や事務作業への負担が大きくなってしまうことから、売上税額の3割とする経過措置を新たに設けたのです。

適用するための要件

3割特例に適用するためには、まず免税事業者からインボイス登録事業者に転換する必要があります。
また、基準期間(2年間)の課税売上高が1,000万円以下であることもポイントです。
基準期間とは、個人事業者はその年の前々年を意味しています。つまり、2年前から課税売上高が1,000万円を超えていない場合は3割特例が適用されます。

対象期間

3割特例が適用される期間は、2027年および2028年に含まれる各課税期間です。
これまで2割特例を適用していた事業者は、要件を満たすことでそのまま3割特例に移行できます。
実質特例措置が2年間延長されることになるため、適用するかどうか慎重に検討してください。

インボイス制度の「2割特例」を再確認


そもそも2割特例についてよく知らないという人もいるかもしれません。そこで、2割特例について改めて確認しておきましょう。

インボイス制度では、一定の要件を満たした適格請求書(インボイス)を売り手(免税事業者)から買い手(インボイス登録事業者)に発行され、双方がインボイスを正しく保存・保管することによって、消費税の仕入税額控除が適用される制度です。
免税事業者からインボイス登録事業者に転換した場合、税負担や事務負担も増加してしまうことから、インボイス制度が実施されてから3年間は納付税額を売上げにかかる消費税額の2割とする特例措置も設けられました。
この特例措置こそ「2割特例」です。

例えば売上げが500万円(税額50万円)で経費が100万円(税額10万円)だった場合、本則課税と簡易課税によってそれぞれ納める税額は以下のようになります。

本則課税:50万円-10万円=40万円
簡易課税:50万円-25万円=25万円(サービス業のみなし仕入率で50万円×50%=25万円)

一方、2割特例が適用された場合、50万円×20%=10万円となり、本則課税・簡易課税よりも納める税額が少なくなります。

2割特例の適用は2026年9月30日まで

2割特例の適用は、インボイス制度がスタートした2023年分(10月~12月)から適用されています。
法人の場合は2024年3月期分(2023年10月~2024年3月)から2割特例が適用されました。個人事業者と法人はそれぞれ最大で4回分の確定申告で、2割特例を適用できます。

2割特例の適用が終了するのは、2026年9月30日までです。それ以降は3割特例が適用されます。

インボイス制度の3割特例を検討すべき業種は?


インボイス制度の3割特例は、一見お得な制度ではあるものの、業種によっては3割特例を適用するより簡易課税を選んだほうが有利になる場合もあります。
ここで、3割特例を検討すべき業種について解説します。

第3種~第6種事業は3割特例を検討する価値がある

消費税を計算する際に、レシート1枚1枚の消費税を集計するのは非常に手間がかかることから、「簡易課税制度」を活用する場合もあります。
簡易課税制度は、業種ごとに決まった割合(みなし仕入率)を経費としてみなす計算方法が採用されます。各事業の区分とみなし仕入率は以下のとおりです。

事業区分 みなし仕入率 業種
第1種 90% 卸売業など
第2種 80% 小売業など
第3種 70% 製造業、建設業、農業(食品以外)など
第4種 60% 飲食店業など
第5種 50% サービス業、運輸通信業、金融・保険業など
第6種 40% 不動産業

第4種・第5種・第6種は、みなし仕入率を使って計算する簡易課税制度よりも、3割特例で納税額を計算したほうが有利になります。
例えば、飲食店の場合は簡易課税だと60%が控除され、負担分は40%となりますが、3割特例なら自己負担は30%分に抑えられるため、3割特例のほうがお得といえます。
なお、第3種の場合は簡易課税制度と3割特例でどちらも自己負担が30%になるため、どちらを選んでも自己負担分は変わりません。

第1種・第2種事業は簡易課税のほうが有利になりやすい

一方で、第1種・第2種事業については、簡易課税のみなし仕入率が第1種で90%、第2種で80%と高めに設定されています。
そのため、3割特例を採用するよりも簡易課税制度を活用したほうが有利になるケースも多いです。
このように、簡易課税制度と3割特例は各事業によって自己負担分が抑えられる場合と、かえって自己負担額が増えてしまう場合があります。
自分が手がける事業だとどちらが有利になるのか慎重に検討してみてください。

インボイス制度の3割特例で押さえておきたいポイント


インボイス制度の3割特例を実際に活用する場合、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?ここで、事前に押さえておきたいポイントを解説します。

3割特例は個人事業者のみ、法人は対象外

2割特例の場合、インボイス登録事業者に転換しており、基準期間の課税売上高と特定期間の課税売上高が1,000万円以下などの要件を満たしていると、個人・法人を問わず2割特例を適用できました。
しかし、今回の税制改正で追加された3割特例は、あくまで個人事業者のみに適用される制度であり、法人は対象外となります。
2割特例の適用期間が終了するのと同時に、法人の特例措置も適用されなくなるため、2026年9月30日までに対策を検討してみてください。

事前の届け出は不要

3割特例を適用したい場合、事前の届け出は不要であり、確定申告書に3割特例の適用を受ける旨を付記するだけで適用となることが見込まれています。
例えば、2割特例を適用していた個人事業者が、そのまま3割特例に移行する場合、特に届け出などを準備することなく、移行できることになります。

3割特例も期限付き!終了前に検討・確認すべきこと


2割特例と3割特例は、どちらも期限付きの特例措置であり、いつか簡易課税または本則課税を選ぶ形になります。
3割特例に移行する場合はまだ時間があるものの、3割特例が適用外だったり、簡易課税制度のほうが有利だったりする場合は、終了前にいくつか検討・確認すべきことがあります。
どのようなことを確認すればいいか、事前にチェックしておいてください。

キャッシュフローへの影響

2割特例が終了することで、これまでは2割に抑えられていた消費税額の負担が増えることになります。
例えば、100万円分の消費税額だった場合、2割特例が適用されていた時は20万円で済んでいたものが、特例の終了によって100万円分がそのままかかってくることになります。
消費税額の負担が増えた場合、売上入金は変わらないのに多額の税金が課されてしまうため、利益が圧迫され黒字でもキャッシュフローが不安定になる可能性が高いです。

これは3割特例が終了する時も同様で、特例が終了した途端一気に消費税額の負担が増えてしまいます。
あらかじめキャッシュフローがどのように影響するか、どれくらい利益を圧迫されてしまうのか考えることも大切です。

簡易課税・原則課税のシミュレーション

2割特例の適用が終了した時点で、簡易課税か原則課税のどちらにするか選択する必要があります。
簡易課税制度を活用する場合、これまでどおり売上げの消費税額のみを計算すれば良いですが、原則課税の場合は不課税仕入れや軽減税率など、仕入れ時に発生した消費税額を一つひとつ細かく計算しなくてはなりません。

簡単に計算ができることから「簡易課税」を取り入れたいと考える人もいますが、事業区分によって割合が異なり、有利・不利が変わってきます。
そのため、簡易課税・原則課税をどちらも実際に計算してみて、どちらが有利となるのかシミュレーションすることも大切です。

納税資金の積み立て

2割特例の適用が終了する2026年9月30日以降は、消費税の納税額が今まで以上に増加すると考えられます。
いきなり納税負担が増えてしまうと、キャッシュフローにも悪影響を及ぼし、黒字でも倒産リスクが高まってしまうため、適用が終了するまでに納税資金を積み立てておくと安心です。
例えば、毎月の売上げから10%の消費税分だけ分けて積み立て、消費税の納税時に積立金を使って納めれば、利益が圧迫されることもありません。

仕入れ税控除も変更!段階的な引き下げへ


3割特例の適用は、あくまで免税事業者からインボイス登録事業者に転換する個人事業者のみに適用される制度です。
しかし、2026年度税制改正の大綱では、3割特例の適用だけでなく仕入れ税控除も変更されるとしています。ここで、仕入れ税控除の変更内容についても解説します。

これまでの段階的引き下げによる経過措置

インボイス制度では、制度が開始されてから一定期間にわたり、インボイス登録事業者以外の免税事業者や登録を受けていない課税事業者などからの課税仕入れに対して、インボイスがなかったとしても一定割合の仕入れ税額控除が認められる特例措置が設けられています。
この特例措置は、インボイス制度を導入した際の急激な負担増加を防ぎつつ、免税事業者が取引きから排除されるリスクを軽減するために設けられた措置です。

これまでの特例措置では、対象期間が2023年10月~2026年9月30日までの仕入れ税額相当額の80%、2026年10月~2029年9月30日までは仕入れ税額相当額の50%が控除でき、段階的に控除額の引き下げが行われています。

税制改正による変更内容

これまでの段階的引き下げは2029年9月30日までで、2029年10月以降から控除を受けられませんでした。
しかし、税制改正による変更によって完全に特例措置がなくなるのが2031年10月からに後ろ倒しとなり、また控除額の段階的引き下げもより緩やかになっています。

改正前の期間 控除額 改正後の期間 控除額
2026年9月30日まで 80% 2026年9月30日まで 80%
2026年10月~2029年9月30日 50% 2026年10月~2028年9月30日 70%
2029年10月以降 控除なし 2028年10月~2030年9月30日 50%
2030年10月~2031年9月30日 30%
2031年10月以降 控除なし

控除額の引き下げが緩やかになりましたが、その分細かく控除額が変わるため、計算時には注意が必要です。

年間1億円の上限規制も追加

経過措置は2026年9月30日から2031年9月30日までに延長され、事業者への負担も軽減されましたが、その分制度の公平性を保つ観点から、適用対象における上限規制が追加されました。
この上限規制は、免税事業者からの課税仕入れの金額が年間1億円を超えている場合、その超過部分は経過措置の対象外です。

例えば、2029年10月1日に免税事業者と3億円(消費税額3,000万円)の取引きをした場合、現行制度であれば税額控除は50%が適用されるため、3,000万円×50%=1,500万円を納めることになります。
しかし、上限規制が追加されると、1億円までは税額控除が適用されるため1,000万円×50%=500万円が消費税額です。
2億円分の消費税2,000万円はそのまま負担することになるため、2,500万円分の消費税を負担することになります。

現行制度では10億円と非常に高額だったこともあり、制限にかかってしまうケースは少なかったものの、1億円に引き下げられたことで大規模な開発案件や大量の仕入れを免税事業者から行っていた場合、影響する可能性が高いです。

まとめ・3割特例の適用に向けて準備を進めよう

インボイス制度の2割特例はもともと2026年9月30日までと期限付きの特例措置でした。
しかし、2026年度税制改正によって3割特例が追加され、個人事業者は引き続き消費税額の負担を抑えることができます。
ただし、2割特例と比べて自己負担額は1割分増えてしまうため、業種によっては簡易課税制度を活用したほうが有利に働く場合もあります。
この点は業種によって異なることから、自分が3割特例を適用したほうが良いのか、それとも簡易課税を選んだほうが良いのか事前に確認することが大切です。

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(編集:創業手帳編集部)

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