起業後の売上は平均いくら?黒字になる人の実態も解説|データを読むシリーズ
起業後の売上はどれくらい?最新調査から見えた実態

起業をこれから検討する人が気にすべきポイントは、「実際にどれくらいの売上が見込めるか」という現実的な数字です。
日本政策金融公庫の「2025年度起業と起業意識に関する調査」では、起業後のリアルな月商や採算状況、売上の推移が詳細に調査されています。
本記事では同調査のデータをもとに、起業家のリアルな売上実態と黒字化の傾向を紹介します。
すでに事業をスタートしている人も事業計画段階の人もぜひ経営の参考にしてください。
この記事の目次
起業後の月商は50万円未満が最も多い

起業してからの月商について、多くの起業家、パートタイム起業家ともに7割以上が黒字基調と回答しています。以下では起業してからの月商について細かく解説しています。
起業家の約7割が月商50万円未満
事業を始めたものの、思ったように月商が伸びていかないと悩んでいる人もいるかもしれません。
日本政策金融公庫の調査によると、現在の月商が50万円未満である起業家の割合は68.3%にのぼります。
つまり、月商50万円未満は、起業家の中でも比較的多く見られる水準といえます。
今、売上で悩んでいる人も売上規模の小ささだけを理由に、自身の事業を過度に不安視する必要はありません。
パートタイム起業家は9割以上が50万円未満
パートタイム起業家では月商50万円未満の割合が91.5%に達し、起業家よりもさらに高い水準でした。ここでいうパートタイム起業家とは、事業に充てる時間が週35時間未満と定義されています。
つまり、パートタイム起業家は事業に充てる時間が比較的限られているため、月商が小さい人の割合も高くなっていると考えられます。
また、本業からの収入があり、無理に事業の売上を追わないスタイルで運営しているケースがあると考えられるでしょう。
月商だけでは事業の良し悪しは判断できない
業種によって利益率は大きく異なります。利益率によっては月商自体が大きく見えなくても、利益を出せているケースも存在します。
そのため、月商の金額だけで事業の優劣を判断することはできません。
中でも仕入や外注費が少ない事業は固定費が抑えられるので、売上が小さくても利益を確保しやすい構造です。
事業の健全性を評価する際は、月商そのものよりも手元に残る利益を見るように意識してください。
売上が少なくても7割以上が黒字基調
起業した人の月商だけを見ると少なく感じるかもしれません。しかし、採算状況を見ると違った景色が見えてきます。起業した人が置かれている環境について説明しました。
起業家の72.6%が黒字基調
現在の採算状況が「黒字基調」である起業家の割合は72.6%でした。これは「赤字基調」の27.4%を大きく上回る数字です。
月商50万円未満の割合が約7割であったことを踏まえると、売上規模と黒字化は必ずしも比例しないことがわかります。
この結果から、月商が小規模でも黒字基調で事業を運営している起業家が多いことがわかります。
パートタイム起業家も74.8%が黒字基調
パートタイム起業家についても黒字基調の割合は74.8%と、起業家を上回る水準でした。
赤字基調の割合も25.2%にとどまり、パートタイム起業家も黒字基調で事業を運営していることがわかります。
ここから小規模な事業運営であっても、支出を抑えることで黒字を維持しやすいことがうかがえます。
今後副業や小規模な事業から起業を目指す人にとっても後押しとなる情報です。
売上より利益を重視すべき理由
起業してからは、月商の大小よりも、経費を差し引いた後にどれだけ利益が残るかを重視することが事業を継続するための鍵になります。
同じ売上規模でも利益率が異なれば手元に残る資金は大きく変わります。事業計画の段階から、どれだけの利益率になるか把握しなければいけません。
利益率を高めるためには、支出の削減も有効な施策です。家賃や人件費といった固定費を抑えることで、売上が小さくても黒字を維持しやすくなります。
売上は安定してきたが、利益が残っていないといったケースでは支出の見直しも検討してください。
売上は順調に伸びる人ばかりではない

黒字基調の起業者が多くいる一方で、売上が順調に伸びている人ばかりではありません。ここでは、起業してから苦戦している人たちに焦点を当ててみていきます。
増加傾向の起業家は35.1%
事業について黒字基調と答えた起業家が7割を超える一方で、売り上げ状況が「増加傾向」である起業家の割合は35.1%にとどまっています。
つまり、増加傾向にある起業家は全体の3分の1程度です。
パートタイム起業家の増加傾向の割合も21.3%であり、起業家よりもさらに低い水準でした。
事業計画を立てるときには、事業を継続すれば順調に認知度が高まって売り上げが伸びるイメージで計画しているかもしれません。
しかし、実際には売上が右肩上がりに伸び続けることは決して当たり前とは言えないでしょう。
半数以上は横ばい
売り上げ状況が「横ばい」である割合は起業家で52.4%、パートタイム起業家で64.4%と、いずれも過半数を占めました。
売上が伸びていなくても、それは特別に珍しい状況ではなく、多くの起業家が経験する一般的な状態だといってもよいでしょう。
売上が横ばいの状態でも、黒字基調を維持できていれば、事業を継続できる可能性があります。
タイミングが影響する部分もあるので、横ばいでも悲観することなく長く続けてチャンスを待つといった戦略も検討してください。
焦らず事業を育てることが重要
起業家がみな起業してすぐに大きく事業成長しているわけではありません。
起業後しばらくは事業の認知度を高める期間と捉え、短期間での急成長を前提にしないことが大切です。
一度取引した顧客にリピーターとして戻ってきてもらうことが、中長期的な売上の安定につながります。
起業してからもコツコツと信頼を積み重ねることで顧客からの紹介が増え、時間をかけて新規の受注につながっていきます。
焦って行動するよりも足元を固めて将来に備える時期です。
売上を伸ばしている起業家はどんな営業をしている?
起業してから順調に売り上げを伸ばしている起業家は、他と比較してどのような違いがあるのでしょうか。起業家の営業についてまとめています。
ホームページ・広告を活用している
受注経路として『ホームページの作成やチラシ配布などの宣伝広告活動』を挙げた起業家は25.1%でした。
パートタイム起業家においても宣伝広告活動を受注経路とする割合は一定数見られ、有効な手段のひとつです。
自社の情報を発信する仕組みを持つことが、新規顧客からの問い合わせやリピーターの獲得につながります。費用をかけずにできる宣伝もあるので積極的に活用してください。
SNSから集客している
自身のSNSやブログを通じた受注は起業家で25.0%、パートタイム起業家で22.6%と、いずれも高い割合を占めています。
SNSは初期費用を抑えながら継続的に情報発信できる手段であり、幅広い起業家に活用されています。
日々の発信を積み重ねることで、見込み顧客との接点を増やせる点がSNS活用の強みです。
サービスや商材、ターゲット層によって選ぶべきSNSが違うので、まずは事業をどの層に届けたいのかを考えてください。
紹介を活用している
友人・知人の紹介による受注は起業家で24.7%、パートタイム起業家で19.4%と、いずれも主要な受注経路として紹介が機能しています。
取引先からの紹介を受注経路とする起業家の割合も23.7%に上り、既存の関係性が新規受注につながっています。
紹介による受注は営業コストを抑えられる点が大きな魅力です。
起業する前から信頼関係を構築することが事業拡大の鍵になるので、計画的にコネクションを作っておきましょう。
営業チャネルを複数持っている
調査ではホームページ・広告、SNS、知人紹介、取引先紹介など複数の経路から受注する起業家が多いことも示されました。
単独の経路に依存せず複数のチャネルを併用することで、受注の機会を増やし売上の安定化を図れます。
営業チャネルを限定する必要はありません。相手や状況に応じて営業手段を組み合わせることが、継続的な売上確保につながる実践的な工夫といえます。
売上だけを目標にすると失敗しやすい

多くの起業家がわかりやすい目標として売上や月商の数字と掲げます。しかし、売上だけを目標にしていると思わぬトラブルにつながるかもしれません。
どうして売上だけを目標にすると失敗してしまうのかまとめました。
利益が残る売上を目指す
事業を安定して経営するために残すべきなのは利益です。
売上金額そのものを目標にすると、経費がかさんでも受注を優先してしまい、結果的に利益が残らない危険があります。
売上額ではなく原価や経費を差し引いた後の利益額を基準に目標を設定することで、無理のない事業運営が可能となります。
黒字基調の起業家が7割を超える実態を踏まえると、利益重視の姿勢が事業継続の土台になると考えられます。
資金繰りも同時に考える
売上が黒字であっても、入金と支払いのタイミングがずれれば資金繰りが悪化する可能性があります。
毎月の入出金の流れを把握し、手元資金に余裕を持たせておくことが事業を安定して運営するためのポイントです。
資金ショートを防ぐためには、利益だけでなく現金の動きも定期的に確認する習慣を身につけましょう。
資金繰り表や会計ソフトなども使って、正確な数字を把握するようにしてください。
継続できる働き方をつくる
起業してからは、自分の采配で労働時間や自由時間を設定します。
利益を増やしたいからと無理な受注や過重な労働時間を前提にした事業運営は、長期的な継続を難しくする要因です。
自分の生活リズムに合わせた働き方を設計することで、事業を長く続けられる体制を整えられます。
焦らずに事業を育てる姿勢が、結果として売上や利益の安定にもつながっていくと意識するようにしてください。
起業後の売上を伸ばすために今からできること
起業してからの売上を伸ばすためには、起業の前段階からの準備が不可欠です。どういったことを準備すればいいのか以下でまとめました。
創業計画書を作る
事業を始めるときに創業計画書を作成することで、事業の目的や収支の見通しを具体的に整理できるようになります。
創業計画書の段階で数値目標を明文化しておけば、実際の売上や利益と比較しながら事業の進捗を確認しやすく軌道修正の判断も早期に下せます。
創業計画書は金融機関へ融資の相談をするときの資料にも活用でき、事業の信頼性を示す資料のひとつです。
創業計画書を作成する段階で、どれだけの費用が発生し、利益を生み出すためにどれだけの売上が必要なのかがわかるようになるでしょう。
ターゲットを明確にする
事業計画において、ターゲット選定は最も重要な要素のひとつです。
誰に商品やサービスを届けるかを明確にすることで、限られた資源を効果的に営業活動へ振り向けられます。
ターゲットが定まることで発信するメッセージが具体化すれば、相手のお悩みに合わせた言葉やチャネルを選択できます。
適切な言葉、媒体を選べばSNSや広告の効果も高まりやすく、費用を効率的に宣伝に使えるでしょう。
紹介による受注拡大にもつながる基盤づくりのためにも顧客層の絞り込みを意識してみてください。
販路を複数持つ
取引先を一社に限定してしまうと、その一社で収入が変動してしまうリスクがあります。ホームページやSNS、紹介など複数の受注経路を持つことで、特定の手段に依存しないようにリスク分散するのが理想的です。
例えば、オンラインとオフラインを組み合わせて広いターゲットにリーチしたり、パートナー企業に委託するような販路開拓があります。
複数の販路があれば、ひとつの販路が不調でも他の経路から受注を確保でき、売上の急激な落ち込みを防ぎやすくなります。
複数の販路を組み合わせる工夫は、実際に売上を伸ばしている起業家からも一定数支持されている方法です。
数字を毎月確認する
毎月の売上や利益、資金繰りの状況を数字で把握することが、経営判断の精度を高める第一歩です。
定期的に数字を確認しておくと、問題の早期発見や事業計画の見直しをタイムリーに行えるようになります。
売上が増えて利益が出ていても、現金がなければ事業は続けられません。
資金ショートを防ぐためにも、売上と粗利だけでなく、これから到来する支払予定やその後の現金残高を確認してください。
数字に基づいた振り返りを習慣化することが、黒字基調を維持し続けるための基本的な取り組みです。
数字を確認する習慣を身につけるには資金繰り表や会計ソフトの活用も検討してください。スケジュールに組み込んで、継続して取り組むようにしましょう。
まとめ|売上より「黒字を続けられるか」が重要
調査によると現在の月商が50万円未満である割合は起業家で68.3%、パートタイム起業家で91.5%でした。
黒字基調である割合は起業家72.6%、パートタイム起業家74.8%と、いずれも7割を超えています。
安定して利益を上げ続けるためには、売上規模だけでなく利益や資金繰りにも目を向けてください。焦らず事業を積み上げていく姿勢が事業継続には欠かせません。
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(編集:創業手帳編集部)
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