ビザスク 端羽 英子|【第一回】「ボストン子連れ留学からの起業」資金調達ここだけのハナシ

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※このインタビュー内容は2015年05月に行われた取材時点のものです。

「株式会社ビザスク」代表取締役社長 端羽英子氏インタビュー(1/3)

「結婚」「出産」「育児」。日本の女性がキャリアを築いていく中で、大きな障害となるこれら3つの要素。そのすべてを20代で経験し、キャリアを形成してきた端羽さんは、自身の体験をもとに「スキルを有効活用できるサービス」を展開する。私たちの働き方は、これからどのように変わっていくのか。キャリアの変遷から創業時の苦労まで幅広く伺った内容を、全3回にわたってお送りする。

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端羽 英子(はしば・えいこ)
東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。投資部門にて企業ファイナンスを担当する。退職後は米国公認会計士の資格を取得し、日本ロレアルに入社。ボストン留学を経てMBA(経営学修士)を取得。投資ファンドのユニゾン・キャピタルにて企業投資を5年間経験し、株式会社ビザスク(旧:walkntalk)を設立。グロービス・マネジメント・スクール講師という顔も持つ。

子どもを抱えてボストンに留学

ー端羽社長のプロフィールを教えてください。

端羽:新卒でゴールドマン・サックスに入社して、最初のプロジェクトがスターバックス・コーヒーのIPOでした。ただ、もともと学生結婚をしていて、入社1年目で子どもができたのです。そのなかで「こんなに忙しい仕事をしつつ、子どもを育てるのは無理だ」と思い、退職しました。

退職後は米国の公認会計士を取得してロレアルに転職。その後、夫がボストンに留学したいとのことで、子どもを連れてついて行きました。そこでまた主婦をすることになります。ボストンだったのでMITのスローンというビジネススクールに通い、MBAを取得。卒業する頃には離婚していました。

ー子どもを抱えてボストンに留学……。驚きです。

端羽:子どもを育てるために留学したようなものですね。子どもが丸2歳のときに行ったのですが、そもそも共働きって大変じゃないですか。学生をしていたほうが時間的な自由が大きい。じゃあ学生になっておくか、ということで留学したのです。

これって実はすごく良い“言い訳”で、ただ主婦をしていただけなら、次の仕事を見つけるのは大変だったと思います。「ビジネススクールに行っていた」と言えば、スキルアップをしていたと思われますので。

「“人が持っている情報”が動くサービスを作りたい」

ービジネススクール卒業後はどうされたのですか?

端羽:卒業後はユニゾン・キャピタルというファンドに入社し、5年間ほど企業投資を経験しました。ワインショップや回転寿司店など、いわゆる「成熟産業」と呼ばれるところに投資をして、再成長を手助けしたのです。

そこでしみじみ思ったのが、「銀行は、相手が成熟産業であれば、ちょっとでも芽があると低利でお金を貸してくれる」ということ。また、お金はともかく、人や情報が流れていないのではないか、とも。やがて、そういったサービスを作りたいと考えるようになったんです。

たとえば、投資したい企業があり、その業界のことを調べたいと思っても、最適な人を見つけることができない。また、ワインをEコマースで売ろうと思っても、EC業界について知らなければ人を採用することもできない。そうしたときに、人や情報を集めることができれば便利ですよね。「人が持っている情報が動くサービス」を作りたい、と思ったわけです。

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「強みの再発見」と「課題の解決」

ー創業前から現在のようなサービスを想定されていたのでしょうか?

端羽:最初はキュレーション型のECを考えていました。ビジネスプランをいろいろと練っていたのですが、アドバイスを求めた先で「物販わかってんのか」と言われ……。確かにそうだな、と。ただ、ビジネスを分析することに関しては前の仕事でやっていたので、強みを発揮できると思いました。

そもそも自分がキャリアを転々としていたので、自分なりの「強みの作り方」ということに関しては、大事なテーマだと思っていたのです。大企業に守られているわけではなかったので。弊社のサービスは、情報の販売とキャリアの発見という両方を満たせるサービスだと思っています。

アドバイザーさんにとってみると、自分の強みの再発見になりますし、何かに挑戦したい企業にとっては課題の解決になる。それが今まででは、転職や独立してフリーランスという形でしかマッチングできていなかった。そこで、もっと気軽にチャレンジできるようになれば、と。そういった思いがサービスの根底にあります。

だからこそ私たちは有料にこだわっているのです。自分の価値を再発見するためには、そのスキルに対してどのくらいの値段をつけた人がいたか、ということを知る必要があります。たとえ(副業禁止規定などで)お金を受け取れなくても、そのスキルがいくらだったのかを知ってほしい。だからこそ“有料”サービスなんですね。

実際問題、必ずしもみんなが転職する必要はないと思っていますし、仕事が楽しい人も多いでしょう。ですので、自分のスキルに対してニーズがあると気づいてもらえるだけでもいい。過去の経験が良い経験だったと再発見してもらうだけでも構わないのです。

ー情報に価値があるという認識は、まだあまり浸透していないですよね。

端羽:自分が持つ情報を価値だと認識し、コンサルタントという職業に就くとお金が発生する。でも、コンサルタントじゃない人の情報に価値がついてもいいと思うんですね。その価値を見出すのがビザスクなんです。情報を価値だと認識する人がまだ少ないからこそ、低い値段でもやれるんです。もっとも、弊社に登録しているアドバイザーの方々は、プロのコンサルタントにも負けてないと思ってはいますが。

一年目の苦労と二年目の苦労

ー起業して一番辛かったのはいつですか?

端羽:やはり最初の一年ですね。2012年の7月に会社を辞め、12月にビザスクのサービスをベータ版としてリリースしたとき、フルタイムで働いていたのは私だけでした。エンジニア二人が土日にタダで手伝ってくれているという状態で。勉強しながらやっていたので、最初の一年はこれが本当にものになるのかと思いながらやっていました。

それこそ、いろんな人にアドバイスを求めに行きましたね。そこでダメ出しされて改良するというくり返しで。一度、子どもに「またダメ出しされちゃったよ」と言ったら、「大丈夫だよママ! ダメ出しされたということは、もっと良くなるということだから!」と励まされました。

ちょうど一年後ぐらいですかね。2013年の7月に経産省からお金をもらって、そこでチームがフルタイムになってくれて。それからようやく、事業がまわり始めました。それまでは、やると決めたけどどうすれば良いのか、という感じで大変でした。

その後の一年はまた別の意味で大変で、説明しなければならないことも多くなって。「本当にユーザーは伸びるのか」とか、「仮説は正しいのか」とか。五里霧中だった時と、数字を伸ばさなければならない時。今思えば、そのどちらも大変でしたね。

最初の一年ぐらいは、みんなに「いつ辞めるの?」と言われました。スタートアップに挑戦した気概は買ってもらえましたけど。ちょっと大きくなったスタートアップに「うちにジョインしなよ」みたいなことも言われました。

昔「ソーシャルランチ」というサービスがあったのを覚えてますか? そこで「こんなサービスをやってみようと思っているのですが、意見くれる人募集」というようなことをしていたんです。やっぱり、出会うとつながります。なかには「立ち上がらないと思うよ」とおっしゃる方もいましたが、なんとか立ち上がりました。

「君は南場智子になれるのか」

ー資金調達について教えてください。

端羽:2014年の2月に「サイバーエージェント・ベンチャーズ」さんと「ベンチャーユナイテッド」さんから資金調達をしています。最初に国からお金をもらっていますので、いわゆるシードというのはやっていませんが、数千万円いただいたので使っています。

資金調達で言うと、もともと自分はファンドにいたので、事業計画書の作り方などは聞く必要がありませんでした。ただ、ちょっとした驚きで言うと、一社ではなく複数の会社から「子どもは産むんですか?」と言われたことです。「出資して子どもが産まれたら困るのでは?」ということですね。そういうことを聞かれたのはびっくりしました。

あとは、女性の起業家で成功した事例が少ないとも。女性という枠のトラックレコードとして難しいということですね。そういうのあるんですよ、本当に。未だに。あとは、「君は南場智子になれるのか」と言われたこともありました。

ー公庫は利用していないのですか?

端羽:一回だけ話を聞きに行きましたが、利用していません。でも、次に資金調達をするときには、公庫さんを検討しても良いかもしれませんね。やはり、株をとられないというのは魅力的ですよ。

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【第三回】気鋭の女性起業家・ビザスク端羽社長「知識と経験の流通を変える」

(創業手帳編集部)

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