開業直後に課税事業者になるメリット・デメリットとは?手続きや注意点も解説!
開業後に課税事業者になるとメリットがある

開業後に課税事業者になると、インボイス制度に基づく適格請求書の発行ができるほか、仕入税額控除を受けられたり、ビジネスチャンスの拡大を見込めたりするなど、様々なメリットが得られます。
しかし、デメリットも存在します。課税事業者を目指して事業を成功に導くためには、メリットだけではなくデメリットも把握しておきましょう。
そこで今回は、開業直後に課税事業者になるべき人・ならないほうがいい人について解説していくと共に、課税事業者になるメリットや注意点、手続き方法や確認したいポイントについて紹介していきます。
開業後に課税事業者になろうと考えている人や課税事業者について理解したい人、これから起業を目指している人などは、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
開業直後に課税事業者になるべき人・ならないほうがいい人

開業したばかりの事業者は、原則として一定期間は消費税の納税義務が免除されるため、必ずしも課税事業者になる必要はありません。
しかし、事業内容や取引先、設備投資の予定などによっては、あえて課税事業者を選択したほうが有利になるケースもあります。
一方で、消費税の納税義務や事務負担が増えるため、すべての事業者に適しているわけではありません。
ここでは、課税事業者がおすすめのケースと、免税事業者のままが向いているケースを紹介します。
課税事業者がおすすめのケース
次のようなケースでは、開業直後から課税事業者を選択するメリットが期待できます。
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- 取引先からインボイス(適格請求書)の発行を求められている
- 法人や企業との取引が中心で、インボイス登録が受注条件になっている
- 開業時に店舗工事や設備導入など高額な初期投資を予定しており、消費税の還付を受けられる可能性がある
- 今後も継続して課税売上が見込まれ、早い段階から課税事業者として事業を運営したい
特にBtoB取引が多い事業では、インボイス制度への対応が取引継続の条件となる場合もあるため、課税事業者になることが事業拡大につながるケースがあります。
免税事業者がおすすめのケース
一方で、次のようなケースでは、免税事業者のままで事業をはじめるほうが適している場合があります。
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- 一般消費者向け(BtoC)の取引が中心で、取引先からインボイス発行を求められる機会が少ない
- 開業時の設備投資が少なく、消費税の還付を受ける予定がない
- 開業直後は売上規模が小さく、できるだけ税負担や事務負担を抑えたい
- 消費税の申告・納税にかかる手間を減らし、本業に集中したい
課税事業者になると消費税の納税義務が生じるほか、経理や申告の負担も増えます。
開業時の事業計画や取引先の状況を踏まえ、メリットとデメリットを比較した上で選択することが大切です。
課税事業者と免税事業者とは
ここからは、課税事業者と免税事業者の違いについて解説していきます。
課税事業者とは
課税事業者とは、国や地方自治体に対して消費税を申告し、納付する義務がある法人や個人事業主を指します。
商品やサービスを販売した際に顧客から預かった消費税から、仕入れや経費の支払いで払った消費税を差し引いた差額を税務署に申告・納付する必要があります。
課税事業者になる主な条件は以下の通りです。
-
- 基準期間の売上高:個人は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が1,000万円超
- 特定期間の判定:前年上半期の課税売上高と給与支払額が1,000万円超
- 新設法人:設立時の資本金が1,000万円以上の法人
免税事業者とは
免税事業者とは、国に対して消費税の納税義務が免除されている個人事業主や法人を指します。
顧客から商品やサービスの代金と共に消費税を受け取っていた場合でも、その消費税を国に納めずに、売上の利益として扱うことができます。
免税事業者になる条件は以下の通りです。
-
- 基準期間の売上高:個人は前々年、法人は前々事業年度の売上高が1,000万円以下
- 特定期間の判定:前年上半期の売上高および給与支払額が1,000万円以下
- 新規開業:個人事業主であれば1年目および2年目の期間、資本金1,000万円未満の法人であれば1期目・2期目は原則として免税事業者となる
課税事業者と免税事業者の違い
課税事業者と免税事業者の違いは以下の通りです。
| 比較項目 | 課税事業者 | 免税事業者 |
| 消費税納付義務 | あり | なし |
| 預かった消費税の扱い | 国に納付 | 手元に残せる |
| インボイス制度 | 発行可能 | 登録しない場合は適格請求書の発行はできない |
| 仕入税額控除 | できる | できない |
| 事務負担 | 消費税の計算や申告が必要 | 負担は少ない |
大きな違いとしては、消費税を納付する義務の有無です。課税事業者は納付義務があり、免税事業者には納付義務がありません。
納付義務がある場合、帳簿や請求書などをもとにして課税売上や課税仕入額などを把握し、納める消費税額を計算する必要があります。
法令で定められている記載事項を帳簿に記録する必要があり、請求書などと一緒に一定期間保存する必要もあります。そのため、事務負担も大きいです。
開業直後に課税事業者になるメリットとは

免税事業者であれば消費税の納税が免除される特例がありますが、開業直後にあえて課税事業者になるメリットは以下の通りです。それぞれ解説していきます。
インボイス制度に基づく適格請求書の発行ができる
課税事業者になるとインボイス発行事業所として登録でき、適格請求書の発行が可能になります。主なメリットは以下の通りです。
・BtoBで不利になりにくい
取引先が課税事業者の場合、インボイスを発行できないと取引先側の消費税負担が増えてしまいます。
その結果、契約の見送りや値引き交渉をされるといったリスクが懸念されます。しかし、開業直後からインボイスを発行できればリスクを回避することに役立ちます。
・新規開拓のハードルを下げられる
企業が新規取引先を探す際、「インボイス対応済みか」を条件にしているケースも多いです。
そのため、対応済みである課税事業者になれば、営業活動においてもスムーズに契約に進みやすいです。
仕入税額控除を受けられる
課税事業者になれば、売上時にかかる消費税から仕入れや経費にかかる消費税を差し引く仕入税額控除が適用になります。
事業で支払った消費税を納税額から差し引けるので、二重課税を防いで実質的な税負担を抑えられる点がメリットです。初期投資の負担を和らげることにもつながります。
ビジネスチャンスを拡大できる
開業直後に課税事業者になれば、ビジネスチャンスを広げることも可能です。
大手企業や上場企業、官公庁や自治体といった組織は、税務処理やコンプライアンスの厳格さによって免税事業者との取引きを最初から避けるケースも珍しくありません。
開業直後から課税事業者になっていれば、大手企業からの業務委託案件や企業のコンペティションへの参加、官公庁の入札や公募案件のエントリーなどのチャンスを掴みやすくなります。
免税事業者のままでいれば、いくら優れた商品やサービスを提供していても「取引先の選考基準を満たしていない」という理由だけでアプローチのチャンスを失ってしまうリスクがあります。
そのため、開業直後に課税事業者になることはビジネスチャンス拡大に向けて大きなメリットがあります。
還付を受けられる可能性がある
課税事業者になると消費税の還付を受けられるメリットもあります。消費税は、売上で預かった消費税から仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて計算する仕組みです。
開業直後は、売上が少ない一方で支払う消費税額が多くなるケースも多いです。
例えば、店舗の内装工事や高額なシステムの導入、事業用の車両購入などを行った場合、支払った消費税分が還付される可能性があります。
輸出業を行う場合は、海外への販売は消費税が免除になるため、売上に対する消費税は預かりません。
一方、国内での仕入れでは消費税を支払うため、申告をすれば恒常的に消費税の還付を受けられる仕組みです。
免税事業者の場合は、どれだけ多くの消費税を支払っていても、還付を受け取ることはできないため、初期費用の投資額が大きい場合や輸出業を行う場合には、課税事業者への変更を検討してみてください。
開業直後に課税事業者になるデメリット・注意点
開業直後に課税事業者になると、様々なメリットを得られますが、その一方で注意すべきデメリットもあります。
以下の3点が注意すべきポイントです。それぞれ詳しく解説していきます。
納税義務が生じる
免税事業者のままでいれば、売上と一緒に受け取った消費税はそのまま手元に残ります。
しかし、課税事業者になると売上で預かった消費税から仕入れや経費で支払った消費税を差し引いた差額を国に納めなければいけません。
創業したばかりの頃は、売上が不安定になりやすく資金繰りも難航しやすいです。
たとえ赤字でも納税義務はあるため、経営を苦しめる要因になる可能性があります。
また、納税にともなう消費税の計算や申告、納付に必要な資料の用意など、業務負担も多くなります。業務を圧迫する要因にもなるため注意してください。
インボイス制度への対応が必要
開業後に課税事業者となったうえでインボイスを発行する場合は、適格請求書発行事業者への登録が必要です。登録を受けると、インボイス制度に対応した請求書の発行や帳簿の管理などが必要になります。
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- 適格請求書発行事業者への登録
- 請求書フォーマットの改修
- 会計ソフトの導入や更新
- レジシステムの導入や更新 など
あらかじめ対応すべき項目や用意すべき書類などを確認しておくことで、スムーズな対応につながります。
棚卸資産の消費税額調整が必要
消費税は以下の方法で算出します。
「売上の消費税-仕入れや経費で支払った消費税=差額を申告時に納税」
免税事業者から課税事業者へ移行する際、課税事業者となる前日に所有している棚卸資産について、免税事業者であった期間中に仕入れたものがある場合には、一定の要件を満たせばその棚卸資産に含まれる消費税額を仕入税額控除の対象にできます。
これを「棚卸資産に係る消費税額の調整」といいます。対象となる場合は、棚卸資産の明細を記録した書類を作成し、一定期間保存する必要があります。
開業直後に課税事業者に移行する際の手続き

次に、課税事業者に移行する際の手続き方法を解説していきます。
消費税課税事業者選択届出書の届け出
免税事業者から課税事業者に移行するためには、納税地の税務署に対し、「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要です。
届出書は国税庁のホームページに掲載されているためダウンロードしてください。
届出者の納税地や氏名、適用開始課税期間や基準期間などを適切に記載し、税務署へ持参または郵送で提出しましょう。e-Taxを活用した届け出も可能です。
提出期限
提出期限は、適用を受けようとする課税期間初日の前日までです。
例えば、事業年度が4月1日から3月31日の法人の場合、来期の4月1日から課税事業者になるためには、今期の3月31日までに届出書を提出する必要があります。
震災や災害など、事業者自身に責任がない理由によって提出が遅れた場合は、所轄税務署長の承認を受ければ期間内に届出書を提出したとみなされます。
万が一の場合には相談してみてください。
課税事業者を選択する前に確認したいポイント
開業直後に課税事業者を選択すると、インボイス制度への対応や仕入税額控除などのメリットを受けられる一方で、消費税の納税義務や経理業務の負担も発生します。
一度課税事業者を選択すると、一定期間は免税事業者へ戻れない場合もあるため、制度を十分に理解した上で判断することが重要です。
ここでは、課税事業者を選択する前に確認しておきたいポイントを紹介します。
簡易課税制度を利用できるか確認する
課税事業者になった場合でも、一定の要件を満たせば「簡易課税制度」を選択できます。
簡易課税制度では、実際の仕入税額ではなく業種ごとに定められた「みなし仕入率」を用いて納付税額を計算するため、経理業務を簡略化できる場合があります。
一方で、設備投資が多い事業では原則課税のほうが有利になるケースもあるため、自社に適した方式を事前に検討してください。
設備投資の予定を整理する
店舗の内装工事や機械設備、車両など、高額な設備投資を予定している場合は、課税事業者になることで支払った消費税の還付を受けられる可能性があります。
一方、設備投資の予定がほとんどない場合は、免税事業者のままのほうが税負担を抑えられるケースもあります。
開業後の事業計画や資金計画を踏まえて判断することが大切です。
取引先がインボイス登録を求めているか確認する
法人や事業者との取引きが中心の場合は、取引先から適格請求書(インボイス)の発行を求められることがあります。
インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者として登録し、課税事業者である必要があります。
今後の営業活動や取引きへの影響を考え、主要な取引先がインボイス対応を求めているかを事前に確認しておくと安心です。
課税事業者から免税事業者に戻りたい場合の手続き
最後に、課税事業者から免税事業者に戻りたい場合の手続き方法を解説していきます。
課税事業者選択不適用届出書を提出
課税事業者から免税事業者に戻りたい場合には、課税事業者選択不適用届出書の提出が必須です。必要事項を記入し、税務署への持参や郵送、e-Taxにて申請が可能です。
免税事業者に戻ることを希望する課税期間初日の前日までに書類を提出する必要があるため、必要な書類や記載すべき事項を前もって確認しておくと、スムーズな申請につながります。
届出書を提出する際の注意点
課税事業者選択不適用届出書を提出する際には以下の点に注意してください。
・提出できない期間がある
課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になった場合、原則として最初の2年間は免税事業者に戻ることができません。
また、一定の調整対象固定資産を取得した場合などには、さらに免税事業者へ戻ることが制限される場合があります。
・インボイス発行事業者の取消
免税事業者から課税事業者となり、適格請求書発行事業者の登録を済ませた企業も多いかもしれません。
その場合、適格請求書発行事業者を取り消す手続きも行う必要があります。
翌課税期間の初日から起算して、15日前までにインボイス登録センターまで提出が必要なので、忘れずに行ってください。
まとめ・課税事業者の仕組みを理解して最適な選択をしよう
開業直後に課税事業者になると様々なメリットを得ることができます。
多くのメリットを得るため、自社にとって最適な選択をするためにも、課税事業者の仕組みや注意点、手続きの方法などを理解しておく必要があります。
今回紹介した内容を参考に、知識を深めてみてください。
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(編集:創業手帳編集部)
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